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第一回:さくら事務所のサービスが注目されるまで起業から約3年。軌道に乗った意外なきっかけは?

さくら事務所の20年を振り返り、創業者であり取締役会長の長嶋修と、
取締役社長の大西倫加による対談を連載でお届けします。
第一回は長嶋がさくら事務所を立ち上げた頃のきっかけ、売上が芳しくない中でターニングポイントとなった出来事は?
ホームインスペクション(住宅診断)の原型となったサービスは?
そして現社長の大西倫加との出会いとさくら事務所にジョインするまでのお話です。

Q.さくら事務所の名前の由来は?

長嶋:
自分の子供の名前です。桜子っていうんですけど、子供の名前をつけておけば、万が一血迷ったときに変な判断をしない。あとは日本っぽい名前がよかったのもありました。

大西:
そもそもお嬢さまのお名前に「桜」を使ったのは?

長嶋:
日本独特のものがよいなと思ってて、桜が好きだから。毎年、桜の季節になると幸せな感じがするじゃない。あの感じを365日やりたいな…と。社名としては「さくら事務所」って何も言ってないでしょう。不動産コンサルとも言っていないし、インスペクションとも言ってない。それ自体にあまり意味がない社名がいいと思っていた。

大西:
社名がやっている業態を想起させると、それにイメージが引っ張られてしまうという…

長嶋:
そうそう。「さくら事務所」という何も言っていない曖昧な名前にしておいて、これから色をつけていくという意図もあったかな。

大西:
おかげでいろんな業態の同じ社名があって結構大変ですよね 笑
会社所在地が「桜丘」だから「さくら事務所ですか」と、新しく知り合った方々からはよく言われるんです。

長嶋:
それはまったくの偶然だよね。

大西:
偶然じゃないんですよ。渋谷で事務所を探すなら「桜丘」を第一候補として探したんです。

長嶋:
そうだっけ? 笑

Q.長嶋さんが会社を作ろうと思ったきっかけは?

長嶋:
そもそも会社を作る気も独立する気もなかった。3000人くらいの大きい不動産会社にいて、今さくら事務所でやっているような事業を「社内ベンチャーでやらせてください」とプレゼンにいったものの断られてしまったのがきっかけです。それで「じゃあもう辞めます」と準備しないまま独立。それが31歳の時。さくら事務所は、埼玉県越谷市の自宅の3畳間でスタートしました。

大西:
そもそも事業のプレゼンをしたのは、どんないきさつだったんですか。

長嶋:
広告業界から26歳で不動産業界の営業マンとして転職して、半年くらいでトップセールスか二番手か…それくらい。そのうち大きい店舗の店長や新規事業の立ち上げなどに抜擢された。その後5年間くらいものすごい働いて、ほとんど寝ないで働いていたような記憶。でもそれは難行苦行をやっているつもりは全くなくて…

大西:
好きで楽しくて夢中でやっていたんですよね。

長嶋:
うん。それで一通りやりきった感があって、海外の不動産市場の勉強をし始めたんだよね。それで日米・日欧の不動産市場の違いを知り、日本にはまだ改善の余地はたくさんあるんだと。その大枠をやりたくなったというところです。

大西:
社内プレゼンが通っていたら、独立していなかったんですか。

長嶋:
仕事のやり方とか仕事の定義そのものにも、既存の組織では限界を感じていたかな。「仕事する」っていうと大変なことをして、その対価とか、仕事の拘束時間とか…そういう厳しい、苦しい方に定義を持っていかない方がいいと思ってね。自分が「やりたいから、面白いから、世の中の役に立って、目の前の人の役に立ってありがとうと言われて自分もうれしい」みたいな…そういう循環を作りたかった。既存の組織ではできないな、という気持ちもあったかもね。

大西:
どうして既存の組織ではそれができないんだろう。私はもともとさくら事務所に入る前はサラリーマンとして何社か働いていたんですけど、仕事はどこでもすごく楽しかった。やりたいことを好きにやっていたし、やりたいことをやるために成果に結びつけていました。それは環境によって叶う叶わないなのか、働き方によってなのかどちらなんでしょうね。

長嶋:
もちろん自分も広告業界の時も不動産業界の時も、ほぼやりたいようにやってるんだけど、自分がやりたいようにやっているだけで組織全体が自分色に染まるわけじゃない。自分の考え方、やり方は面白いと思う。それを広げようとするなら新しいフィールドを作るのが効率がいいかな、というそういう考え方ですね。


Q.起業当初に売上が上がるまでご苦労されたとおうかがいしています。軌道に乗ったきっかけを教えてください

長嶋:
ある程度の貯金を持った上で起業したのですが、一年目の売上が70万円。二年目が120万円。三年目になると手持ちの資金も底をついてしまって。不動産の情報発信を日記風にしながらノウハウ的なことを毎日書いていました。

大西:
なつかしい。その頃はブログという仕組みもなく、HTMLで書き込んでたんですよね。

長嶋:
そう。当時は無名の個人が情報発信するにはインターネットしかなく、そこで勝負するしかなかったんですけど、言いたいことを自由に綴れるメリットはありましたね。それを見たテレビ系の人が連絡してくれたんですね。それが「マンション獲得大戦争」みたいなドキュメントを作りたいという企画のお話。そこでお助けマンとして僕が登場する番組として、放映されました。そのオンエアを見ながら、すぐに電話が鳴って鳴りやまない状況が続いたんです。そこから紹介も増えて盛り上がって…

大西:
スケジュールがあっという間に埋まってしまった。

長嶋:
それで認知度も上がり、ネット内でも評判もある程度できて、そこがターニングポイントでしたね。そのテレビを見た大手出版社の方から「本を出しませんか?」という話になり、その本も結構売れて…という風に世の中にだんだん認知されるようになったのがきっかけです。起業してから2年10カ月くらいかかりました。あのテレビがなかったら、たぶん今のさくら事務所はないと思います。

Q.インスペクション事業を始めたのはいつ頃、どんなきっかけでしたか?

長嶋:
最初は広義のインスペクションでしたね。欧米ではインスペクションが浸透していたのはわかっていたんだけど、日本でいきなりそれをやっても受け入れられないので、もっとやわらかくして5万円頂いて「物件同行」という一緒に物件を見に行って、その後喫茶店とか事務所で「あの物件はあなたの要望にこれだけ答えてくれます」「ここはこういう状況です」「リスクはこういうところです」みたいなことを説明して、第三者としてセカンドオピニオンとしてやりますよ。とそういうスタートだったんだよね。

大西:
それが今のインスペクションの原型へと発展したんですよね。

長嶋:
そのうち建物に詳しい人と知り合って、二人で話し合ってるうちに、じゃあ今のインスペクションの原型。建物を一通りチェックします、その人にとってこの物件はどういうものかアドバイスします、と試験的に始めた。それがうまくいって…というのがきっかけですね。

Q.長嶋さんと大西さんの出会いのエピソードを教えてください

長嶋:
インスペクション事業が軌道に乗ってくると、内輪だけで喜んでいてもしょうがないので、自分の会社だけてなく今度は日本に市場を作るという観点でどうするかって考えると、やっぱりどうやってPRするかっていうのが大事になってくるんだよね。もちろん事業がきちんとして世の中の役に立っている前提なんだけど、それをどういう風に見せるかとか、どういうターゲットにどう伝えるかみたいなことが大事だと思って、まずPR会社に問い合わせした。その担当が大西さんだったんです。大西さんは世の中にとってどうでもいい商品とか、人や社会を喜ばせてないような人はあまりPRしたくないという話をしてくれて、そういったマインドを持ってるならすごくいいなあ、と思いましたね。

大西:
私が会社に所属していた時はクライアントとして、さくら事務所のPRの仕事をしてました。当時いろんな会社のいろんな商材、さまざまな経営者の方、いわゆる本を出している人などのPRも引き受けてて、忙しく仕事をしていたんですけど、PRってパブリックリレーションって言う通り、その社会、そのサービス、その会社、その理念など、経営者の考え方と社会をよりよく関係構築させるには、どんな関係があれば世の中により幸せなインパクトをもたらせるのかと、日々考え抜きながらPRに取り組んでいたんです。扱わせていただくもの、世の中をこういう風によりよくしていきたいとか、仕事を通じてこんなグッドインパクトをもたらしたいとか、そういう想いが強く、そういう行動を起こしている人のPRはやっているこちら側もどんどん楽しくなるし、喜びややりがいにもつながります。

長嶋:
最初は月に一回の打合せだったかな。

大西:
はい。月に一回の打合せで「次はどういうストーリーでどんなリリースを打ったり、何を重点的にPRしていくか」とお話してる時、長嶋さんは「不動産の業界、建築の業界がこんな風になっていったら、日本の人と不動産の関係がもっと幸せになるのに」「歴史やいきさつ上ここが課題。自分だったらこういう風に変えていく」とか、毎回すごく熱い想いを聞かせてくれてそれがぶれない。だから私もそれを世の中に届けていけることに誇りや当事者意識を持つようになったんです。会社としての話だけじゃなく、一個人としてどういう生き方をしていくのがいいかという美学とか哲学を語り合う時間も増えて、クライアントとはいっても親しく幅広い話題で盛り上がってたかな。

長嶋:
二人ともそもそも論が好きなんだよね。「そもそも何でこの仕事やってるの?」とか、目の前のタスクに追われてるとかには「そもそも必要あるのか」とか、この先に何があるのかみたいなね。

大西:
長嶋さんとあれこれ語り合っていく中で信頼してもらい、楽しく仕事してたんですが、ちょっと体調を崩して私が会社を退職した後に…

長嶋:
「休んだ後、身体が治ったら、さくら事務所に来てうちのPRをしませんか?」と大西さんにお願いしました。


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長嶋 修

1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、
不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。
“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”
第一人者としての地位を築く。
国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。
2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。
『100年マンション 資産になる住まいの育て方』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

大西 倫加

広告・マーケティング会社などを経て、2004年さくら事務所参画。
同社で 広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。
2011年取締役に就任し、 経営企画を担当。
2013年1月に代表取締役就任。
2008年にはNPO法人 日本ホームインスペクターズ協会の設立から携わり、同協会理事に就任。
2019年らくだ不動産設立。

不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティング、書籍企画・ライティングなども行っており、 執筆協力・出版や講演多数。

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