はじめに|採用市場で見えた「情報の不透明さ」
2026年下期から、私たちは採用媒体を活用した採用活動をスタートしました。 初めて本格的に転職市場を覗いてみて、素直に感じたことがあります。それは、「企業と求職者のマッチングって、結構難しいのでは……」ということです。
初めて求人サイトを活用してみて驚いたのは、掲載できる情報の多くが給与や勤務地といった「条件面などの表面的な内容」に限られてしまうという現実でした。
求職者の方からすれば、これだけではその会社の本質を見抜く判断材料にはなり得ないのではないか。
一方で企業側からしても、本当に届けたい「会社のカルチャーや思想」や「働くリアル」の情報があるのに、それを求職者に届けるまでに莫大なコストと労力がかかってしまう。そんなもどかしさを強く感じたのです。
この情報の不透明さに対して、採用の領域ではまだ新参者である私にできること。それは、綺麗にパッケージされた求人票を出すことではなく、「これまで経営サイドで泥臭く作り込んできた理念やカルチャー、数々の試行錯誤を経て行き着いた制度のすべてを、包み隠さずオープンにすること」だという結論に至りました。
条件面の奥にある、私たちのマネジメント論や組織のリアルを届けていくことこそが、求職者の方にとって本当の意味での判断材料になると信じています。また同時に、私たちと同じような規模で組織づくりに悩む経営者やマネジメント層の方々にとっても、何かしらのヒントになれば嬉しく思います。
まずは私たちの組織の特徴である「人事評価制度」からいくつかの記事に分けて紹介します。
「なぜ、たった10人程の規模の会社が、人事制度設計にこだわったのか」
その経緯をシェアしたいと思います。
目次
はじめに|採用市場で見えた「情報の不透明さ」
1.形骸化された評価制度が組織にもたらす影響とは?
2.組織の拡大の頭打ちと「期待値のズレ」
3.流行りの手法に対する見解と、従来のやり方の限界
4.不動産業界の構造|「労働集約」が生むエキスパート経営の合理性と課題
5.nodomaruの思想|「ながく関われる会社」と「リーダーの輩出」
「ながく関われる会社」をつくるために
私たちが目指す「リーダーの輩出」とは
6.HOPグループとの出会い|不動産業界で「レバレッジ経営」を機能させる
7.おわりに|次回予告
1.形骸化された評価制度が組織にもたらす影響とは?
先ず私自身は前職の大手企業勤めのとき、そもそも人事評価制度については良い印象をもっていませんでした。
これを読んでくださっている方の中にも、
「評価のための評価になっている」
「形式的な面談にあまり意味を見出せない」
といった経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、新人研修時に聞いていた「ジョブローテーション」に期待し、初期の配属先で目の前の仕事に全力で取り組みました。しかし、毎年希望を出していた人事や経営企画への配属は叶いませんでした。もちろん実力不足だった面はあると認識していますが、当時は「明確に何ができれば希望の部署へ異動できるのか、あるいはできないのか」という基準が一切提示されていませんでした。
また、評価項目に記載されている内容は、自身のキャリアパスに向かうものや成長に繋がるものではなく、取引先の売上見込数字や事業成長性など担当業務の達成率が主なものでした。
数年のキャリアが過ぎるときには「忙しいときにめんどくさい作業だな」としか思わなくなっていたのが事実としてあります。
ありがたいことに人事評価はAやSなど好評価が得られていたのにもかかわらず、それがどのような基準で付与されていたのかは不明瞭で、
「自分は一体世の中でどのくらいの価値があるのか」
「ちゃんと成長できているのか」
といった不安もありました。
このような経験から、
「会社の都合に振り回されるのではなく、自分の力でキャリアを切り拓ける環境へ進みたい」
と考えたことが、転職を決意するきっかけとなりました。
本来社員のために導入された制度にもかかわらず、その制度の仕組みや運用が機能していないことで、社員が組織を離れる、もしくはポテンシャルが発揮されていかないということは往々にしてあると考えています。
このような事例は大手企業のみならず、中小企業などほとんどの組織でもあるのではないでしょうか。
2.組織の拡大の頭打ちと「期待値のズレ」
私がnodomaruに転職してきた当初、組織はまだたった10人ほどの規模でした。当然ながら、明確な人事評価制度など存在しません。最初は制度や仕組みはなくとも、理念だけで動けるアットホームなチームでした。
しかし、リファラルを通じて共感してくれる仲間が少しずつ集まり、組織が大きくなり始めたとき、私たちは「人材の拡大が頭打ちになり、離職者が増えていく」という課題に直面したのです。
その大きな背景にあったのが、会社とメンバーの間で起きる「方向性のすり合わせ不足」です。
会社には掲げる理念があり、それに伴ってメンバーに期待する役割があります。一方でメンバー自身にも「こんな風に生きていきたい」という人生の想いがあります。これら双方の方向性が合致していないと、どれだけ優秀でやる気のある人でも、頑張る方向性を見失い路頭に迷ってしまいます。
それに加えて、当時の小さなベンチャー企業ゆえの課題でもありましたが、「自分や会社がどれくらい成長し、どれくらいの成果を出せば、どのように給与が上がっていくのか」という将来の道筋が、当時のメンバーには見えていませんでした。
実際に、先のキャリアが見えづらい中で別の事業に興味を持って転職していったメンバーや、将来家庭を持つことを見据えて大手企業へ再転職していったメンバーもいました。
この「期待値のズレ」を解消し、将来の給与やキャリアの道筋を明確に提示することで、全員が迷わず走れるようにしなければならない。
そう痛感したことが、私たちが制度構築へと舵を切ったきっかけでした。
3.流行りの手法に対する見解と、従来のやり方の限界
人事評価制度を構築するにあたっては、近年トレンドとなっている「ノーレーティング」や「360度評価」といった手法があります。
しかし、私たちは組織規模がまだ発展途上である段階でこれらを導入することに対して、「どうしても主観が入りやすく、属人的な評価(人気投票のようになってしまうなど)に陥りがちだ」という見解を持っていました。
そのような制度を中途半端に取り入れるくらいなら、「まだ経営者が一人ひとりを直接見て感覚で判断する方がマシだ」という感覚すらありました。
しかし当然ながら、経営者の感覚による評価は「どんぶり勘定」の域を出ません。
組織が拡大すれば必ず不公平感が生まれますし、何よりメンバー自身が納得してキャリアを描くことが難しくなります。
4.不動産業界の構造|「労働集約」が生むエキスパート経営の合理性と課題
制度導入にあたり、最初に直面した課題が、不動産業界特有の構造でした。
一般的に不動産業は、個人の営業力やマンパワーに依存する「労働集約」のビジネスモデルです。このモデルにおいては、一人で自立して成果を出せる「1人材」をいかに量産できるかが、そのまま会社の収益基盤を支えるポイントとなります。
そのため、個々のスペシャリストがそれぞれの能力で数字を追う「エキスパート経営」が業界の主流となっています。
そして業界の特徴でもある「成果に応じたインセンティブ主体の報酬体系」は、他業界と比較すると、業界特有の収益構造から生まれた合理的な仕組みでもあります。
たとえば、飲食業や小売業のような「薄利多売で日常的な需要があり、一定の売上予測が立ちやすい(緩やかなストック性がある)ビジネス」とは異なり、不動産業は扱う商品の単価が比較的大きく、顧客の生涯成約頻度は少ないです。つまり、毎月の売上のストック性が低く、業績のボラティリティが大きいビジネスなのです。
この構造においては、売上(出来高)に応じて報酬を支払うインセンティブ設計にすることで、会社としては経営上のリスクを最小限に抑えることができるのです。
また同時に、成果を出せる人や、達成欲が高い人にとっては、自分の頑張りがダイレクトに報酬へと繋がるため、強力なモチベーションになるという大きなメリットもあります。
しかしその一方で、この座組は組織を拡大していく上で別の構造的課題も生み出します。
個人の売上数字のみが評価基準となる環境では、突き抜けた優秀なトッププレイヤーほど、組織に所属し続ける理由が薄れ、「独立」へと繋がりやすくなるという側面があります。
また、マネジメントやイネブルメント(教育やナレッジ化)が評価基準に含まれないため、「自分のリソースを他者の育成や組織の仕組み化に割くメリットがない構図」が自然と生まれてしまいます。この構図が成果を出せる人とそうでない人の格差を広げ、組織内での二極化が進む原因にもなります。
5.nodomaruの思想|「ながく関われる会社」と「リーダーの輩出」
不動産業界における「インセンティブ主体のエキスパート経営」には明確な合理性があります。しかし、私たちが大切にしたい組織の思想と照らし合わせたとき、矛盾が生じていました。
創業者の組織意義の思想として、
「ながく関われる会社であること」そして「リーダーを輩出すること」があります。
「ながく関われる会社」をつくるために
不動産という仕事が好きで、どれだけ業務に向いているメンバーであっても、人生のあらゆるフェーズ(結婚、出産、あるいは自身のキャリアの転換など)を迎えたとき、給与のボラティリティがあまりに大きい環境では、どうしても将来への不安が拭いきれなくなります。実際に、当時のnodomaruでも先のキャリアやライフプランが見えづらくなり、大手企業などへ再転職していった仲間がいました。
単発の売上を上げて燃え尽きる、あるいは持続可能性に不安を抱える組織ではなく、メンバーがライフステージの変化を迎えても安心して働き続けられ、ゆっくりでも着実に、人として・ビジネスパーソンとして成長していける環境を作りたい。
そのためには、個人のマンパワーだけに頼る経営から脱却する必要がありました。
私たちが目指す「リーダーの輩出」とは
また、私たちが目指す「リーダーの輩出」とは、単に自分がずば抜けた成果を上げる「スーパー営業マン」を増やすことではありません。
私たちが考えるリーダーとは、「関わる人の可能性に火をつけ、その人が持つ力を最大限に発揮させられる人」です。
個人がそれぞれの数字だけを追う従来のやり方のままでは、どれだけ優秀な人が集まっても、それは「個人商店の集まり」の域を出ません。私たちが求めていたのは、一人のカリスマに依存する組織ではなく、メンバー同士が互いの強みを引き出し合い、チームとして何倍もの成果を生み出せる組織でした。
しかし、当時の私たちは事業モデルに則り、「インセンティブ制」をとっていました。
「思想」と、実際の「評価や給与の運用」が、完全にアンマッチを起こしていたのです。
6.HOPグループとの出会い|不動産業界で「レバレッジ経営」を機能させる
上記のような課題感に直面していた中、私たちは組織づくりのプロフェッショナルである「HOPグループ」さんとご縁がありました。
HOPグループ(一般社団法人 成長企業研究会/株式会社ワンストップHOP)様は、社労・税理・司法等の観点から総合的に中小企業の組織開発や仕組み化、人材育成を支援されているコンサルティンググループです。
そこで出会ったのが、まさに私たちが理想としていた、組織力と仕組みで事業を拡大していく「レバレッジ経営」という思想と、それを支える人事評価の概念でした。
エキスパート経営に頼るのではなく、チームの力を引き出すリーダーを育て、組織としての相乗効果(レバレッジ)を効かせる経営へシフトしていく。
その方向性が明確になったことで、私たちは「今のnodomaruの理念や思想、そして事業の実態に合った評価制度をどうやって形にしていくか」という地道な設計作業に、本格的に向き合い始めました。
「個人の成果」と「組織への貢献や育成」をどのように両立させ、メンバーが納得して走れる評価基準に落とし込んでいくのか。ここから、私たちの本気の制度設計がスタートしたのです。
レバレッジ経営とは?
先ほどご紹介した、労働集約モデルで一般的な「エキスパート経営」との対比で、さまざまな能力を持った人たちで組織をつくり、組織力と「仕組み」で事業拡大を目指していくスタイル。特定のトッププレイヤーを量産するのではなく、多様な人材を開発し、組織の中でマネジメントを担う人材を育てていくことを重視する経営スタイルです。
参考文献・クレジット
本考課制度の思想構築および「レバレッジ経営」「エキスパート経営」の概念化にあたっては、弊社の制度設計パートナーである株式会社ワンストップHOP様にコンサルティングのご協力をいただくとともに、同社の知見が凝縮された以下の書籍を大いに参照・引用しています。
- 小川実 著:Amazon.co.jp: 小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか : 小川 実: 本
- 大神千穂 著 / 小川実 監修:小さな会社の「人材育成」はなぜやりきれないのか | 大神千穂, 小川実 |本 | 通販 | Amazon
7.おわりに|次回予告
私たちが綺麗事ではなく、本気でメンバーの人生に向き合い、試行錯誤しながら作り上げてきたこの評価制度。
次回は、いよいよその具体的な「中身」に踏み込みます。
- 「具体的にどのような評価項目があるのか?」
- 「どのようにして賃金レートや要件が決まっているのか?」
すべてオープンにお伝えしたいと思います。
なお、この制度は作ってすぐにポンと導入できたわけではありません。
実は、全体に適用するまでに「約2年間」もの歳月をかけて試運転を繰り返し、本格導入してからもさらに1年──。
計3年以上の歳月をかけて、地道にアップデートし続けてきたものです。
従来のインセンティブ制から制度を一新する際のリアルな葛藤や、実際に運用してみて初めて直面した壁……。
そんな、制度の“綺麗事”ではない『3年間の試行錯誤のリアル』については、制度内容を公開したあとの第3回の記事で、じっくりとお話しさせてください。
nodomaruでは、共に働く仲間を募集中です。
少しでも興味を持っていただけた方は、まずはカジュアル面談からざっくばらんにお話しできると嬉しいです。
ご連絡お待ちしております!