「人間関係が理由で退職したい」
この言葉は、社内では意外と口にしづらいものです。 理由は単純で、誰か個人の話に聞こえてしまうからです。
一方で、転職面接の場では「人間関係」という言葉が比較的率直に語られることがあります。 関係者がいない場だからこそ、話しやすいのだと思います。
ただ、実際に話を聞いていると「人間関係が原因」というより、組織の構造が曖昧なことによって消耗しているケースが少なくありません。
「人間関係がしんどい」は、本当に人の問題なのか
仕事の内容に大きな不満があるわけではない。
成果も出ている。
スキルも伸びている。
決定的な衝突があったわけでもない。
それでも、数年後もこの会社にいるイメージが湧かない。
こういう相談は、実際に少なくありません。
話を聞いていくと、「人間関係」という言葉でまとめられているものの、実際には人そのものではなく、日々の納得感が少しずつ削られている状態が見えてくることがあります。
たとえば、こんな話です。
- 組織変更があり、誰が何を決めているのか分からなくなった
- 上司が変わり、昨日までの判断基準が通用しなくなった
- 昨日は「それでいい」と言われた提案が、今日は「なんでそうしたの?」になる
- 評価面談では具体的な話がなく、「総合的に見て」という言葉だけが残る
- Slackは常に動いているのに、最終的に誰が決めたのか分からない
何か大きな事件が起きたわけではありません。
ただ、納得感が毎日少しずつ削られていく。
この状態は、説明しづらい分、余計に消耗します。
そして結果として、「人間関係が合わない」という言葉にまとめられてしまう。
けれど本当にしんどいのは、人間関係そのものというより、判断の基準や責任の所在が曖昧なまま進んでいく構造なのではないかと思います。
出社が増えることで、人間関係の負荷が戻ってきた
もうひとつ、ここ数年で働き方が変わったことも影響していると感じます。
リモートワークから出社へ、あるいは出社比率が増える流れです。
リモート中心の働き方では、良くも悪くも「仕事は仕事」と割り切りやすい面がありました。
対面の空気感や雑談、態度の印象といった要素から距離を取れることもあります。
しかし出社が増えると、対面ならではの負荷が戻ってきます。
- 空気を読む
- 雑談に気を使う
- 些細な態度が気になる
- 雰囲気が評価に影響しているように感じる
こうしたことが積み重なると、「何かが起きたわけではないのに疲れる」という状態になりやすいです。
これは甘えというより、単純に環境が変わった結果だと思います。
小規模IT企業で起きやすいブラックボックス
IT業界では、スタートアップや小規模な組織で働くことも一般的になりました。
意思決定が早く、代表や幹部との距離が近い。これは魅力でもあります。
ただ、距離が近いからといって、組織が透明とは限りません。
創業初期からいるメンバーが、無意識のうちに判断の基準を握っていてブラックボックスになってしまっている場合もあります。
- 評価の軸が共有されない
- 「なんとなくの期待値」で物事が進む
- 意見を言っているつもりでも、どこかで屈折して届く
- 距離は近いのに、判断が見えない
この状態は、想像以上に消耗します。
本人としては「上司や会社と合わない」と感じるのですが、実際には相性の問題というより、組織の設計が追いつかないまま拡大した結果として起きている場合もあります。
実は、上司も正解が分からない
あまり語られませんが、上司側も戸惑っています。
成果は出せ。
離職は防げ。
ハラスメントには注意しろ。
でも距離は詰めすぎるな。
求められることは増えているのに、マネジメントの型が十分に共有されないまま現場に任されているケースも多いように思います。
その結果、上司の行動が極端に振れやすくなります。
- 距離を詰めすぎる人
- 逆にほとんど関わらなくなる人
- 判断を先延ばしにする人
この揺れを一番受けるのが現場です。
上司が悪い、部下が弱い、という単純な話ではなく、役割そのものの難易度が上がっているのだと思います。
「上司と合わない」と感じるときの正体
「上司と合わない」と感じるとき、実際にはこういう状態が起きています。
- 何を期待されているのか分からない
- 評価の基準が共有されていない
- 判断が人によって変わる
- 理由が言語化されない
これは性格の問題というより、構造の問題です。
判断軸が設計されていない状態で、人だけが前に出てしまっている。
その負荷が「人間関係」という言葉で個人に押し戻されてしまう。
だから消耗します。
弊社に応募してくださる方の話を聞くと
面談で話を聞いていると、「人間関係がつらい」というより、
- 今の環境に違和感がある
- 仕事は続けたいが消耗したくない
- 感情論ではなく、判断軸のある場所で働きたい
という話が出てくることが多い印象です。
弊社は特別な福利厚生があるわけでも、「最高の職場です」と言っているわけでもありません。
ただ、応募や入社後のギャップを減らしたいので、どういう前提で組織を設計しているかを、できるだけ言葉にして共有するようにしています。
弊社は誰にでも合う会社ではありません
私たちは「人間関係の問題を、全部人のせいにしない」ために、できるだけ構造を言語化しようとしています。
- 誰が何を決めるのか
- どこまでが裁量で、どこからが責任なのか
- 評価は何を基準にするのか
こうした前提を、なるべく曖昧にしないようにしています。
そのため正直に言うと、
- 空気を察して動きたい人
- 判断を“よしなに”委ねたい人
- 関係性の中で自然に決まっていくことを期待する人
にとっては、少し窮屈に感じられるかもしれません。
一方で、
- 技術職として、何で評価されるのかを明確に知りたい人
- 感情ではなく、設計された基準で判断されたい人
- 余計な読み合いに消耗せず、仕事に集中したい人
にとっては、居心地は悪くないはずです。
合うかどうかは価値観の問題であり、優劣の話ではありません。
無理に合わせ続けることが誠実さだとは、私たちは思っていません。
最後に
人間関係が理由で転職を考えることは、逃げでも弱さでもありません。
我慢できるかどうかよりも、納得して続けられるか。
数年後もこの会社にいるイメージが湧くか
自分の違和感を、雑に扱わないでほしいと思っています。
もし今、「この環境で消耗し続ける未来が見える」と感じているなら、まずは一度話してみませんか。
合うかどうかは、話してみないと分かりません。
でも少なくとも、違和感を全て「自分のせい」にして飲み込む必要はないと思っています。