Philosophy | Wantedly Design
シゴトでココロオドルためのカタチを生み出すチームから、デザインコミュニティに向けて。
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Wantedlyでプロダクトデザインリードをしている竹村です。
現在、Wantedlyは事業として重要な転換期にあり、さらなる非連続な成長を目指しています。 こうしたフェーズにおいて、プロダクト開発の現場では、常に「スピード」と「質」のバランスが問われ続けます。
特に、事業目標へのコミットメントが強まれば強まるほど、「新しい施策を打ちたい」「機能を追加して課題を解決したい」というエネルギーが高まるのは、組織として健全な姿でもあります。
しかし、その「前へ進もうとするエネルギー」は、時としてプロダクトを複雑にする「足し算のバイアス」としても機能します。
今日は、そうした事業の熱量を受け止めつつ、私たちデザインチームがどのようにプロダクトの一貫性を守り、未来へ繋げようとしているかについてお話しします。
プロダクトを成長させようとする際、最も選択しやすい手段は「機能の追加」です。 ユーザーの要望に応える、あるいは特定のKPIを改善するために、新しいUIや導線を追加する。これは論理的に正しいアプローチに見えますし、短期的には成果が出ることもあります。
しかし、それを繰り返していけば、プロダクトは確実に肥大化し、一貫性を失います。
だからこそ、私たちは意図的に「引くこと」を重視しています。 それは単に要素を減らして見た目を整えることではありません。「ユーザーが達成したい本来の目的以外を、意思を持って削ぎ落とす」という、高度な判断が求められる業務です。
では、現場で私たちがどのように「引き算」の判断を下しているのか。 正直にいうと、最初から整然としたロジックがあるわけではありません。むしろ、もっと動物的な違和感からスタートします。
「生理的なノイズ」を見逃さない
画面を見た瞬間、「なんとなく気持ち悪い」「目が滑る」「情報がスッと入ってこない」。 私たちは、この言語化できない違和感を絶対に見逃しません。 Wantedlyの「洗練」とは、教科書的なUIルールの遵守ではなく、この微細なノイズを許さない美意識の集積だからです。プロダクトデザインチームでは「理屈では合っているが、美しくない」ものを我慢せずフィードバックし合う文化があります。
直感を「翻訳」する泥臭さ
しかし、「なんとなく変だから」では、もちろん合意形成はできません。なぜ自分はこのデザインに違和感を持つのか?なぜこの余白が必要なのか? 感覚的に捉えた「正解」を、ビジネスインパクトやユーザビリティの言葉に「翻訳」し、ロジックへと構築していく。 この泥臭い言語化のプロセスこそが、プロジェクトチームやステークホルダーとの合意形成を図るための唯一の手段です。
「迷ったら、引く」チームへの変革
ここが私たちの最大の課題です。現状では、議論が膠着し、判断に迷った際、まだ「安全策としての足し算」に流れてしまうことがあります。事業への責任感が強いほど、機能を減らすことへの恐怖心が勝ってしまうからです。 だからこそ今、私たちは「迷ったら、引く」を選べるチームへと変わるための引き算の言語化と向き合っています。 不確実なものを足して複雑にするより、引いてシンプルさを保つ方が、長期的にはプロダクトの価値になると信じ切れる強さを持つこと。それが、今の私たちが目指している姿です。
迷った時、私たちはWantedlyのデザイン原則(Philosophy)である『知的・大胆・洗練 (Smart, Bold, Sophisticated) 』に立ち返ります。
現場では、PdMやエンジニアと「本当にその機能が必要か」を議論することが多々あります。 数値を上げるために何かを足すだけでなく、体験の純度を守るために何かを引く。デザイナーだけでなく、プロジェクトチーム全体での合意形成やユーザーの本質的課題と向き合うために、デザイン原則を引用し意思決定スピードを向上します。
Wantedlyのデザイン原則(Philosophy)
チームの人数が増えれば、判断の基準(クオリティライン)を揃える難易度は上がります。 しかし、細かいルールですべてを縛ることは現実的ではありませんし、デザイナーの自律性を損ないます。
リーダーとして私が意識しているのは、「なぜ引くのか」という思考プロセスの共有です。
デザインレビューの場では、作成されたUIの是非だけでなく、「どのようなトレードオフがあり、なぜその選択をするのか」を問うようにしています。 誰が担当しても、安易な足し算に逃げず、本質的な価値に向き合えるチームであり続けること。それが、今の私の役割だと考えています。
また、メンバーが一人で、組織の大きな流れや強い要望に対して「引き算」を主張するのは容易ではありません。論理だけでなく、胆力も必要です。
だからこそ、私たちはリーダーである私を含めたチーム全体で、意思決定のプロセスに関与することを重視しています。
現在のチームは6名の少数精鋭です。 メンバーがプロジェクトチームやステークホルダーとの調整で孤立しないよう、デザイン定例やレビューの場でロジックを磨き込み、「チームとしての総意」で提案を行います。 メンバーの感性を守りつつ、それをビジネスの言葉に翻訳してステークホルダーと繋ぐことも私の役割だと考えています。
私たちの仕事は、常に「事業の成長」と「体験の一貫性」という、相反する要素のバランスを取り続けることです。 正解のない問いに対して、粘り強く向き合うことが求められます。
複雑化する課題から逃げず、思考を凝らしてシンプルに解決していくこと。それが、Wantedlyをより強く、より愛されるプロダクトにする唯一の道だと信じているからです。
こうした私たちの姿勢や、日々の葛藤も含めたデザインプロセスに共感していただける方と、これからの未来を一緒に作っていきたいと考えています。興味を持っていただけた方は、ぜひ一度カジュアルにお話ししましょう。