アクセンチュアとマイクロソフトのジョイントベンチャーとして2000年に米国で生まれたアバナード。「戦略×テクノロジー」の支援で培われてきた技術力は、どのような人材育成に支えられているのでしょうか。
今回話を伺ったのは、アバナードのTechnology Leadershipを務める菅原。AIの進化によって、多くの業務のあり方が問い直される今、アバナードが人材に求め続けているのは「常識を疑う力」です。 AI時代の人材育成とキャリアのつくり方について聞きました。
▼プロフィール
氏名:菅原 允(Makoto Sugawara)
役職:Associate Director
職種:Technology Leadership
文学部からテクノロジーリーダーへ。キャリアの転機は「やりたいこと」と違う仕事だった
―まずはIT業界へ進んだ経緯を聞かせてください。
大学では文学部に所属し、『源氏物語』やフランス文化を研究していました。ITを専門的に学んでいたわけではありませんが、データベースを扱ったり、自分のホームページを作ったりする機会があり、それをきっかけにIT業界に入りました。
その後、前職のSIerでC#のアプリケーションアーキテクトとして経験を積み、マイクロソフトの技術に対するあこがれと、グローバル企業としての魅力からアバナードに入社しました。自分ひとりが人生で経験できることには限りがあります。一方で、さまざまな業界のお客様の課題と向き合うことで、自分だけでは得られない視点や知見に触れられると感じたんです。
やや個人的な理由もあります。学生時代にフランス文化を学んだほどフランスが好きで、アバナードはパリにも支社があるので、将来的に海外で働く機会があれば、という思いもありました。結局それはまだ実現していないのですが、そうした思いも入社の後押しになりました。
―入社後は、順調にキャリアを歩まれたのでしょうか。
実は、最初に配属されたのはSharePointを使った開発プロジェクトで、自分が思い描いていたキャリアとは少し違う仕事でした。ただ、実際にプロジェクトに携わる中で、「ものをつくる」ことそのものではなく、それを通じて人と人をつなぎ、価値を生み出すことにやりがいを感じるようになりました。それが、自分のキャリアを考える上で大きな転機になりました。
技術一本でやっていくつもりが、次第に組織運営にも関わるようになり、モバイルアプリ・フロントエンド開発の組織を立ち上げ、その後もデザイン組織を率いるまでになりました。
2018年に立ち上げたモバイルアプリ・フロントエンド開発の組織は、実はマイクロソフト技術が中心ではありませんでした。その組織がまだなかったので、自分で立ち上げたんです。モバイルアプリやフロントエンドはお客様との接点になる部分なので、その後はエクスペリエンスデザイン、つまり体験をデザインする部門も統括するようになりました。そこで、優れた技術だけでは価値は生まれず、それを利用する人の体験まで含めて考えることの重要性を学びました。
「一人では仕事はできない」組織づくりでたどり着いた、信頼関係という答え
―組織づくりに関わるようになったのは、いつ頃からですか。そこで、どのような人材像を掲げていたのでしょうか。
モバイルアプリケーション開発の組織を立ち上げた頃です。当時5人ほどだった組織が70人規模へと拡大していく中で、採用にも関わるようになり、どのような人材を求めるかを言語化する必要が出てきました。最初に掲げていたのは、スピード感(Speed)、品質に対するこだわり(Quality)、プロ意識(Expert)、プロアクティブな姿勢(Proactive)、そして失敗を恐れず挑戦すること(Change)の5つです。
ただ、実際に組織を運営してみると、この5つだけでは立ち行かないケースが多くありました。仕事は一人では完結せず、相手があってこそ成り立つものです。その視点が欠けていたことに気づき、相手を尊重すること(Respect)、責任を持つこと(Responsibility)、そして信頼関係を築くこと(Relationship)を重視するようになりました。特に大切にしていたのが信頼関係です。
―なぜ信頼関係を重視していたのでしょうか。
信頼関係が築けていれば、個々の強みを補い合える関係性で、チームとして大きな成果を出すことができます。逆に、どれだけ優秀な人ばかりを集めたチームであったとしても、お互いを信頼できなければ、チームやプロジェクトとしてうまくいくことは絶対にありません。
実際に、こうした考え方を大切にしながら組織づくりに取り組んだ結果、当時5人だった組織は70人規模まで成長しました。その後は別のメンバーに組織を引き継ぎましたが、信頼関係を軸にするという考え方は、今も変わらず大切にしています。
同じ型にはめない。強みを見極め、一歩上のチャレンジを託す
―人材を育てる上で、特に意識してきたことはありますか。
“金太郎飴”を作らないことです。皆を同じ型にはめてしまうと、一人ひとりが自分を歯車のように感じてしまい、そこから新しい成長機会やキャリアは生まれません。私自身、個性が強い方だと思っていますし、自分がもし同じ型にはめられていたら、今のキャリアはなかったと思います。だからこそ、まずは一人ひとりの強みや可能性を理解したうえで、それを活かせるキャリアの機会を与えることを大切にしています。快適な環境にとどめるのではなく、本人がまだ経験していない一歩先のチャレンジングな目標を設定することを意識しています。
―チャレンジの結果、うまくいかないこともあると思います。菅原さんご自身は、メンバーの成長にどう関わっているのでしょうか。
もちろん、うまくいかないこともあります。ただ、後ろ向きな失敗と、前向きなチャレンジの結果としての失敗とでは、意味がまったく違います。後者であれば、なぜうまくいかなかったのかを一緒に振り返ることで、十分に成長につながります。
メンバーとの関わり方としては、プロジェクトへのアサインを決める立場というよりも、気づきを与える役割に近いかもしれません。特に、うまくいっていない時ほど声をかけるようにしています。本人にとっては失敗に見える出来事でも、そこにこそ次の成長につながるヒントがあると考えているからです。チャレンジした結果としての失敗であれば、その責任はリーダーが引き受けるという姿勢を示し、安心して挑戦できる環境をつくることを意識しています。
―活躍する人材には、何か共通点はありますか。
「頼ること」ができる方ほど活躍していますね。意外に聞こえるかもしれませんが、本当に成長が早い方ほど、自分だけでなんとかしようとしません。仕事は一人ではできません。どれだけ優秀な方でも、自分だけで解決できることには限界があります。だからこそ、自分にできないことを素直に認めて周囲を頼れることは、とても大切な力だと思っています。
実際、アバナードには相談さえすれば親身になって話を聞き、一緒に考えてくれる仲間がたくさんいます。これはグローバルのメンバーも同じです。日本人が英語を得意としないことも理解したうえで、どんなに拙い英語で質問しても真摯に理解しようとしてくれる。そうした経験を通じて「頼っていいんだ」と実感できると、「自分ひとりで成果を出す」のではなく、「チームとして成果を出すために自分は何ができるか」を考えられるようになる。そうした視点を持って役割を果たせる人は、長く活躍している傾向が強いと感じています。
キャリアは3つの道へ。その先にある「FDE」という選択肢
―こうした環境の先には、どのようなキャリアパスが用意されているのでしょうか。
入社後、多くの人はまずフルスタックエンジニアやクラウドインフラなどの領域で、基盤となる技術力を身につけます。そこから先はそれぞれの強みや志向に応じて大きく3つのキャリアパターンに分かれます。技術に特化するテクノロジースペシャリスト、プロジェクトの推進に軸足を置くデリバリーマネジメント、そして技術を起点にお客様の変革を支援する技術コンサルティングです。
―今後、特に力を入れていきたい人材像はありますか。
FDE(Forward Deployed Engineer)と呼ばれる人材です。顧客の課題に深く入り込み、自ら問いを立て、仮説検証を重ねながら、テクノロジーの力で新たな価値を創出し、業務変革を推進する役割を指します。先ほど挙げた3つのキャリアはそれぞれ異なる専門性ですが、FDEはテクノロジー・マネジメント・コンサルティングのすべてを横断しながらお客様の課題解決や価値創出に向き合う人材に近いイメージです。最終的に目指す方向性の一つだと考えています。
ただし、ここでも“金太郎飴”を作るつもりはありません。 金融領域や自動車業界に強みを持つ人もいれば、コンサルはあまり得意ではないけれど技術そのものでの価値創出を得意とする人もいます。同じ型のFDEを量産するのではなく、それぞれの強みを活かし、お客様とともに価値を創出できるFDEを育てていくことが、今もっとも意識していることです。
―多様なFDEは、どのような環境で育っていくのでしょうか。
アバナードには、簡単には答えが出ない課題に、チームで知恵を出し合いながら向き合う機会があります。できない理由を探すのではなく、どうすれば実現できるかを考え抜く。その過程で、相手に伝える力、提案する力、プロジェクト全体を見通す力が磨かれていきます。
もちろん、全社員必須のAIトレーニングをはじめとする社内研修や、ロールモデルとなる先輩が伴走しながらサポートする体制も、他社と同様に整えています。ただ、それだけでは人は伸びません。自分にはちょっと無理かもしれない、と思えるようなチャレンジがあってはじめて、いろいろなものを吸収して成長していこうという姿勢が生まれるのだと思います。アバナードにはそうしたチャレンジの機会が多いからこそ、結果として大きく伸びていく人が非常に多いのだと感じています。
AI時代に問いを立てる。「常識を疑う」の本質
―アバナードが採用活動を通じて、一貫して人材に求めていることを教えてください。
大きく3つあります。相手を尊重したコミュニケーションが取れること、最新技術に追随し続けるテクニカルパッションを持っていること、そして自ら学び続ける姿勢を持っていることです。その上で、私自身が特に重要だと考えているのは、「常識」を疑い、本質的な問いや課題を再定義し、「仮説駆動型」で価値創出や変革を推進できることです。
実は、こうした姿勢は面接の段階から見ています。「こういう違和感を覚える場面で、あなたならどう考えますか」と問いかけると、「考えたことがなかった」という人もいらっしゃいますが、それは単に考える機会がなかっただけだと思うんです。同じアプローチはお客様にも使っていて、「このプロセスは正しい」と思い込まれているところに「本当にこのまま進めて、やりにくいところはありませんか」と問いかけるようにしています。やりにくさを感じているなら、そこには改善や変革の余地があります。その違和感こそが、新しい価値を生み出す出発点になると思っています。
―具体的には、どのようなプロセスで課題に向き合うことを求めているのでしょうか。
4つのステップで考えています。まず「本当にそうか?」と問いを立て、常識を疑うこと。次に「こうすれば良くなるはず」という仮説を立てること。そして完璧を求めず、まずは小さく試してみること。最後に、その結果から学びを得て、仮説に立ち返って再び検証すること。この繰り返しは、どんな仕事にも応用できる考え方だと思っています。
今のように不確定要素の多いAI時代において、未来を最初から正しく予測できる人はいません。AGI(人間と同等の知的作業を幅広くこなせる汎用人工知能)が実現したら何が変わるかを今の時点で正確に言い切れる人もいないでしょう。だからこそ、仮説検証を繰り返しながら新しい価値を生み出し、未来をつくっていける人材を、私たちは強く求めています。
―最後に、この記事を読んでアバナードに興味を持った方へメッセージをお願いします。
私自身の仕事の軸は、技術を通じて人と人とをつなぐ架け橋になることです。この軸は人によってそれぞれ違っていいと思っています。そして、その軸は相手がいて初めて見えてくるものだと思っています。
だから、相手を尊重することと、自分らしさを大切にすることは矛盾しません。むしろ、相手がいるからこそ、自分の強みを活かし、新しい価値を生み出せるのだと思っています。
AI時代だからこそ、誰かの正解をなぞるのではなく、自分自身の問いを持ち、自分らしい価値を生み出してほしい。その意味で、私は皆さんに「自分が主役」になってもらいたいと考えています。前提を問い直し、新しいことに挑戦すること、そして変化を面白がれること。そんな人に、ぜひアバナードに来ていただきたいと思います。