連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第10弾は、「AI時代に、採用で変わったこと・変わらないこと」です。Vol.9でAIとの付き合い方が「レベル3」になったと語った安武さん。毎朝「おはよう」の一言でその日のタスクが整理され、業務プロセスをAI前提で再設計している。そこまで仕事が変わったとき——採用の基準も変わっているのか?「AIが使えるかどうか」を選考で問うのか?今回は、採用担当者としての安武さんの本音に迫ります。
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ーVol.9でAIが「仕事の構造を変えた」と話していましたね。採用の基準も変わりましたか?
採用基準はかなり厳しくなっていますね。
理由として、AIがここまで実務に入ってきた結果、これまで人が担っていた仕事の多くが代替されていく実感があるからです。ホワイトカラーの仕事って、AIに置き換えられる部分がかなり多いですよね。「では、人を採用する意味は何か」という問いが、以前よりずっとシビアになってきています。
具体的には、AIが普及してから応募者のアウトプットが均質化してきたと感じています。職務経歴書も自己PRも、文章として整っているものが増えました。以前だったら「よく書けているな」で差がついた部分が、今は差になりにくいです。だから逆に、「この人は自分の頭で考えているか」を見ようとするようになりました。書類の完成度より、面接の中でどんな問いを立てているか、自分の言葉でどこまで話せるかの方を、以前より意識して見ています。整った文章を出してくる人と面白い問いを持ってくる人が、はっきり分かれるようになってきたという意味では、AIの普及が採用の解像度を上げてくれた側面もあると思っています。
ー面接で、具体的に変えた質問はありますか?
以前はAIを使っていますか?という質問をすることもあったんですが、今はほとんど聞かなくなりました。なぜかというと、使っていますという答えが当たり前になってきたからです。
代わりに聞くようになったのは、「最近AIを使って取り組んだ仕事を教えてください。その時どこで詰まりましたか?」という質問です。うまくいった話はみんな話せる。でも詰まった話には、その人がAIとどう向き合っているかが出てくるんですよね。AIに何度聞いても答えが出なかったという人と、AIが出してきた答えが正しいか自分では判断できなかったという人では、全然違う話なので。AIは答えを出してくれるものと思っている人と、自分の思考を加速させるものと思っている人の差が、こういう質問でわりとはっきり見えてきます。
実際、最近の面接で「AIが出してきた企業分析が、クライアントの実態と全然違って、そのまま提案してしまいそうになった。だから一度自分で現場に確認しに行った」という話をしてくれた方がいました。詰まり方の中身がすごくよくて印象に残りましたね。AIを疑って、自分の足で確かめた。ああいう話が出てくる人は、現場でも同じように動けるだろうなと思います。
ーAIが使えていても「ちょっと違うな」と感じる人はいますか?
いますね。AIのアウトプットをそのまま持ってくる人は気になります。
別に、AIを使って準備してきたこと自体は全然問題ないんです。むしろ当然だと思っています。でも、それをどう料理したかが見えない人は、やっぱり気になる。面接の場でそれ、自分の考えですか?と聞いたときに、少し間が空く人がいます。そういう人は、情報を整理するのにAIを使ったのか、考えるプロセスごとAIに委ねてしまったのかが区別できていない。AIと一緒に考えるのはいいんですが、どこが自分の判断かがわかっていないと、仕事の現場でも同じことが起きます。これはAI時代だからこそ出てきた「詰まり方」だなと思っています。
ーRITの社内でもAI活用が進んでいますよね。内側の変化が、採用の目線にも影響していますか?
しています。実感として、ここ1年でメンバーのアウトプットの密度が変わりました。以前と同じ時間で、提案の量も質も上がってきている。そういうチームの中で一緒に働くことになるわけなので、「AIと並走しながら仕事を進められるか」は、入社後のフィット感に直結してくると思っています。
ただ、これが「入社前にAIを使いこなせていないといけない」という意味では全くないんです。RITの中にも、入社した時点でAIをほとんど使ったことがなかったメンバーが、今は日常的に使っている人がいます。環境に入れば自然と慣れていく。それより大事なのは「慣れようとする姿勢」があるかどうかです。
自分自身が変化を楽しめる人かどうか。これは、AIが普及する前から変わらず見ているポイントですが、今はその重要性がさらに増している気がします。
ーでは、変わらず重視していることは何ですか?
これはVol.2でも話したんですが、「経営者とか起業家に近い、自分で考えて動かす力」だと思っています。AIの時代になっても、ここだけはまったく変わらないですね。むしろ重要性が増してきている気がします。
具体的に言うと、現場に出て実態を見て、自分の頭で示唆を出せるかどうか。お客さんとコミュニケーションして、組織を動かせるかどうか。そういう力のことです。これはまだAIにはできない部分なんですよ。AIは情報を整理してくれるし、仮説だって出してくれる。でも、現場に足を運んで、人と向き合って、信頼をつくっていくプロセスは、まだ人間にしかできないです。
AIが普及するほど、この力の価値は相対的に上がっていくと思っています。均質化したアウトプットが溢れる中で、「この人は現場を知っている」「この人は自分の頭で考えている」という差は、むしろ際立つようになってくる。
コンサルという仕事で言えば、特にそうです。AIにできることが増えれば増えるほど、AIにできないことをちゃんとやれる人が求められるようになる。自分で考えて動かす力、それが今も変わらず一番見ているところです。
ーAI時代に応募を考えている若手に、何かメッセージをお願いします。
「AIが使えるかどうか心配」という声を最近よく聞くんですが、そこはあまり心配しなくていいと思っています。
AIは慣れるものなので、使い方を先に勉強しようとしなくていい。まず話しかけてみる、使ってみる。そこから始めれば十分です。それより心配してほしいのは、「自分の考えを言葉にする力」と「素直に動ける力」が育っているかどうかです。AIが進化するほど、この2つの価値は上がると思っているので。
正直なところ、AIに仕事を任せすぎて自分の判断力が鈍るリスクの方が、今は気になっています。AIをうまく使っている人は、AIが出してくるものを疑う力も一緒に鍛えている。これ本当に合っているか?自分だったらどう判断するか?を問い続けられる人。その両方が育っている人と、ぜひ一緒に仕事をしたいですね。
AIの時代になっても、この人の話を聞きたい、この人と仕事をしたいと思われる人間でいることが、一番強いと思っています。それはツールが変わっても変わらないですね。
・・・
安武さん、今回もありがとうございました。
採用基準という話なのに、結局たどり着くのは「自分の頭で考えているか」「素直に言えるか」という人間としての根っこでした。AIが変えたものは多いけれど、人を見る目の本質は変わらない。そういうことかもしれません。次回のテーマもお楽しみに!
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