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ABEJA担当者直伝!マーケティングのデジタル化、6つの課題と解決策(前編)

せっかくマーケティングツールを導入したのに使いこなせない。導入しても期待していた成果が出ない……。そんなとき、どんな手だてを取ればいいのでしょうか。ABEJAでマーケティング関連のデジタル化施策を手がけてきた木下正文が解説します。


木下:前職で、マーケティングもサイト開発も自分でデータドリブンに回す仕事をしてきました。その経験をABEJAでも生かし、マーケティングや医療、人事の領域を担当しています。

きょうは、レコメンドエンジン、マーケティングオートメーションをすすめる際の課題と対策をお話ししていきます。

まず、マーケティングのデジタル化について、広告と非広告の各領域を、それぞれ考察してみましょう=上図。

広告領域は非広告と比べ、デジタル化はかなり進んでいます。

費用対効果の見通しが立てやすく投資の可否が判断しやすい。さらに、広告代理店のケーパビリティが強いので、運用を任せてもきちんと回ります。また、投資が盛んなので広告関連のテクノロジー企業が生まれやすい。

そこからリスティング広告、DSP広告、第三者配信、CTR予測、オーディエンス拡張、コンバージョンの自動最適などが次々に生まれてきました。

対して非広告領域はどうか。具体的にはパーソナライズ、CRレコメンデーション、マーケティングオートメーション、オウンドメディアといったものを想定していますが、どれも比較的デジタル化が進んでいません。

なぜかと言うと、広告領域と比べ費用対効果が分かりづらいからです。例えばサイト改修費をかけても本当にペイできるのか、見通しが立ちづらい。したがってお金をかけにくい。また、全体を安心して任せられるような事業者が比較して少なく、ある程度は自社で回さなければならないのが現状です。となると、企業としてはケーパビリティ的にもハードルが高い。

ただ、ユーザーにとっては非広告・広告の違いはほとんど関係ありません。このため非広告領域もデジタル化できたら、統一基準でUXを提供できるようになります。そこで弊社でも企業の非広告領域のデジタル化プロジェクトに力を入れ始めました。


マーケツールのザンネンな使い方

実際のマーケティングツールを活用する際におきがちな課題とその対策を見ていきます。

1つ目が、マーケティングツールを導入する時に目的・ゴール・目標が不明瞭なこと=上図。

なんとなく導入してみたものの、知識不足や汲み取り不足から粗い施策になってしまい、効果も上がらない。実際、レコメンドをご希望されるお客様にレコメンドで改善したいKPIを伺うと「ん……」と止まってしまうことも多いです。その状態で上司から「施策は黒字になってる?」と聞かれても、効果の範囲が不明確で判断しづらい。「今さらやめられない」という現状維持バイアスも働き、施策単位で赤字かもしれないのに、やめるという判断や黒字化への改善もなされない例が結構あります。

こうならないように、どうするか=下図。

まずは目的・ゴール・指標・目標を明確にして、施策の解像度を高めていきましょう。そのためにはまずKPIツリーを作って、どこが課題なのかを把握し、そのうえでどこに介入すればいいのかを考えていく必要があります。

ここで注意すべきは、適切なKPIは自社のビジネス課題から判断する必要があるという点です。購入数やクロスセルを増やしたい、アップセルで売上を増やしたい、リピート率を上げたい、ロングテールの商品幅を増やしたいーーなど、企業の状況や目的によって変えていく必要があります。

レコメンドを表示するタイミングも、どの課題を解決したいのか、どのKPIを優先したいのかで異なります。商品幅や販売個数を増やすならカートに入れる時点でレコメンドする。売上額を増やしたいならカートに追加する直前に「実をいうとこっちのほうがいい」とプッシュできる。

その上でレコメンド・マーケティングオートメーションの精度と、それぞれのKPI・KGIへの接続を明確にする。ここを怠ると、投資判断の基準があいまいになってしまいます。

参考図書や事例をご紹介します。

『Recommender Systems Handbook』=上図。第2版が出ています。予測精度以外にもいくつか定性的な判断手法を提唱しています。目的・ゴールを明確にする際の参考になります。

目的・ゴール・目標を明確にしてレコメンドやマーケティングオートメーションに反映させた成功事例として、YouTubeの長時間動画のレコメンド施策をご紹介します。

昔、YouTubeは5分10分の短い動画が大半でしたが、最近では長い動画が増えています。今は半数以上の視聴者が20分以上の動画を観ているそうです。長い動画を見てもらうほうがより可処分時間を確保できますし、より広告を入れやすいからです。視聴の長時間化に一役買ったのがレコメンドのアルゴリズムと言われています。

Wired」で、Youtubeの動画レコメンド表示を調べた研究が紹介されています。

’’「レコメンドされる動画の統計値には、ふたつのパターンしか現れなかった。まず、レコメンドするためのアルゴリズムによって、より人気のあるクリエイターの動画へと誘導された。しかし研究員は同時に、YouTubeのレコメンドが一貫して徐々に長時間の動画を勧めるようになっていったことにも気づいた。最初は9分半の動画、次に12分、次が15分といった具合だ」(2018年12月21日「YouTubeの動画は長時間になり、こうして「テレビ番組化」が加速する」より)’’

「レコメンドが一貫して徐々に長時間の動画を勧めるようになった」がポイントです。一気に、ではなく徐々に延ばして、視聴者がストレスなく長い動画に慣れるようにしたことが研究で示唆されています。

次はマーケティングオートメーションの場合についてです。
購買/来店データでよく見られる傾向ですが、初回来店の客が大半で、その後も来店するリピーターは山なりになるという分布です=上図。ここまで傾向を把握しておくだけでも、リピートしない人向けの施策を打つべきか、リピーターに施策を打つべきか、対策は見えてくるはずです。

また、来店客へのメールの自動送信も、どの客を対象にするか、どのタイミングで送るのが効果的か、適切な方法もタイミングも異なります。このあたりも解像度を高くするのがポイントです。この点は、レコメンド施策と同じですね。


導入したのに放置…。

2つ目の課題です。マーケティングツールを導入したのに、検証もせずに放置してしまうことはありませんか?

デジタルマーケティングはPDCAが重要です。しかしツールを導入したもののKPIすら定期的にチェックされない事例が散見されます。広告領域で数か月も同じ広告を放置して微調整すらしないのはあり得ません。ですが非広告領域だと、これが結構頻発しているのです。

よくあるのが、上図のようなやりとりで終わってしまうケース。

クリック率が上がっているという報告だけで上司はツールの導入の効果があったと満足して、新しいツールの導入まで指示してしまっている。ところが、担当者の本音は違います。「クリック率は高くなったが本当の効果はもう少し少ないんじゃないかな…」と思っている。でも実情を報告すると仕事が増えるし、実はツールについてよくわかっていないので伏せておく。新しいツールの導入も指示されたし、「PDCAを回す時間なんてない」と思っている。せっかく導入して、改善の余地が大きいのに放置して次に行く。本当にもったいない。

きちんとKPIを測り、結果の分析と考察、仮説の立案というPDCAをしっかり回して次に行きたいですね。


検証するなら「ABテスト」

では、どういう検証方法がいいのか。広告領域では当たり前とされている「A/Bテスト」をご紹介します。

このテストは、内容を変えたAパターン、Bパターンをそれぞれランダムにユーザーに示し、それぞれの結果から、より高い成果を得られるパターンを見つけていきます。

一口に効果検証といっても、エビデンス(科学的根拠)にも強弱があります。科学の領域で最も信頼が高いのが、過去の実験結果をまとめて検証する「メタアナリシス」。次に無作為にグループ分けして結果を比べる「ランダム化比較試験」(RCT)で、「A/Bテスト」はRCTにあたります。マーケティング施策も「A/Bテスト」で検証すれば偏りの少ない結果が得られるでしょう。

ABテストを1回やって終わりではもったいないです。
次々に施策を検証していき、徐々にKPIを改善していくことが重要です。

例えば、この前私が見かけたYahoo!ニュースの記事=上図。コロナ禍でも株価が上がった企業が紹介されていました。「この企業の株価はそんなに上がったのか」と思いました。流れで関連記事をチェックすると、コロナの話やマーケット全体の記事しか表示されていない。でも私は、株価の上がった企業の業績記事も読みたかった。

このようにユーザーの視点に立つといろいろ施策が出てきます。ユーザー視点で施策を考えたり、社内で改善コンペを開いたりして、定期的に意見・施策を集めておくことも重要です。

いちど改善して終わりではなく、PDCAを回し、細かい改善を積み重ねてKPIを上げていく体制を作っていきましょう。


データの前処理、放置してない?

3つ目の課題は「データの前処理と特徴量作成」です。現場データを効果的な運用に反映するために欠かせない作業なのですが、ないがしろにされがちです。

こうした、データの取り扱いの専門家といえば、データサイエンティストです。モデルやアルゴリズムを作るイメージがありますが、実際はデータを整える「前処理」に大半の時間をかけています。なぜなら丁寧に前処理すれば、その分精度が向上するからです。数式を使ったモデルを作る時間が2割とすれば、前処理に8割も費やしています。

そのくらい前処理は大事なのですが、マーケティング領域には、その大切さが浸透していない印象があります。

このためレコメンドや商品情報、商品間の類似度などの基本データの間違いや矛盾が放置されたまま、いろんな損害が発生しています。例えばウェブの商品IDと店舗の商品IDが異なっていたり、商品のマイナーチェンジが反映されず、新しいバージョンを見た人に古いバージョンがレコメンドされたり。ほかにも在庫と価格が連動していないためにレコメンドの時の価格のままだったりレコメンドに表示されたのに在庫切れだったり。

データ整備・前処理・特徴量エンジニアリングは地味な作業ですが、きちんとやればKPI、CTRの向上につながります。ぜひ力を入れてほしいところです。

…と、口で言うのは簡単ですが、いざ実行しようとすると、技術的な壁は存在します。そこをどう補うか。

データの収集・クレンジングで必要な作業は上図左に挙げた通りです。

あとは、コンテンツの類似度、商品の類似度という点も踏まえておきたいところです。履歴情報の乏しい新規顧客に適切な商品がおすすめできない「コールドスタート問題」があっても、現時点の情報から「この商品とこの商品、似ているよ」とレコメンドできる場合もあります。

その際、商品をどう「似ている」と定義するか。同じカテゴリーに属す商品なら「似ている」と定義する方法が一般的ですが、さらに高度化すると、商品の説明や値段などの幅広い情報から「似ている」商品として分類できます。つまりデータの整理作業から、レコメンドの定量的な判断も可能になるのです。

「前処理も重要なのは分かるが、最新のアルゴリズムも取り入れたい」と言われることもあります。最近ではレコメンドの最新アルゴリズムをコマンド一つで実装できる、RecBoleのようなパッケージも出ています=上図。最新の論文やアルゴリズムを組み込む作業は、前処理をちゅうちょするほどの手間ではありません。

繰り返しますが、データの整備・前処理をきちんとやることがポイントです。弊社のデータサイエンティストは「前処理が終われば、作業はほぼ完了している」と言っているほどです。

ABEJA担当者直伝!マーケティングのデジタル化、6つの課題と解決策(後編) につづく


木下 正文(きのした まさふみ)
名古屋大学理学部卒業。
2012年ベンチャー企業に入社。在籍中に売上高25倍になる中、新卒採用、マーケティング、データサイエンス、新規事業の立ち上げ、経営企画に従事。
データドリブンなマーケティング体制の構築や、People Analytics と呼ばれる人に関するデータを収集・分析・活用するプロジェクトを推進するなど、数値・モデリングによる意思決定体制を構築することを得意とする。
2019年から ABEJA にジョイン。ABEJA では主にマーケティングや医療に関連するプロジェクトを担当。

(2021年2月19日掲載「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)

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