※この記事は2025年5月に『RightTouch公式note』に掲載した記事を転載しています。
はじめに
こんにちは、奥泉と申します。
現在RightTouch社にて、事業開発セールスと特定インダストリーのRevenueマネジメントをしています。弊社は「KARTE」を提供するプレイドグループから分社化したスタートアップで「RightSupport by KARTE」「RightConnect by KARTE」「KARTE Talk」等のプロダクトを開発・提供しております。
目次
はじめに
簡単な自己紹介
前提:RightTouchの事業
エンタープライズセールス×コンパウンド×スタートアップの難しさ
若手・未経験でエンタープライズセールスは実現できるのか
簡単には超えられない壁
壁を壊すには?:深い一次情報の取得
事例はレバレッジの効く情報ソース
事例はお客様から「情報」と「欲望」を引き出す
時には仲間の力を借りる
おわりに
簡単な自己紹介
奥泉 琳太郎/Rintaro Okuizumi
早稲田大学卒業後、新卒でユーザベースに入社し、SaaSプロダクトの大手企業開拓に従事。2023年2月にRightTouchに入社。
フィールドマーケティング・インサイドセールス組織立ち上げ・セールス・事業開発を通してカスタマーサポート・コールセンター領域の深い顧客課題の解決に日々向き合っている。
私は現在、弊社でまだプロダクトマーケットフィット(PMF)に達していない、ポテンシャルのある新規インダストリーを開拓するチームの責任者を務めています。ミッションは、弊社の導入実績がない業界の大手企業様を新たに開拓することで、マーケティングからセールス、カスタマーサクセス(CS)に至るまで、そのインダストリーにおけるRevenue責任を担っています。
私自身は、新卒時代からマーケティングやインサイドセールス、企画部門で経験を積んできましたが、セールス活動自体はRightTouch社に入社して初めての経験となります。
・エンタープライズセールス
・コンパウンドスタートアップ
については未経験ながらも孤軍奮闘して取り組んでおり、いくつか成功への兆し(まだ道半ばではありますが)が見えてきました。そこで、この市場の面白さや事業開発セールスの面白さを少しでもお届けできればと思い、本稿を執筆するに至りました。ご関心を持っていただいた方、ぜひお話しましょう!
前提:RightTouchの事業
弊社は、カスタマーサポート市場において複数のSaaSプロダクトを展開しているいわゆるコンパウンドスタートアップです。
例えば「RightSupport by KARTE」「RightConnect by KARTE」「KARTE Talk」など複数のソリューションを展開しています。
また、当社プロダクトのメインターゲットは大手金融/通信/インフラ/メーカーなど、いわゆるエンタープライズ企業(以下、EP)です。「Day1からエンタープライズ」を掲げ、プロダクトリリース後すぐにエンタープライズに進出しました。
ご導入中のお客様の一部
(事業の詳しい内容については弊社代表 長崎のnoteをご参照いただければと思います。)
エンタープライズセールス×コンパウンド×スタートアップの難しさ
先述の通り、エンタープライズSaaS × コンパウンド × スタートアップは国内では珍しい業態であり、以下の3つの観点から難しさが際立ちます。
- エンタープライズセールスの複雑性
高度なエンタープライズセールスが前提となる。 - 顧客業務の深い理解が必要
コンパウンド型のソリューションであるため、顧客の業務フローを深く理解する必要がある。 - 実績のないスタートアップとしての課題
信頼の獲得が難しく、導入へのハードルが高い。
これらが重なることで、さらに難易度は増します。
しかしながら、その複雑性を紐解くことこそが、この挑戦の面白さでもあると考えています。
若手・未経験でエンタープライズセールスは実現できるのか
弊社のエンタープライズセールスを担うメンバーは、シニアで成熟した人材が中心です。例えば、代表の野村はワークスアプリケーションズ出身、島本はワークスを経て大手外資系のセールスを経験、佐藤も大手外資系企業で営業を2社経験し、川口は国内スタートアップでエンタープライズセールスを手がけていたメンバーです。いずれもベテランで、豊富な営業経験を持つメンバーばかりです。
彼らと私の間には、経験の差を含めてさまざまな違いがあります。また、他のエンタープライズセールスのプロフェッショナルを見ても、熟練者がディールを決めていく様子を何度も目の当たりにしてきました。しかし、熟練しなければ成果を出せないかと言えば、決してそんなことはありません。大切なのは、若手未経験だとしても「超えられる壁」と「簡単には超えられない壁」を正しく見極め、それぞれに対策を打つことです。そこをしっかり押さえれば、「経験」や「年齢」というハンデも乗り越えることができると私は考えています。
簡単には超えられない壁
- 長年の信頼関係や人脈保有の壁
エンタープライズセールスのベテランや役員クラスの方々の中には、もともと特定の業界に数十年身を置き、長年にわたってクライアントと信頼関係を築いてきた、あるいは豊富な人脈(ツテ)を持っている、というケースが多く見られます。当然ながら私にはこれはありません。
10年以上に及ぶ信頼関係は当たり前ですが一朝一夕には創出できません。
こうした点については、若手個人で補うのは難しく、やむを得ない部分もあります。そのため、顧問の活用やマーケティング施策など、組織として別途リカバリー施策を打つことが現実的な対応となるでしょう。
- 「誰が言ったか」の壁
あまり語られないことですが、若手とシニアの間には、どうしても「話を聞いてもらえるかどうか」という点で差が生まれやすいのが現実です。特に提案を行う場合、「誰が言っているのか」が重視される局面が多々あります。そのため、若手であるがゆえに「経験が浅い」「視座が低い」と見なされ、そもそも話を聞く土俵に立たせてもらえないことも少なくありません。
これは一見、年齢やキャリアの問題に見えますが、本質は「信頼」と「説得力の源泉」にあります。シニア層は、自身の過去の実績や経験、他社との比較事例、業界への理解といった“背負っている文脈”が強いため、それだけで一定の信用を得やすい。一方、若手にはそれがないため、話す内容にいくらロジックが通っていても、聞き手が「この人が言うなら」とはなりづらいのが実情です。
しかし、逆に言えば、若手が信頼を得るには「話す内容そのものの質」や「準備の深さ」で勝負するしかないということでもあります。顧客企業の事業構造や業界動向、過去の導入事例や運用の現場課題まで丁寧に掘り下げた上で、提案の背景に「理解」と「意図」が見えると、相手は年齢に関係なく耳を傾けてくれます。表層的な機能紹介ではなく、顧客の“目線の高さ”に合わせて対話できるのか?を含めて「壁」を壊すことはできると考えています。
もちろん、他にも要素はあるとは思いますが、今回特に注目したいのは、2つ目の壁である「誰が言ったか」問題をどう乗り越えるか、という点です。先ほど、「この壁を壊すためには、信頼と説得力の源泉が重要である」と述べましたが、それでは、その信頼と説得力は一体どこから生まれてくるのでしょうか。
壁を壊すには?:深い一次情報の取得
唐突ですが、私はエンタープライズセールスを諜報機関(インテリジェンス)の活動に近いと捉えています。米国で言えば「CIA」、英国であれば「MI6」が該当する機関です。
両者の本質として、相手の深層にある本質的な情報を引き出し、最適な打ち手を導くという点で非常に似ていると考えられます。
まず、インテリジェンスの世界では、入手可能な90%以上の情報はすでに公開情報(オープンソース)として世の中に存在していると言われています。オープンソースには諜報機関員でなくともアクセスが可能です。そこで重要となるのは、目の前に散らばる情報を単なる断片として扱うのではなく、体系的に収集・整理・分析し、意味を持たせた上で、仮説を立てることにあります。そして、その仮説を相手にぶつけながら、まだ可視化されていない・公開されていない10%に満たない「深い一次情報」を引き出していく。そして、深い一次情報を得た上で仮説の練度を上げて相手にぶつけ、さらに情報を得ていく。これがインテリジェンス活動の基本的なプロセスです。
これは営業活動にも通ずると考えられます。
特に大企業であれば、企業のIR情報、ニュースリリース、社長インタビュー、業界動向、過去の事例など、すでに公開されている情報は大量に存在しています。これらを表面的に見るだけでは意味がなく、顧客企業の置かれている状況や課題、潜在的なニーズを仮説として組み立てた上で、初めて顧客との対話が成立します。この仮説があるからこそ、単なるヒアリングではなく、相手に「この営業は自社のことをよく理解している」「話す価値がある」と思わせ、「誰が言ったか」の壁を超えて本音を引き出すことができます。そして、ようやく得られる非公開の深い深い一次情報をもとに、顧客に最適な提案を行う──まさに、インテリジェンスのプロセスと重なるのです。
とりわけ当社が属するカスタマーサポート領域では、生成AIを活用してWeb上からマクロな情報を収集することが難しいのが現状です。だからこそ、現場ならではの深い一次情報を丁寧に取りにいく必要があります。
しかし、冒頭申し上げた通り、「誰が言ったか」の壁は非常に分厚いです。お客様にとって信頼に足るか分からない営業担当に対し、素直に状況を共有してくださるとは限りません。これは営業領域でよく陥りがちなことですが、状況確認や問題点を探る質問を立て続けに投げかけてしまうこと。たとえば、「課題は何ですか?」「困っていることは何ですか?」「コールセンターの席数は何席ありますか?」「どんなツールを導入されていますか?」といった質問です。もちろん、これらの質問は営業提案において重要です。しかし、関係性が築けていない ≒ 信頼を獲得できていない状態で問いかけても、本質的な情報を引き出すのは難しくなります。そこで大事になることは当たり前ですが、仮説を前提にしつつ、以下のようなサイクルを作り出すことです。
- 事前にWeb上や業界の有識者から聞いて情報を収集。カスタマーサポートに対する仮説は深く持っておく
- その仮説や知識を前提にお客様と会話し、信頼関係を構築し深い一次情報を引き出す
- いただいた深い一次情報をベースにさらに深い提案を実施する
事前準備のHowや仮説の持ち方については本日は割愛しますが、お客様から出る深い一次情報は宝です。この宝をいかに引き出し、そして提案に活かすことができるのか?が鍵です。
例えば、弊社に「RightConnect by KARTE」 というサービスがあります。このプロダクトは「Webサイトと電話の分断をなくし、問い合わせ体験を刷新する」ことをコンセプトにしていて、その機能の一つに、顧客の困りごとに応じて最適なオペレーターとマッチングする 仕組みがあります。これを伝える際に、「Web上で顧客の困りごとを把握し、最適なオペレーターにマッチングできます!」と説明するよりも、
「御社ではコールセンターに250人のオペレーターがいる中で、商品相談ができるのは5人だけと伺っています。そのため、問い合わせを適切に振り分けることで、この5名のリソースを最大限活用できる環境を実現できます。」と具体的な状況に即して伝えた方が、圧倒的に納得感が高まります。このように、深い一次情報はセールスにおいて大きなレバレッジを生み出します。
事例はレバレッジの効く情報ソース
とはいえ、深い一次情報を引き出すために仮説をぶつけていくには、相応の知識と理解が求められます。しかし、その知識を一気に身につけるのは簡単なことではありません。
そこで、一次情報を引き出すための土台として、最もレバレッジが効く情報源が「顧客事例」だと私は考えています。やや飛躍して聞こえるかもしれませんが、若手が知識を身につける上で、最も有効なのは顧客事例である、と言い切ってもいいくらいです。
事例はお客様から「情報」と「欲望」を引き出す
事例の効果と重要性について、一歩踏み込んだ解釈を進めるのであれば、以下が根源にあると私は考えています。(深入りしすぎると際限がなく難しいため、ここでは軽く触れるだけにします。定義解釈については私見をベースにしています。)
### ルネ・ジラールが唱えた「欲望の模倣」の理論
フランスの批評家ルネ・ジラールの「欲望の模倣」について、近年、ピーター・ティールも再考していましたが、簡単にいうと、人間の欲望が自発的なものではなく、他者の欲望を模倣する形で生まれることを示しています。ジラールは、私たちが「自分が何を欲しているのか」を決める際、他者の行動や選択を見てそれを真似することが多いと考えました。他の人がある商品やサービスを欲しがるのを見て、それを自分も欲しいと思うようになる現象などもその一例です。
下図は有名な「欲望の三角形」の図解ですが、例えば以下のように当てはめて考えてみるとわかりやすいかもしれません。
- 他者(モデル): 顧客事例で成功を収めた企業。
- 対象(成功した商品やサービス): 他社が導入したプロダクトやソリューション。
- 自分(模倣者): 他社の成功を見て、自社も同様の結果を得たいと考える企業。
この関係性では、他社が商品やサービスに対する欲望を示すことで、自社もそれを欲しがるようになり、同様のソリューションを導入しようとします。つまり、他社の成功が「欲望のトリガー」となり、自社が同じ成功を目指して模倣するというプロセスが生じます。
顧客事例は、まさに「模倣のきっかけ」を生み出すものです。他社の成功事例を見ることで、企業は「自社でも同じように成功したい」「自分たちも一歩踏み出してみよう」といった興味や欲望を抱くようになります。
事例を活用することで、顧客の内に眠る欲望や潜在ニーズを引き出し、そこからさらに踏み込んだ一次情報の取得や提案へとつなげていくことが可能になります。
※出典:http://rinnsyou.com/archives/1345
過去に顧客事例についてまとめたnoteもあるのでこちらもぜひご一読ください。
https://note.com/hajimemasite/n/n52fdc8b0edcf?sub_rt=share_pb
時には仲間の力を借りる
もちろん、商談が難航する場面は多くあります。
そのようなときには、一人で抱え込まず、仲間に頼ることの大切さを実感しています。
最終的に商談が良い方向に進むことが最優先だと考えているため、自分自身がオーナーシップを持ちつつ、例えば、必要に応じて代表の野村をうまく巻き込むことも視野に入れています。
代表の野村がよく口にする言葉に「スピルバーグせよ」というものがあります。
これは、自分自身が監督となって演出を考え、必要に応じて他の“役者”=関係者も巻き込みながら、顧客の信頼を勝ち取るべきだという教えです。
前述の通り、同じ内容を伝える場合でも、誰が・どの立場で・どんな言葉で語るかによって、伝わり方は大きく変わります。
営業も映画と同様に、顧客ごとにストーリーと演出が求められると感じており、時には代表という“配役”を活用することで、「誰が言ったか」という壁を乗り越えることも重要だと考えています。
前職ベンチャーでは「スピルバーグせよ」という言葉があった。自分が監督として演出を考え、自分以外の役者も使って、顧客からの信頼を勝ち取れという教え。同じことを伝えるでも、配役やその人から発せられる言葉で伝わるものが変わる。映画と同様に営業も顧客毎にストーリーと演出が重要だという話。
おわりに
少し偉そうに聞こえてしまったかもしれませんが、正直なところ、私自身も、そして弊社も、ソリューションの浸透に向けてはまだ道半ばです。
それでも、その道を一歩でも前に進めるためには、お客様から深い一次情報を引き出すことが何より重要だと信じています。これこそが、道を切り開くための最初の一歩だと確信しています。
今日はその入り口となるテーマだけをお話ししましたが、クロージングや商談の進め方など、その他の要素についてもぜひ色々とお話しできればと思っています。ご興味あれば、ぜひお気軽にお声かけください!
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