こんにちは!インヴァスト株式会社の子会社「ボーディングスクールコンサルティング株式会社(以下、BSC)」の大木 美波です。
本記事は、ボーディングスクールコンサルティング株式会社(以下:BSC)の横山社長と共に、5日間にわたりアメリカのボーディングスクール12校を訪問した際のレポート(後編)です。
この11月、アメリカのボーディングスクールの現地視察へと行って参りましたので、本記事を通して、私が訪問した12校についてご紹介をさせていただきます。
前編はこちらからご覧いただけます。
目次
7校目:Cushing Academy
8校目:The Ethel Walker School
9校目:The Frederick Gunn School
10校目:Rumsey Hall School
11校目:Trinity-Pawling School
12校目:Choate Rosemary Hall
学校訪問を終えて
7校目:Cushing Academy
7校目の学校は、マサチューセッツ州アッシュバーナムにある共学校Cushing Academy(以下:Cushing)になります。Cushingは大変優れたアート教育を提供していることで有名な学校です。生徒達は、芸術の授業を必ず年に一つ以上取ります。視覚芸術と舞台芸術の双方にわたり体系的なプログラムが整備されており、視覚芸術が約12科目、舞台芸術が約10科目と、分野ごとに明確な科目構成が成されています。
特徴的なのは、芸術教育が「手を動かして創る」ことに重きを置いている点で、陶芸、金工、ガラス、写真、建築デザインなど、素材や技法に直接向き合う授業が充実しています。専用スタジオには窯や金工設備、写真暗室など本格的な制作環境が整い、生徒は作品制作のプロセスそのものを深く学ぶことができます。また、初級から上級、ポートフォリオ制作へと段階的に発展するカリキュラムが設計されており、継続的に技術と表現力を高めていくことも可能です。Cushingでは、毎年生徒の作品をまとめた「Visual Arts Magazine」を発行しており、誌面には完成度の高い多彩な作品が掲載され、日々の制作の成果を実感できるものとなっています。
Cushingのよりリアルな生活に触れる一環として、学生生活を支える施設であるメールボックスとキャンパスストアの様子をお届けします。まず、メールボックスについては、各生徒に割り当てられており、日常的な郵便物の受け取りに利用されています。特に宅配物に関しては、荷物が到着すると担当者からメッセージで通知が届く仕組みとなっており、生徒はその連絡を受けて受け取りに行く流れです。訪問時にはAmazonの箱が多く見られ、オンラインショッピングが日常的に活用されている様子が見受けられました。
次に、キャンパスストアでは、学校のスクールカラーである紫とマスコットのペンギンが印象的で、学校のアイデンティティが感じられる空間となっております。店内では、飲み物や日用品に加え、Cushingオリジナルグッズも購入することが可能です。また、「ペンギンポイント」と呼ばれるプリペイド式のカードに事前に入金して利用する仕組みが採用されており、生徒が気軽に買い物できる環境が整えられています。日本の軽食やお菓子も用意されており、ここでしか手に入りにくい商品も購入できるため、日常生活の利便性向上にもつながっているようです。さらに、学校のアパレル商品も充実しており、学校行事やスポーツ応援の際に着用するためにも、1着持っておくと便利とのことでした。
当日は、校内ツアーを担当してくださった学生にインタビューをしました。彼女は弊社で担当しているシニア(最終学年)の日本人学生です。最終学年の生徒達は、学校生活の集大成にあたる大学受験を経験します。受験については、「本当に大変でした」という率直なお話を聞くことができました。
▲受験生が足繫く通うCollege Counselingルームの様子です。
アメリカの大学受験は長期にわたるプロセスであり、単なる点数だけで評価されるものではなく、エッセイなどを通じて自分自身を表現することが求められます。そのため、可能性が大きく広がる一方で、正解がないという難しさもあると語っていました。また、出願準備ではエッセイの執筆や各種テスト対策など、多くの課題に取り組む必要がありますが、「寮で暮らす周囲の生徒も同じ状況にあるため、一緒に頑張ることができました」とのお話から、仲間と支え合いながら乗り越えてきた様子が窺えました。アメリカの大学受験については、これまで自分が取り組んできたことをすべて出すプロセスであり、「それをしっかりやり切ることができたと思います」と話してくれました。受験を単なる選抜ではなく、自己表現の機会として捉えている点が非常に印象的でした。最終学年の学生として大変成熟されており、ご自身の経験を的確に言語化される姿勢に感銘を受け、在校生のロールモデルとなる存在であると感じられました。
Cushing Academy公式ホームページはこちら
BSC学校紹介ページはこちら
8校目:The Ethel Walker School
学校訪問の8校目は、コネチカット州シムズベリーにある女子校のThe Ethel Walker School(以下:Walker’s)です。
入学担当の先生と美味しい朝食をいただいた後、私達は校内ツアーに参加しました。案内してくれた学生は、行く先々で生徒や先生から声をかけられ、それに笑顔で応じていました。彼女は、アドバイザリーや学校全体のプログラムを通じて、先生と生徒が自然につながれる雰囲気があり、以前の学校では感じられなかった安心感や「居場所」を、この学校に見出していると話してくれました。その様子から、個々がありのままでいることを心から尊重されている環境であることが伝わり、ごく自然と日本の学生をぜひこの学校にお送りしたいと思いました。
また、校舎内の壁という壁には、生徒が心を込めて制作した美術作品がずらりと飾られています。一つひとつの作品が丁寧に扱われている様子から、この学校が大切にしている温かみや人へのまなざしを十二分に感じ取ることができました。
中でも特別心に残る施設が、1年程前に完成したという木造の新しい寮です。この寮は日本の美意識や建築思想から着想を得て設計されており、実際に暮らす上級生が「静けさと美しさを感じる」と語っているというエピソードも共有されました。意匠が言語や文化の違いを超えて、生活者に感覚として伝わっている点が非常に印象的でした。さらに、屋上緑化やソーラーパネルを備え、雨どいで集めた雨水を植物の水やりに利用するなど、日常生活の中で自然と資源循環を体感できる工夫が施されている点も、この寮の大きな特徴です。
ツアーの後に、校長のMeera Viswanathan先生とお話をする機会をいただきました。校長先生は、長きにわたりアイビーリーグの一校であるBrown Universityで教鞭を取っていらっしゃったうえ、日本の言語や文化に大変精通していらっしゃる方です。会話の中で、「wellbeing(心身の健やかさ)」という言葉を校長先生が繰り返し用いていらっしゃり、メンタルヘルスの課題が世界的に広がるいま、学校を「女子生徒が健やかに成長できる場所」にすることを目指していると仰っていました。一流の教員、一流の施設、一流のキャンパスを整えることを学校運営の指針として掲げており、その理念が施設整備の充実度にも明確に表れていると感じます。中でも、校長先生が特に情熱を注いだプロジェクトとしてご共有くださったものが、先述の新しい寮の建設でした。長年にわたる豊富なご経験と慧眼に基づく理念と実際の環境が見事に一致したWalker’sの学校運営を体感する、非常に貴重な訪問となりました。
The Ethel Walker School公式ホームページはこちら
9校目:The Frederick Gunn School
次に訪問をした先は、Walker'sと同じくコネチカット州にあるThe Frederick Gunn School(以下:Gunn)になります。Gunnの教育は、創設者であるFrederick William Gunn氏が掲げた「すべての若者に教育の機会を開く」という理念に根ざしています。1850年の創立当時から、女子生徒やマイノリティ、留学生を積極的に受け入れるなど、当時としては先進的な姿勢を示し、多様性を尊重する学校文化を築いてきました。
この理念は現在も学校の基盤として受け継がれており、生徒達は互いの違いを尊重しながら支え合うコミュニティの中で学び、成長しています。実際に、Gunnの学生のうち、留学生が占める割合はなんと75%!そこには唯一無二の経験を有する学生達で賑わっているため、私が訪問した学校の中でも、生徒の性質が特に多様であるように感じました。生徒達は新しい学びや挑戦に積極的に取り組み、多様な背景を持つ生徒が集う環境の中で互いへの理解を深めていくことで、協働を重んじるコミュニティが自然と形成されています。また、このGunnには日本人生徒も複数在籍しており、初めて海外留学をする生徒にとっても安心して学校生活を始めやすい環境であると言えます。
ツアーガイドの生徒は、Gunnにおいて、特に「Highlander Term」がお気に入りだと言っていました。このプログラムは、「自分自身の大きな問いを探究する」ことを目的とした、2月下旬から3月上旬にかけた約10日間の集中プログラムです。生徒は通常授業から離れ、関心のあるテーマに専念しながら、教師や仲間とともに学びを深めていきます。ニューヨークでの文化体験やフライトトレーニング、ガラス工芸など、多種多様で実践的なコースを通し、教室での学びを実社会へと広げます。ちなみに、この「Highlander」という名称は、Gunnの生徒や卒業生がそのように呼ばれることに由来し、学校の象徴するマスコットでもあり、コミュニティのアイデンティティを体現しています。
校内ツアーの最中、特に目を引いた施設が、The Lizzie & Jonathan Tisch Center for Innovation & Active Citizenshipです。2024年に完成したこの施設は、新しいアイデアを創出し、社会に主体的に関わる力を育むための教育拠点です。
そこでは、科学、工学、起業、市民教育、民主主義教育など多岐にわたる学びが提供されます。Gunnの学生達は、高校生の時分からこのような専門的な設備を用いて、日々学びを積み重ねていくことができるのだと知り、Gunn、ひいてはアメリカの教育にかける熱意と投資に改めて圧倒されたと同時に、その恵まれた環境で学びを積み重ねていく彼らの将来を心から楽しみに思いました。
The Frederick Gunn School公式ホームページはこちら
BSC学校紹介ページはこちら
10校目:Rumsey Hall School
Gunnから車で10分程走った先に次の訪問校、共学ジュニアボーディングスクールのRumsey Hall School(以下:Rumsey)があります。私達が伺った12校のうち、日本の小学5年生から中学2年生に相当する学生を対象とするジュニアボーディングスクールはこのRumseyのみでした。
Rumseyには現在約7名の日本人学生が在籍しており、当日は弊社で担当している2名の生徒がキャンパスを案内してくれました。学年差を感じさせないほど非常に仲が良く、訪問者への細やかな配慮を見せながらも、年相応の明るく活発な姿が印象的で、学校全体の雰囲気を体現しているように感じられました。特に興味深かったのは、この2名にとって、日本語よりも英語で会話する方がより自然である様子が見られたことです。日常的に英語環境で生活していることにより、英語が思考やコミュニケーションの基盤としてしっかりと定着していることが窺えました。
▲英語の授業が行われる教室です。見たことのない英単語が沢山ありました。
Rumseyには、季節や目的に応じて活用されるスポーツ施設が多数整備されています。キャンパス内にはアイスホッケー用のリンクがあり、冬季には本格的なホッケー競技が行われる一方、それ以外の季節には人工芝として活用され、サッカーなど多様なスポーツに対応しています。
また、ボート競技においては、屋内に専用のローイング練習施設が設けられており、春には水を張った大型設備(クルータンク)の中で実際の漕艇動作に近い形で練習を行うことが可能です。こうした専門性の高い施設がキャンパス内に整っている点は、Rumseyのスポーツ教育の充実度を象徴しています。
次に案内していただいたシアター施設の壁には、毎年の公演の様子を記録したタペストリーが飾られていました。Rumseyでは演劇教育にも力を入れており、年間を通じて授業や課外活動の中で表現力を育む機会が設けられています。特に冬から春にかけては、ミュージカルをはじめとする本格的な舞台公演が行われ、生徒達は役者としてだけでなく、舞台裏の制作にも関わりながら一つの作品を創り上げます。こうした日々の取り組みが最終的な公演へと結実する構成となっており、学びと実践が有機的に結びついているようです。
Rumsey Hall School公式ホームページはこちら
BSC学校紹介ページはこちら
11校目:Trinity-Pawling School
出張最終日の訪問校のひとつ、ニューヨーク州ポーリングに所在する男子校、Trinity-Pawling School (以下:TP)です。
この学校は、スポーツが好きな生徒や、競技を通して成長や学びを深めたい生徒、新しいスポーツに挑戦したい生徒にとって大変魅力的な環境です。特に、ラクロス、レスリング、アメリカンフットボールが盛んなスポーツとして知られ、いずれも学校のスポーツ文化を象徴する競技です。
特にアメリカンフットボールとレスリングは長い歴史を持つ競技で、学校のコミュニティでも高い注目を集めています。ラクロスも近年競争力のあるプログラムとして発展し、リーグ内の強豪校と互角に戦っています。こうした活動を支える施設として、フットボールやラクロスの試合および練習に使用される人工芝のDavid N. Coratti Fieldがあり、キャンパスの中心的な競技場となっています。また、レスリングには専用施設のMcGraw Wrestling Pavilionが整備され、さらにSmith Field Houseをはじめとする屋内トレーニング施設やウェイトルームが、選手達の日々のトレーニングを支えています。この3競技に加え、生徒達が多様なスポーツに挑戦できる環境がしっかりと整っています。
TPのユニークなプログラムの一つとして「Institutes for Active Learning」という独自プログラムがあり、教科書だけにとどまらない実践な学びを提供しています。「リーダーシップ」「社会参画」「起業家精神」「環境」の4つの分野から興味のあるテーマを選び、主体的に取り組みます。毎週土曜日に実施される「Saturday Programming」では、仲間と協力しながら課題に挑戦し、考える力や表現力を自然と身につけていきます。男子校ならではの環境の中で、互いに刺激し合いながら自信と責任感を育てられる点も特色です。
TPは、今回訪問させていただいた学校の中で、唯一制服を着用することが必須となっている学校です。アメリカの教育では、個人の自由や自己表現を尊重する価値観が強く、服装もその一部と捉えられることが少なくありません。その中で、このTPのようにきっちりと制服を身に着けることは、生徒が学校コミュニティの一員であるという意識を育て、強めることに繋がります。また、自分の行動が学校の名と結びついているという自覚が生まれることで、日々の振る舞いや周囲への配慮の中に、責任感や規律意識が自然と培われていきます。整然とした制服姿の生徒達の様子は、非常に「学生らしい」落ち着いた雰囲気を感じさせ、日本で制服文化に親しんできたご家庭にとってもなじみやすい環境と言えるでしょう。
現在TPに通っている日本人学生の一人は、学校の人々は明るく、そして優しく、この学校で過ごすにつれ、自分自身が前向きになり主体性も高まったと話してくれました。女子校であるWalker’sにも言えることですが、繊細で重要な学生の時期に、単学(女子校または男子校)で過ごす価値は計り知れません。私自身も女子校に身を置いた経験があり、実感したことでもありますが、思春期という多感な時期には、男女の違いから生じる戸惑いや意識が学習環境に影響することもあります。単学の環境では、そうした要素に左右されにくく、生徒が安心して自分らしく過ごすことができる落ち着いた空間が保たれます。この点は、単学教育の持つ大きな特徴であり絶対的な魅力の一つです。
Trinity-Pawling School公式ホームページはこちら
12校目:Choate Rosemary Hall
最後の訪問校は、Ten Schoolsの一校として知られる名門の共学校Choate Rosemary Hall(以下:Choate)です。本訪問を通じて、3校のTen Schoolsを実際に見学する機会に恵まれましたが、超名門校という共通の枠組みに属しながらも、各校が纏う空気や生徒の佇まいが三者三様であることを実感しました。このChoateという学校は、生徒達の知性と活気が高い次元で共存する素晴らしい学校でした。
この学校において特筆すべき存在が、Paul Mellon Arts Centerという、学校を象徴する文化・芸術の中核を担う建物です。かつて女子校であったRosemary Hallと男子校であったChoateの精神的統合を体現する施設として、1972年に卒業生Paul Mellon氏の寄贈により建設されました。自然光を最大限に活かした美術スタジオや充実したギャラリー空間を備え、生徒達は絵画、デザイン、デジタルアートなど多様な分野で、創造性を存分に伸ばすことができる環境が整えられています。隣接するColony Hallとともに、本施設は芸術教育を通じて生徒の表現力・知性・感性を総合的に育む、同校の教育理念を体現する存在です。
校内ツアーでは、2名の学生が広大なキャンパスを案内してくれました。高校生とは思えないほど落ち着きがあり、こちらの質問にも淀みなく的確に答える姿からは、生徒達の成熟度の高さが窺えました。一方で、ツアー中にガイドの生徒が学友から誕生日を祝われるといった場面もあり、温かく人間味あふれる学生同士の関係性も垣間見ることができました。
訪問時は授業後のアクティビティの時間帯であったため、体育館や芝生の校庭では、生徒達が課外活動に生き生きと取り組む姿がありました。学業に真摯に向き合う姿勢と同時に、スポーツや芸術にも全員が全力で取り組む生徒達の様子から、将来この社会のリーダーを担っていく彼らの姿が自然と想起されました。
Choate Rosemary Hall公式ホームページはこちら
学校訪問を終えて
人が「どこで」「どのような人々と」時間を過ごすかは、誰にとっても非常に重要な問題です。とりわけ、人格形成の大きな部分を占める学生時代においては、その影響は計り知れません。どの学校にも素晴らしい点があり優劣はありませんが、自分自身に最も合った学校・環境を見極め、選択することが何よりも重要です。その判断において、データや資料だけでは決して得られない「学校の気風」を知るためにも、学校訪問は極めて有意義であり、強くお勧めしたいプロセスです。
実際に、今回12校のボーディングスクールを訪問する機会を得て、改めて強く感じたのは、同じ学校は一つとして存在せず、それぞれの学校が唯一無二の魅力を持っているということでした。同時に、どの学校にも「合う学生」「合わない学生」が確かに存在するという現実を、肌で実感することができました。
こうした経験を通じて、ぜひ多くの方にボーディングスクールという進学の選択肢があることを知っていただきたいと思います。そして、この恵まれた環境を最大限に活用し、自らの可能性を広げ、未来を切り開いていってほしいと心から願っています。
学生時代は、限られた二度と戻らない時間です。その貴重な期間をどう過ごすかを考える上で、ボーディングスクールという環境に身を置き、新たな価値観や世界に触れ、自分自身を深く知り、それを未来へとつなげていくという選択は、非常に意義深いものであると言えるでしょう。