現場の「できる」と「手取り時間」を増やす、「AI・イノベーション室」の挑戦
はじめに:AIとイノベーションで、「できる」と「手取り時間」を増やす
はじめまして、GovTech東京のAI・イノベーション室です。令和7年(2025年)4月、GovTech東京に「AI・イノベーション室」が新設されました。私たちのミッションは、AIと技術イノベーションを泥臭く現場に実装し、職員一人ひとりの「手取り時間」= 「本当に価値のある業務に使える時間」を増やします。さらに、テクノロジーをフル活用し、「これまでできなかったこと」を「できる」に変えていきます。
そして、現場から生まれる課題への挑戦を職員とともに育て、テクノロジーで後押しし、その成功モデルを東京だけでなく全国へと広げていくことを目指しています。新年度のスタートとともに、新たな体制でこの取り組みを加速させていきます。
本記事では、AI・イノベーション室が現在取り組んでいることと、今後の挑戦について紹介します。
目次
現場の「できる」と「手取り時間」を増やす、「AI・イノベーション室」の挑戦
はじめに:AIとイノベーションで、「できる」と「手取り時間」を増やす
これまでの取り組みと「生成AIプラットフォーム」
現場の声を聞きながら「生成AIプラットフォーム」を育てる
4月から始まる具体的なアクション
AIの先に広がる「イノベーション」への挑戦
「現場主義」で、確かな成果を
私たちと一緒に、行政×AIの未来を創りませんか?
これまでの取り組みと「生成AIプラットフォーム」
GovTech東京ではこれまで、東京都内の区市町村への伴走支援の一環として、20団体に対して生成AIの活用を推進してきました。昨年は社内のTeams上に「AIあれこれβ」チャンネルを開設し、技術検証や情報共有を通じて、実際の業務でAIをどう役立てられるか、具体的なシナリオを模索してきました。
昨年の取り組みの詳細は、こちらもご覧ください。
1年分のAI実験ログから見えてきた「行政×生成AI」のこれからzenn.dev
また、こうした取り組みで得られた具体的なシナリオを実際の業務で実現するためのツールとして、昨年12月の東京都AI戦略会議で発表された、都庁各局や区市町村の職員が安全かつ効果的に生成AIを活用するための基盤「生成AIプラットフォーム」の開発・展開も当室が担当することになりました。
現場の声を聞きながら「生成AIプラットフォーム」を育てる
「生成AIプラットフォーム」は、2026年度の本格稼働を目指していますが、まずは現場での実証からスタートします。今年度は、職員の皆さんに実際に使っていただきながら、試験運用を通じて課題を洗い出し、改善を重ねていきます。
これまでの試行錯誤から学んだ重要な教訓は、「ただAIに質問を投げるだけでは、期待する成果は得られない」ということです。既存の資料をAIが参照して回答精度を高める「RAG(検索拡張生成)」技術の活用、大量の情報を扱える「ロングコンテキストウィンドウ」への対応、そして自治体特有のセキュリティ要件への準拠など、様々な工夫を重ねてきました。この経験を活かし、実務に本当に役立つプラットフォームを構築していきます。
4月から始まる具体的なアクション
足元から、取り組みを具体化します。
- GovTech東京内での先行活用
4月中から、私たち自身が「生成AIプラットフォーム」の最初のユーザーとなり、徹底的に使い込みます。これは「ドッグフーディング」(開発した製品やサービスを自ら日常的に使用して、改善点を発見する)と呼ばれる手法です。これにより、具体的な活用事例を数多く生み出し、実践的なノウハウを蓄積します。 - 東京都庁・区市町村での試験運用と活用支援
並行して、都庁各局や区市町村におけるプラットフォームの試験運用を開始します。単なるツール提供にとどまらず、業務文章の自動評価・校正、ヘルプデスク業務のAI支援など、短期間で成果を実感できる「クイックウィン」の創出をサポートします。 ハンズオンによるプロンプト(AIへの指示)設計支援などソフト面と、技術環境の整備やセキュリティ対応といったハード面の両輪で、活用を支援していきます。
AIの先に広がる「イノベーション」への挑戦
さらに、私たちの活動は生成AIに留まらず、「これまでできなかったこと」を可能にするために、その他の先端技術やAI技術についても、行政現場での実用化と成果創出を目指し、積極的に取り組みます。
昨年は、AIが他のツールと連携し、外部データベースから情報を取得して回答するような「繋がりのデザイン」が進化しました。単に文章を生成するだけでなく、より複雑なタスクをこなせるAIの可能性が広がっています。
また、異なるAIモデルやツール間の連携をスムーズにする標準仕様(例:MCP - Model Context Protocol)も登場し、技術選択の幅が広がっています。GovTech東京内部では、AIによる開発支援ツール(例:自律型AIソフトウェアエンジニアのDevin、AIペアプログラマーのCursor、AI対応IDEのWindsurfなど)も積極的に導入し、少人数でも効率的にシステム開発を進められる体制づくりにも着手しています。これにより、開発生産性を高め、より迅速で質の高いサービス提供を目指します。
例えば、将来的には以下のようなテーマにも挑戦し、行政サービスの可能性を広げていきたいと考えています。
●文書管理・活用の革新
行政文書のAIリーダブル化
紙やPDF文書を、AIが理解・活用しやすい形式へ自動変換
多様な文書の検索性向上
建築図面や専門資料を含む、テキスト以外の情報も効率的に検索可能に
●業務プロセスの高度化
審査業務の効率化・高度化
特定の申請や審査業務に特化したAIモデルを開発・導入(ファインチューニング)し、審査の均質化・迅速化を実現
リアルタイム情報の活用と対話型支援
最新データと連携可能なAPI開発や、職員の意思決定を支援するAIエージェントの導入を推進
●マルチモーダルAI・高度技術の応用
マルチモーダルAIを活用した業務支援
文章・画像・音声など複数の情報を統合処理し、新たな業務改善の可能性を検証
画像認識による異常検知
現場写真等からインフラや設備の不具合をAIで自動検出し点検業務を支援
ロボティクスとの連携
生成AIとロボット技術を組み合わせ、案内業務や現場作業の支援など、新しい応用可能性を検証
これらの技術を、職員の皆さんが特別なスキルなしに日常業務で活用できる環境を整え、一人ひとりの「手取り時間」を増やし、「これまでできなかったこと」を可能にすることを目指します。
「現場主義」で、確かな成果を
行政とAIを組み合わせることで生まれる可能性は、日々広がっています。GPT、Gemini、Claudeといった高性能なAIモデルが登場し、国産LLMも進化を続ける中、私たちは最新技術の動向を注視しつつも、常に「現場主義」を徹底します。
技術はあくまで手段であり、実際の業務に役立ち、職員の働き方が改善され、最終的には都民サービスの質向上につながる形で導入を進めることが、私たちの使命です。
現場のリアルな課題を革新的な技術で解決し、その成功モデルをオール東京だけでなく全国へと広げていく——昨年の実証実験フェーズを経て、今年はその社会実装を加速させる年です。
私たちと一緒に、行政×AIの未来を創りませんか?
そのため、AI・イノベーション室では、この挑戦に共に取り組む仲間を大募集しています。以下のような想いやスキルをお持ちの方、ぜひご応募ください!
- 最先端技術を自分の手で「触って試す」ことが好き
- 行政のリアルな現場課題に真摯に向き合いたい
- まずは作ってみる「プロトタイピング文化」を大切にしたい
- 技術と現場のニーズを「つなぐ」ことに面白さを感じる
- 公共サービスをもっと良くしたい、という熱意がある
- 失敗を恐れず、学びながら挑戦し続けられる
今後のAI・イノベーション室の活動にご注目ください。そして、もしご興味があれば、ぜひ一緒に、行政とAIの新しい未来を築いていきましょう!