「大企業からスタートアップへ」。ほんの数年前まで”清水の舞台を飛び降りる”ことと同義だった選択肢は、インターネットが広く普及し、多くの有力スタートアップが勃興した今や一般的になりつつある。
皆めいめいに、成長環境や仕事の裁量、金銭的なインセンティブなどを求めてスタートアップの門を叩く。その数は年々増えているようだ。
スキマワークス株式会社の鈴木寿一も、その1人。某大手精密機械メーカーに勤めていた鈴木は、「1から社会に必要とされるビジネスをつくる」経験を求め、当時社員3人だったスキマワークスへ飛び込んだ。
しかし、入社後の1年間は前職とのギャップに苦しみ、『本当に何もできなかった』と話す。苦悩の日々から何を感じ、学び、そして乗り越えていったのか。
スタートアップの最前線で奮闘する鈴木に、”スタートアップのリアル”と、そこで掴んだ”手応え”を聞いた。
「ビジネスパーソンとして圧倒的な実力を身につける」ため、営業で有名な大企業へ
ーー新卒で大手精密機械メーカーに入社。営業として活躍されていたそうですが、当時はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
鈴木寿一(以下、鈴木):工場のラインで使用するセンサーを販売していました。
やっていたことはとてもシンプルで、顧客管理ツールに入っているお客様リストに対して架電を行い、アポイントを取り、訪問営業を行います。週2日は架電をし、残りの3日でお客様の現場を回るのが基本的なリズムですね。月間で約500-600件の架電、およそ100件程度の営業訪問をこなしていました。
ーー行動管理もかなり徹底されていると聞きました。
鈴木:そうですね。最終的な利益目標に対し、実現するために必要な売上、売上を実現するために必要な商談数や訪問数、架電数が細かく目標設定されているんです。
もちろん、各指標を達成すること自体も重要なのですが、これらを実現しようと行動しているうちに、自然と現場にどんどん出て、お客様の業務や設備のことが理解できるようになっていきます。
徹底的な「現場主義」で、まずは「質より量」をこなし、やがて「量を質に」転換する。このプロセスを、ある意味型にはめる形で身につけることができたのはとてもよかったです。今も大切にしている営業としての基本は、この頃に学びました。
作業着・作業靴で、とにかく現場を飛び回った
ーーしかし、その後入社から2年というタイミングでスキマワークスにジョインされています。転職を考えるきっかけや、入社の決め手となった出来事について教えてください。
鈴木:元々、入社する前から”3年”を1つの節目と考えていました。
というのも、『将来自分がやりたいと思ったことに挑戦するためにも、まずはビジネスパーソンとして圧倒的な実力を身につける必要がある』と漠然と考えていたんです。就職活動のときも、この視点で会社選びをしていました。
また、前述の通り僕は幸運にも心からすごいと思える会社で働くことができました。ただ、この会社がすごかったのは、経営、ビジネスモデル、文化・風土、その他さまざまな”しくみ”が優れていたから。営業利益率が高いのは、営業担当がすごいからではなく、しくみがすごいからではないか。そう気づいたときに、自然とこれを”つくる側”に回りたいと思うようになっていました。
この会社で身につけた基礎を活かして、事業と組織をつくっていきたい。そのためには、「自らの裁量で意思決定を下し、自らの手で実現することを、最前線でできる環境」に身を置く必要があると思いました。入社してちょうど2年が経とうというとき、タイミングよく大学からの友人である平林(現スキマワークス株式会社取締役)に声をかけてもらったことをきっかけに、チャレンジしようと決めました。
スタートアップのーーその空気を吸うだけで高く跳べると思っていた1年目
ーー当初のイメージと比べて、実際のスタートアップはどうでしたか?
鈴木:鼻息荒く参画したものの、現実は甘くありませんでした。
正直に申し上げると、前職で成果を挙げていたこともあり、『絶対に活躍できる』『すぐに成果をあげられる』と、根拠のない自信があったんです。ただ、結果は散々。1年目は全く何もできませんでした。
そもそも、立ち上げ期のスタートアップは何もかもが「ないない尽くし」です。
例えば、前職では顧客管理システムから営業リストをダウンロードすればいいだけでしたが、システムがないので、まずは情報を0から集めなければなりません。当たり前にあった綺麗な資料もなければ、決まった目標や指標管理のしくみもない。さらに細かい話でいえば、郵送で何かを送ろうとするとき、備品を自分で買って用意しなければなりません。
今でこそ当たり前のことですが、当時はあらゆる前提が異なることに、すごく戸惑いました。振り返ると、『自分は前職で成果を出していた』『自分流のやりかたで必ず成果を挙げられる』といった”驕り”があったんだと思います。よく「アンラーニングが重要」と言いますが、それ以前のスタンスに問題があったと反省しています。
その後、思考をリセットし、しくみを1からつくっていけるようになるまで1年くらいかかったと思います。そしてその間に、当時提供していたサービスが「売れない」ことを理由にクローズすることになりました。
「“自らの力で事業をつくる”はずが、”自らの力不足でサービスを終わらせてしまった”」ーーこれには強く責任を感じました。
ーーかなりのハードシングスですね…そこからどう立て直していったのでしょうか?
鈴木:正直、精神的にかなりきつかったですね…ただ、改めて他社の人の話を聞いてみたときに、これまでやってきたことが量・質ともにまだまだ改善できると感じたんです。
できることをやり切れていないーーこの事実を真摯に受け止めて、次のサービスではやれることを徹底的にやり切るしか、道はありませんでした。
また僕だけでなく、メンバー全員が少なからず同じような責任感を感じていたので、チームとして次のチャレンジに燃えていました。その後、ピボットを決めてから約半年の準備期間を経て、現在の主力事業であるスキマワークスをリリースすることになります。
人手不足の企業と単発で働きたいワーカーをつなぐマッチングプラットフォーム「スキマワークス」
ベクトルは自分ではなく、事業に向けよ
ーーその後、スキマワークスは月間アクティブユーザー4万人が利用するサービスへと成長していきます。”最前線で事業をつくる”というビジョンを着実に実現されていると思うのですが、はじめの1年と比較して、鈴木さん自身成長を感じるポイントはありますか?
鈴木:ぶっちゃけて言うと、『このスキル・能力が伸びた!』という実感はあまりありません(笑)。一番変わったのは事業に取り組む”姿勢”かなと思います。
先ほども申し上げた通り、ピボットのタイミングで他社の人の話を複数聞く機会がありました。そのときの動機として、事業開発の何がいけなかったのかを知りたかったというのが1番の理由ですが、心のどこかで『スタートアップという環境は、自分には合っていないのかもしれない』と、自分自身のキャリアにも少し悩んでいたんです。いや、”自信を失っていた”という方が正しいかもしれません。
ただ、このときに様々な方のお話を伺い、自分自身の不甲斐なさを実感したことで、逆に『いま目の前のことで全力を尽くせないうちは、何をやってもうまくいかないだろう』と開き直ることができました。『逃げるのではなく、無力と向き合って、目の前のことをすべてやりきろう』と。
この出来事を経て、事業への取り組み方が大きく変わりましたね。事業について考える時間が増え、自然と行動量も増えました。自分の力でなんとかしようとせず、人に助けを求められるようにもなりました。注意のベクトルが自分ではなく、事業に正しく向くようになっていったんですね。
どれもスタートアップで働くならできて当たり前のことだと思うのですが、はじめの1年は全くもってできていなかった。そう考えると、一度挫折を経験したことで、事業に向き合う姿勢を正せたことが、一番変わったところかな、と思います。
ーースキルというよりも、「人間的な成長」が大きかったと。
鈴木:もちろん、退路を断ったからといって急に万事がうまくいくわけではありません。
そもそも、事業の立ち上げというと聞こえは良いですが、実際の現場はトラブルのオンパレードです。『これ、どうする…?』と判断に迷う場面も多いのですが、それら1つ1つと逃げずに向き合い、自らの責任で決断をするという経験を積み重ねることが、成長につながった感覚はあります。”胸がぎゅっとなるような苦しい瞬間”を越えるほど、人はタフになるんじゃないでしょうか。
スタートアップの営業は「信頼関係」からすべてがはじまる
ーースキマワークスでのお仕事についても教えてください。主に法人顧客への営業や、カスタマーサクセスをご担当されていると伺っています。
鈴木:法人顧客向けに、スキマワークスを活用したギグワーカー人材の獲得・活用をご提案させていただいています。
ーー顧客担当としてどんなことを大切にされていますか?
鈴木:1番大切なのは、「人として信頼していただくこと」だと思っています。
これはすべてのビジネスにおいて重要なことだと思いますが、特に僕たちのようなスタートアップは、はっきり言って会社としての信頼力がほとんどありません。
では、何をもって信頼していただくかというと、「サービス」か「営業担当」か、それくらいしかないんです。だから、まずは自分のことを信じていただかないと、そもそもお話にならないんです。
そのために、やるのは地道で当たり前のことです。「返事をすぐ返す」「すぐ電話に出る」「嘘をつかない」「駆け引きよりもまずは人として利害関係抜きに接する」など。
中には『それって営業としてどうなの?』ということもあるかもしれませんが、それ以前に人と人としての信頼関係がすべての土台だと思っているので、そこをないがしろには絶対にしません。
ーー「スキマワークスの営業ならでは」のやりがいだと感じる点があれば教えてください。
鈴木:「いままで世の中になかったサービスを届けている実感がある」ところですね。
お客様に提案したとき、また現場でご利用いただいたときに、『新しいサービスでおもしろいね』『いいね』と言っていただけることが多いのは、シンプルに嬉しい。いままでなかった新しい価値を、最前線で広げていく喜びは大きいです。
また、現場を訪問すれば、決裁者や担当者の方とすぐにお会いできる「距離感の近さ」も魅力です。そしてこれはスキマワークスならではだと感じるのは、ワーカーとして働いていただいているユーザーさん(BtoCのユーザーさん)とも直接触れ合える点です。法人担当者の方だけでなく、ワーカーさんからも感謝の言葉を直接いただけるのは、とても励みになります。
そして、何より嬉しいのは、「ワーカーさんのことを企業の担当者の方が褒めてくださること」。スキマワークスだからこそ生まれたご縁が、双方の価値になっていると直接実感できるのは、”スキマワークスの営業ならでは”だと思います。
社員総出・泊まり込みでお客様と汗水をたらした朝
ーーチームについても教えてください。カルチャーを表すキーワードや具体的なエピソードがあればぜひ聞かせてください。
鈴木:語弊を恐れずに言えば、「不器用」なメンバーが多いと思いますね(笑)。加えて、「ユーザー目線に徹底的にこだわる」ところは、好きなカルチャーの1つです。ですから、効率よりもお客様に価値があると信じたことを優先するところがあります。
以前、お客様である某物流企業が、新規拠点の立ち上げ人員を採用するため、スキマワークスを活用いただいたことがありました。ただ、大型の拠点だったこともあり、スキマワークスだけでは人員の補充が難しい状況でした。
スキマワークスの立ち上げ期
そこでーーとある日の朝5:00からの作業人員を埋めるため、社員総出・泊まり込みで神奈川県の某拠点にて働かせていただいたことがありました。
もちろん、このような役務を常に提供しているわけではありません。また、僕たちのサービス自体が立ち上げ期で、なんとか価値発揮をしようと必死だったのもあります。
ともかく、「顧客のことを徹底的に知り、自分達にできることがあればたとえ非効率でもやる」姿勢は、好きなカルチャーの1つです。
ーーこれからどんな事業・チームをつくっていきたいですか?
鈴木:まず、事業としては顧客・ワーカーにとっての「インフラ」になるようなサービスをつくっていきたいですね。関わってくださっている人たちにきちんと価値をご提供し、「お客様にとってなくてはならない存在」になりたいです。
チームとしては、今の文化は大切にしながら、より優秀で熱量の高いメンバーを迎え入れていきたいですね。
正直、もっと強いチームをつくっていかないと、前述したような事業はつくれないという危機感があります。現時点で社員6名と小さな組織ですが、より事業を前に進め、お客様に価値を届けるためには、現メンバーが持っていないような個性とスキルを持った方に参画いただき、組織規模を直近1年で2-3倍にする必要があると考えています。
背中を預けあえるから、困難も乗り越えられる
ーー最後に、今後入社を考えてくださる方に向け、メッセージをお願いします。
鈴木:僕は大企業からスタートアップに入ったとき、大きな困難にぶつかりました。そして、それをなんとか乗り越えることができたのは、共に支え合えるメンバーがいたからです。
社員数が1桁のスタートアップに入るというのは、たしかにリスクかもしれません。しかし、そんなリスクをも共有し合い、背中を預けあえるメンバーがいるということ、目標を達成したときに心から喜び合えるチームがあるということは、とても大きな力になります。
もし次の成長機会を考えていて、何かに熱く本気になりたいと思っている方がいれば、ぜひスキマワークスを検討していただけると嬉しいです!まずはカジュアルにお話しましょう!
一緒に困難を乗り越えていける方からのご応募を、心よりお待ちしています。
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