こんにちは。株式会社VEXUMでCOOを務めている、青木こるです。
おかげさまで会社は今月で1年目を終え、いよいよ7月より2年目に入ります。このタイミングで、数字の話でも戦略の話でもなく、僕がこの一年で一番伝えたかったことを、ちゃんと言葉にして残しておきたいと思って、これを書いています。
普段、朝のラジオや現場でメンバーに話していることを、もう一段だけ深くしたものです。少し長くなりますが、流し読みでいいので、最後まで付き合ってもらえたら嬉しいです。
今日の主題は、一つだけ。
自分の人生のペンを握ろう。
これに尽きます。日々起きる選択のすべてにおいて、自分の足で、自分の軸でちゃんと動けているか。今日はそういう話をさせてください。
■ 安心してください。一年前の僕も、誰かのレールの上にいました
最初に言っておきたいんですが、こんな偉そうに書いている僕も、つい最近まで、完全に誰かの敷いたレールの上を歩いていました。
高校に入ったのも、サッカーを選んだのも、大学に進んだのも。正直に振り返ると、全部「親は、こうしている自分を喜ぶだろうな」「これをやったら周りに褒められるだろうな」で決めていたんです。人生のペンを、ずっと自分以外の誰かに握らせていました。理系に進んで、1年、2年と、特にやりたいこともないまま、「とりあえず年収が高いって言われてるからいいか」くらいのノリで過ごしていました。
20歳になる頃、今でも覚えているんですが、「このまま終わっていいのかな」と一ヶ月くらい本気で考え込んで、少し塞ぎ込んだ時期がありました。
そんなとき、僕を救ってくれたのは、意外にも「就活」でした。大学院に進むことだけが正解じゃない、会社に入るという選択肢もあるんだ、しかも世の中にはこんなに面白い会社がたくさんあるんだ、と。その瞬間、自分の中で選択肢がぶわっと広がる感覚があったんです。「自分の足で、自分の軸で選んでいいんだ」と初めて思えた。あれが、僕が自分のペンを握り直した第一歩でした。
なので、これから書くことは、特別な才能を持った人間の話ではありません。一年前まで普通に流されていた人間が、もがきながら掴んだ、ただの実感です。
■ レールに乗ること自体は、悪くないんです
勘違いしてほしくないのですが、僕は「レールに乗るな」と言いたいわけではありません。
大学に行く、就活をする、インターンをする、会社に入る。これらは何も悪くない。むしろ合理的です。だって、世の中が、社会が、わざわざ用意してくれている道なんですから。乗っておけば見え方も安定するし、年収もそれなりについてくるかもしれない。だから、これをすること自体を悪いとは思っていません。
問題は、そこではなくて。
一番怖いのは、レールに乗っていることに「無自覚」なまま、人生を進めてしまうことです。
レールは、誰かが用意したものです。主語が自分じゃない。だから僕は、「自分は今、誰かが用意してくれたレールの上を進んでいるんだ」という自覚を持って進むこと、それだけが本当に大事だと思っています。
同じ大学生活でも、「なんとなく流されている」人と、「自分で選んで今ここにいる」と自覚している人とでは、一年後にとんでもない差がつきます。やっていることが同じでも、主語が自分かどうかで、見える景色がまるで違うんです。
そしてこれは、大きな進路の話だけではありません。もっと細かい、日々の選択の話です。
たとえばジムが習慣になっている人にとって、「今日ジムに行くかどうか」はもう選択肢ではありません。その人が本当に選んでいるのは、「どの部位を、どのくらいの強度で鍛えるか」「ベンチを次90に上げるか、80で止めておくか」という一段先の選択です。前に進んでいる人は、そういう細かい日々の選択を毎日している。日々の小さな選択の積み重ねからしか、差はつかないと思っています。
■ 大きな夢はいりません。「謎の熱量」さえあればいい
「じゃあレールから逸脱するには、それなりに大きな夢や目標がないとダメなんでしょう?」と思うかもしれませんが、そんなものはなくて全然いいんです。
必要なのは一つだけ。「このまま終わりたくないな」「周りと同じように、ただ消化していく人生ってなんか違うな」「もっと自分を試していきたい」――その、ちょっとした違和感と衝動です。
僕はこれを「謎の熱量」「謎の自信」と呼んでいます。
よく言われるんです。「なんでそんなに頑張れるんですか」「なんでできると思えるんですか」って。正直、明確な根拠なんてありません。僕を動かしているのは、いつも、日々感じる「このままでいいのかな」という違和感と、「自分ならできるだろう」という謎の自信、謎の熱量。それだけなんです。
実際、僕は5年後も10年後も、自分が何をしているか全く決まっていません。でも、「今と同じかそれ以上に挑戦し続け、楽しく生きているだろうな」という自信だけはあります。それは大学名でも会社の看板でもなく、「青木こる」という人間そのものを日々強くしてきたから。自分の熱量を上げたまま過ごしてきたからだと思っています。
■ なぜ、この話を「今」するのか
ここまで読んで、「で、なんで次年度の頭にこんな話をするの?」と思っているかもしれません。
理由は、VEXUMの2年目が、これまでとは比べものにならないスケールになるからです。東京へ、全国へ、そして海外へ。新しいサービスも、新しいポジションも、かつてない数で生まれます。
つまり、一人ひとりが「自分のペンで挑戦できる打席」が、爆発的に増えるということです。
でも、打席がいくら増えても、バットを振るかどうかを決めるのは自分自身です。「レールが増えたな」と流されるのか、それを「自分で選んだ挑戦」に変えるのか。次の一年でVEXUMがどれだけ大きくなるかは、一人ひとりがどれだけ自分のペンを握れるかにかかっています。
だから、事業計画より先に、この話をしておきたかったんです。
■ 僕らの仕事の原点は、「目の前のクライアントを幸せにする」ことです
抽象的な話が続いたので、ここからは僕らの具体的な仕事の話をします。
この中には、いつか自分で事業をやりたい、自分の力でお金を稼ぎたいと思っている人が必ずいるはずです。そういう人にこそ、今やっている常駐の経験は、本当に大事です。
なぜなら、目の前のクライアントの満足度を上げられない人間が、事業を成功させられるわけがないからです。
すごいサービスを作って世の中を変えてやる、と意気込む人は多い。でも、現実はそんなに甘くありません。目の前のお客さんの課題を一つ解決して、「ありがとう」をもらう。それが複数の人から、複数の会社から集まって、気づいたら事業になり、会社になる。順番はいつもこっちです。最初から「会社を立てること」がゴールになっている人は、正直、少し不思議に思います。
僕は、お金って「ありがとうの数」だと思っているんです。
現場の限られた時間の中で、情報を取りに行くもよし、社長と話しに行くもよし、現場の担当者の隣に座るもよし。何をしてもいい。その中で、自分はこのクライアントのために最大限の時間を使えているか。それがちゃんと「ありがとう」という形で返ってきているか。ここに本気でコミットできるかどうかが、すべての出発点です。
そして、もし今ある手段でその価値を届けられるなら、わざわざ会社を作る必要なんてない。逆に、届ける手段が世の中にないなら、自分で作ればいい。ただ、それだけの話だと思っています。
■ 常駐の本当の意義は、「情報の非対称性」を埋めることです
「業界の知見もない若手が、現場で何ができるの?」と、よく言われます。自分でもそう思う瞬間があるかもしれません。
僕の答えは、はっきりしています。
常駐の本質は、ただの業務代行でも派遣でもありません。現場に入り込んで、現場の見えない箇所を埋めることです。
クライアントが言葉にできる要望なんて、氷山の一角です。本当に大事なのは、2、3回ミーティングに顔を出しただけでは分からない暗黙知や、現場の中にあるぐちゃぐちゃな構造の中にある。そこに入り込まないと、抜本的な解決策は出てきません。常駐は、そのためにあります。
「この作業がこれだけ時間短縮できました」というのは、価値の本体ではなく、現場の信頼を積むための入り口でしかない。欲しいのは、その先です。
そしてもう一つ、現場に入るときに絶対に忘れないでほしいことがあります。
「中の人」になりすぎないこと。外部の視点を持ち続けることです。
現場に長くいすぎると、本当は変えられる「変数」が、変えられない「定数」に見えてきます。たとえば建設業界で、毎日17時に日報を出す。多くの人にとって、これは「そういうもの」=定数です。でも、外から来た僕らには問えるんです。「そもそも、この日報の本当の目的は何だっけ?」と。目的が"現場が安全に進んでいるかを把握すること"なら、手段は日報でなくてもいい。音声でもいいし、カメラをつけておいてAIが自動で要約してもいい。
業界に3年、5年といると、この違和感が消えていきます。だからこそ、若手で、外部の視点を持っているみなさんにしか起こせないイノベーションがある。「定数だと思っていたものが、実は変数だった」と気づかせること。これが、若手が現場で出せる最大の価値の一つです。
■ AI時代に、自分が握るべき「本当の価値」
ここで、少し未来の話をします。
今、AIによって「タスクをこなす能力」が、すごい勢いでコモディティ化(汎用化)しています。コーディングも、市場分析も、マーケティング分析も、AIを使えば誰がやっても大差がなくなってきている。ティッシュやトイレットペーパーが、どこで買ってもほぼ同じ値段なのと同じです。「この店のこのティッシュじゃないと無理」なんて、ないですよね。
つまり、「コーディングができる」「分析ができる」というタスク単位のスキルだけでは、若手はもう戦えません。誰でもできることに、"自分である理由"がないからです。
では、何が残るのか。
実在する組織を動かして、変化を起こせる人間です。
OpenAIやAnthropicが今、それぞれ巨額を投じて「Forward Deployed Engineer(FDE)」という職種を立ち上げています。ツールを売るのではなく、現場に常駐して、企業の業務にAIを根本から組み込み、変化を起こす人材。その価値が、急激に上がっているんです。
AIを使いこなして、指示される側ではなく、出す側に立てる。相手の業務課題を、AIの解決策に翻訳できる。しかも、AIが分からない人にも翻訳できる。そして、現場で信頼される。――この力を最速で鍛えられる場所こそが、まさに常駐です。
僕がいつも言う「AI時代の最強の個人になる最短ルートは常駐」というのは、こういう意味です。世界最先端の会社が今ようやく始めたことを、みなさんはもう毎日やっている。これは、とんでもないアドバンテージなんです。
■ 51万社と、僕らが描いている大きな絵
ここで、僕らの事業の全体像も共有させてください。
投資の世界に、VC(ベンチャーキャピタル)とPEファンドというものがあります。VCがお金だけを積んで、伸びる会社に賭けるのに対して、PEファンドはもっと内部に入り込む。人材を投下して、企業価値そのものを上げるんです。お金だけを積むわけではない。
僕がやりたいのは、こちらの世界観なんです。
VEXUMのメンバーが現場に常駐し、その企業の価値そのものを上げていく。AIという領域に限らず、経営や事業の根っこまで踏み込んでいく。今、僕らは150社近くの企業と関わっています。「この企業とこの企業はシナジーがあるから、一緒にこういう事業を作ったら面白いんじゃないか」――そんな会話が当たり前にできる組織になれたら、それはもう最強の組織だと思います。
そして、僕らが本当に向き合うべき相手は、数億円を払える大企業ではありません。日本全国に51万社あると言われる、中規模の事業者です。日本の根本を支え続けているこの会社たちに、AIという武器を届けられるかどうか。お金のある企業だけがAIを使える世界ではなく、一人ひとりの能力を開花させる世界を本気で作るなら、向き合うべきはここなんです。
ここに切り込んでいける。だから、意味がある。そこが僕らの圧倒的な強みです。みなさんが今いる現場の一つひとつが、この大きな絵の一筆になっています。
■ そして、自分の「情けなさ」を直視する
ここまで熱量の話をしてきましたが、正直に言います。誰もが、最初からそんな熱量を持てるわけではありません。
僕の考え方を、3つのステップで整理させてください。
一つ目は、現実的な損得を肯定すること。やりたいことが明確にないなら、将来の給与アップで元が取れる可能性が高い大学進学という選択は、現実的に見て十分に合理的です。これは認めていい。
二つ目は、現状への強烈な違和感と、理想の提示。ただ、本質的には、そういうコスパや損得で自分の人生の選択を語ること自体は、僕はやっぱり"しょうもない"と思っています。僕が理想とするのは、計算や、敷かれたレールから「逸脱したい」という強い熱量、衝動を持って生きることです。
三つ目は、情けなさの直視。とはいえ、誰もがそんな熱量を持てるわけではない。もし今、自分にやりたいこともエネルギーもないなら、無理に自分を飾るのではなく、何も考えていない情けない自分を、徹底的に自覚して直視してほしいんです。「自分は今、人が敷いたレールの上を、妥協して歩いているんだ」という事実から目を背けず、その情けなさを引き受けながら生きること。無自覚に流されるのではなく、自覚的に妥協すること。これが、今の自分に向き合う一番誠実な生き方だと思っています。
大学に行ったから成功した、行かなかったから失敗した。そんな二択の話で人生を終えたくない。30代になって「あのとき、ああしておけば」と逃げ道を作り続けるのは、なんだか少しもったいないと思うんです。
■ モチベーションは、行動の「後」からついてくる
最後に、一番実践的な話をします。
「でも、やる気が出ないんです」と、よく言われます。
断言します。モチベーションは、いりません。なぜなら、気持ちは行動に先行しないからです。
たとえば、お腹いっぱいの人に「今すぐお腹を空かせてください」と言っても無理ですよね。お腹いっぱいなんだから。これが意味しているのは、気持ちは先行しないということです。先行するのは行動。だから、「モチベーションが出ないからできない」のではなく、「やらないからモチベーションが出てこない」が正解なんです。
大事なのは、先に動くこと。僕は基本、何事も50%くらいの確信で動きます。「これは多分、やってみたほうがいいかも」で動いて、周りの反応を見る。良ければそのまま70%、80%と詰めていく。悪ければ撤退する。実際、毎日何かしら撤退しています。
そして、賛否は、アクションを起こした人にしか生まれません。「あのアクション、すごく良かったよね」というフィードバックがリーダーから一つもない人は、正直、少し焦ったほうがいい。動いていれば、毎週そういう会話が生まれるはずなんです。逆に、いつも同じことで悩んでいるなら、それは動いていないサインです。
選択肢が無限にある時期の最大の罠は、「できる自分」を美化して、実際には行動を起こさないことです。「自分は頭がいいからこれはできる、でもまだやっていないだけ」――これは、できなかったときの保険です。そういう人は、「あの人、賢いのにもったいないね」と言われて終わっていく。
そんな人生で、終わりたくないですよね。
■ 次の一年へ。あなたのペンで、次の歴史を
長くなりました。でも、これが僕がこの一年で一番学んだことであり、次の一年を一緒に走る仲間に、どうしても渡しておきたかったものです。
今、目の前で挑戦していること、向き合っていることが少しでもあるなら、それが認められるかどうかは一旦置いて、まず行動してほしい。やり続けてほしいんです。
それがVEXUMでの常駐なら、目の前のお客さんを、とにかく幸せにすることだけ考えればいい。それ以外は、何も考えなくていい。主張して、ぶつかって、ときには意見が衝突するかもしれない。でも、それはアクションした結果でしか得られない経験なので、僕はむしろ素晴らしいことだと思います。そうなったときに頼れる人は、リーダーも含め、僕も含め、いくらでもいます。困ったら、喜んで一緒に動きます。だから、それくらいの勢いで挑んでほしい。
レールに乗っていてもいい。逸脱してもいい。どちらでもいいんです。
ただ、その選択を、誰かではなく、自分の手で握ってほしい。
次のVEXUMの歴史を創るのは、この文章を読んで、ほんの少しでも心が動いた、あなたかもしれません。
次の一年も、自分の人生のペンを握って、最高に面白がっていきましょう。
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました。
株式会社VEXUM COO 青木こる