Hotel Mei 支配人が語る、"一点もの"を支えるサービスのつくりかた
7gardenは、東京と福岡を中心に複数のホテルを展開しています。
どの施設もデザインもコンセプトもバラバラで、私たちはそれを「一点もの」と呼んでいます。
ではその「一点もの」を束ねる、7gardenとしてのサービスとはどういうものなのか。
今回は、Hotel Mei Fukuoka Tenjinの支配人・山口に、私たちがこの1年以上かけて取り組んできた「サービスポリシー」と「サービスストーリー」づくりの話を綴ってもらいました。ホテル運営部の現場で、私たちが日々何を考え、どうチームをつくろうとしているのか。その裏側を、率直にお届けします。
▍うちのホテルは、一点もの。
こんにちは。Hotel Mei Fukuoka Tenjinで支配人をしている山口です。
私たち7gardenのホテルは、どれ一つとして同じ顔をしていません。ひとつひとつが、それぞれのデザインと、それぞれの土地の文脈を持っている。量産しない、というのが会社としてのこだわりです。
当然、訪れてくださるお客様も、期待されている体験も、ホテルごとに違います。
つまり私たちは、「同じ正解」を繰り返せないホテルを運営しているということになります。
そんな中で、現場に立ちながらずっと考えていた問いがありました。
──では、7gardenとしてのサービスとは、いったい何なのだろうか。
デザインも立地も客層も違う。それでも、どの施設に行っても「7gardenらしい」と感じてもらえるものがあるとしたら、それは建物ではなく、サービスの在り方のはずだと思っています。
サービスポリシーは、マニュアルではありません。接客フレーズ集でも、オペレーション手順書でもない。
それはホテルにとっての「背骨」のようなものだと、私は思っています。
判断に迷ったときに立ち返れる軸。正解がひとつではない現場で、スタッフ一人ひとりが自分の言葉で動けるための基準。
一点もののホテルだからこそ、共通の"形"ではなく、共通の"思想"が必要になる。その答えを、私たちはずっと探してきました。
▍なぜ、サービスポリシーを作ったのか
- 最初は、必要だと思っていなかった
正直に言うと、最初から必要だと思っていたわけではありませんでした。
それぞれのホテルが、それぞれのやり方でサービスをしていたからです。築地、神楽坂、目黒不動前、福岡──建物も、スタッフの顔ぶれも、お客様も違う。ならばサービスのやり方にも違いがあって当然、というのが最初の感覚でした。
実際それは悪いことではなく、画一的ではない現場の判断を尊重する文化は、むしろ7gardenらしさでもあったと思います。
- でも、あるときに壁にぶつかりました
お客様の満足度を本気で上げたい、と考えたときに、ひとつの壁にぶつかったのです。
- 軸がないと、積み上がらない。
スタッフ一人ひとりは、目の前のお客様に真剣に向き合っています。誰も手を抜いていない。
けれど「何を大切にすべきか」が言葉になっていないと、判断は結局、個人の感覚に委ねられることになります。
同じ「お客様に寄り添う」という言葉でも、あるスタッフはフレンドリーで親しみやすい距離感を思い浮かべるかもしれないし、別のスタッフは毅然とした丁寧さこそ誠意だと考えるかもしれません。どちらも間違いではない。でも、チームとしては一貫性が持てなくなります。
結果、同じHotel Meiに泊まっていただいても、スタッフによって、あるいは日によって、体験が少しずつ違ってしまう。二度目に来てくださったお客様が、前回と同じ良さをまた感じられるとは限らない。
誰も手を抜いていないのに、全員が真剣だからこそ、方向が少しずつズレていく。このズレは、目には見えづらいのです。売上にもすぐには出ない。でも、リピートしてくださる方の数や、スタッフ自身の「今日は良いサービスができた」という手応えのところで、確実に差が出てくる。
そこで私たちが怖いと感じたのは、「良いときと悪いときのブレ幅」でした。
ラグジュアリーホテルのような完璧なオペレーションを目指しているわけではありません。でも、どのスタッフが対応しても、どの日に泊まっても、7gardenらしい体験が届けられる。そのベースラインだけは、確かなものにしたいと思うようになりました。
- 「一点もの」と「基準がないこと」は別の話でした
そのとき、私たちが気づいたことがあります。
ホテルごとの個性は、これからも大切にしたい。デザインも立地もコンセプトも、違っていていい。
でも、チームとして共有する「判断の基準」は、やはり必要だった。この区別に気づけたことが、サービスポリシー作成の出発点になりました。
- ルールブックは、作りたくなかった
ただし、作りたかったのはルールブックではありませんでした。「こうしてはいけない」「この場面ではこう言う」と縛っていくものではなく、もっと手前の、「なぜ私たちはこのサービスをするのか」を共有するためのもの。
ホテルの現場では、目の前のお客様に起きる出来事は一つとして同じものがありません。突然の雨、記念日のはずなのに少し気まずそうなご夫婦、身振り手振りで何かを伝えようとされる海外のお客様。事前に正解を書き残しておくことは、そもそも不可能だと思っています。
仮に書けたとしても、マニュアルをなぞるだけのサービスは、たぶんお客様の心には届かない。
だから私たちが作りたかったのは、判断の"理由"そのものを共有するためのものでした。
正解を固定するためではなく、現場で自分の頭で考え、同じ方向を向いて判断できるようにするための思想。
サービスポリシーとは、行動を制限するものではなく、自由に動くための共通言語なのだと、私たちは定義しました。
- 対象者は、ゲストではなくスタッフです
この取り組みを主導してきたホテル運営部GMは、社内でこんなふうに話していました。
「 サービスポリシーとサービスウェイは、全拠点共通のもの。7gardenが運営するホテルとして働くうえでの共通言語です。一方でサービスストーリーは、拠点ごとに異なって然るべきものとして設定しています」
「対象者は、ゲストではなくスタッフです。働くスタッフとして、どんな心持ちでお客様に接するか、何をサービスとして提供するか。それを共通言語化したところがサービスポリシーなんです」
ゲストに見せるための美しい言葉ではなく、スタッフ自身が日々立ち返るための、内側の言葉。
似ているようで、実はまったく違うことだと思っています。
お客様に見せる言葉は、どうしても「良く見せる」方向へ引っ張られます。でもスタッフ自身のための言葉は、嘘をついても意味がない。自分たちが自分たちに向けて本当に言い切れるものでなければ、現場で力を持たないからです。
だから私たちは、社外に発信するキャッチコピーを作ったのではなく、社内で毎日使える"道具"としてサービスポリシーを作りました。
- ホテル運営に、本気で向き合うために
7gardenは、ホテルを作って終わり、の会社ではありません。
企画から集客、日々の運営までを、自分たちの手で一気通貫でやっています。だからこそ、サービスの質は、事業そのものの質に直結します。
美しい建物を建てることはできる。話題性のあるデザインを仕込むこともできる。でも、その建物の中でお客様が過ごす時間を決めるのは、最終的には現場に立つ一人ひとりのスタッフの判断です。
建物がホテルを作って、サービスがホテルを育てていく。そんなふうに思っています。
だから私たちは、「サービスポリシー」という、一見すると手触りがなく、効果も測りにくいものに、あえて正面から時間とエネルギーを投資することを決めました。新しい施設をひとつ作るのと同じくらい、あるいはそれ以上に大事な仕事なのです。
▍現場の声から、言葉を積み上げていく
サービスポリシーを作るにあたって、私たちは決めたことがひとつあります。
現場を外さない。 むしろ現場こそを真ん中に置く、ということです。
全拠点の主要スタッフが、東京に集まりました。普段は東京と福岡それぞれの現場で日々お客様の前に立っているメンバーです。私もそのうちの一人として参加しました。
オンラインでは日頃からやり取りしているものの、顔を合わせるのは初めてというメンバーも多かった。ワークショップ形式で、膝を突き合わせながら、
- 7gardenのホテルとして、どうありたいか
- お客様は私たちに何を求めているのか
- 他のホテルではなく、私たちのホテルに泊まってくださる理由は何なのか
というところから、率直に意見を交わしました。
初対面のメンバーが多いからこその遠慮のなさもあって、議論は想像以上に深く、熱量の高い時間になりました。
7gardenのスタッフは、本当にバックグラウンドがバラバラです。飲食出身、アパレル出身、海外経験のある人、他のホテル業界から来た人。それぞれが違うサービス文化を持って集まってきているので、出てくる言葉にも幅があって、自分では思いつかなかった視点がたくさん出てきました。
集まった意見を持ち帰ったあとは、コアメンバーで磨き込む作業に入ります。現場メンバーと本社メンバーが一緒になって、何度も議論を重ねていきました。
上から与えられたものではなく、みんなで積み上げていく。
これがこのサービスポリシーの、たぶん一番の特徴なのだと思っています。
完成までには時間がかかりました。でもその時間は、決して遠回りではなかった。議論を重ねる過程そのものが、チームとしての共通認識を育てる時間になっていたと感じています。
▍たどり着いた言葉 ― 7gardenのサービスポリシー
そうしたプロセスを経て、私たちがたどり着いた言葉が、こちらです。
▍一点もののホテルに、一点もののストーリーを
サービスポリシーができたあと、次の課題が見えてきました。
会社としての共通ポリシーはできた。でも、私たちのホテルは一つとして同じものがありません。コンセプトも、立地も、お客様の目的も、全部違う。共通のポリシーをそのまま全施設に当てはめるだけでは、本当の意味でパーソナルなサービスにはならないのではないか、と思ったんです。
そこで生まれたのが、「サービスストーリー」という考え方です。
「サービスポリシーとサービスウェイだけを見せても、拠点として具体的に何をしたいのかは、人によって解釈や想像にムラが出てしまう。ストーリーを明確にして、"ここをゴール状態としてやっていくんだ"という共通認識を持つこと。それが必要である」と。
GMの橋本は飲食業界で長く店長としてチームを率いてきた経験があり、
「店長として店舗ごとのチームビルドをしてきた中で、"物語(ストーリー)として共有する"ことが、すごく財産になると感じてきた。だからサービスも、ストーリーとして運用していきたい」と話していました。
サービスポリシーを背骨としながら、各ホテルごとに「このホテルに来るお客様にとって、理想の滞在体験とは何か」をひとつのストーリーとして描いていく。それは単なるコンセプト資料ではなく、現場が日々の判断に迷ったときに立ち返れる指針でもあります。
表現方法はホテルごとに違っていい。文章として言語化する施設もあれば、絵本のように描くホテルも、いずれは動画で世界観を共有することも考えています。
共通しているのは、「現場のスタッフ自身が作る」ということ。
上から降りてくるストーリーではなく、自分たちの手で言葉にして、自分たちの経験で磨いていく。そうすることで、そのストーリーは単なる資料ではなく、「自分たちのもの」になります。
▍Meiのサービスストーリーは、こうやって生まれました
Hotel Meiのサービスストーリーを作るときは、Meiのチームメンバーと一緒に取り組みました。
Meiのメンバーは、誰もがこのホテルに強い思い入れを持っています。その分、それぞれの中に「理想のMei」の姿がありました。だから最初にやったのは、意見をまとめることではなく、まず一人ひとりが自分の言葉で書いてみるということでした。
- Meiというホテルで、どんなサービスをしたいのか
- お客様に、どんな気持ちで滞在を終えてほしいのか
それぞれが思い描くストーリーを、自分の視点で文章にしてもらって、そこから全員で読み合って、対話を重ねながら、ひとつの形に統合していきました。
このプロセスで印象に残ったのは、メンバーそれぞれが見ている景色の違いでした。
着目する場面も、大切にしたい瞬間も、選ぶ言葉も、驚くほど多様で。同じホテルで働いていても、サービスの捉え方はこんなにも違うんだな、と気づかされました。
でも同時に、もうひとつ発見があったんです。
「Meiでどんなサービスを届けたいか」という、いちばん芯の部分だけは、不思議なくらい一致していた。
豪華さや派手さではなく、タビマエからタビアトまで、一人ひとりの旅に静かに寄り添い続けること。胸の奥がじんわりと温かくなるような、小さな感動を丁寧に積み重ねていきたい。言葉の選び方は違っても、みんなが同じ方向を向いていました。
その共通する価値観こそが、Meiのサービスストーリーの核になっています。
異なる視点が交わり、重なり合ったからこそ、一人ではたどり着けなかった奥行きが生まれた。チームで作ったからこそ、Meiらしいストーリーになったのだと感じています。
(完成したストーリー本編は、スタッフが日々立ち返るための社内資料として運用しています。いつか読みものや動画として、もう少し開いた形で共有できるようにしたいと思っています。)
▍日々の中に、サービスを溶かし込む
ストーリーが出来上がっても、現場に根づかなければ意味がありません。
私が意識しているのは、特別な施策を増やすことではなくて、日々の業務の中に自然とサービスが溶け込んでいる状態をつくることです。
チェックインのときのほんの一言を、少し変えてみる。スタッフ自身が近隣のお店に実際に足を運んで、顔なじみになっておく。街のことを自分の言葉で語れるようになると、Meiの滞在体験はホテルの中だけに留まらず、街のほうへも広がっていきます。
旅が終わったあとに手書きの手紙をお送りすることもあります。滞在中のお部屋にそっとメッセージを添えることもある。お客様の目的に合わせてお部屋のデコレーションを準備することも。
誕生日、記念日、プロポーズ。お祝いのかたちは一つとして同じものがないので、その瞬間ごとに「どうすればこのお客様に一番喜んでいただけるか」を、スタッフそれぞれが考えて工夫しています。
どれも大きなことではないかもしれません。でも、そういう小さな積み重ねこそが、「またここに泊まりたい」という気持ちを生んでいくのだと信じています。
サービスは、マニュアルに書けることだけでは完結しない。スタッフ一人ひとりが自分で考えて、判断して、行動できる余白があってこそ、本当にパーソナルな体験が生まれるのだと思っています。
▍Meiで、一緒にやりませんか
最後に、このnoteを読んでくださっている方へ。
もしHotel Meiや7gardenで働くことを少しでも考えてくださっている方がいたら、お伝えしたいことがあります。
ここは、自分で考えて動くことを歓迎する場所です。
「こうしたらもっと良くなるんじゃないか」── そういう小さな気づきや想いを、そのままサービスとして形にできる余白があります。マニュアルをただ守るのではなく、お客様の背景を想像しながら、自分なりのサービスを作っていく。その積み重ねが、ホテルの個性になり、チームの文化になっていきます。
サービスポリシーも、サービスストーリーも、上から降りてきたものではありません。現場のスタッフ一人ひとりが考えて、議論して、時間をかけて一緒に積み上げてきたものです。だからこそ、これから加わってくださる方にも、「自分もこのホテルをつくっている」と感じてもらえるチームでありたいと思っています。
一点ものの空間で、一点ものの体験を届ける。
その面白さと難しさ、そしてやりがいを、ぜひ一緒に味わってみませんか。
🏨 Hotel Mei Fukuoka Tenjin について
天神、中洲、キャナルシティ、博多の主要観光地からほど近く、街の喧騒から少し離れた落ち着いた雰囲気が漂う場所にHotel Meiはあります。博多観光の宿泊拠点の機能はもちろん、居心地の良さを追求した客室空間、独自のフードカルチャーが味わえるカフェラウンジ、地域の人たちと共に創り出すローカルコラボレーションなど、このホテルを訪れる人すべてに心地よい体験を提供するライフスタイルホテルです。
公式サイト: https://mei.seven-garden.com/
Instagram: https://www.instagram.com/hotel_mei/
🙌 採用情報
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オンラインでのカジュアル面談も行なっておりますので、お気軽にご連絡ください。