「いや〜、今の子はよかったな。やる気あったな。」
なんだか、ありなんだかどうかわからないまま、なりゆき上先輩に面接に入ってもらうことになった。
振り返ればずっと先輩に、「どうやって人に好きになってもらうか」ということを教えていただいていた気がする。
知り合いの会社の人が面接に同席するのは初めて。
「私はこの企業の人間ではないのですが、まあ、なんというか取引先でもなくて
ある意味先輩後輩という間柄という意味では取引にあたるような・・・。」
明らかに何かをごまかそうとしているのがひしひしと伝わってくる。
しかも先輩は昨日も遅くまで飲んでいたらしく、
右足と左足で違う色の靴下を履いているのが
怪しさをさらに引き立たせている。
「いや〜、今の子も頭の回転が速くて凄いな。良い人材ばかりだな!」
「そ、そうっすか?あんまりそうは感じなかったんですけど・・・。」
「まあ、お前は中小企業の採用では経験が少ないからな。」
確かに中小企業での経験が少ないのは事実。
だけど、そんなにも人材が変わるものなんだろうか?
実は次に面接するのは今日の一押しだと勝手に思っているK大の学生だ。
事前情報でも申し分ない。
--面接後---
「いや〜、ありゃ無いな。空気的にあそこは「ハイ、頑張ります!」だよなぁ。」
「はぁ、でも自分軸ももってるような気がしますし、空気的には逆のような気も・・・。」
なんだか、何が正しいのかわからなくなってきたような気もする。
そもそも、「人材を見た目で判断するな」という先輩の見た目が一番おかしい。
スーツのズボンにワークジャケットならわかる。宮崎の知事なんかもそうしていたし。
でも、先輩はワークパンツにスーツのジャケットだった。
ちょうど時計も12時を10分ほどまわり、昼休憩の時間となった。
急がないといつものそば屋のB定食がなくなってしまう。
先輩を連れてエレベーターの下ボタンを押す。
9階でエレベーターは一度扉が開いた。
先輩の目が見開いた。
「おぅ!大西!どうした?こんなところで?」
「丸山社長、あれ?社長こそどうしたんですか?」
「いや、今日は産業廃棄物の業界の集まりがここであって・・・。」
「そうですか、こっちは実は後輩でして、採用のことでカクカクシカジカ・・・。」
流石のいつもの先輩ぶりも、その上司(というか社長)の前では封印されるのだ。
「早川さん、いつもうちの大西がお世話になっております。」
やはり、できた人というのは腰が低い。
ということを先輩という反面教師からいつも学んでいるのだ。
社長が小声で話しかけてきた。
「早川さん、うちの大西が採用の手助けしているっていう話しですけど、
あいつはね、面接やらしたらダメですよ。」
え、なんだって!?なぜだめなんだろう。
「面接を誰にさせるかで全然違う採用になっちゃいますからね。重要です。」
ど、どういうことだ〜!?
先輩何にも教えてくれてない!
なんで教えてくれなんだ!?
「・・・3人分か・・・B定食あるかなぁ・・・。」
エレベータが再び開く前に、まだお会いしたばかりの丸山社長をランチに口説き始めていた。