Designship2025 イベントレポート②/「3年間の実践知。インクルーシブデザインの広げ方」CULUMU大村が語る、体験から始める組織変革のアプローチ
※こちらの記事はCULUMU公式noteからの転載です(2025年11月12日掲載)
多様な当事者と新しい価値を作るデザインスタジオ「CULUMU」
私たちCULUMUは、多様な人々を「当事者」として巻き込み、共に新しい価値を創造するインクルーシブデザインスタジオです。企業の新規事業開発における共創の場のファシリテーションから、プロダクトの価値向上、アクセシビリティ改善、社会課題のリサーチまで、様々なプロジェクトで「共創」をデザインしています。
今回ご紹介するのは、そうした活動の中から生まれた「ユーザーの多様性から始めるインクルーシブデザインワークショップ」です。
「体験」しなければ価値は伝わらない。ワークショップ開発の背景
2022年8月の設立当初、私たちは「どうすればインクルーシブデザインの本当の価値を体験してもらえるだろうか?」という課題に直面していました。
当時、お客様からはこのような声が多く寄せられていました。
- 「インクルーシブデザインが重要なのは理解できるが、何から手をつければいいか分からない」
- 「専門知識が必要そうで、導入のハードルが高い」
- 「そもそも、話を聞けるような当事者の方が周りにいない」
- 「この価値を、どうすれば社内のメンバーに理解してもらえるだろうか」
これらの声を受け、私たちは「知識として学ぶだけでは、インクルーシブデザインの本質は伝わらない」と痛感しました。正解を教える研修ではなく、自分とは違う誰かの視点を「体験」することで、思いがけないアイデアが生まれる可能性に誰もが気づける、そんなワークショップが必要だと考えたのです。
高齢者や障害者、外国人の方々など、多様な人々の視点から課題を発見し、アイデアを創出する。そのために必要な「体験」を提供できるワークショップの開発が始まりました。
体験の核となる「インクルーシブペルソナカード」
その体験の中核を担うツールとして、私たちが3年前に開発したのが「インクルーシブペルソナカード」です。
インクルーシブペルソナカード
これは、私たちがこれまでのプロジェクトで出会ってきた、様々な背景を持つ方々の実話に基づいたペルソナをカード化したものです。
表面には、その人のパーソナリティや日常が描かれ、裏面には、その人が置かれている状況や関連する社会的な背景を知ることができるコラムを掲載。カードを見るだけで、多様な人々の人生に触れることができるようになっています。
例えば、生まれつき目が見えない高校生、日常的に車椅子を使う方、一人で子育てに奮闘するシングルマザー、新しい環境に馴染めずに悩む若者まで。皆さんの身近にいるかもしれない人々から、普段なかなか出会うことのない人々まで、多様な人々の暮らしや視点に触れるきっかけとなるカードです。
このカードと、ワークをスムーズに進めるためのツールを収めたキットを用いて、ワークショップの提供を開始しました。
3年間で進化した、2つの改善点
このワークショップは、メーカーの開発者や研究者、さらには大学生や高校生まで、幅広い方々に体験いただきました。そして、提供開始から3年間、私たちは参加者の皆さんと共に改善を繰り返し、サービスをより良いものへと進化させてきました。ここでは、その中でも大きな2つの改善点をご紹介します。
1. インクルーシブペルソナカードの拡張
参加者の方から「もっと幅広い人について知りたい」というリクエストを受け、ペルソナカードを継続的に追加してきました。
- 発達特性子どもペルソナカード
ある小学校の改築プロジェクトで、「発達特性を持つ子どもたちが、もっと学校に行きたくなるような場所にしたい」というご相談を受け、当事者である子どもたちへの調査をもとに作成しました。 - 職場で課題を抱えるペルソナカード
ある企業のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)担当者からのリクエストで作成。職場で様々な困難を抱える方々への調査を行い、カード化しました。このカードを使い、職場環境を改善するためのアイデア創出ワークショップを実施しました。
このように、様々なプロジェクトや参加者の声に応える形でカードを追加し続けた結果、当初45人だったペルソナは、現在107人にまで増えました。これは、私たち自身の視点も広がってきた証でもあります。
インクルーシブペルソナカードの拡張
2. 「リアルな場」への展開
ワークショップを体験した方々から、「実際の当事者に会ってみたい」「街に出て、リアルな課題を知りたい」という声が上がるようになりました。そこで、私たちは室内でのワークショップから一歩踏み出し、実際のフィールドでの取り組みも始めています。
- 美術館での取り組み 視覚障害のある方と一緒に美術館を訪れ、鑑賞の際に何に困り、どうすればもっと楽しめるかを共に探求しました。
- 商業施設での取り組み 車椅子ユーザーや視覚障害者の方とショッピングを共にし、クライアントの担当者も一緒に街へ出て、リアルな買い物体験の中から課題や改善のヒントを見つけ出しました。
カードを使ったワークショップから派生し、机上では得られない「生きた気づき」を得る機会へと発展しています。
リアルに飛び出しての実施
数字よりも誇りたい、一人ひとりの「変化」
この3年間で、ワークショップの利用者は1,000名を超え、満足度は97%、業務での活用度も87%と、非常に高い評価をいただいています。
しかし、私たちが本当に伝えたいのは、この数字の裏にある一人ひとりの「変化」です。
「インクルーシブデザインに感じていた距離感やハードルが、とても身近なものになりました」(大手化学品メーカー 開発担当者)
「幅広いペルソナ像を起点に発想することで、自分たちだけでは思いつかない面白いアイデアが生まれる体験ができました」(ITスタートアップ デザイナー)
まとめ:インクルーシブデザインは「参加する」ことで育っていく
これらの取り組みを通して、この3年間で私たちが気づいたこと。それは、インクルーシブデザインは、誰かが一方的に「教える」ものではなく、誰もが「参加する」ことで、共に育み、広げていくものだということです。
多様な方々とワークショップを重ねる中で、私たち自身もインクルーシブデザインへの理解を深めてきました。「一人のためのデザインが、結果的に多くの人を救うことがある」その可能性を、これからも皆さんと一緒に探求していきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
CULUMU 大村
CULUMUは、多様な人々・社会と共創する インクルーシブデザインをリードするデザインスタジオです。
高齢者や障がい者、外国人など、これからの社会において多様な人々の声を取り入れられる(モノづくりの上流プロセスから巻き込む) ユーザー中心のアプローチをモノづくりの当たり前にします。
CULUMUと一緒にできること サービス一覧
https://culumu.com/service
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