経営は、もっと現場に近くていい。変わりにくい業界の中で選び続けてきた道。
「経営」と聞くと、多くの人はどんな光景を思い浮かべるだろうか。どこか現場から切り離された、遠い世界の話のように感じる人もいるかもしれません。数字を見て、意思決定をして、上から舵を切る——私はそんなイメージを持っています。
けれど、建助の経営に触れていると、その印象は少し変わります。「経営って、現場から離れた瞬間に、だんだんズレていくものだと思うんです」少なくとも、青柳さんの語る経営は、いつも現場の話から始まるのです。
# バラバラに見えるキャリアに、一本の軸があった
‐ 青柳さんのご経歴を教えてください。
大学卒業後、青柳さんが最初に飛び込んだのは、当時としてはまだ珍しかったデリバリー型ネイルサロンの立ち上げでした。ゼロからサービスをつくり、顧客に届ける。「“いいと思う”と“使われる”の間には、想像以上の距離があるんですよね」その難しさと面白さを、身をもって経験します。その後、日本の伝統文化に深く触れたいという想いから京都へ移り、呉服業界へ。職人の技や文化の美しさに惹かれる一方で、業界が縮小していく現実も、同時に目の当たりにしました。「文化って、放っておけば残るものじゃない。誰かが意識して支え続けないと、簡単に途切れてしまう」その実感は、青柳さんの中に強く残りました。
そうした経験を経て、次に選んだのが物流の仲介業でした。社会インフラを支える物流の世界で学んだのは、段取りや調整力そのものが価値になるということ。一見すると、まったく違う業界に見えるかもしれません。けれど青柳さんの中では、これらは一本の線でつながっています。
「ずっと共通していたのは、人の営みを支える“現場”に向き合ってきたという感覚でした」
その軸が、日本の建築技術を支える「建助」、日本の手仕事を未来へつなぐ「ニッポン手仕事図鑑」この二つの事業に強く惹かれた理由でもあります。
# 経営の立場になっても、視線は「上」ではなく「全体」へ
‐ 経営を見る立場になって、視野はどう変わりましたか?
現在、青柳は株式会社建助の取締役として、事業と組織の両面に携わっています。経営の立場になって、最も変わったことは何か。そう尋ねると、少し考えてから、こう答えてくれました。「一つひとつの施策を“点”で見るのではなく、それが会社全体にどう影響するかを“面”で考えるようになりました」
部署単体ではうまくいっていても、会社全体として歪みが生まれることはある。顧客にとっての価値、社員の成長、会社の持続性。そのどれか一つだけが突出しても、長期的にはうまくいかない。「だからこそ、三者のバランスを常に意識しています」
# 判断に迷ったとき、立ち戻る場所
‐ 何を基準に決定していますか?
経営をしていれば、迷う場面は少なくありません。そのとき、青柳さんが必ず立ち返る問いがあります。「その判断は、未来の建助を強くするかどうか」短期的に楽かどうか、目先の効率がいいかどうかではなく、中長期で見たときに本質的に正しいか。
そして、その判断を支えるのが、顧客にとってプラスか。社員にとってプラスか。会社の未来にとってプラスか。「この三つが重なっていれば、大きく間違うことはないと思っています」
# この業界は、なぜ難しく、変わりにくいのか
‐ 業界について教えてください。
建設・周辺業界について、青柳はこう表現します。「人手と段取りが、そのまま価値になる産業です」経験や調整力が成果に直結する一方で、属人化、紙文化、ルールの違い、人手不足といった課題が、静かに積み重なっています。
それでも変わりにくいのは、現場が止まるリスクを極端に嫌う構造があるから。「現状維持のほうが、短期的には“楽”なんですよね。だからこそ、変えるには覚悟がいる」
# 建助が選んだのは、「実働型」の向き合い方
‐ 数ある会社の中で、建助はどこが違うのか?
そんな業界の中で、建助が選んできた立ち位置は明確です。机上のDXではなく、現場の手間を本当に減らすこと。必要であれば現地に足を運び、自分たちの目で見て、判断して、その場で動く。「テクノロジーだけでは埋められない部分を、人がちゃんと補う。それが建助のやり方です」
価格競争には参加しない。現場で使われない機能はつくらない。売上目的だけで領域を広げない。ただし、「お客様が本当に困っていること」には、手を伸ばす。その積み重ねが、「困ったら建助に相談すれば大丈夫」という信頼につながっています。
# 派手じゃない。でも、確かな手応えがある仕事
最後に、これから建助に入る人へ、メッセージをもらいました。「正直、派手な仕事ではないです。でも、『ありがとう』と言ってもらえる瞬間が、確実にあります」お客様のために、何ができるか。どうしたら、もう一歩よくなるか。考えて、行動して、その結果が誰かの助けになる。「その積み重ねが、ちゃんと自分が成長している感覚をくれる会社だと思っています」一緒に働きたいのは、現場を大切にできる人。考えて、動ける人。仕組みをつくり、仲間と共有できる人。
そして何より、「大切な人の、大切な人を大切にできる人」
そんな人たちと、建助の未来をつくっていきたいと、青柳さんは語ります。
# 言葉にして、はじめて見えてくるもの
青柳さんの言葉を通して見えてきたのは、経営を“特別な場所”に置かない、“現場”を切り離さない姿勢でした。考えること。動くこと。人に向き合うこと。そのすべてが地続きであることが、建助という会社の輪郭なのだと感じます。このストーリーが、建助に興味を持ってくださった方にとっては、「ここで働くとはどういうことか」を考える材料になり、すでに関わってくださっている方にとっては「なぜ一緒に仕事をしているのか」を再確認するきっかけになれば嬉しく思います。
経営と現場。業界と未来。その間に立ち、言葉にし続ける人がいること。それ自体が、建助という会社の強さなのだと、今回の取材を通して改めて感じました。青柳さん、貴重なお時間いただきありがとうございました!