AIエージェント時代の幕開けで、なぜTOKIUMなのか
こんにちは、TOKIUM 開発部長の橘高です。
今、私たちは歴史的な転換点に立っています。AIが単なる「支援ツール」から「自律的なエージェント」へと進化し、業界全体が新たなスタートラインに並んでいます。
そんな中で、TOKIUMは会社として大胆な意思決定を下しました。経理AIエージェント開発に全面的に注力することで、経理作業に使う時間を0に近づけるという、ピボット級の変化です。
なぜ今この決断なのか、なぜTOKIUMなのか。開発部長としての想いをお伝えしたいと思います。
なぜ今なのか
業界全体がスタートライン - 先行者利益を掴む絶好機
AIエージェント開発においてすべての会社が同じスタートラインに立っているのが現状です。
GoogleもMicrosoftも、スタートアップも、みんな手探り状態で、これは滅多にない機会です。
先行者利益を取れるタイミングにその業界でコミットメントする経験は、エンジニアのキャリアにおいて数回しか訪れません。
Web 2.0、モバイル、クラウド、そして今度はAIエージェント。この波に乗れるかどうかで、今後10年のキャリアが決まると言っても過言ではないと考えています。
デジタル世界の差分が消失する時代
AI活用が広がれば広がるほど、純粋なデジタル領域での差別化は困難になっていきます。
同じLLM、同じAPI、似たようなアルゴリズムなど、デジタル領域のみでの差別化は徐々に困難になると考えています。そんな中、最終的に何が差別化要因になるのか?
その答えが「現実世界との接点」にあると考えています。
現実世界の情報をいかにデジタル化し(インプット)、現実世界にいかに影響を与えるか(アウトプット)。この橋渡しこそが、AIエージェント時代の最後の差別化軸だと考えています。
Interactive Cooperative Planning & Execution Between Humans & AI Agents
ビジョン - 認知的負荷の開放により「時を生む」真の生産性革命
考える必要すらなくす世界
例えば出張の手配を例に考えてみてください。どの経路で行き、どのホテルに泊まり、どう予約するか。作業時間はたかだか数十分かもしれません。しかし、それを「しなければならない」ということが頭の片隅にあり続けることは明らかに思考を妨げてしまいます。
このような、業務における本質的な情報やタスク自体ではなく、その周囲の環境や外的要因によって引き起こされる認知的負荷によって脳内のリソースが奪われ、結果として全体的な生産性が下がってしまう状態を私達は変えたいと考えています。
TOKIUM、業務の自動運転を支援する 「経理AIエージェント」の提供を発表|ニュース|株式会社TOKIUM(トキウム)
さらに具体的に、経費承認のプロセスを考えてみてください。上長は部下からの申請に対して、毎回同じ観点でチェックしています。
Before:不正利用がないか、事後申請になっていないか、不必要に高額でないか... これらを毎回考えて判断し、承認ボタンを押す
After:「この申請を自動承認しました(理由:金額が規定内、適切な事前申請、過去の類似パターンと合致)」という報告を受け取るのみ。疑義のある申請(往復なのに往路が重複、申請日と利用日が大幅乖離、会食参加者の記載なし等)のみアラートで確認
私たちが目指すのは、こうした「本質的ではないけど、しなければならないこと」を、根底にある「考えること」そのものから開放することです。単なる作業の自動化ではありません。思考の負荷そのものをゼロにする。これが真の生産性革命だと考えています。
BSM構想の進化 - AIエージェントが加速する「時を生む」世界
実は、この「認知的負荷の開放」という考え方は、TOKIUMが長年追求してきたBSM構想と本質的に同じものです。
これまで私たちは、企業の支出管理領域すべてがTOKIUMに一任される世界を描いてきました。経理、契約、出張管理、経費精算...これらすべてが統合され、支出や価値に関する意思決定という本当に重要なことだけに企業が集中できる世界です。
AIエージェントの登場は、このBSM構想を飛躍的に加速させる技術的ブレイクスルーです。これまで人間が「考えざるを得なかった」判断プロセスを、TOKIUMが代行できるようになる。つまり、私たちが当初描いていた理想の世界が、ついに技術的に実現可能になったと考えています。
現実世界との接点という最後の差別化軸
私はAIエージェント時代において差別化要因となるのは「現実世界との接点」であり、いかにシームレスに設計するかが重要なポイントになると考えています。
現実世界からのインプットでは、紙媒体の情報取り込みが筆頭例です。スキャン技術がいかに進歩しても、紙を物理的に受け取り、管理し、処理するプロセスには人間が不可欠です。
現実世界へのアウトプットでは、紙の請求書送付をはじめ、デジタル化できていない業務全般への影響力が求められます。
AIとオペレータの棲み分けは明確になりつつあり、それぞれの強みを理解したうえで掛け合わせることができるか。これは技術的にもビジネス的にも興味深いチャレンジになると感じています。
後発組には真似できない差別化資産
ここで重要なのが、TOKIUMが持つBPO基盤という差別化資産です。これこそが「現実世界との接点」の質を決めるものであり、買収や新規立ち上げでは獲得できない、長年積み上げられた重要な資産であると考えています。
TOKIUMは家計簿アプリ事業から始まり、その頃からレシートの人力データ化を手がけてきました。ITと人力の組み合わせで価値を提供してきた結果、現在ではAI&Ops本部に約8,000人のオペレータが在籍しています。
この規模は単なる人数ではありません。長年の業務を通じて築かれたオペレーションノウハウこそが真の資産です。
データ化の精度を上げるための品質管理手法:膨大な処理量の中で高精度を維持する仕組み
効率的な業務フローの設計:複雑な業務を標準化・最適化するプロセス設計力
他のSaaSベンダーが経理AIエージェントに参入してきても、この「現実世界との接点」の設計がボトルネックとなるであろうと考えています。8,000人規模のオペレーション基盤と、長年蓄積されたノウハウがあるかないかで、初動のスピード感は決定的に変わります。
現実世界での業務遂行ノウハウ、顧客との信頼関係、オペレーションの知見。これらすべてが、AIエージェント時代における圧倒的な優位性となります。
技術的な面白さ - 前例のない領域への挑戦
AIエージェント協調基盤という未踏領域
このような前提の中で、今、私たちが挑んでいるのは、大規模かつ透明性のあるAIエージェント基盤の構築です。これは複数の技術的チャレンジを含んでいます。
1. AIエージェント開発の「型」の確立 大量のAIエージェントを効率的に作り出すための開発パターンやフレームワークの構築。これは単なるコード生成ではなく、設計思想レベルでの標準化です。
現在、私たちが特に注目している技術的課題は以下の通りです。
スケーラブルなデプロイ基盤:数十〜数百のAIエージェントを効率的にデプロイ・管理するためのCI/CD パイプライン設計
責任分界の明確化:モジュラモノリスとマイクロサービスのハイブリッド構成における、エージェント間の責任範囲定義
仮想化戦略:Kubernetesベースでの構成か、より軽量なコンテナ戦略か、AIエージェントの特性に最適化された選択
これらは既存のWebアプリケーション開発とは根本的に異なる課題であり、業界全体でまだ明確な答えが出ていない領域です。
2. エージェント間協調インフラの設計 複数のAIエージェントが効率的に連携するためのアーキテクチャ。マイクロサービス的な構成になるのか、新しいパラダイムが生まれるのか。正解のない世界での探求になると考えています。
特に技術的に興味深いのがA2A(Agent-to-Agent)通信基盤の設計です。
・従来のREST APIと異なる形でどうエージェント間の動的な協調を実現するか
・Kubernetes上でのサービスメッシュ構成が適切か、それとも新しいオーケストレーション手法が必要か
・エージェント間の状態同期やトランザクション管理をどう実現するか
現在、複数のアプローチを検証中であり、この領域での技術的知見は業界初の試みとなる可能性があります。総じて、私達は経理AIエージェントというコンテキストにおいて、市場、あるいはお客様のニーズに合った適切なシステムを構築することを目指しています。
なぜTOKIUMなのか - エンジニアにとっての最高の環境
現状、この規模でAIエージェント開発とBPO基盤の両方を持っている会社は、他にありません。現実世界とデジタル世界を橋渡しする技術に、本格的に取り組める環境は極めて稀です。
スタートアップにおける柔軟性と裁量によって、より本質的な技術課題に集中できる環境があると考えています。
組織的制約のない挑戦環境
AIエージェントへのシフトに伴い、多くのポジションが生まれています。組織的な制約もほとんどなく、新しいことに挑戦しやすいフェーズです。
既存のレガシーシステムに縛られることなく、最新の技術スタックで理想的なシステムを構築できる。エンジニアにとって、これほど恵まれた環境はそうありません。
キャリアにとっての戦略的価値
AIエージェント開発の経験は、今後10年のキャリアにおいて計り知れない価値を持ちます。この経験は会社に所属することでしか得られず、市場での価値も格段に上がると感じています。
大規模AI システムのアーキテクチャ設計経験、Human-AI協調システムの実装ノウハウといった知識は、AI時代を生き抜くエンジニアに求められるスキルセットです。
共に創る仲間を求めて
AIと人力を組み合わせることで競争に勝ち残れると考える方、認知的負荷を減らすことで「時を生む」という生産性革命に共感していただける方、前例のない技術領域で自分の手で道を切り拓いていきたい方。
TOKIUMは、そんな志を持つエンジニアにとって最高の挑戦の場だと確信しています。
今がまさに、大きな会社を狙える本当のスタート地点です。一緒に、AIエージェント時代の新しいスタンダードを創り上げませんか?
TOKIUM では現在、AIエージェント開発エンジニア、インフラエンジニア、フロントエンドエンジニアなど、様々なポジションで仲間を募集しています。
興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にお声かけください。