島根県雲南市で、教育コーディネーターとして3年間、高校生たちと向き合ってきた山崎萌衣さん。認定NPO法人カタリバで得たものは大きかったからこそ、「今度は自分もそういう枠組み自体を作れる人になりたい」という想いを持ったといいます。
Wasshoi Labに入社して5年。現在はパブリックセクター事業部長として、自ら事業を提案し、行政や民間と対等に未来をつくる「トライセクターリーダー」を目指しています。
枠の中で全力を尽くした人が、なぜ枠をつくる側へ向かったのか。その変遷を伺いました。
山崎 萌衣 / パブリックセクター事業部長
宮城県仙台市出身。2019年に北海道教育大学を卒業後、認定NPO法人カタリバに入職。島根県雲南市で教育魅力化コーディネーターとして、探究学習のカリキュラム設計や社会教育プログラムの企画・運営を担う。2022年4月、株式会社Wasshoi Lab(旧VISIT東北)に入社。社会起業家育成プログラム「MiTOHOKU」の現場責任者などを務め、2026年4月よりパブリックセクター事業部長。
人との出会いと、カタリバで芽生えた想い
──大学から教育系に進まれていますよね。今の価値観を形成した出来事を教えてください。
「型にハマらない人たち」との出会いが、今の私に大きな影響を与えています。
大学3年生のときに地域で子育てを担う団体の立ち上げに関わったのですが、そこで出会った方たちが本当に素敵で。その時の代表は飲食店の社長でしたし、他にも別に本業を持ちながら子どもたちのキャリアに関わっている方などもいました。
自分のやりたいことに合わせて、自分で関わり方をつくっている。その姿を見て、「枠組みは自分で作れるんだ」と初めて実感したんです。ちょうど「教育に携わりたいけど、先生は違うかもしれない」と葛藤していた時期だったので、その出会いで「違う道があるかもしれない!」とパッと視界が開けたのを今でも覚えています。
同時に、私のように枠組みにとらわれて悩んでいる人は、たくさんいるとも思って。私が人との出会いで視野を広げてもらったように、今度は自分が、人との出会いを通じて誰かの視野を広げる側になりたい。そう思うようになりました。
──そこから教育系NPO法人のカタリバへ就職されますよね。
はい。当時のカタリバがちょうど取り組もうとしていたのが、島根県雲南市で「地域の中で教育をつくる」ことでした。学校の中だけで完結させず、地域の大人たちと一緒に子どもたちを育んでいく。まさに自分がやりたいことで、「今しかない!」と飛び込みました。
入社後は先生方と探究学習の年間プログラムを設計・運営したり、放課後に高校生の「やりたい」を形にする居場所をつくったり。生徒、先生、教育委員会、地域の方をつなぎ、高校生が地域の大人と出会う場を設計していく仕事は、本当に夢中になれるものでした。
──そこから場所を変える決断をしたのはなぜですか。
カタリバで現場にコミットしたからこそ、次のキャリアでは「枠組みを作る上流過程」に取り組みたいと思ったからです。
というのも、NPOの事業の多くは、行政からの委託を受けて動く構造になっているんです。予算も、事業の目的や範囲も、まず行政側で決まっていて、私はそれを受けて現場で形にしていく。カリキュラムの中身は工夫できても、そもそも何をやるのか、という枠組みを作れる立場ではなかった。
3年間の任期をちょうど迎えるタイミングだったこともあり、自然と「次なるチャレンジの道を探そう」と歩き始めました。
「何屋さんかわからない」。それでも惹かれたWasshoiとの出会い
──次の道を模索する中で、東北に戻ることは考えていましたか?
はい。次のキャリアでは地元の東北に根を張ろうと決めていました。
元々、地元以外の場所に赴き「世界を広げたい!挑戦したい!」と思い、東北を出ました。
でも、雲南の経験を通して、自分のやりたいことは、人を育む土壌を作ることだった。そう気づいたとき、自分が育った東北という地域には、まったく目を向けてこなかったことにハッとしたんです。
雲南で感じたあの感覚を、自分の地元でもある東北で再現したい。今度は自分自身が、「かっこいい大人」として、教育の手前の「まちづくり」から参画したいと考えていました。
そしてWantedlyで「まちづくり」「東北」と検索して、出てきた数社のうちの一つがWasshoiでした。
──話を聞いてみて、第一印象はいかがでしたか?
正直に言うと、「よくわからない会社だな」と思いました(笑)。
インバウンドもあれば子育て支援もあるし、デザインもやっている。公共コンサルって何をするんだろう、と。会社説明で業務はなんとなくわかっても、結局何屋さんなのか、全体像が見えませんでした。
でも、「志を持つ人と人とでハッピーな未来をつくる」というパーパスにはとっても共感して。
まさに自分が雲南で感じたのが、「志を持つ人がつながって、新しいことが起きていく」ことだったんです。それを東北で実現できるかもしれない、とワクワクしたのを覚えています。
また齊藤と話したとき、その熱量や誠実さから、この人は本当にこれを目指しているんだと強く感じました。答えがまだ形になっていないことも含めて、つくりながら進んでいる。その姿勢に惹かれたんです。
──入社の決め手は何だったのでしょうか? NPOとの違いも含めて教えてください。
「自分たちで仕事をつくれる会社だ」と感じたことです。
NPOにいた頃の私は、行政から委託された事業の中で動いていました。一方Wasshoiは、自分たちで事業を提案し、稼ぎ、続けていく。社会にも、会社にも、受益者にもよい「三方よし」を、自分たちの手で形にしようとしていました。
カタリバでの運営に全力で向き合ったからこそ、次は箱そのもののつくり方を知りたかった。ここなら、それができると思いました。
何屋さんかわからないのは、裏を返せば、まだ枠組みが決まっていないということ。どう実現すればいいかは私にもわからなかったけれど、だからこそ一緒につくりたいと思い、入社を決めました。
箱の中から、箱をつくる側へ。トライセクターリーダーという働き方
──現在はどのようなお仕事をされていますか?
現在は、パブリックセクター事業部の事業部長を務めています。自治体や行政と一緒に地域の課題に取り組むプロジェクトを、提案から実行、納品まで一貫して担う部署です。
Wasshoiでは営業と運用で部署が分かれていないので、やりたいことがあれば自分で案件を見つけてきて提案書をつくり、採択されたらそのまま現場を回していきます。
依頼が来るのを待つのではなく、「この地域にはこういう事業が必要だ」と自分たちで考え、ゼロから形にしていく。まさに自分の手で仕事をつくれている実感があります。
──例えばどのようなプロジェクトを運営していますか。
社会起業家育成プログラムの「MiTOHOKU」です。Wasshoiが最も力を入れているプログラムで、今年で4年目。私は事業の現場責任者として関わっています。
志を持つ人たちに集まっていただき、起業家メンターによる伴走支援と社会実装のための支援金を用意しています。1年間のプログラムですが、終了後も一つのコミュニティとして機能し、志あるもの同士が交流できる土壌となっております。まさに東北に一つの「新しい枠組み」を作れた事例かと思います。
▼プロジェクトページ

MiTOHOKU Program
──プロジェクトを推進する上で大事にしていることを教えてください。
一人ひとりが「トライセクターリーダー」であることを大事にしています。
トライセクターリーダーとは、行政、民間、ソーシャルセクターなど、立場の違う人たちと調整をしながら、複雑な社会課題の解決にコミットする人のことです。
私たちは行政から委託された事業の運営にとどまらず、各セクターの利害を超えて協働を導く立場です。どこかに迎合するのではなく、みんなで良い未来を描く架け橋を作っていきます。
一人で起業するという枠組みの作り方ではなく、「みんなで、みんなに必要な新しい枠組みを作る」こと。それを主導していくことが私たちの仕事です。
枠組みをつくれる自分へ。第二創業期のWasshoiで
──これから、ご自身はどんな役割を担っていきたいですか?
一つは、トライセクターリーダーとしてもっと成長することです。
今はまだ、どこか「Wasshoi Labの箱を借りて」仕事をしている感覚があるんです。自分自身がゼロから生み出したものを採択につなげ、回し、事業として育てていく。つまり、自分の手で枠組みをつくれる人になりたい。そこにもっとコミットしていきたいです。
──今、Wasshoiに加わる面白さはどこにあると思いますか?
Wasshoiは今、大きくアップデートされようとしている時期です。
ミッションやビジョンの文言が変わり、2027年1月には財団の設立を予定しており、新しいチャレンジャーを応援する仕組みづくりに本格的に取り組んでいきます。
▼新しいパーパス・ミッション・ビジョン
会社としての歴史はありますが、今は第二創業期に近いフェーズです。会社の枠組みそのものを一緒につくる立場で関われる。それは今だからこその面白さだと思います。
──最後に、どんな方と一緒に働きたいか教えてください。
やはり、Wasshoiのビジョンに共感して、「自分も何かやってみたい!」という方ですね。
正直決まっていることも少なく、入ってから混乱することもあると思います。掲げているものが大きく、それに向けて各々が別のことに取り組んでいるので、全員が同じ景色を見られることはそう多くありません。
でも、その分やれること、考えられることの余白はたくさんあるんです。それにここでは「やってみたい!」という声を止める人はいません。だからこそ枠にはないキャリアを歩んでいける環境だと思います。
「ビジョンやミッションに心から共感し、答えのない問いを楽しんで一緒に考えていきたい。」そんな方とお話しできることを楽しみにしています。
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・広告代理店で15年以上働いたのち、東北復興のために入社したメンバーの紹介です