執筆者:株式会社UPSIDER 執行役員 / VP of Growth 米田陽介
率直な気持ち。
今回の意思決定については、正直に言えば、少し悔しい気持ちもある。
「グループイン」。その言葉の響きは、少しだけ敗北のようでもあるから。
けれど僕たちは今、みずほフィナンシャルグループの一員となるという選択をした。
転職によってスタートアップという環境を選択して1年少ししか経っていないが、僕はまた、大企業グループの一員となる。
スタートアップという“手段”の魅力
僕はもともと、昨年まで楽天グループという大きな組織で約17年働いていた。
大きく安定した組織の中で、論理と制度のうえで着実に結果を出す。それが「正解」だと思っていた。
そんな僕がスタートアップに飛び込んで、まず驚いたのは、“遊び”のような没入感。
ルールもない、前例もない、仲間だけで決めて、夢中で走る。まるで、子どもたちが公園の片隅に作った「秘密基地」で、ごっこ遊びに没頭しているようだった。
木の板を打ちつけただけの小さな空間。
それはすぐに壊れてしまうような、決して立派に作られたものではないかもしれないけれど、それでも、そこには確かに「自分たちだけの世界」があった。
そして不思議なことに、その世界では、大人の世界では出せないような熱や創造力が自然と湧いてくる。
スタートアップとは、そんな“魔法”のような場所だ。
美しいだけでは、生き残れない
でも、秘密基地は、永遠には続かない。
どれだけ夢中になっていても、どれだけ信じていても、資本主義の世界は、無情だ。
資金、スケール、競争、制度。
現実は、美しさや浪漫だけでは乗り越えられない局面に溢れている。
僕は逆の景色も知っているからこそ、言える。
どれだけ”手段”が美しくても、「勝たなければ意味がない」と。
そしてまた、どれだけ信じて築き上げた自分たちだけの世界も、外から見れば「井の中の蛙」であることがほとんどだということも。
「信念」と「手段」は、別物である
ただここで、ひとつだけ強く伝えておきたいことがある。
それは、「信念」と「手段」は別物だということ。
手段とは、目的を達成するための手立て。
スタートアップという形も、独立経営という道も、そのひとつだ。
でも、その前提には、組織としての「信念」がある。
僕たちの事業は、なぜ存在しているのか。何を変えたいのか。誰の役に立ちたいのか。
その問いへの答えこそが、魂であり、アイデンティティだ。
今回、僕たちは、その魂も、信念も、目的も変えないまま、ただ「手段」だけを変えるという決断をした。
Growth責任者として、次の挑戦へ
今回、僕は会社全体のGrowth責任者という立場でこの選択に向き合った。
文字通り、成長責任を背負う役割である。
成長速度がもっと早ければというような悔しい気持ちがなかったと言えば嘘になる。
でも、それと同じくらい、いやそれ以上にワクワクしている自分がいる。
僕の言う「勝たなければ意味がない」という言葉の意味は、言い換えると「目的を果たせなければ意味がない」ということだ。
改めて目的は何か。以下に自分なりの言葉で書く。
「UPSIDERの提供するプラットフォームが日本の金融インフラの基準をアップデートする。そして全ての挑戦者がお金でつまずくことが減り、誰もが挑戦しやすい国へと変貌させる」
みずほフィナンシャルグループという巨大な基盤と組むことで、これまで僕たちだけでは届かなかったスケールに挑戦できるだけでなく、実際に多くの人に価値を届けることができるようになると思っている。