-地域学習は「正解探し」ではなく「未来の種探し」だ-
「地域の課題を調べて、解決策を提案しよう」
多くの学校の地域学習が、このかたちで行われていませんか?
調べて、まとめて、発表して終わる。地域の大人も先生も「よくできました」と笑顔。でも子どもたちの心に何か残るのか?次の行動につながるのか??
地域を「学ぶ」のではなく、地域で「稼いで貢献する」。
そのプロセス全体はワクワクで始まり、ワクワクで終わった。
これが、ぼくの言うワクワク仮説です。
1.はじまりは「いいこと思いついた!」
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都農中学校 総合学習「つの未来学」
「これからは問いを立てる力が大事」とよく言われます。正しい。でも「問いを立てよ」と言われてもピンとこない人は多い。ぼくもその一人でした。哲学的すぎて、どこから手をつければいいかわからない。
だから言い換えます。
まずは「いいこと思いついた!」から。
子どものころ、何かひらめいたとき思わず口から出た言葉がある。あれがワクワク仮説のはじまりです。大人になるにつれ、不思議と言わなくなる。「そんなことより目先の勉強してください」圧が強い環境にいるからか。
でも、ベンチャーで新規事業に明け暮れてきたぼくにとって、一番頼りになるのはいつも誰かの「いいこと思いついた!」です。
2.ワクワクの語源
「ワクワク」の語源は、水などが地中から出てくるさまを意味する「湧く(わく)」です。心の中から感情があふれ出てくる感覚——それがワクワクの正体。「いいこと思いついた!」のあの感じそのものです。
ちなみに江戸時代まで「わくわく」は「不安や苛立ちで心が揺れる」という意味でも使われていたそうです。つまりワクワクは喜びだけでなく、何かが動き出す前の心の揺れ全体を指す言葉。
仮説を立てるときの「これでいけんのかなぁ?」という揺れる気持ちも、ワクワクのうちと思えば少し気が楽に。
そして余談ですが、かつてムスリム商人の間で、日本は黄金の国「ワクワク」と呼ばれていたとも。「倭国(わこく)」がなまったものという説が有力です。
日本はワクワクの国
宮崎の過疎地で中学生と「いいこと思いついた!」合戦やっているぼくたちも、その系譜にいるのかもしれません(笑)。
AIはものすごいスピードで答えを出してくれますよね。
でも「いいこと思いついた!」という感情の動きは、まだ人間の特権。
そしてその感情が乗った仮説をAIにぶつけて何往復も壁打ちすれば、これまで以上のスピードとクオリティで実現に近づける。ワクワクは、AIへの最初の指示の質を決める起点にもなります。
3.ワクワクを探究の入口に
ワクワクは単なる感情論ではなく、探究の入口にもなります。
経済産業省の「未来の教室」審議会で、「ワクワクを解析する」という研究が提出されています。
ワクワクの定義
「興味関心があることに関して、もっと知りたい、やってみたいと自分から主体的に行動をする意欲がたくさんある状態。環境や個人への働きかけで増幅する」
何かにワクワクしている生徒は全体の約87%。
しかしほとんどの生徒は「簡単な行動」で完結していて、外向きの行動(誰かに話す・実際に動く)まで進む生徒は約34%にとどまる。
また、学年が上になるにつれて外向的行動が減る傾向がある。ただし探究活動に力を入れている学校では、逆に増えていた。
子どもたちのほとんどはワクワクを持っている。でも、それが行動につながっていない。学年が上がるほど行動しなくなる
これは、日本の学校教育が「ワクワクを封じ込める構造」になっているということです。
そして探究活動に力を入れている学校では逆のトレンドが見られた。つまりワクワクを起点にした探究の設計が、子どもの行動力を維持・強化することがデータで示されています。
経産省「未来の教室」審議会資料より(株式会社リバネス)
文科省が推進する「探究学習」。総合的な学習の時間の中心概念として広まっています。でもぼくは現場で、ずっと違和感を感じてきました。
いまの「探究学習」でよく見る光景
課題を設定する→グループで調べる→スライドにまとめる→発表する→先生が評価する。
これは調べ学習の応用版のような気が。
探究の専門家じゃないけど、ベンチャー経営って探究の連続だと思うんです。誰も自分たちのこと知らないし、誰からも頼まれてないけど、自分がやりたい!やるべきだと思って、オタクレベルで調べ上げ、考え抜いてやり抜く。業種問わず、どの起業家にも共通する気質だと思ってます。
文科省がいう探究とは少し違うのかもしれないけど、少なくてもぼくにとって探究のスタートは、ワクワクからなんです。
「なんでこうなってるんだろう?」(おかしいじゃん!!)
「こうしたら面白いんじゃないか?」
「どうすればできるんだろう?」
「できたらすげーことになるんじゃん!!??」
という内側からの問いが起点になって、調べて、動いて、失敗して、更新していく。そのプロセス全体がぼくらベンチャーの探究です。
4.地域で稼いで貢献する
そんなぼくらが目指したのは、中学生が、未来の都農町を想像し自分でワクワクする仮説を立て、実際に動いて、リアルにお金を稼いでみる体験カリキュラム「つの未来学」
その結果、商店街の空き地で開催した中学生マルシェ「みちくさ市」は、売上30万円・利益11万円で、町に防災用ブランケット100個を寄付するまでになりました。
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都農中学校 総合学習「つの未来学」
大人でも簡単ではないことを、中学生がやり切った。
模造紙に付箋たくさん貼り出して、パワポにまとめて発表して。そこまではよくある光景だったはず、でも提案したアイデアの「マーケティング」を考えてみたり「資金調達」を学んだり、老人クラブや役場に「営業」しにいったり、唐揚げやチュロスの「仕入れ交渉」にいったり。
いいこと思いついた!アイデアが、実現のプロセスでワクワクに増幅される。最後に売上というかたちで現金を手にした瞬間、子どもたちの表情は変わりました。
地域への愛着と誇りというキレイごとより、自分の考えに共感してお金をもらえた、という体験のほうが、結果的に地域へ自分ごととして活動、還元、貢献したいというシティズンシップの種が生まれやすいんではないかと。
5.中学生まちづくり部の誕生
もう一つ、ぼく自身のワクワク仮説が実現した事例も紹介させて下さい。
上記の「つの未来学」をもっとやりたかったけど、みんな部活で忙しくて、放課後に一緒に動けない。そのとき「いいこと思いついた!」のが「だったら部活にすればいいんじゃない!?」でした。
調べると部活から地域クラブへの移行が全国的なトレンドに。仮説に根拠が重なり、教育長と校長に相談し、いまの地域クラブ「まちづくり部」が誕生しました。
まちづくり部がはじまってからも、中学生たちと「いいこと思いついた!」を一つずつ実現。
駄菓子屋だったらできるんじゃん!?
ではじまったのが「だがしやーど」
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だがしやーど@イツノマ本社兼まちづくり部部室
ワクワクを起点にして、仮説を立て、仲間を集め、動いて、リアルな結果を出す。そのサイクルを一度経験した子どもは、「自分にも社会を動かせる」という手応えを持って次に進めることを楽しみに。
6.ワクワク仮説を育てる3つのトレーニング
今年度からはじまった高鍋町の東中学校・西中学校「明倫未来学」、川南町の唐瀬原中学校・国光原中学校「かわみなみ未来学」で共通して実施しているのが「ワクワク探し」
起業家の定義は「ワクワクすることを自分で実現させて稼ぐ人」と説明してます。
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中学生に「最近ワクワクしたことなーに?」って聞くと、最初はあんまり出てこない。でも、一人が言い始めたら次々と出てきます。
「ワクワク」には正解はない。
自分にしかわからないから。
まずは自分の「ワクワク」判定基準を見つけてね。
そんなことを中学生と話してます。
ちなみにぼくの「ワクワク」判定基準は脈拍と心拍。
実際、なんで都農町に移住&起業を決めたかというと、いくつかある選択肢の中で、一番、脈拍&心泊がトクトクいったから!
授業終了後の中学生アンケートでも「ワクワク」に関心が。
「ワクワクすることと仕事が結びついてなかった」
「仕事でワクワクすることもありなんだ」
「ワクワクすることを仕事にできたら楽しそう」
自分のワクワクを信じてほしい。
それがAI時代の最初の武器になる。
子どもたちの87%はワクワクを持っている。でも行動につながっていない。その壁を壊すのが、ワクワクを起点にした地域学習の再設計だと思います。調べ学習の美化を『探究』と呼ぶのをやめて、ワクワクしてからが本当の探究の始まりだと、現場から言い続けたい。
子どもに職業体験をさせる前に、仕事を楽しんでいる大人が隣にいますか。あなたは、仕事が楽しいと子どもに言えますか。