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ココロ・ミル 設立9年目に麻布校を開校した理由

《写真左:山田 写真右:屋嘉比》


2016年の11月に麻布の地に新校舎を構えようと新たな教室を探していた。場所も決まり、仮契約まで進んだが、色々な不安がよぎり辞めることにした。それから1年ココロ・ミルという塾は本当に良い変化を遂げた1年になった。


 〜〜6年間渋谷の指導現場にどっぷりとつかって〜〜

「仕事の9割が対話」

 私は経営者でもあるが、おそらく一般的な企業の経営者というイメージは全くないと思う。講師という毛色の方が強いのではと思う。先日も後輩や同期と会う機会があったが、「よしおって相変わらず変わらないよね」とよく言われる。もちろん社員に見せる顔と友人や同期に見せる顔は違うのだろうとは思うのだが。

 その原因を考えてみると、私の話し相手の平均年齢は同世代の社会人の中でトップクラスで低いはずだ。そしてバラエティーに富んでいる。朝起きたら子供2人と妻と会話する。出社して20代〜30代の社員と会話。その後は小学生(8歳〜12歳)との授業になる。そこに生徒のご両親様(30代〜60代)との面談や電話などもある。つまり基本1日中色々な年代の人、特に小学生と年齢層の低い誰かと対話しているのだ。一般的なビジネスマンが自分の子供以外の8歳〜十代と話すことはないだろう。また事務系の職業だと人と対話する時間が私以上に多いビジネスマンになかなか会う機会は少ない。


「子供が休みの時が私達の仕事の時間」

 私は塾を開校して以来、基本的に土日や祝日の休みはない。今年も受験を終えた2月で1回。来年まで土日の休みはないだろう。そして基本土日は朝9時から夜8時までみっちりと授業が詰まっている。創業当時は朝8時から夜10時まで指導してきたが、正社員も雇用することになり、勤務時間や休暇なども労働基準法以上に良い労働環境を整備した。



 〜〜現場にいすぎることは悪?〜〜


「経営者が現場に出すぎたらダメでしょ。」

とあるコンサルタントの方々に言われたことがある。これについてみなさんはどう思うだろうか?先ほども述べたが、私たちの仕事は「対話」が命だ。対話にも技術とセンスはあるのだと思うが、要点を得たらあとは場数が大切。いろいろな子供や親御様との対話時間こそがその講師の価値をあげていく。その対話を徹底的に磨くように社員にも日々指導をしてもらっている。そこでフィードバックし、さらに現場で経験を重ねる。そうすると子供たちも社員を見る目が変わってくる。良い対話ができている人に子供たちは集まる。このように子供達は非常にシンプルなアンサー講師に返す。これを複数人の担当でできるようになると1人前になると私は思う。その1人前を3年あれば達成できるなと実感して、渋谷校を屋嘉比に任せることにした。これが9年目に麻布校を開校する大きな理由だ。そして第二、第三の屋嘉比を育てることが今後の私のこれからの仕事だと思う。前置きが長くなったが、そうするためには私は現場にい続けなければいけないと思う。子供にとって良い対話ができているかどうかを判断するには、それを判断する私も子供にとって良い対話ができていなければいけない。この感覚は指導現場から離れると忘れてしまうものである。


  〜〜漫才師と講師とアスリートに共通するもの〜〜

 少し話は脱線するが、私はお笑い芸人が大好きだ。特にM-1グランプリは毎年録画して、家族で見ている。私は博多華丸大吉という漫才師がものすごく好きだ。彼らはM-1のチャンピオンになったことはご存知の方も多いと思うが、それ以前にもすでに売れいた。優勝する前でもテレビにも引っ張りだこの彼らであったが、毎週1回地元の漫才の舞台に立っているそうだ。いくら売れてようが劇場でお客さんからシビアな反応をもらうことも今だにあるらしい。そこで彼がすごいのは、それが今の自分たちの実力だと再認識し、反省し、次週リベンジするそうだ。そういう現場と彼らの意識が彼らを面白くし続けているのだと思う。そのことにシンパシーを感じる。漫才師も講師もある意味ではアスリートみたいなもので、常に現場でトレーニングをしていなければ、実力は向上することはない。そして維持も難しく、落ちていく一方なのだと思う。先ほども述べたが私達講師は常に上を見続け、良い授業を継続的に続けないと実力は落ちていく。そういった講師には子供は冷酷に離れていく。そのリアルを私は10年以上見てきた。昔取った杵柄ではプロ講師としては通用しない。今を夢中に生きている子供に昔の話をしても無駄である。最前線にい続けることで質の高い授業ができ、子供たちの学問に対する吸収力もあげられるものだ。私も毎日子供と会う時は緊張するのはそのリアルを知っている。


 〜〜個別指導塾が急増する中、ココロ・ミルが目指すもの〜〜

 今多くの大手・中小の教育会社にコンサルティング会社が入っている。メソッドを確立し、マニュアルを作成。塾名という看板・ブランドを掲げ、売上と利益を上げるため、教室もフランチャイズ化。教育未経験者をオーナーにし、リスクなく規模を拡大する。その結果で顕著なのが特に個別指導塾で、私が子供の頃になかったのが嘘のようで今やどの駅の近くにも3〜4校舎乱立している。

 実は昨年の麻布に校舎を構えようとした時に、少し規模や売上を意識してしまった背景がある。おそらく去年開校していたら渋谷も麻布も共倒れになってしまったのではないかと今更ながら思う。しかし今年は「良い人」が集まってくれた。


 〜〜「人」にこだわった結果〜〜

 すでに私や屋嘉比、その他講師の担当生徒も新規募集から2週間程度で半分以上の枠が埋まってきている。今までのお客様のご兄弟。紹介など非常に多く、リピートして頂ける非常に恵まれた環境にある。3/4から麻布校の開校が決まり、その事実を既存のお客様に伝えることとなる。渋谷から麻布は便も悪く、距離もそれなりにあるので、辞めるお客様も出るのではないか?と思っていた。しかしいざ、これまで担当してきたお客様に私が麻布に勤務になると伝えると

「じゃあ麻布に行きます」

と住所を告げてもいないのに私が渋谷で担当していた全お客様が遠方より麻布に来ることになった。「麻布って何駅ですか?」と後々聞かれたり。。また屋嘉比についていたお客様も屋嘉比に指導してもらいたいから屋嘉比でと。この時は嬉しかった。そこで私はココロ・ミルはすでに普通の塾ではなく、「人」による塾になってきたのだと、ものすごく実感できた。普通の塾であれば「じゃあ同じ校舎で違う先生で」となると思う。やはり仕組みやメソッドを構築することが確かに効率的であり合理的であるのかもしれないが、それを伝える講師・社員のやりがいというものを私はどうしても考えてしまう。誰でもできると思う仕事をやっている仕事より、「⚪⚪さんがいて良かった」と言われる仕事の方がやはり講師としては嬉しいのではないか?やりがいがもて、誇りに思えるのではないか?

 だから私はやりがいが持て、人に感謝し、感動できる。そんな「人」による塾を創り上げることが講師のモチベーションをあげ、お子様が劇的にかわれる良い塾になるのではないかと思っている。今もココロ・ミルには過去に教え子だった子が大学生になり、アルバイトのアシスタントとして手伝ってくれている。そういう良い循環ができたのも、「人」にこだわった教育をしてきたからだと思う。今後ともそのようなつながりがもてる塾にしていきたい。



追伸 

栄光学園という神奈川の中高一貫校の記事がとても良かったのでご紹介します。規模や利益。実績を超えた教育をされている学校だと感じます。以下記事抜粋

■少数教育を維持

 東大合格ベストテンに入る進学校で定員が200人を下回るのは栄光と筑波大付属駒場高校の2校だけ。「実は新校舎に建て替えるときに、定員を大幅に増やしたらどうかという関係者からの意見もありました。栄光は敷地も広いし、定員を増やすのは難しくはないが、やめました」と望月校長は話す。もともと栄光は少数の生徒を集め、神父らが先生になって勉強をみるだけでなく、様々な相談事も聞き、細やかに面倒をみるのが伝統だった。今、神父はいなくなったが、教師と生徒の密な関係を維持するため、「少数教育にこだわりたい」という。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO16998830Z20C17A5000000?page=3