私たちは、『民間から多種多様な社会保障を行き渡らせる』をミッションに掲げ、ドネーションプラットフォーム事業・インクルーシブデザイン事業・テクノロジー事業という3つの事業を展開している会社です。
2026年3月で創業10年という節目を迎えました。
この10年様々なことがございましたが、改めてどんな想いを込めて事業を作ってきたのかをご紹介しているシリーズ第二弾です。
今回は執行役員CDO兼インクルーシブデザイン事業責任者の川合さんにお話を伺いました。
■プロフィール
執行役員CDO 川合 俊輔
芝浦工業大学デザイン工学部を卒業後、株式会社ジャストシステムにてUIデザインを担当。その後、海外に拠点をもつデザイン会社にてUXデザインを担当。その後、株式会社STYZにてインクルーシブデザイン事業を立ち上げ、現在に至る。
「なぜ」インクルーシブデザインに目を向けることになったのか
―川合さんが「なぜ」デザインスタジオを立ち上げることになったのか、またそれがなぜインクルーシブデザインという領域なのかを理解するために、これまでの川合さんのご経歴を教えてください。
大学ではデザイン工学を専攻していました。
「デザイン工学」とはどういった領域の学問なのかをご理解いただけると、今に繋がっているように感じていただけるかもしれません。
デザイン工学を非常にシンプルに説明すると、見た目のデザインではなく人を起点に設計するような学問です。
デザイン(意匠・感性)とエンジニアリング(技術・機能)を融合させ、社会に価値を実装するための学問とも言えます。
例えば、「人間」はどのような身体の使い方をするのか、どういった心理的な動きがあるのかをリサーチしたうえで、物理的な人間工学と照らし合わせ、座りやすい椅子をデザインする、というような研究を行うのがデザイン工学の一つです。
あくまで「人間」が起点であるということが最大の特徴と言えると思います。
デザイン工学の学びを深めていくなかで、「恩師」と呼べる教授に出会うことができました。
恩師からの教えを受け、プロダクトを設計するだけではなく事前の調査、探索やUXデザインの重要性を理解しました。この学びのなかで、デザイン設計のプロセス自体に惹かれるようになり、人間工学や認知科学の領域も踏まえて「人を知ること」の面白さを感じるようになったのです。
この経験を活かしてUXデザインの知識を積んでいきたいと考えたものの、その当時、UXデザイナーの求人は非常に少ないものでした。
そこで、まずはUIデザインのスキルを伸ばそうと、UIデザイナーとして勤務を開始しました。2年半の経験を経て、ご縁をいただきオーストラリアに拠点を置く外資系のデザイン会社にUXデザイナーとして転職することができました。
念願のUXデザイナーとしてのキャリアを開始できたことで仕事自体にもやりがい、充実感を感じていましたが、実はこの会社で特筆して後学に繋がったのは、企業そのもののカルチャーや組織・チーム作りへの取り組みでした。多国籍の組織だったので、海外のカルチャーや考え方にも感銘を受けることも多く、仕事以外では家族のように接する関係性など、社員同士の関わり方も興味を惹かれました。
チームメンバーの関係性が良いからこそ、コミュニケーションのパス回しが多くなり、良いものを作れるのだと確信しました。
―大学時代からお持ちの「人間」への興味が、「人間と人間の関わり合い」、「チーム・組織」に移行していったイメージでしょうか。
そうですね。
チームとは、互いの凸凹を埋め合うだけの関係ではないんです。
同じ熱量や原動力を共有することで、「ものづくりやデザインは楽しい」と思えるプロセスを生み出すことができる。そのプロセスにも価値があるのだと考えるようになりました。
こういった過程があり、さらにチームで仕事をすること自体の学びを深めたいと感じ、大学院で共創空間やラボの仕組み・構造を学び、博士課程に通いながら研究しています。
ここまでの経験を経たことで、将来は自分でデザインスタジオを作り、根本的な課題を解決する場を作りたいという想いが芽生え始めました。
STYZのCOOとの出会い。
そして、インクルーシブデザインという考え方との出会い。
―ついにデザインスタジオを作りたいという想いが形成されていったのですね。
デザインスタジオを作りたい、その中でもインクルーシブデザインという領域に挑戦したいと考えるようになったのはなぜなのでしょうか。
もともとSTYZのCOOである佐藤とは10年来の知り合いでした。
COO佐藤のインタビュー記事はこちら▼
非営利団体への寄付のプラットフォームを作りたいという想いも聞いていましたし、なんだか面白そうなことをやっているな、と関心もありました。
インクルーシブデザインに対して考えるきっかけになったのは、とある企業様と共に、がんの経験を持つ方へ課題解決を考えるためのプロジェクトでした。
このプロジェクトに関与できたことは、デザインに対する考え方自体の変容にもなりました。
課題を外から見るのではなく、ステークホルダー全員が当事者意識を持ち、チームで課題に向き合っていく・・・この状態でプロジェクトに取り組むことが、根本的な課題解決に繋がるのだと確信したのです。
10代の頃は「社会に誇れるものを作りたい」「誰かのためになりたい」といったシンプルな目標のみを持って、仕事を選択していました。
しかし、デザインを学び、仕事にしていく中で、現実的に生活資金を稼ぐ必要性や、自身の市場価値を上げるためにスキルを磨くなど、身の回りを取り巻く環境は複雑性が増してきました。
そして30代になり、一定のスキルは身についた。それでもまだ、これからどう生きていくのか、どうデザインと向き合っていくのか、まだまだモヤモヤするというのが、正直なところでした。
そのモヤモヤが「利己的」なデザインだけでなく、仲間や、誰かのために、社会のためにといった「利他的」なデザインに関与することで晴れてきたのです。
今まで磨いてきたスキルを社会のために還元したい、という信念を持って行動することで、徐々に自分自身の中で納得感が生まれたように思います。
この先も、社会的意義のある領域に挑戦し続けたい、そう考えていた頃に声をかけてくれたのが、COO佐藤でした。
STYZが実現しようとしているビジョンに親近感を感じましたし、自分が今抱えているフラストレーションを社会への価値として還元できるのではないか。
そこで、STYZ CEOの田中、COOの佐藤、私でワークショップを行い、どんな事業を作れそうかを議論し、最終的には『Syncable』をベースにデザインスタジオを作れたら、社会課題を起点に、その解決のための仕組みを設計する、という観点からデザインができるのではないか。そうしてインクルーシブデザインスタジオ『CULUMU』が誕生したのです。
STYZだからこそできるプロジェクト。
クライアントともチームになっていく重要性。
―川合さんは、「チーム作り」として社内だけでなくお客様ともチームになっていくことを大切にされていると思います。実際にSTYZで行ってきたプロジェクトでチームになっていくと感じたプロジェクトはどんなものが印象的ですか?
とある大手企業様との共創プロジェクトで、障害のある当事者の方々とともに新規サービスの構想からプロトタイプ検証まで伴走した実例があります。
最初は「発注者と支援会社」という関係性でしたが、リサーチを重ねる中で構造が変わっていった手応えがありました。
CULUMUは社会課題の構造化やインクルーシブデザインのプロセス設計、N=1のインサイト抽出に専門性を発揮し、クライアントは業界知見や事業実装力を持ち寄る。
そして当事者の方々は、日々のリアルな体験という唯一無二の知を提供してくれる。
議論は「誰が正しいか」ではなく、「何が本質か」に向かい始め、それぞれが自分の専門性で自然に動き出すという理想の形になっていきました。
するとワークショップや検証の場から新しい発想が次々に生まれ、クライアント企業の別部署の方も「面白そうだ」と加わり、気づけばチームが拡張していました。
役割ではなく、目的でつながった瞬間だったと思います。
—それぞれの得意な領域や持っているものを活かせている状態ですよね。
川合さんはこのプロジェクトで「なぜ」チームと感じられたと思いますか?
一番大きかったのは「熱量」です。
熱量が生まれた理由は、全員が他人事ではなくなったこと。
当事者の声を直接聞き、一緒に街を歩き、社会や環境によって生じる不便や困りごとを一緒に体験し、一緒に仮説を立てて、一緒に検証する。
『調査 → 理解 → 探索 → 試作 → 検証』このプロセスを共に実践し、積み重ねていくことが、「当事者意識」を生みます。
その中で、「これは本当に良い」と心から思えるものを作ろうとしている実感が生まれたのです。重要なのは、特に4つだと思います。
- 課題を一緒に“見る”こと
- 専門性を持ち寄ること
- 小さくても一緒に検証すること
- 本気で社会に出す覚悟を持つこと
この要素をひとつずつ丁寧に進めていくことが、熱量のあるチームをつくることに繋がるのです。
—「これは本当に良い」と心から思えるものを作ろうとしている実感が生まれたというプロジェクト、素晴らしいですね。因みに、そのプロジェクトの社会的意義はどういったところにあると感じましたか?
実際に当事者の方と行動を共にする中で、「こんなにも日常に障壁があるのか」という事実を、当事者と共に企業の担当者自身が体感したことが大きな転換点でした。
『数字やデータではなく、実体験として理解すること』それは単なる商品改善ではなく、
『この会社は社会の中で何を果たす存在なのか』という問いに変わっていきました。
社会的意義は、特定の社会や環境の下で困っている人を“対象”として見るのではなく、
“共に未来をつくるパートナー”として互いが互いに見る視点の転換を起こせたことだと思います。
—そのプロジェクトは、インクルーシブデザインの真髄かもしれませんね。
ちなみに・・・川合さんが考えるインクルーシブデザインとは何だと思いますか?
多様な人に「合わせる」ことではないと思っています。
多様な人に目を向け、そこからN=1の課題を深く探究すること。
その探究から生まれた新しい価値を、デザインを通じて「仕組み」として社会に広げていくこと。
つまり、
N=1の違和感や困りごと
→ 本質的なインサイト
→ 新しい価値提案
→ 事業やサービスとして実装
→ 結果的に多様な状況にある人がそれぞれに利用しやすい世界になる
この循環をつくることがインクルーシブデザインだと考えています。
最終的には、社会にとっても企業にとっても“価値”になる状態をつくること。
そこまでやって初めて意味があると思っています。
STYZだからこそできるインクルーシブデザイン。
変わらないこと、変わることとは。
―2022年9月にCULUMUの立ち上げからご参画され、4年という月日が経ちました。
立ち上げから今日まで大切にしてきたことや変容・進化してきたことはありますか?
創業から一貫して、N=1の『声なき声』からまだ見ぬ未来を問い直すということ、雑にマジョリティとしてグルーピングするのではなく一人ひとりの課題と向き合うということ、ありとあらゆることに当事者として関与するということは、立ち上げから変わらず何よりも大切にしています。
これからという未来の話で言うと、もっと社会に誇れるプロジェクトを拡げていきたいと考えています。
そのためには、地道に私たちの考えに賛同してくださる企業を探し、拡げていくことが必須です。
利他的な考え、目の前の1人が困っていることを課題として捉えること、そして社会をより良いものにしていくこと・・・こういったことに魅力を感じ、共にチームになっていただける方と仕事ができたら嬉しいですね。
大切にしたいことは一貫していますが、組織は変容していき、さらに良い未来を描くためにもCULUMU自体をインキュベートしていきます。
—CULUMUでは絶賛、採用活動中ですがインクルーシブデザインに「今」チャレンジすることはどんな価値があると思いますか?
今インクルーシブデザインに挑戦する価値は、未来に必要とされる事業を先に創れることにあります。
社会課題は、民間企業において事業化されて初めて持続的な解決に近づきます。
だからこそ、社会の周縁にある声に向き合うことは、未来市場の探索そのものだと思っています。
両利きの経営で言えば「探索」を止めないこと。
既存事業の延長線上では見えない問いに向き合い続けること。
インクルーシブデザインは単なる社会貢献ではなく、
組織の進化装置であり、未来を創るエンジンだと考えています。
だからこそ「今」やる価値があると思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
現在、当社では採用活動を積極的に行っています。ぜひお気軽にお話ししましょう!
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