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甲南女子大学インタビュー:人間科学部総合子ども学科とLITALICOの包括連携協定。保育・教育分野の学生のキャリア支援に向けて、両者が実現したいビジョンとは?

2023年10月、「障害のない社会をつくる」というビジョンのもと、株式会社LITALICOは、甲南女子学園 甲南女子大学人間科学部総合子ども学科と、保育・教育等の分野で相互に協力し、人材育成を通じて社会責任を担うことを目的として、包括連携協定を締結いたしました。(プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000178.000025994.html

甲南女子大学は神戸市のキャンパスに5学部11学科を展開する私立の総合女子大学です。今回は人事統括部人材開発グループ(採用チーム)が、人間科学部総合子ども学科の伊藤先生と西尾先生にお話を伺いました。

保育・教育の分野での学生の成長やキャリア支援というテーマで、大学、企業それぞれの立場からどんなことが実現できるのでしょうか。

甲南女子大学 人間科学部総合子ども学科
学科長 伊藤 篤(いとう あつし)先生(写真中央)
プロフィール:
専門は地域の子育て支援、障害児の保育・教育。2018年に甲南女子大学に着任し、学科長を勤める。

甲南女子大学 人間科学部総合子ども学科
教授 西尾 新(にしお あらた)先生(写真右)
プロフィール:
専門は発達心理学、教育心理学。2008年に甲南女子大学に着任し、15年間人間科学部総合子ども学科の教授を務める。担当するゼミの卒業生が2020年にLITALICOジュニアへ入社。

LITALICOをきっかけに変わった講義スタイル。個別最適な環境づくりに共感して。

ーLITALICOを知ったきっかけは何でしょうか。

西尾先生:何年か前に、妻から「障害分野で企業として事業をおこなう株式会社ができたみたいだよ!」と聞いたのが、LITALICOを知った最初のきっかけでした。

教育・福祉の分野における大手企業は数も少ないですし、困りや悩みを抱えている方々を献身的にサポートするだけでなく、働く人もいきいきと働けるようにしたい、という素敵な理念をもった会社だなと感じていました。さらに、toCだけでなくtoBを含めて幅広い事業を展開していることや、調査研究をおこなっているLITALICO研究所(https://litalico.co.jp/lab/)の取り組みがとにかくおもしろそうだなと感じていて。個人的にもずっと注目してきた会社ではありました。

伊藤先生:私は、LITALICO発達ナビ(発達が気になるお子さまの保護者さまや支援者向けポータルサイトhttps://h-navi.jp/)が御社を最初に知ったきっかけでした。自分の講義の資料をつくる際に、各テーマの中で参考にする資料を探していたのですが、医療従事者が書く記事は学生にとって難しいと感じることも多いので、ちょうどよい難易度のものを探していたんです。内容は簡単でわかりやすくても、信憑性が不確かな記事もインターネット上に溢れているのでリサーチに困っていました。その中で、LITALICO発達ナビのコラムは、書いてある内容が分かりやすい上に、記事監修もしっかりしている印象があり、信憑性が高いと感じて参考にしてきました。


ーLITALICOとの連携が始まって以降、学生向けの講義スタイルにも変化があったとのことですが。

西尾先生:実はLITALICOを知ったことをきっかけに、学生にとって学びやすい環境づくりを意識するようになりました。以前は授業中にイヤホンをつけている学生に対して一方的に指摘していたこともあったのですが、今では周囲の音に対する過敏性があるなど、何らかの特性のある学生にとって、イヤホンがあったほうが学びやすくなる可能性もある、という捉え方に変わりました。

また、LITALICOのホームページを見ると、聴覚過敏といった特性の他にも、プロジェクターの光がまぶしくて辛いという視覚過敏の人もいるなど、私自身も特性について学びなおすきっかけをいただきました。

そこから、自分が行う講義のスタンスを大きく変えたんです。「帽子を被っていた方が安心するなら被っててもいいよ」「授業は録画、録音してもいいよ」など声をかけるようにし、学生自身が学びやすい環境を自分で選択できるようにしました。と

こうした事例から、私たちはLITALICOの世の中に発信している情報や考え方に対して、以前から大変信頼を置いていましたし、今も参考にさせていただいていると言えます。




大学とLITALICOが連携することで目指すビジョン

ー今回LITALICOとの連携協定を結ぶまでに至った経緯と協定の内容についてもお聞かせください。

西尾先生:日ごろからゼミ生には「社会に出て学んだことを、在学中の後輩にぜひ話しにきてね」と伝えていましたが、ある日、2021年にLITALICOへ入社した卒業生から連絡がありまして。その卒業生をきっかけにLITALICOと卒業生座談会など連携をするようになりました。

伊藤先生:2021年から、学生が現場で実践をつむための実習先を提供してもらうために企業・法人にも協力を仰いでいて、保育所や幼稚園、児童養護施設、社会福祉法人など様々な機関とインターンシップ協定を締結してきました。

今回LITALICOに私たちから提案したのは、実習受け入れのためのインターンシップだけではなく、学内でのセミナー等にLITALICOジュニアの講師を派遣してもらったり、社員との交流・座談会などによる就活支援も含めた包括的な協定です。

大学に学生向けの求人情報をお送りいただくだけの関係ではなく、これまでLITALICOが培ってきた児童福祉・障害福祉分野における理論や、現場での経験・知見を学生にお伝えいただくことで、学生たちの学びのサポートにもつながるのではないかと期待しています。

講義の実施概要:具体的な取り組みについて

ー包括連携協定の取り組みの一環として、2023年11月10日、保育・教育・心理を学ぶ20名の学生を対象に、LITALICO社員が登壇して講義をおこない、榎本大貴(LITALICO研究所所長)と、宮野原勇斗(公認心理師・保育士)の2名より、LITALICOが大切にしている考えや実践内容をお伝えしました。

<講義の内容(資料を一部抜粋)>

①「応用行動分析を使った子ども理解」:宮野原登壇

<学生からの感想(一部抜粋)>

・子どもの行動には全て意味があり、メッセージが含まれているのだと学びました。そのメッセージを意識しながら関わることが大切だと学びました。

・実習で「子どもがなぜその行動をするのか」が分からないことが多々ありました。行動の要因をこちらで決めつけるのではなく、子どもの気持ちや前後の出来事など様々な角度から考えれば、あらゆるアプローチができるということを知ることができました。

②「子どもの権利を尊重するために、教育者ができること」:榎本登壇

<学生からの感想(一部抜粋)>

・教育マルトリートメントや隠れたカリキュラムなど、大人の行動やその場の状況が子どもたちに多くの影響を与えていることに気づきました。また、今回のワークや講義を通して個別最適な教育が必要なのだと感じました。

・自己犠牲を美徳とするのではなく、自分自身の権利に対してもしっかりと声を上げることが、子どもの権利保障にも繋がるという新たな価値観を得ることができました。

受講してくださった学生の皆さんは、認定こども園や児童養護施設のアルバイト経験、保育園・幼稚園実習を終えており、既にお子さまと関わる経験がある方も多かったようです。今回の講義ではご自身の「お子さまとのかかわり方」を振り返る機会となり、お子さま一人ひとりに合った関わり方の理論や、現場の具体的な実践を知ることができたようでした。


「何になりたいか」ではなく、「どう生きたいか」を考えてみてほしい。

ー先生方は学生の在学中や卒業後の様子を見守るなかでどのような思いをお持ちなのでしょうか。

伊藤先生:私たちの願いとしては、学生一人ひとりが社会に出たら誇りをもって、いきいきと働いてもらうこと。それに尽きます。そのためにも、LITALICOジュニアのように、多様な子どもに関わる仕事があることを知ってもらい、自分自身と目の前の子どもを大事にしながら働いている先輩の姿を学生時代からしっかりと見ておいてほしいんです。だからこそインターンシップの機会やOGとの座談会の機会は大変貴重だと感じています。このLITALICOとの連携が、学生たちのキャリア支援をしていく一つのきっかけになればいいなと思います。

西尾先生:私は学生に「何になりたいか」よりも「どう生きたいか」を考えてごらんとよく問いかけます。今後のキャリアを考える上で「保育園の先生になりたい」「幼稚園の先生になりたい」だけではなくて、自分の人生をどう生きたいのか、を考えるといいよと伝えています。だからこそ、学生の「どう生きたいのか」を一緒に整理し、サポートしていく立場がわたしの役目だと考えています。

ーLITALICOとしては、教育事業を展開する企業として、学生が社会人になった後の「生き方・働き方」に関する情報を提供することはとても重要だと考えています。特に、子どもと関わる仕事のおもしろさ、奥深さを発信していくことを通して、保育・教育の仕事の意義を一緒に考える機会をつくっていきます。

就職活動のなかで、入社後の働き方に対して不安を抱えている学生もいるかもしれません。だからこそ、今後も学びの場である学校機関と、働く場である企業間でのこういった連携を強化することで、学生のキャリア支援をよりよく行っていきたいと思います。

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