「テクノロジーに振り切らない」──山形のIT企業Connect Design。経営陣が語る、地方×デジタルの新しい可能性
今回は代表取締役の小谷涼さん、取締役の大槻真一さん、外部取締役の滝口康太さんの経営陣3名による鼎談を実施しました。
テクノロジー企業でありながら「ITに振り切らない」という独自のスタンス、組織論を語らずとも同じ方向を向く不思議な組織文化、そして地方で働くことの本当の価値──。
3人の率直な掛け合いから見えてきた同社の姿を、鼎談のリアルな雰囲気そのままにお届けします。
前編では、組織の独自性と地方でのキャリア形成の可能性に迫ります。
3人が語る「ITに振り切らない」という共通認識
──Connect Designが他のIT企業と違うところはどこでしょうか。
小谷:1番はやっぱり、テクノロジーベースに振り切ってないところがいいところなんじゃないかなと思っていて。IT企業は、どうしてもテクノロジーを押し出していってその価値を訴求していく部分があると思うんです。
ですが我々は「あくまでもそれは手段の一つ」というところをちゃんと捉えて仕事しているので、そこがお客様にも受け入れられていると感じています(小谷さんの経営哲学)。
──大槻さんはエンジニア出身ですが、どう思われますか?
大槻:まさにその通りで、先日もお客様から「帳票や申請書を無理にデジタル化しなくていいって言った会社は初めてだ」みたいな話があって。
──え、紙のままでいいんですか?
大槻:そうなんです。業務によってを無理に変えずに紙のままでいいですし、アナログが悪いというわけでもないっていうところを、堂々と言っているところが我々のいいところかなって。前職でずっとシステム開発をやってきたからこそ、「作ることが目的じゃない」という姿勢の重要性を実感しているんです(大槻さんのエンジニア観)。
──滝口さんはいかがでしょう。
滝口:一歩引いた立場から見ていて思うのは、自社が抱えている本当の問題を、実は経営者自身もうまく言葉にできていないことが多いなと。小谷君はそういった言語化がすごく得意なので、お客様も気づいていない本質的な課題を見える形にしていると思います。
その上で、さっき大槻さんが言った通り、これはこのまま紙のままでいいんじゃないのとか、システム化しない方がいいとか、そういう判断ができています。ITをただ手段として本当に企業の問題解決を導いていく企業というのは、なかなかないんじゃないかなと思いますね(滝口さんから見たConnect Design)。
小谷:確かに「これはシステム化しない方がいいです」って提案することはありますね。
──IT企業なのに、システム化しないという選択肢も提案するんですね。
大槻:はい。全体最適を考えた時に、その部分だけ見たらアナログの方が効率的ということもありますから。
組織10点、人材200点──「ガンガンいこうぜ」が成り立つConnect Design
──改めて、そんなConnect Designはどんな組織なのか教えてください。
小谷:いわゆる理想の組織像で動けてるかって言うと、正直10点20点ぐらいだと思うんですけど、人に関してはもう200点ぐらいあると思っています。
──10点と200点ですか。またそれは極端ですね。
小谷:ある時思ったのですが、我々の働き方って結構ゲームや漫画の世界っぽいなと。どういうことかというと、本来、経営はゴール(目標)を決めてそれに向かって走っていくのが大事だと思うのですが、僕らは目の前の敵を倒すばっかりなんですよね。有名なRPGでいうと、作戦で「ガンガンいこうぜ」ってあるじゃないですか。まさにあれでずっと突き進んでいる感じです。
大槻:MPとか残り体力とか考えずに、とにかく全力で攻撃するやつですね。
小谷:そう。例えば、お客様から急な相談が来たら、他の案件とのバランスを調整してでも全員でそのお客様の課題解決に全力投球します。3ヶ月先の計画があったとしても、目の前で困ってるお客様がいたら、まずそっちの対応を始めてしまうんです。
──それで事業や業務は成り立つのですか?
滝口:不思議と上手くいっているんですよね。それは多分、みんなが「なぜこの仕事をやるのか」という根本の部分で一致してるからだと思います。小谷君の特徴として、細かい指示は出さないけど、なぜそれが必要なのかは徹底的に共有するんです。
大槻:私から見ると、小谷は真ん中にいて全体を見渡してる感じなんですよ。私たちが現場でガンガン動いていても、「あ、そろそろこっちも見ないとまずいな」というタイミングで軌道修正が入る。それが絶妙なんです。
滝口:確かに。僕なんか特に、「ここだ!」と思ったら一直線に突っ走るタイプなので、気づいたら一人で先に行きすぎてることもあるんですけど、そういう時は小谷君が「滝口さん、ちょっと待って」って引き戻してくれる。
小谷:でも、それぞれの強みを活かせてるから成り立ってるんですよね。営業の場面では滝口さんの突破力が必要だし、システム設計では大槻さんの慎重さが必要。状況によって誰が前に出るかが自然と決まってくる。
大槻:ビジョンとか改めてしっかり話し合ったことがないのに、なぜ3人の方向性がずれないのかって言うと、都度「なんでこれが必要なのか?」って目的に立ち帰るから。お客様のためになるかどうか、そこだけは絶対にブレないところはあるかなと。
──あくまでも今の段階では、ですが「計画性はないけど、目的意識の共有で成り立っている組織」という感じがしますね。
小谷:仲間を信頼できているから「ガンガンいこうぜ」ができる。それは逆の意味でも捉えられるのかなと思います。一般的な企業なら計画通りに進めないと不安になるけれど、我々は「あの人なら大丈夫」という信頼がベースにあるから、自分の目の前のことに集中できるんです。
「赤を青と言う」顧客を動かす。地方だからこそ得られる成長の幅と深さ
──地方で働くことの魅力について、皆さんはどう考えていますか?
大槻:大企業だと例えばシステム開発なら要件定義する人、設計する人、プログラミングする人、テストする人、運用する人って全部分かれていることが多いんです。自分は設計だけのエキスパートになる、みたいな。でも地方では、お客様との最初の打ち合わせから要件定義、設計、開発、そして導入後の運用サポートまで、1から10まで全部経験できる。一つの仕事の全体像が見えるんです。
滝口:地方のほうが、仕事の幅がかなり広いですよ。例えば都心部だと「この範囲でこの金額」って明確に線引きされることが多いけど、地方は「それも相談できるんですか?」「これもお願いできますか?」と、どんどん頼っていただける。正直チャレンジングですけど、その分いろんなことが経験できると思っています。
──幅広い経験ができるのは魅力的ですね。
滝口:そうなんです。ただ、やっぱり地方でも人材を大切にする企業を選ぶことが大事で。Connect Designは本当に人を大事にする会社だから、幅広い業務を経験しながらも、きちんとした評価とサポートがある。
──その「人を大事にする」というのは、お客様に対しても同じなんでしょうか?
小谷:僕が地方で興味深いと思うのは、長年培われた独自のやり方を大切にされている企業が多いことなんですよね。
──独自のやり方、ですか?
小谷:例えば、誰が見ても赤なのに「うちはこれが青だ」って信じている世界があるんです。その企業にとっては20年間それでやってきた実績があるから、それが正しいと思っている。でも外から見ると改善の余地がたくさんある。その「青だと思っている赤」を、相手のプライドを傷つけずに一緒に本当の色に変えていく。これって地方だからこそ深く経験できるんです。
大槻:確かに。都内のお客様は情報も多いし、課題認識もある程度お持ちです。一方で地方のお客様は、日々の業務に追われて立ち止まって考える余裕がないケースが多い。だからこそ、課題発見から解決まで一緒に考えていける。
小谷:それに地方企業の良いところは、一度信頼関係を築けると本当に長くお付き合いいただけることなんですね。企業の成長を5年、10年という長いスパンで一緒に歩んでいける。短期的な成果だけじゃなく、企業の本質的な成長に関われるのは、本当に貴重な経験だと思います。
滝口:社内での横の広がりもあるし、お客様との深い関係性という縦の深さもある。両方経験できるのが地方の魅力だと思います。
──ただ、長年のやり方を変えていくのは難しそうですね。
小谷:難しいですよ、本当に。でも、だからこそやりがいがある。ただ情報を提供するだけじゃなく、なぜ変える必要があるのかを理解していただいて、実際に一緒に変革を進めて、成果が出て初めて「本当に良かった」って言っていただける。この一連のプロセスに深く関われるのは、地方ビジネスならではの醍醐味だと思います。
「人を大事にする」は綺麗事じゃない。新卒が安心して飛び込める理由
──新卒採用も検討されているとのことですが、経験の浅い方でも活躍できる環境はあるんでしょうか?
大槻:0から始めて4年間、伴走支援というサービスを形にしてきました。その中で「お客様に必要なステップはこういう段階がある」「デジタル化はこう進めると成功する」というノウハウが、今はっきり腹落ちしてる状態なんです。こうした経験は当然、自社の教育にも活きています。新卒で社会人経験がない方でも、1からしっかりと学んでいただける環境はあると、自信を持ってお伝えできますね。
滝口:外部から見ていて思うのは、Connect Designって本当に「人を大事にする」を実践してる会社なんですよ。前職でいろんな企業を見てきましたけど、ここまで社員一人ひとりと向き合ってる会社は珍しい。
──具体的にはどういう部分でそう感じますか?
大槻:例えば、失敗を恐れずに挑戦させてくれる環境があります。私たちも最初は手探りでしたから。お客様の前で「これはできません」じゃなくて「一緒に考えさせてください」って言える。そういう正直さが許される文化があるんです。
小谷:さっき話した「ちゃんとやってる前提」っていうのも大事で。新人だからって信頼しないんじゃなくて、最初から一人の専門家として見ます。もちろんサポートはしっかりするけど、「君ならできる」という前提で任せる。これって実は責任も伴うから厳しい面もあるんですけどね。
滝口:中小企業だからこそ、会社全体が見渡せるという利点もあります。経理部に入ったら経理だけじゃなくて、営業も開発も、会社がどう動いているのか全体像が分かる。将来的に経営視点を持ちたい人にとっては、実践的な学びの場になると思います。
大槻:それに、私たちが大切にしているのは、お客様の業務を理解して最適な解決策を提案する力なんです。これってプログラミングができるとかじゃなくて、「相手の話をちゃんと聞ける」「一緒に考えられる」という基本的なスキル。技術は後からでも学べますから。
──そういった環境で、皆さんはどんな方と一緒にチャレンジしていきたいですか?
小谷:目の前のお客様の課題を一つずつ解決していく。その積み重ねが地域を変えていく。そういう仕事に価値を感じられる方と一緒に働きたいですね。
大槻:学歴や経験は問いません。大事なのは「なぜ」を考えられるかどうか。なぜこの業務が必要なのか、なぜお客様は困っているのか。そういう本質的な部分に興味を持てる方なら、必ず成長できる環境があります。
滝口:地方には課題がたくさんあります。でも、それは同時にチャンスでもある。自分の手で何かを変えたい、誰かの役に立ちたいという思いがある方なら、Connect Designで活躍できると思います。
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