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非英語圏の大市場、人手不足、高い品質要求。難しい市場だからこそ、世界で戦える製品が生まれる。
DaisybellグローバルCEO・James Liuへの日本初インタビュー、いよいよ最終回です。#1ではキャリアと創業の決断を、#2では「仕事を完了する音声AI」の技術と導入事例を伺いました。
最終回のテーマは、日本市場です。シリコンバレー発の優れたAIが世界中にあふれる中で、なぜDaisybellはあえて日本を重要市場に選んだのか。日本チームへの期待、そして日本の顧客・パートナー・これから仲間になる方々へのメッセージまで、じっくり聞きました。(聞き手:Daisybell Japan 広報)
1. シリコンバレーのAIは優れている。しかし、世界は英語だけではない
── Daisybellを立ち上げる際、市場はどのように選ばれたのですか。
James:DaisybellはグローバルなAI企業です。しかし、グローバルな技術を持っているだけでは、日本市場で成功することはできません。
私たちが大切にしているのは、“Global Company, Local Execution”という考え方です。世界水準の技術と、現地市場への深い理解、そして顧客の現場で確実に実装する力。この二つがそろって、初めてその国に価値を届けられます。
市場選定は長い時間をかけました。AIには無数の可能性がありますが、技術的に可能であることと、その市場に大きな事業機会があることは同じではありません。私たちが重視したのは、すでに米国で流行しているテーマを追いかけることではなく、その国に本当に大きな問題があり、まだ十分な解決策がない領域を見つけることでした。
── シリコンバレーのAI企業では、その領域はカバーできないのでしょうか。
James:シリコンバレーには世界最高水準のAI企業があります。研究力、資金、人材、開発速度、どれも非常に高い。
しかし、多くの会社は当然ながら英語圏と米国市場を中心に製品をつくります。日本語や韓国語が「対応言語」と書かれていても、それは仕様書のチェックボックスを埋めただけ、ということが少なくありません。
言語モデルが日本語を生成できることと、日本のお客様が満足する電話応対ができることの間には、大きな違いがあります。敬語、発音、アクセント、相づち、説明の順序、期待される丁寧さ。さらに企業ごとの業務フロー、契約条件、既存システムがあります。
日本には大きな経済と多数の企業、そして非常に高度な顧客サービスの文化があります。それなのに、シリコンバレーのスタートアップにとって優先順位が低くなりやすい。このギャップは、私たちにとって大きな機会に見えました。
── 他の領域は検討されなかったのですか。
James:検討しました。例えばリーガルAIです。米国では法務は数千億ドル規模の巨大市場で、優れたAI企業が次々と育っています。私は約3か月かけて、日本の法律事務所や日系企業、日本で活動する米国系法律事務所と話をしました。
その結果、日本の法務市場の構造は米国とまったく違うことが分かりました。米国では訴訟が多く、法務に大きな費用を使いますが、日本では交渉で問題を解決する傾向が強い。米国のモデルをそのまま持ち込んでも、同じ市場にはならないのです。この調査は重要な原則を教えてくれました。グローバルな技術を使うとしても、解くべき問題はローカルに探さなければならない、ということです。
2. 日本の電話市場── 需要はあるのに、取る人がいない
── その中で、なぜ「電話」だったのでしょうか。
James:さまざまな市場を調べる中で、浮かび上がってきたのが音声・カスタマーサービスの問題でした。オンラインサービスが広がっても、私たちは重要な場面で電話を使います。マンションの設備が壊れたとき、ホテルで追加の備品が必要なとき、クレジットカードを紛失したとき、保険を更新するとき、店舗が本部へ緊急の修理を依頼するとき。
ところが、多くの電話が取られていません。あるいは20分、30分と待たされます。企業が顧客を大切にしていないからではありません。電話を取る人が足りないのです。
── 米国でも同じ問題はあるように思いますが、日本は何が違うのですか。
James:米国企業には、英語を話す海外のコールセンターへ業務を委託する選択肢があります。フィリピン、インド、アフリカなど、多くの地域で英語対応の人材を確保できます。
日本語や韓国語では、同じ方法が取りにくい。国外で十分な人数を確保することが難しく、アクセントやサービス品質への要求も高いからです。そして日本では高齢化と人口減少が進み、この問題は時間とともに大きくなります。電話への需要と、人間が提供できる供給の間には、構造的なギャップがあるのです。私たちは、この供給不足を音声AIで補えると考えました。
例えば自動車保険会社は、更新時期にすべてのお客様へ連絡し、継続契約や割引を案内したいはずです。しかし人員とコストの問題で実施できません。音声AIがあれば、こうした「本当はやりたかったのにできなかった仕事」が可能になります。
── 日本のお客様の品質要求は世界的に見ても厳しいと言われます。不安はありませんでしたか。
James:日本は、音声AIにとって簡単な市場ではありません。お客様は応答速度、言葉遣い、説明の正確さ、声の自然さに高い水準を求めますし、企業側も業務フローや品質管理に厳格です。
しかし、私はその難しさを前向きに捉えています。日本で受け入れられる製品をつくることができれば、その品質は世界でも競争できる水準になります。日本で鍛えられた低遅延、音声認識、業務設計、運用品質は、韓国や欧州など、同じく品質への期待が高い市場でも強みになる。
日本は単なる販売先ではありません。私たちの技術と組織を、世界で戦えるものへ高めてくれる市場です。
3. グローバルの技術×日本の実装力─日本市場への期待
── Daisybellの開発体制について教えてください。
James:現在、AIの優れたエンジニアは、シリコンバレーとアジアに非常に多く集まっています。私たちは、この両方の技術、人材、経験を活用できています。
創業チームには、アジアの非常に競争の激しい市場で音声関連プロダクトを開発し、大規模な顧客へ提供してきた経験があります。2025年初頭に会社を設立し、開発チームは年始の休暇も返上して開発を続け、同年4〜5月には日本語で動作する最初のプロトタイプを提供しました。
完成品ではありませんでしたが、音声を聞いた日本企業から「最初の顧客になりたい」という反応をいただけたのです。
── ただ、優れた技術があれば日本で成功できる、というわけでもありませんよね。
James:その通りです。優れた技術を日本語へ翻訳すれば日本企業で使える、というものではありません。
お客様の業務を理解し、電話の流れを整理し、例外を洗い出し、既存のCRMや基幹システムへ接続し、現場で使われるところまで導入するチームが必要です。
Daisybellの日本での戦略は、「海外でつくった製品を日本へ売る」ことではありません。グローバルの技術力と、日本に根差した営業、導入、カスタマーサクセス、運用改善のチームを一つにすることです。
── 今回、HR領域でのAI BPOサービスを展開しているリソースワーカー株式会社がDaisybellグループに参画しました。どのような経緯があったのでしょうか。
James:リソースワーカーも昨年設立されたばかりの会社で、代表の周さんとは設立当初からお互いに情報交換をしてきましたが、最初から経営統合の話をしていたわけではありません。最初は顧客として出会い、その後、販売パートナーとして協力しました。
一緒に仕事をする中で、AIの未来、日本市場で必要なもの、顧客へ提供すべき価値について、非常に近い考え方を持っていることが分かりました。彼らのビジョンは私たちのビジョンそのものだった。だからこそ、チームごとDaisybellに参画してもらうことを決めました。この参画で、Daisybellのチーム規模はほぼ倍になっています。
── 彼らのどこを評価されているのですか。
James:技術と事業の両方を理解していることです。日本市場を熟知し、AI・DX、BPO、HR、エンタープライズ営業、スタートアップ経営等の経験を有するメンバーが在籍しています。日本企業の複雑な課題をプロダクトへつなげられる、得がたい人材です。
周さんとResource WorkerのチームがDaisybellにもたらしたものは、単なる人員の拡大ではありません。
彼らは、日本市場がどのように動き、日本企業が何を不安に感じ、どのような進め方であれば導入を決断できるのかを深く理解しています。そして、顧客の現場へ入り、構想を実際の運用へ落とし込む、極めて高い実行力を持っています。
Daisybellのグローバルな技術と、彼らのローカル市場への洞察・実行力が組み合わさったことは、日本事業にとって決定的に重要でした。これは、私たちが“Global Company, Local Execution”を実践する上での核となっています。
── 日本以外の市場の状況も教えてください。
James:日本では、契約済みまたは契約手続き中のお客様がすでに数十社に達し、並行して香港や韓国、そして東南アジアでもさまざまな大手企業などから関心をいただいており、導入が急拡大しています。
香港では大手物流プラットフォームでの導入が進み、韓国でも有力なお客様から強い関心をいただいており、近く最初の契約を見込んでいます。欧州でも、フランスやドイツなど英語以外の言語を使う大きな市場を調査中です。
先日欧州を回った際も、どこでも「市場は大きいのに、良い解決策がない」という反応でした。
日本語を話す人は世界で約1億人強かもしれません。しかし、その一人ひとりにとって、銀行、保険、行政、医療へ日本語でコンタクトできることは重要です。シリコンバレーから見れば後回しにされやすい市場にこそ、世界水準の技術を届けたいと考えています。
4. 日本の顧客、パートナー、そして新しい仲間へ
── 日本の企業に対して、Daisybellは何を約束できますか。
James:私たちは、「AIを導入しました」という状態をゴールにはしません。実際に電話へ応答できたのか。お客様の目的を完了できたのか。現場の負担は減ったのか。取りこぼしていた売上や顧客接点を取り戻せたのか。誤った案内をしていないか。人間への引き継ぎは適切か。その成果が出るところまで、お客様と一緒に取り組みます。
自然で低遅延な日本語会話、企業ごとの業務ルールに沿った対応、CRMや基幹システムとの連携、AIで処理できない案件の有人引き継ぎ、導入後の継続的な改善、そして日本国内チームによる支援。技術と現場の双方に責任を持つこと。それが、私たちが日本企業へお約束したいことです。
── パートナー企業との協業についてはいかがですか。
James:ぜひ一緒に取り組みたいと考えています。業界の知識を持つ企業、既存システムを理解するSIer、顧客対応の現場を知るBPO、各地域に顧客基盤を持つ販売パートナー。AIを単独の製品として売るのではなく、業界ごとの業務を再設計する必要があるからこそ、私たちだけでは足りません。
── 最後に、これから仲間になるかもしれない方々へメッセージをお願いします。
James:Daisybellはまだ小さな会社です。しかし、目標は小さくありません。私たちは、参入するすべての市場でナンバーワンを目指します。技術、プロダクト、営業、導入、カスタマーサクセスのすべての領域で、新しい仲間が必要です。ここにあるのは、完成した仕組みを運用する仕事ではありません。まだ答えのない市場で、お客様と一緒に答えをつくる仕事です。
日本には、人手不足によって応えられていない電話が数多くあります。企業には、本当は提供したいのに提供できていないサービスがあります。働く人には、本来は人間が背負う必要のない負担があります。私たちは、AIを使ってこの状況を変えたい。
人間から仕事を奪うのではなく、人間だけでは届かなかったサービスを可能にし、人間がより大切な仕事へ集中できるようにしたい。日本は、その未来を最初に実現できる市場の一つです。お客様、パートナー、そしてこれから参加してくださる仲間とともに、世界で最も信頼される音声AIの会社をつくっていきます。
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