「再現性ゼロ」からの脱却。山形Connect Design経営陣が挑む、地方×デジタルの全国展開
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前編では「ITに振り切らない」独自のスタンスと地方でのキャリア形成について語っていただいたConnect Design経営陣の3名。後編では、地方デジタル化の現実と未来について、より踏み込んだ議論を展開していただきました。
「人がいない」という地方の根本課題、AI時代における地方企業の現状、そして最大のテーマである「再現性」の問題など──。山形での4年間で培ったノウハウをいかに全国へ広げていくか、リアルな経営会議さながらの本音トークをお届けします。
※前編はこちら
「人がいない」──地方企業が直面する根本課題と解決策
──地方のデジタル化を進める上で、一番の課題は何でしょうか?
小谷:やっぱり「人がいない」っていうことに尽きると思います。採用したくても来ない、育てたくても時間がない、外注したくても地方にはIT企業が少ない。
大槻:そうなんですよね。でも課題があるところに選択肢を増やすのが我々の役割だと思っています。例えば「こんな人と会ったことがない」ってお客様によく言われるんですけど、それって地方には課題に対する有識者がいないってことなんです。だから我々がその有識者として機能することで、お客様は選択肢を持てるようになる。
滝口:組織体制そのものを変えないといけない時期に来てると思うんですよね。地方企業って属人的なところが多くて、この人がいなくなったら業務が回らないみたいな状況がすごく多い。
──特定の人に頼りきりということですか?
滝口:まさにそうです。一人で経理も総務も労務も全部やってるベテラン社員がいて、その人も高齢化してきてて、特にバックオフィス系はもう60代70代の方が支えてるケースも珍しくない。だからデジタル化って単にシステム入れるだけじゃなくて組織再編とセットで考えないといけないんです。
小谷:だから僕らが目指してるのは企業の「インフラ」になることなんですよ。水道やガスみたいに、あって当たり前の存在。道路を使うごとく我々のサービスを使っていただくっていうイメージです。
──インフラですか。それは大きな構想ですね。
大槻:でも実際、地方企業にとってIT部門を持つのは現実的じゃないんです。1人2人雇ったところで何ができるかっていうと限界がある。だったら我々が組織の一部として機能した方が効率的だし、効果的なんです。
小谷:最近特に感じるのがバックオフィス人材の不足ですね。経理とか総務とか人事とか、どこの企業も高齢化が進んでて若い人材が入ってこない。でもこういう業務こそデジタル化の効果が出やすいんです。
滝口:そうなんですよ。しかも地方企業のバックオフィスって一人で何役もこなしてることが多いから、その人が辞めたら本当に大変なことになる。だからこそ業務を標準化してデジタル化して、属人性を排除していく必要があるんです。
大槻:結局「人がいない」という課題に対して、採用で解決するのか、内製化で解決するのか、アウトソーシングで解決するのか。その選択肢を提示して一緒に考えていくのが我々の仕事なのだと思いますね。
使わずにリスクを語る地方、使い倒してから考える都市部
──最近はAIの話題が多いですが、地方企業での活用はどうでしょうか?
小谷:正直、地方では机上の空論状態ですね。AIのリスクがどうこうって議論はあるんですけど、そもそも使ってない人がリスクを語ってる。使い倒してから言うリスクと使わずに言うリスクって全然違うと思うんですよ。
滝口:僕の感覚だと「DX終わってからAI」っていう順番があると思っていて。まだデジタル化すらできてない企業がAIって言っても、そもそも使うデータがないじゃないですかって話になる。
大槻:若い世代は生活の中でもうAI使ってるんですよね。でも地方企業の現実は、クラウドですら「危ない」って言ってる状況なんです。
──クラウドも危ないんですか?
小谷:そうなんです。「インターネット上に情報が」とか「セキュリティが」とか。でも今、東京などの都市部では誰もそんなこと言わないじゃないですか。地方は情報格差というより認識のタイムラグが5年10年あるんです。
大槻:生成AIを使ってどんどん成果を出してる会社がある一方で、使ってない会社は取り残されていく。若手が入社してきても「この会社AI使ってないの?」って違和感を感じる時代がもう来てるんです。
滝口:でも実際、地方企業の社長さんたちも危機感は持ってるんですよ。ただ何から始めたらいいか分からない、誰に相談したらいいか分からない。
──そこでConnect Designの出番ということですね。
小谷:まずは使っていく人口を増やすことが大事だと思ってます。難しいことは抜きにして、とりあえず触ってみましょうって。ChatGPT使って議事録作るだけでも全然違うんですから。
大槻:議論する前にやってみようっていうのが我々のスタンスです。失敗してもいいから小さく始めて、効果を実感してもらう。それが一番の啓蒙活動になると思います。
小谷:クラウドの時と同じなんですよね。最初は怖いって言ってた企業も今は当たり前に使ってる。AIも同じ道を辿ると思うので、早く始めた方が絶対に有利です。地方だからこそ、この波に乗り遅れちゃいけないと思います。
山形での実績を武器に東北から全国へ。脱・属人経営への挑戦
──今後の事業展開についてはどう考えていますか?
小谷:その前に、実は「再現性」っていうのが我々の最大の課題なんです。僕のヒアリング能力とか大槻さんの設計力とか、正直属人的すぎて再現性ゼロなんですよ。
滝口:だから「小谷君2号を作らない」っていう方向で考えてます。個人の能力に頼るんじゃなくて、組織として仕組み化していく。
大槻:4年間やってきて見えてきたのは、お客様の課題ってパターン化できるってことなんですよね。そのノウハウをパッケージ化すれば、ある程度の再現性は作れるはずです。
小谷:そう。それを踏まえて、山形でやってきたことを製品化していきたいと思ってます。基本的な型さえ使えば6割くらいはデジタル化の効果を実感できるような汎用性の高いパッケージを作ることが目標です。
大槻:山形って実は、日本の地方の縮図みたいなところがあって。製造業もあるし農業もあるし観光業もある。ここで通用するノウハウは他の地方でも絶対通用するはずなんです。
──山形から全国へということですか?
滝口:そうですね。東北から始めて、最終的には全国の地方企業を支援できる組織になりたい。「何かあったらConnect Designに聞けば」っていう存在になれたらいいなと。
小谷:「山形でやってきた」ってことが実は武器になると思っているんです。山形みたいな地域でも成功できるなら、他の地方でも絶対できるはずだって説得力がある。
大槻:最近、東京や大阪からの問い合わせも増えてきてるんですけど、結局都市部の中小企業も地方企業と同じ課題を抱えてるんですよね。人材不足とか属人化とか。
滝口:だから地方×デジタルっていう切り口は、実は日本の中小企業全体の課題解決につながる可能性があると思ってます。
──具体的にはどんなサービスを展開していくのでしょうか?
小谷:まずは伴走支援のフレームワークを確立することですね。初期診断から課題抽出、解決策の提案、実行支援、効果測定まで一連の流れをパッケージ化する。
大槻:それとツールの標準化も進めています。どの企業でも使えるような業務改善ツールとか、データ分析の仕組みとか。カスタマイズは必要だけど、ベースは共通化できる部分が多いんです。
滝口:あとは人材育成ですね。我々のノウハウを学んで、各地域で活躍できる人材を増やしていく。フランチャイズじゃないけど、Connect Designメソッドを使える人を全国に配置していくイメージです。
小谷:究極的には地方創生に貢献したいんです。デジタル化を通じて地方企業が元気になって、雇用が生まれて、若い人が地方に残れるようになる。そういう好循環を作っていきたいですね。
求めるのは「困ったらあの人に聞こう」と思われる人
──最後に、Connect Designではどんな人材を求めているか、改めて教えてください。
小谷:僕の中でいい人材の定義が1つあって、何か困ったなと思ったら「あ、あの人に最初に相談してみようかな」って思われる人なんです。それは社内でも社外でも関わらず。
──「1番身近な相談者」ということですか?
小谷:そうです。技術的なスキルとか経験とかより、まず相談したくなる人。お客様から「デジタルのことは分からないけど、とりあえずConnect Designに聞いてみよう」って思ってもらえる。そういう存在になりたいと思う人と、一緒に働きたいです。
大槻:身近な改善から始められる人がいいですね。例えば地方だとまだ回覧板が紙で回ってたりするんですけど、「これデジタルにしたら便利じゃない?」って軽く思えるような人。大げさに考えずに、ちょっとした不便を解決していこうっていう感覚を持ってる人。
滝口:結局、頼られる人って思いがあるんですよ。この人は本当に私たちのことを考えてくれてるっていう思いが伝わるから、みんな相談したくなる。スキルは後からついてくるけど、その思いは最初から持ってないと難しい。
──具体的にはどんな場面でそういう人材が活躍できますか?
小谷:地方ビジネスって泥臭いんです。お客様のところに何度も足を運んで、じっくり話を聞いて、一緒に悩んで。でもその分、お客様との距離が近くて、「ありがとう」って直接言ってもらえる。そういうやりがいを感じられる人には最高の環境だと思います。
滝口:社会のためとか人の役に立ちたいとか、そういう思いを持ってる人は本当に実感できる仕事だと思います。自分がやったことで企業が変わって、そこで働く人たちが楽になって、地域が活性化していく。そのプロセスに関われるのは本当に貴重な経験です。
──それは、年齢や経験は問わずでしょうか?
小谷:全然問いません。新卒でも中途でも、大事なのは「なぜ」を考えられるかどうか。なぜこの仕事が必要なのか、なぜお客様は困っているのか、そういう本質的な部分に興味を持てるなら年齢は関係ない。
大槻:むしろ若い人の感覚って貴重なんですよ。「なんでこんな面倒なことやってるの?」って素朴な疑問が、実は改善のヒントになったりする。
滝口:あとはやっぱり楽しく働きたい人ですね。仕事は大変なこともあるけど、それを楽しめる。サウナ行ったり筋トレしたり、そういうのも含めて楽しめる人がいいなと。
小谷:地方には課題がたくさんあります。でもそれは同時にチャンスでもある。自分の手で何かを変えたい、誰かの役に立ちたい、そういう思いがある方なら、Connect Designで必ず活躍できると思います。興味を持っていただけたら、ぜひ一度お話しさせてください。