目次
なぜ今、海外事例に目を向けるのか?
フィンランド:施設を“住まい化”するという発想
北欧諸国と日本の方向性の共通点
他の北欧諸国と異なるフィンランド
スウェーデン:自立支援とテクノロジーの融合
住み慣れた地域での生活を支える在宅ケアの思想
スウェーデンの見守りサービスの特徴と事例
日本の見守りサービスとの比較
家賃保証 × 見守りサービス:QOLを支える仕組みとしての可能性
ノルウェー:地域主導のケアと福祉技術の融合
ノルウェーの事例から見える、日本への示唆
制度と文化の違いが生む“住みたい”のかたち
ミライへの問いかけ
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なぜ今、海外事例に目を向けるのか?
日本では、高齢者が賃貸住宅に入居する際、年齢や収入、健康状態などを理由に審査で断られるケースが少なくありません。
しかし、住まいは人生の基盤であり、尊厳そのものです。
この課題に向き合うために、私たちは新たな保証サービス事業の立ち上げを準備しています。
そして今、視野を広げて世界の事例に目を向けることで、より誠実で持続可能な仕組みづくりのヒントを探ろうとしています。
フィンランド:施設を“住まい化”するという発想
フィンランドでは、介護施設を減らし、住まいの中でサービスを提供する方向へと政策がシフトしています。
24時間サポート付き高齢者住宅が急増し、施設ではなく「自宅の延長」としての住環境が整備されているのです。
この背景には、「誰もが平等に暮らせる社会を目指す」という北欧福祉の思想があります。
北欧諸国と日本の方向性の共通点
フィンランドの高齢者の住まいが目指している方向性は、日本とほとんど変わりません。基本的には在宅で暮らし続けられるようにして、日本でいう介護施設は減らしていくという方向性です。さらに高齢者住宅を整備して、施設を”住まい化”していくということも目指してきました。
他の北欧諸国においても、介護施設は廃止して、住まいの中でサービスを提供しながら住み続けられるような仕組みをつくっていくということを行っています。(引用:eh006.pdf)
他の北欧諸国と異なるフィンランド
フィンランドが他の北欧諸国と異なる点は、施設はまだ残していることです。施設は減らす方向性ですが、まだ制度として残しており、それを高齢者向け住宅「サービスハウス」への転換を進めています。
グラフ1のように 2000 年から 2015 年までの 15 年間で顕著な点は、24 時間サポート付き高齢者住宅が6倍になっていることです。当初の一般型高齢者住宅には、24 時間サポート体制などはついていませんでしたが、入居者の高齢化が進み、24 時間サポートが必要になっていくことから、 24 時間サポート体制のついた高齢者住宅が増加しました。日本の療養型病床群にあたる、医療施設内の長期療養のための病床は徹底的に減らしています。方向性は極めて明快で、目標を定めながら黙々とどんどん進めています。グラフ1から構造の変化がはっきりわかります。(引用:eh006.pdf)
一方で、こうした住まい化の流れの中で、24時間のサポートが必要な高齢者が6倍に増加したという報告もあり、制度設計の難しさが浮き彫りになっています。
高齢者の幸福度が施設よりも住まい化された住宅で高い傾向があるという調査結果もあるものの、施設を減らすことが一律に最善とは限らないという視点も重要です。
政府が6月21日に閣議決定した2024年版「高齢社会白書」によると、高齢者の幸福感と居住している住宅への満足度に強い相関関係があることが分かった。安心して高齢期の生活を送るためには、生活の基盤となる住まいの確保や、良好な生活環境の整備が重要だとしている。
住宅と満足度の関係をみてみると、住宅の満足度が高くなるほど、幸福感を「十分感じている」「多少感じている」と回答した割合が高かった。逆に、住宅への満足度について「あまり満足していない」「まったく満足していない」と答えた人は、幸福度を感じる割合が低いという結果になっている。(引用:24年版「高齢社会白書」 高齢者の幸福感、住宅満足度に相関 | 新建ハウジング)
日本でも、施設中心の発想からの脱却と、地域にある安心できる住宅で暮らし続けられる仕組みへの転換が模索されていますが、ケアニーズの増加にどう対応するかという課題は、制度設計の中核に据えるべきテーマです。
スウェーデン:自立支援とテクノロジーの融合
スウェーデンでは、重度の高齢者を優先しつつも、在宅ケアを重視する政策が進められています。
介護職の専門性が高く、個別ニーズに応じたオーダーメイドの支援が行われており、テクノロジーを活用した見守りサービスも普及しています。
住み慣れた地域での生活を支える在宅ケアの思想
スウェーデンでは、住み慣れた地域での生活を支える在宅ケアが重視されており、施設入居は「最終手段」とされています。
この考え方は、個人の尊厳を守るという福祉思想に根差しており、可能な限り自宅での生活を継続できるよう、自治体がケアを提供する仕組みが整っています。
一方で、こうした制度のもとでは、重度の高齢者を優先する方針が取られており、軽度の高齢者が十分なケアを受けられないという課題も指摘されています。
この点を日本に置き換えて考えると、在宅医療や在宅ケアのニーズが急増し、地域のクリニックや訪問看護が逼迫する可能性も否定できません。
また、スウェーデンでは「家族の最期を専門家に託す」という文化が根付いており、施設での看取りも一般的です。
この点については、日本人の価値観や家族観とは異なる部分もあり、すぐに同じような制度を導入するのは難しいかもしれません。
しかし、核家族化が進む日本では、家族だけで高齢者を支えることが困難になる未来がすでに見え始めています。
そう考えると、スウェーデンのような「地域で支える」「専門家に託す」仕組みは、自然と日本でも必要とされる方向性なのかもしれません。(参照:日本と海外の介護サービス比較:高齢者のQOL向上への道筋はどこに? | 日本高齢者QOL学会)
スウェーデンの見守りサービスの特徴と事例
スウェーデンでは、介護職の専門性が高く、個別ニーズに応じたオーダーメイドの支援が行われており、テクノロジーを活用した見守りサービスも普及しています。特に注目すべきは、以下のような事例です。
- 夜間見守りロボット
据え置き型の見守りロボットが自宅に設置され、異変を検知すると24時間対応のケアセンターと即座にビデオ通話が可能。不要な夜間巡回を減らし、高齢者のプライバシーと安心感を両立しています。 - 猫型コミュニケーションロボット「JustoCat」
認知症高齢者の精神的安定を目的に導入されており、撫でると喉を鳴らすなど、アニマルセラピーに近い効果を提供。孤独感の緩和に寄与しています。 - スマート・ピルケース
光と音で服薬を促し、服薬成功時には褒める機能も。服薬忘れ時には家族やケアセンターに通知が送られ、介護者の精神的負担を軽減します。
これらのサービスは、「監視」ではなく「必要な時だけ繋がる安心感」を提供する設計思想に基づいており、個人の尊厳と自立を重視するスウェーデンの介護哲学が反映されています。(参照:スウェーデンの介護ロボット活用事例から学ぶ – 介護×テクノロジー)
日本の見守りサービスとの比較
日本でも多様な見守りサービスが登場しており、以下のようなタイプに分類されます。
- 駆けつけ型(ALSOK、セコムなど)
緊急時に警備員が自宅に駆けつける。ペンダント型通報機などを使用。 - センサー型(ネコリコ「まもりこ」、クロネコ見守りサービスなど)
冷蔵庫や電球の使用状況を検知し、異常時に通知。プライバシーに配慮した設計。 - カメラ型(MANOMA、みまもりCUBEなど)
室内カメラで映像を確認。リアルタイムで状況把握が可能だが、プライバシーへの配慮が必要。 - 訪問型(ワタミの宅食、郵便局など)
配達時に安否確認を行う。人との接触を通じた見守り。 - コミュニケーション型(BOCCO emo、ユピ坊など)
音声通話やリマインド機能を備えたロボットで、孤独感の緩和にも効果。
日本のサービスは、緊急対応や生活リズムの把握に重点を置く傾向があり、プライバシーや費用面での選択肢も多様です。一方、スウェーデンでは「自立支援」や「精神的ケア」に重点が置かれ、テクノロジーが人間的なつながりを補完する役割を果たしています。(参照:高齢者見守りサービス15社を徹底比較【2025年おすすめ】)
家賃保証 × 見守りサービス:QOLを支える仕組みとしての可能性
スウェーデンの見守りサービスは、テクノロジーを「目的」ではなく「手段」として位置づけ、個別ケアの延長線上に設計されている点が秀逸です。
監視ではなく、必要なときだけつながる安心感を提供する設計思想は、個人の尊厳と自立を重視する介護哲学に根差しています。
このような取り組みは、日本の家賃保証サービスにも応用可能です。
たとえば、家賃保証に見守り機能を組み合わせることで、安心と安全を同時に提供するモデルが考えられます。
日本では今後、労働人口の減少により、介護福祉士やケアマネージャーの不足が深刻化することが予想されます。
さらに、核家族化の進行により、施設に入れない高齢者が地域医療や在宅ケアに依存する構造が強まり、地域の医療・介護資源がひっ迫する可能性も高まっています。
こうした状況の中で、家賃保証という「住まいの入口」に、テクノロジーによる見守り機能を付加することは、QOL(生活の質)を支える仕組みとして非常に有効です。
保証会社が単に「支払いを担保する存在」ではなく、安心して暮らせる環境を提供するパートナーとして機能することで、社会的な役割も大きく変わっていくでしょう。
最適なテクノロジーとの組み合わせを見つけることで、
「人手不足」と「家族の不在」という二重の課題を乗り越えながら、
高齢者が安心して“住みたい”と思える社会を、事業の力で支えていくことができるはずです。
制度の理想と現実、文化の違い、そして日本の未来。
私たちは、こうした視点を持ちながら、高齢者が安心して暮らせる住まいのかたちを探り続けていきたいと考えています。
ノルウェー:地域主導のケアと福祉技術の融合
ノルウェーでは、基礎自治体が中心となって高齢者ケアを提供する仕組みが確立されています。
その特徴は、できる限り高齢者が自宅で生活を続けられるよう支援する「在宅ケア」と、必要に応じて利用できる「施設ケア」の柔軟な併用です。
特に注目すべきは、福祉技術(ウェルフェアテクノロジー)の導入によって、ケアの質と効率が向上している点です。
リモートモニタリングやセンサー技術、介護ロボットなどが活用され、介護者の負担を軽減しながら、高齢者の自立支援を実現しています。
ノルウェーの福祉制度は、ユニバーサルアクセス(普遍的アクセス)と再分配を理念とし、所得に関係なくすべての高齢者が必要なケアを受けられる仕組みになっています。
また、社会的インクルージョン(包摂)や生活の質の向上にも重点が置かれており、高齢者が孤立せず、地域社会の一員として関わり続けることが奨励されています。(参照:ノルウェーの高齢者福祉制度について | 人工知能で遊びたい)
ノルウェーの事例から見える、日本への示唆
ノルウェーの取り組みは、北欧の中でも特に日本が参考にしやすく、価値観にも合いやすいモデルだと感じられます。
少子高齢化や労働人口の減少といった構造的な課題を日本と共有しながら、介護に携わる人々の負荷をテクノロジーで軽減する姿勢は、まさに今の日本が学ぶべき方向性です。
特に注目すべきは、施設ケアと在宅ケアをバランスよく組み合わせる柔軟性です。
スウェーデンのように「最期は施設で」という明確な線引きではなく、ノルウェーでは高齢者の状態や希望に応じて、常に両者を行き来できる仕組みが整えられています。
この点は、施設入所を希望しても入れず、結果として在宅ケアに頼らざるを得ない高齢者が増えている日本にとって、非常に示唆的です。
日本では、在宅ケアの提供体制が自治体によってばらつきがあり、公共がどのように責任を持って在宅ケアを支えるかという制度設計が、今後の大きな課題となるでしょう。
ノルウェーのように、自治体が主導してケアを提供し、福祉技術を積極的に導入することで、
「人手不足」と「家族の不在」という二重の課題を乗り越えながら、高齢者が地域社会の一員として安心して暮らせる環境を整えることが可能になります。
このような視点もまた、家賃保証サービスに応用できるはずです。
住まいの入口である保証サービスに、見守り機能や地域ケアとの連携を組み合わせることで、
高齢者のQOLを支える“暮らしのインフラ”としての役割を果たすことができるのではないでしょうか。
制度と文化の違いが生む“住みたい”のかたち
海外の事例を見て感じるのは、制度だけでなく、文化や価値観の違いが住まいのあり方に大きく影響しているということです。
- フィンランドでは「施設=住まい」
- スウェーデンでは「自立=尊厳」
- ノルウェーでは「地域=支え手」
これらの考え方は、日本の高齢者賃貸市場にも新しい視点をもたらしてくれます。
ミライへの問いかけ
これから日本は、さらに少子高齢化が進みます。
この課題は、個人の問題ではなく、社会全体で向き合うべきテーマです。
私たちは、次回以降のストーリーで、住宅セーフティネット法などの法改正の動向を注視しながら、
消費生活センターに寄せられる苦情など、入居者保護の観点からも誠実に発信していきたいと考えています。
また、次回は引き続き、北欧以外の海外事例にも目を向け、
アメリカやドイツなどの先進国における高齢者住宅政策や、文化的背景の違いから生まれる制度設計の工夫についても掘り下げていく予定です。
「高齢者が安心して暮らせる社会を、どうすれば実現できるのか?」
この問いに、私たちは事業という手段で向き合っていきます。