京都府の小さな町で育ち、物理学を学び、イギリスの大学院を経てデロイトへ。その後、戦略コンサルティングファームのフィールドマネジメント、急成長スタートアップのキャディで経験を積み、2025年7月に仙台でオプトアップ株式会社を創業したのが、代表の佐金拓耶です。
コンサルティングファームで「考える力」を、事業会社で「現場を動かす力」を身につけてきた佐金が、いまオプトアップで取り組んでいるのは、人の手で回している業務を、人手がかからない仕組みに変えていくこと。
順風満帆に見えるキャリアの裏には、圧倒的な実力差に苦しんだ時期や、家族との暮らしを考え抜いた決断がありました。今回は、佐金のこれまでのキャリアと仕事への向き合い方、そしてオプトアップで一緒に働く仲間に求めることについて話を聞きました。
Profile|佐金拓耶(さかねたくや)
オプトアップ株式会社 代表取締役。 京都府与謝野町出身。神戸大学理学部物理学科を卒業後、英国エクセター大学ビジネススクールで、準備コースを含む2年間を過ごし、国際経営学修士(MSc International Management)を取得後、新卒でデロイトに入社。
3年でシニアコンサルタントに昇格する。その後、戦略コンサルティングファームのフィールドマネジメント(現フィールドマネジメントストラテジー)で2年間コンサルタントを務め、製造業向けスタートアップのキャディ株式会社へ。約3〜4年にわたり、急成長フェーズの事業づくりやオペレーション構築、倉庫の立ち上げなどに携わる。2025年7月、仙台でオプトアップ株式会社を創業。業務量診断から自動化の仕組みづくり、事業開発の伴走支援まで幅広く手がけている。
壁当てと結婚式場。原点は「どうすればうまくいくか」を考え続けること
―まず、これまでのキャリアについて教えてください。
佐金:高校までは、京都府の与謝野町という本当に小さな町で18年間過ごしました。大学は神戸大学の理学部物理学科に進み、その後イギリスのエクセター大学ビジネススクールで、準備コースも含めて2年間、国際経営を学んで、新卒でデロイトに入社しています。
デロイトでは3年でシニアコンサルタントまで上がり、その後フィールドマネジメントで2年間コンサルタントをしました。そこからキャディに移って3〜4年働き、2025年にオプトアップを創業しました。
―コンサルティングファームを目指したきっかけは?
佐金:大学の終わり頃から、コンサルで働きたいとは考えていたんです。ちょうどその時期に留学の機会をもらえて、大学院1年目が終わった夏に日本へ一時帰国して、サマーインターンに参加しました。そこで「やっぱり面白そうだな」と。
2年目の秋に、デロイトがイギリスで採用イベントをやっていて、ロンドンまで受けに行きました。内定をもらえたときは、志望していたコンサルティング会社に入れることが素直に嬉しかったですね。
―子どもの頃や学生時代で、今の仕事につながっている経験はありますか?
佐金:子どもの頃から、1人で試行錯誤するのが好きだったんだと思います。少年野球をやっていた頃は、毎日壁当てをしていました。「どうすれば狙ったコースに投げられるか」「体の使い方をこう変えたらどうか」と試しながら、自分が少しずつ上達していく過程が純粋に楽しかったんです。
学生時代でいうと、結婚式場のアルバイトが大きいですね。最初は時給の高さに惹かれて始めたんですが(笑)、そこはマニュアル通りにやるのではなく、「本当の意味でお客様に喜んでもらうために何ができるか」を追求する現場でした。
今でも覚えている光景があります。雨の日の挙式で、フラワーシャワーを浴びながら新郎新婦がチャペルから外に出ていく場面でした。出た先が吹き抜けの庭になっていて、雨で床が少し汚れていたんです。
ドアを開ける係をしていた先輩が、新婦のドレスが床を引きずって汚れそうになっていることに気づきました。本来はまだドアを押さえていなければいけないタイミングです。でもその先輩は、チャペルの中の来賓から見えなくなった一瞬に、すぐさまドレスの裾を持ち上げて、そのまま控室まで付き添ったんです。控室まで付き添うのは、本来は黒服の社員の仕事でした。
決められた役割を超えてでも、目の前のお客様にとって一番いいことをする。そこまでやるのかと、本当に感動しました。
「上司のOKがない資料」を出した夜が、仕事を自分のものにした
―デロイト時代に、自分が変わったと感じた瞬間はありますか?
佐金:明確にあります。新卒で2つ目のプロジェクトだった、在庫管理の高度化の案件です。
クライアントは経理部で、経理部と事業部のあいだで「在庫予算」を決める会議がありました。そのファシリテーションを任されていたんです。
前日まで上司とは、「ダミーデータで事業部の在庫水準を示して、このくらいの水準で合意を取ろう」と準備していました。でも、初めて1人で話すプレゼンだったので緊張して、夜に練習していたら、ふと思ったんです。「実際のデータを入れてグラフにした方が、お客様もリアリティを感じて納得できるはずだ」と。
当時は、上司のOKをもらった資料以外は外に出してはいけないと思い込んでいました。でも、お客様にとって何が一番分かりやすいか、どうすればこの会議が一番うまくいくかを考え抜いた結果、自分の判断で実データに差し替えて本番に臨みました。
―結果はどうでしたか?
佐金:会議が終わった後、上司から「良かったよ」「完璧だったね」と言ってもらえました。会議中、上司が口を挟むことは一度もなかったです。
「お客様のためになる」という前提をぶらさずに、自分で考えて、自分が良いと信じたことをやり切る。そうすると仕事が本当の意味で自分のものになって、評価にも成長にもつながるんだと実感しました。自分にとって大きな転換点でしたね。
一流の戦略ファームで味わった、圧倒的な壁
―これまでで一番しんどかった時期はいつですか?
佐金:2つあります。
1つ目は、デロイトの後半に担当した化粧品メーカーの常駐案件です。現場主導での実行支援が求められるプロジェクトで、お客様の課題感がリアルタイムに変わっていく。それまでの「机の上で考えて、週次の定例で報告する」というスタイルに慣れていた自分には、隙間時間を見つけて毎日お客様と話し、その場で臨機応変に対応していく動き方がすごく難しくて、精神的にもきつかったです。
2つ目は、フィールドマネジメントに入社した時期です。マッキンゼー、BCG、ベインなどでマネージャーを経験してきた、本当に優秀な人たちが集まるファームでした。「ここまで考え抜くのか」「ここまで徹底的に情報を集めるのか」と圧倒されましたし、ロジックだけでなく「お客様に一番刺さる伝え方は何か」まで突き詰めている。そこについていって、期待値を超える価値を出すのは本当に難しかったです。
当時は、自分がちゃんとパフォーマンスを出せているのか分からなくて苦しかったです。退職した後に「同じランクの他のメンバーと比べても、全然バリューを出していたよ」と言ってもらえたのは、救いでした。
キャディで学んだ「現場を動かす」ということ
―そこからキャディに移った理由は?
佐金:ちょうど1人目の子どもが生まれたタイミングでした。仕事中心の生活が続いていて、このままでは家族との時間がまったく取れないという危機感があったんです。
そんなときに、デロイトの最初のプロジェクトで上司だった方がキャディにいて、ずっと「一緒に働こう」と声をかけてくれていました。年収は下がりましたが、家庭とのバランスを取るためにも転職を決めました。
入社した頃のキャディは150名ほどで、シリーズBの調達直後という急成長フェーズでした。オペレーションが整っていない状態から仕組みをつくって事業を良くしていくプロセスが面白かったですし、何よりもう一度あの上司と働きたかったんです。
―キャディでの経験は、今にどう活きていますか?
佐金:コンサルティングファームは、似たような思考や経歴の人が多い、ある意味で働きやすい世界でした。キャディでは、パートスタッフの方や製造業出身のベテランの方など、本当に多様なバックグラウンドの方と一緒に働くことになりました。
特に大きかったのが倉庫の立ち上げです。外部の派遣スタッフの方々は、「そもそもなぜこの業務をやらなきゃいけないのか」と疑問を持っている。業務手順を作るだけでは、現場は動きません。
だから、とにかく対話を重ねました。なぜこの進め方をするのか、どんな目的や意味があるのかを丁寧に説明する。ずっと倉庫にいられるわけではなかったので、定期的に足を運んで「実際どうですか」「やりづらいところはないですか」と声をかける。現場の声を聞きながら、働きやすい環境を一緒につくっていきました。
デロイトとフィールドマネジメントで、議事録の書き方や思考の構造化、仕事の進め方を本当に手取り足取り教えてもらいました。それが今でも土台です。そこにキャディで学んだ「現場でどう定着させ、実際に動いてもらうか」が加わったことが、今の仕事にすごく活きています。
仙台への移住と、4人の子ども。創業はきれいごとではなかった
―独立を決めたきっかけは何だったんでしょう?
佐金:独立は、社会人になって早い時期からぼんやりとは考えていました。決め手になったのは、妻の実家がある仙台に引っ越すことになったタイミングです。ちょうどキャディが業態転換の時期と重なったこともあり、退職して独立すると決めました。
仙台に行くのに、もう一度コンサルティングファームに戻るのは違うなと思ったんです。
もう一つは、正直に言うと経済的な理由です。子どもが4人いて、将来もし医療系の道に進むとなれば、相当なお金がかかります。サラリーマンの給料だけでは厳しい。だから、自分でしっかり稼ぎを増やせる状態をつくることが大切だと考えました。
―不安はありませんでしたか?
佐金:もちろん、売上をつくれるのか、生活費を稼げるのかという不安はありました。ただ、周りの方々が協力してくれましたし、家族も反対することはありませんでした。
―社名の「オプトアップ」にはどんな意味が込められていますか?
佐金:当時かなり悩みました(笑)。業務改善やDXを手がけていこうと考えていたので、「オプティマイゼーション(最適化)」や「オプション(選択肢)」に通じる「オプト」を入れています。選択肢をより最適な形にしていく、という意味です。そこに「アップ」をつけると、スケールアップにもつながって縁起がいいなと。
人の手で回している業務を、人手がかからない仕組みに
―オプトアップの事業を一言で説明すると?
佐金:人の手でやっている業務をシンプルに自動化して、人手がかからないようにする仕組みをつくっている会社です。
具体的には、業務量調査で「どの業務にどれだけ負荷がかかっていて、どこにAIや仕組みを入れるべきか」という構想をつくるところから入ります。そのうえで、自動化の仕組みをノーコードでスピーディーにつくったり、「社外DX推進室」のような形で企画・開発・定着まで一気通貫で伴走したりしています。経営支援の観点から、事業開発の伴走もしています。
―事業の軸にAIを置いたのはなぜですか?
佐金:AIを使いながら事業を進めることは、インターネットと同じように、これから当たり前の前提になっていくと思っています。工事現場や職人さんのようなフィジカルな領域の人手不足をどうするかは別の課題として残りますが、少なくともパソコンを使う仕事やバックオフィスは、かなり自動化できる世界が来ます。
そうであれば、自分自身も使いこなさなければいけないし、誰もが使えるようになるのが一番いい。シンプルにそう考えて、事業の軸の一つにしました。
―社内でもAIを活用しているんですよね。
佐金:毎月の請求書の収集や発行・送付といった業務は、当然自動化しています。それ以外にも、資料作成、プロジェクトの推進、デスクトップ調査、データ分析にもAIを使っていますし、システム開発や構築の現場でもAIを組み合わせて進めています。お客様に提案していることを、まず自分たちでやっている、という感覚ですね。
―具体的な支援事例を教えてください。
佐金:事業開発の事例でいうと、年商2億円ほどのセキュリティ開発の会社さんがあります。「3年で10億、30億と事業を大きくしたい」というご意向に対して、中期経営計画の策定から入りました。その後、営業企画、採用の人材要件の定義、日々の商談資料づくりまで、実際に受注が取れるところまでトータルで支援しています。結果として、大手建設会社から約3,000万円の受注につながりました。
DX・業務改善では、北海道の老舗菓子メーカーさんで、仕様作成の自動化やCopilotのフル活用に向けて、伴走役・アドバイザー役として入っています。
正直、強みはまだ言葉にしきれていない
―数あるコンサル会社の中で、オプトアップが選ばれる理由は何だと思いますか?
佐金:ここは正直、一番難しくて、まだ自分でも悩んでいるところです。
あえて言うなら、ビジネスサイドとテクノロジー・開発サイドの両方をやってきているので、その両方の視点で業務改善や事業開発、事業戦略を考えられることだと思います。実際に実装できるもの、動くものを見越して議論ができますし、簡単なものなら自分たちで作ってしまう。それを手頃な価格とスピード感で提供して、長く伴走できる。
ただ、それが特筆すべき強みかと言われると、まだ言い切れません。だからこそ、これから入ってくれる人と一緒に、オプトアップの強みを言葉にして、形にしていきたいと思っています。
顧客起点で、自分で考えて動く。それがオプトアップの働き方
―今のチーム体制を教えてください。
佐金:今は僕と社員が1人、それに営業を手伝ってくれている外部パートナーが1人という体制です。少し前までは外部の方に3〜4人入ってもらっていましたが、内製化と体制づくりが進んで、今の形になりました。拠点は東京、神戸、仙台とバラバラで、リモート中心で働いています。
―新しく入る人には、どんな仕事を任せたいですか?
佐金:基本的には、コンサルティング案件のデリバリーと提案です。お客様の課題を解決する提案を自ら行い、実際にプロジェクトを進めていく役割ですね。
1週間でいうと、案件が動いていれば毎週定例会議があります。定例が終わったら次回のゴールを決めて、1〜2日かけて分析や検討、事例調査、要件定義などを進める。そこで一度僕とレビューして修正し、会議の直前にもう一度レビューする。そして当日、お客様に提案して議論する。このサイクルを回していきます。
―仕事をするうえで、譲れない価値観はありますか?
佐金:まずは、顧客起点で自律的に考えて動くこと。そして、案件の担当者としてオーナーシップを持つことです。結婚式場の先輩や、在庫予算の会議の話もまさにそうですが、指示を待つのではなく、お客様にとって何が一番いいかを自分で考えて、やり切ってほしい。
それから、会社の成長フェーズを意識して、「一緒に会社を良くしていく」というマインドを持ってほしいです。誠実に仕事に向き合うこと、そして立場に関係なくフラットに議論できる関係性も大切にしています。
コンサルで3億、その先に自社の実業を
―オプトアップの3〜5年後をどう描いていますか?
佐金:まずはコンサルティング事業で、3億円規模のキャッシュカウをつくります。そこから、宿泊やスポーツ関連、アパレルや化粧品など、自社で実業を展開していきたいと考えています。
自分たちで事業を立ち上げたら、その知見を活かしてまたコンサルティングをする。自社での実践をお客様に還元していくサイクルをつくるのが理想です。僕自身は、コンサルティングと新規事業の両方を統括する経営の立場を目指しています。
まずは一度、話しましょう
―最後に、どんな人と一緒に働きたいですか?
佐金:フルリモートの環境でも、自律的・主体的に動ける方。そして、僕たちが目指している方向に共感してくれる方と一緒に働きたいです。
逆に、コンサルティングの仕事そのものに前向きになれない方や、リモートだから楽をして働きたいという方には、合わないと思います。
まだ小さな会社で、整っていないこともたくさんあります。でも、だからこそ自分で考えて動いた分だけ、仕事も会社も自分のものになっていく。そんな環境です。
まずはカジュアル面談で、一度お話ししましょう。僕のことや会社のことを知ってもらって、本当に面白いことをやろうとしているのかどうか、ぜひ確かめに来てください。