はじめに
前回のストーリーで、KCという社名が"Keep Close"に由来していて、クライアントのそばに居続けることを事業のかたちにしたい、という話をしました。
その思想を、実際のビジネスモデルとしてどう形にしているか。今回はその核となる「一業種一社制」についてお話しします。
一業種一社制とは
KCでは、一つの業種に対して、深く関わるクライアントは基本的に一社に限定しています。
複数のクライアントを薄く広く担当するのではなく、一社に対して複数年単位で深く入り込み、その企業の事業構造や組織、キーマンの考え方までを理解した上で伴走する。これが「一業種一社制」です。
コンサルティングファームの一般的な成長モデルは、ある業種で得たノウハウやソリューションを、同業他社に横展開していくことです。効率よく売上を伸ばせる、理にかなったやり方だと思います。KCは、あえてこのモデルを選びませんでした。
なぜこの形にしたのか
理由は、コンサルタントという仕事が構造的に抱えている、ある種の「信頼の壁」にあります。
ある企業で深く入り込んで得たノウハウや業界理解を、次はそのまま同業他社への提案材料にする。それがコンサルティングビジネスの基本的な仕組みです。個々のコンサルタントがどれだけ誠実であっても、ビジネスモデルそのものが「この人は、いずれ競合の支援にも回るかもしれない」という前提を、クライアントに抱かせてしまう。
そう考えると、クライアントが本当に深い経営課題や、社内の力学、まだ言葉にできていない不安まで打ち明けてくれるかどうかには、自ずと限界が出てきます。
KCは、一つの業種で複数のクライアントを持たないことで、この構造そのものを取り除きたいと考えました。
クライアントにとっての価値
一業種一社制の一番の価値は、クライアントが安心して深いところまで話せる関係をつくれることです。
自社の内情を理解した人間が、翌年には競合の支援に回っているかもしれない、という心配をする必要がありません。何年も同じ担当者が伴走することで、組織の歴史や過去の意思決定の背景まで踏まえた提案ができるようになります。プロジェクト単位の「点」の関係ではなく、事業のパートナーとしての「線」の関係に近づいていく。それが、KCが目指している価値です。
コンサルタントにとっての意味
正直に言うと、一業種一社制は、短期的な売上効率だけで見れば非合理なモデルです。同じ業種で複数のクライアントを持てないので、水平展開による成長スピードは大手ファームに敵いません。
その代わり、一つのクライアントと何年も向き合う中で得られる理解の深さ、信頼関係の厚さは、案件を渡り歩くスタイルでは得がたいものです。表面的な提案ではなく、本当にその企業のためになる意思決定を、腰を据えて支え続けられる。それが、KCで働くことの醍醐味だと思っています。
次回予告
「一社に深くコミットし続ける」というこのモデルは、コンサルタント個人のキャリアの積み方や、社内の評価・報酬の仕組みとも密接に関わってきます。特に、マネージャーやシニアマネージャーになっても現場を離れずにいられる仕組み――KCが掲げる「デリバリー中心主義」については、次のストーリーで詳しくお伝えします。