仕事が次々とAIに奪われる時代。日々の暮らしや仕事のあり方がデジタル化され、あらゆる物事が「効率」という指標で語られる機会が増えています。そんな時代の中で、最後に生き残るのは、現場で汗を流す泥臭い「実技」なのかもしれません──。
「ものづくりに集中できる、建設業界へ。」というビジョンを掲げ、専門工事会社の伴走支援を行うネクスゲート株式会社。この70兆円という巨大産業を変革する道のりは、決して簡単なものではありません。
そんな激動の環境に身を置きながら、業界の構造を書き換えようと奔走するネクスゲートの宮崎代表にお話を伺いました。過去の原体験や業界の未来を救いたいという創業への想い。そして誰もが「建設業に憧れる未来へ」という新時代への情熱に迫ります。
宮崎唯人 / 代表取締役
1996年生まれ、東京都出身。前橋育英高校サッカー部を経て、東洋大学へ進学。在学中からシェルフィー株式会社にてインターンを開始し、その後同社へ新卒入社。新規事業の立ち上げ、ビジネスサイドのリーダー、事業責任者を歴任。2023年10月にネクスゲート株式会社を設立し、建設業が直面する経営戦略や組織活性化、事業承継といった課題に伴走し、現場の一次情報を武器に専門工事会社に特化した実行支援を行っている。
1階が事務所の家と、サッカー強豪校で日々更新される序列。本物の基準を学んだ原体験
ーーまずは宮崎さんのルーツについて教えてください。幼少期はどのような環境で育ったのでしょうか。
父親が電気工事会社を経営しており、実家がまさに建設業の現場という環境で育ちました。1階が事務所兼倉庫、2階が住居になっていて、朝の早い時間帯になると従業員や協力会社の職人さんが集まり、活気ある声とともに現場へ向かう光景が広がっていました。
僕自身、長期休暇にはお小遣い稼ぎとして手伝いをさせてもらうこともあり、ものづくりは身近な世界でしたね。
ーー高校はサッカーの名門校へ進学されますが、厳しい環境へ飛び込んだ背景にはどのような想いがあったのでしょうか。
プロを目指し、親元を離れて厳しい環境を選びました。自らの意思で進学先を選んだことは、自分の人生を自分で切り拓く覚悟が芽生えた出来事です。自分で決めた道だからこそ、どんな状況でも逃げ出さずに向き合うと誓い、進学を決意しました。
ーー周囲のレベルも相当高かったのではないでしょうか?
僕たちの代は全国大会で準優勝し、後に8名がJリーガーになる学年でした。部員も全体で200名ほどいる中、定期的にメンバーの昇降格リストが張り出されるシビアな環境だったんです。
ただ、実力を持つ仲間たちと切磋琢磨する中で、他人と比較するのではなく、自分の強みや弱みを客観視して落とし込む姿勢を身につけました。「敵はいつも昨日の自分」と自己と向き合い続けたあの3年間は本当に大きな経験です。
「何者でもない自分」から事業責任者へ。経営の当事者として走り抜けた5年間
ーー大学では数社のインターンを経験されたと伺いました。
同級生がスポーツの世界で高みを目指す中、自身はビジネスでトップになることを志し、インターンを始めようと考えました。ただ、20社ほどの選考で不採用になる挫折を味わい、実力不足を突きつけられたところからのスタートでしたね。
その後ご縁があり、ようやく初めてのインターンを開始できましたが、「自分は何者でもない」と感じていたので、せめて行動量だけは誰にも負けたくないと決めて取り組んでいました。
そして、他社でもインターンを経験するなかで、後に新卒入社することになるシェルフィーと出会いました。インターン3社目ということもあり、軸も明確になり、「何をやるか」以上に「誰とやるか」そして学生であっても大きな裁量を持って働ける環境を重視していた時期です。そんなタイミングで自身のルーツである建設業界に携わるシェルフィーと巡り合ったのは、まさに運命的でしたね。
ーーシェルフィーのインターンでは、どういった業務をされていたのでしょうか。
建設会社と施主をつなぐマッチング事業で、セールスを担当していました。学生という立場ではありましたが、社員の方々と同じゴールを目指して妥協なく働きましたね。
そして、メンバーが増えていくなかで、自然とリーダーシップを求められるようになったんです。そうした姿勢を評価していただき、大学3年生の11月に正社員としての内定をいただきました。単なる内定者という扱いではなく、学生社員としての枠を作っていただいたんです。大手企業への関心もありましたが、裁量を持って挑戦し続けられるこの環境で勝負しようと入社を決めました。
ーー入社後の業務内容について教えてください。
新卒1年目は、新規事業であるSaaSの立ち上げに関わりました。上司の動きを「100%コピーする」勢いで営業手法を吸収し、プロダクトリリース前から期待を寄せてくださるお客様と出会うなど、事業が立ち上がっていく瞬間を肌で感じた一年でした。
2年目にはビジネスサイド全体のリーダーを任され、セールスとカスタマーサクセスを合わせて10名ほどのマネジメントを担うことになります。2年目でこれほどの規模を率いる機会は稀だと思いますが、ベンチャーならではのスピード感で多くのハードシングスを乗り越えてきました。
3年目には大手企業向けのセールス立ち上げにも関わりました。既存の現場をマネジメントしながら、新たな市場を切り拓くという二足のわらじを履き、個人の力を「組織の力」へと昇華させる難しさと面白さを実感することができましたね。
ーー最終的には事業責任者まで務められました。
振り返れば、経営合宿で手を挙げたことがきっかけです。当時、会社の体制変更で財務や資金調達といった経営のピースが空くことが予想されました。事業計画を作った経験も分析スキルも十分ではありませんでしたが、その領域に踏み込むこと自体が成長の機会になると考えていたんです。
そこからは、まさに体当たりでしたね。経営陣とディスカッションを重ねては跳ね返され、悔しさで涙を流したことも。会社を動かす工程に当事者として関わった経験は大きな財産となりました。
ーーそこから、起業を決断された背景には何があったのでしょうか。
会社を牽引することにやりがいを感じており、環境に対する不満は一切ありませんでした。ただ、どこまで行っても事業責任者としての役割という感覚が拭いきれなかったのも事実です。
真の高みを目指すためにも、自分の時間と責任を100%投じ、身銭を切ってリスクを負わなければならないと考えました。巨大な建設産業を根本から変革するという挑戦に、すべてを懸けて挑みたいという思いが勝り、起業を選択するに至りました。
「ものづくりに集中できる、建設業界へ」──技術と経営を分離させ、志ある会社を次世代に繋ぐ
ーーネクスゲートの事業内容についてお聞かせください。
「ものづくりに集中できる、建設業界へ。」というビジョンを掲げ、電気や内装、防水工事などの専門工事会社に特化して支援を行っています。具体的には、顧問紹介による採用や販路拡大の支援、事業承継のサポートを通じた「社外の経営チーム」のような役割です。
ーー経営の深部まで踏み込む背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
素晴らしい技術をお持ちであるがゆえに、現場仕事に多くの時間を割かざるを得ず、本来の経営に専念できない経営者の方々を数多く見てきました。こうした状況を打破するために、ネクスゲートが掲げているのが「技術と経営の分離」という形です。
70兆円という巨大産業を支えているのは、現場の最前線に立つ専門工事会社の皆様であり、この方々の活動を支えることこそが、数十年先の日本の姿を守り抜くことに直結します。だからこそ私たちが経営の舵取りを共に担うことで、皆様が持つ「作り手」の本領を発揮していただきたい。
志ある会社が後継者難や経営難に陥る現状を打ち破るためには、実務まで入り込む伴走型の実行支援が不可欠であり、この役割分担こそが日本のインフラを次世代へ繋ぐ鍵になると確信しています。
「仕組みを創る人」を称える。判断の格差をなくし、誰もが主役になれる圧倒的な透明性
ーーカルチャーについて伺います。社内で大切にしている考え方は何ですか?
情報のオープン化を徹底しています。一定水準以上の人が集まった際に起きる判断のズレは能力差ではなく、情報量の差から生まれるというのが私の哲学です。
だからこそ、メンバー全員が経営判断に必要なあらゆるデータへアクセスできる環境にこだわっています。情報が平等に共有されて初めて、一人ひとりが当事者意識を持ち、会社全体の成長を見据えたアクションを起こせるようになると考えていますね。
ーーどのような人材が評価される組織でありたいと考えていますか。
個人の英雄的な活躍による実績よりも、組織として継続的に成果が出る仕組みを創った人間を評価しています。誰でも再現できるモデルを構築することこそが、会社を広げていくための原動力となるからです。
そして、弊社のバリューにある「誠実・感謝・プロ意識」を体現するメンバーには、最大限の機会を提供する組織でありたいです。
建設業を「若者が憧れる産業」へ。ロールアップ企業の礎を築く未来のリーダーたちへ
ーー成長戦略として、どのような勝ち筋とロードマップを描いていますか?
70兆円という巨大なマーケットがある一方で、現場には今なお解決すべき課題が山積みとなっています。この「市場の大きさ」という横の広がりと、「課題の多さ」という縦の深さ。この二つが揃っているからこそ、本質的な価値を届けることで、価値貢献に見合った対価を実現できると考えています。
今後のロードマップとして、まずは現在の経営支援サービスをさらに深化させていきたいと考えています。ワンストップで経営課題に向き合う中で、現場の一次情報を集め、仕組みを創り上げていく過程には、たくさんの事業開発のチャンスがあり、この領域だけでも大きな事業性があると確信しています。こうした機会を一つひとつ形にし、経営者の「懐刀」として確固たる伴走支援を行っていく。これこそが、ネクスゲートの根幹を創り上げることにも繋がります。
そしてゆくゆくは、私たち自身で工事会社の経営にチャレンジしていくということも視野に入れています。業界をどう変革していくかについて、具体的な構想はしっかりと練り上げているため、ぜひカジュアル面談などでお話しできれば嬉しいですね。
ーー建設業界が進化を遂げた先には、どのような変化が訪れると考えていますか。
AIが台頭して様々な仕組みが自動化される現代において、人間の手による実技の価値はこれまで以上に高まっていくに違いありません。数年後には職種のあり方が激変しているでしょうが、建設現場における一品生産の技術は変化の幅が少なく、決してAIには代替しづらい領域といえます。
また、最近では、技能職がそのスキルと安定した需要から成功を収める「ブルーカラー・ビリオネア」という言葉も耳にしますが、人手不足という背景もあり、現場技術を持つ人々がその希少価値に見合った豊かさを手にする未来が訪れると確信しています。
AIには決して真似できないオーダーメイドの技術が、正当な富として還元されることで、若者たちが「建設業界は稼げるしカッコいい」と語り合う未来を創りたいですね。
ーー最後に、ネクスゲートへの参画を検討している方へメッセージをいただけますか?
今後、私たちが拡大していくなかで、子会社の代表や経営幹部を担うのは、今まさに現場の真っ只中で一次情報を掴み取っているメンバーに他なりません。巨大産業の改革に挑む道は、決して平坦ではありませんが、その分どこよりも濃密な経験をお約束します。
日本のインフラを支えるという誇りを胸に、建設業界の新しい歴史を共に創り上げていく。そんな熱い志を持った方にお会いできるのを楽しみにしています。