スーパーのきのこコーナーで、しめじのパックを2つ重ねて悩んでいる人を見たことがあります。
10円、20円の違いで選ぶ、日常の一部みたいな食材。
椎茸もだいたい同じ棚に並んでいて、そんなに特別扱いされている食材には見えません。
でも数字を見ていくと、この「地味さ」の中に、二つの違う動きが同時に起きていることが分かってきました。
まず、きのこそのものの消費量。
林野庁の資料によると、令和4年のきのこ類の一人当たり年間消費量は3.4kg。
これは平成15年以降、ほぼ横ばいで推移しているそうです。
単価もほぼ横ばいか、むしろ下がり気味。
つまり、量として「もっと食べられるようになった」わけではありません。
輸入額も令和5年で144億円ほどあって、その多くを中国産の乾しいたけが占めています。国産だけで独占できている市場では、どうやらないということです。
一方で、秋田県は違う顔を持っています。
総務省の家計調査を見ると、きのこへの支出額で秋田県は全国トップクラスにいて、令和5年の実績では1人あたり1,605円。全国平均が838円なので、ほぼ倍。
ここに住む人たちにとって、きのこはすでに日常の一部として根づいている。
レンチナスがこの土地でやっているのは、実は消費者との距離がもともと近い場所での商売だったんだと、数字を見て気づきました。
もう一つの動きが、機能性表示食品という枠組み。
矢野経済研究所の調査では、生鮮食品も含めた機能性表示食品市場は2024年度が7,505億円、2025年度は7,805億円の見込みで、前年より4%伸びる予測になっています。
健康食品市場全体の中でも、この機能性表示食品の存在感は年々大きくなっていて、ある調査では、健康食品市場に占める構成比が2020年度の18%から2025年度には33%まで上がったとされています。
制度が始まってからまだ10年ほどですが、伸び方を見ると腰を据えて成長している市場だと感じます。
つまり、きのこという食べ物そのものの消費量は増えていないのに、健康や機能性という切り口では、市場が伸び続けているという、少しねじれた状況があります。
同じ商品棚に並んでいても、どちらの流れに乗せるかで、その後の値段の付き方がまったく違ってくるということです。
これは、椎茸を売る側にとって大事な分かれ道だと思っています。
パックの中身が椎茸である以上、価格の勝負をすれば横ばいの市場から抜け出せません。でも椎茸に含まれる成分や機能性を軸に語れば、伸びている市場の側に立てる。
同じ椎茸でも、どちらの棚に置くかで話が変わってくるということです。
中身は同じきのこなのに、伝え方ひとつで市場そのものが変わる。
この事実に気づいたとき、かなり驚きました。
黑椎茸という商品を作ってきたのも、たぶんこの分かれ道を無意識に選んできた結果なんだと思います。
量で勝負しない。機能性や体験で選んでもらう。
レンチナスの椎茸のうち、黑椎茸として出荷できるのはごくわずかな割合ですが、その希少性自体も、機能性という文脈に乗せれば違う価値になるかもしれません。
実のところ、この機能性という切り口をどこまで押し出せているかは、まだ十分にできていない部分もあります。
データを見つけたのはつい最近で、社内でもこの数字をどう活かすか、これから詰めていくところ。
こうした数字を読むのが好きな人や戦略を考える人、椎茸の現場を知っている人が同じテーブルで話す機会は、まだそんなに多くありませんが今後ますます機会も増える事だと思います。
いちごの事業に加えて、椎茸を主戦場として一緒に戦ってくれる仲間も同時に現在募集してますので、数字と現場の距離を埋める仕事に興味がある人がいたら、一緒に考えてもらえたら嬉しいです。