教室から世界へ。海外協力隊という選択と、Teach For Japanでの2年
今回は、Teach For Japan(以下、TFJ)のフェローシップ・プログラム修了後、JICA海外協力隊(以下、協力隊)としてご活躍中の大和一輝さんと浅野琳香さんに登壇いただき、教員および国際協力という2つのフィールドをご経験されている中で感じる“リアル”を語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。。(※本記事は、2026年3月に行われたイベントのレポートです。)
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大和一輝さん(写真右/フェロー第9期生/小学校赴任)JICA海外協力隊:ソロモン諸島
大学生で参加したフィリピン教育実習プログラムを機に「海外教育」や「小学校教育の重要性」に関心を持ち、新卒でJICA海外協力隊へ応募。しかしコロナ禍の影響で合格を辞退し、Teach For Japanを通じて福岡県田川市の小学校へ赴任した。計4年間、価値観や背景の異なる子どもたちと向き合う中で、「子どもの多様な思いを教室で受け止めるためには、自分の視野と器を広げる多様な人生経験が必要だ」と感じ、再度協力隊を志願。現在はJICA海外協力隊2024年度2次隊として、ソロモン諸島の小学校で教育環境の向上を目指して活動している。
浅野琳香さん(写真左/フェロー第11期生/中学校赴任)JICA海外協力隊:タジキスタン
大学時代に世界の「平和」に関心を持ち、国際協力の道を志すが、心身の不調により休学。休学中にヨガと出会い、「平和は心の安定の上に成り立つ」と実感する。大学卒業後は、Teach For Japanを通して熊本県の中学校に赴任し、英語教員として「平和」を軸にした教育を模索してきた。2026年1月よりJICA海外協力隊としてタジキスタンの青少年センターに赴任し、現在、英語教育と日本語教育の運営に携わっている 。
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目次
ー自己紹介をお願いします。
心の支えになったTFJの仲間たち
ーフェローシップ・プログラムに応募した理由を教えてください。
ーTFJコミュニティの魅力は何ですか。
ビジョンを持つことは大切だが、押し付けるのはダメ
ープログラムの赴任前研修の中で印象的だった出来事はありますか。
ー赴任先でのエピソードを教えてください。
日本での教員経験が異文化を受け入れる土台になった
ー協力隊に参加を決めた理由を教えてください。
ー協力隊として活動する中でどんなことを感じていますか。
ーフェローシップ・プログラムの経験が活きている場面はありますか。
多様性は子どもだけではなく先生にも必要
ー今後の展望を教えてください。
Q&A
Q:協力隊の派遣国は希望していた国ですか?
Q:おすすめの英語勉強法を教えてください。
Q:派遣先での1日のスケジュールを教えてください。
Q:協力隊の選考に関してアドバイスはありますか?
Q:現地の方にウケた取り組みはありますか?
Q:海外の教育を見たお二人が感じる日本の教育の素晴らしい点はなんですか?
ー最後にメッセージをどうぞ
ー自己紹介をお願いします。
大和さん:私はフェローシップ・プログラム第9期生として、福岡県田川市の小学校へ赴任しました。2021年4月から2年間はフェローシップ・プログラムで赴任し、その後田川市で`1年間`教員を継続しました。 現在は協力隊としてソロモン諸島の小学校で活動しています。
浅野さん:私はフェローシップ・プログラム第11期生として、熊本県阿蘇市の中学校へ赴任し英語を担当しました。現在は協力隊としてタジキスタンの補完学校で日本語を教えています。タジキスタンの子どもは午前か午後に公立校へ通い、残りの半日は塾や補完学校へ行ったり働いたりするスタイルです。補完学校は体育や美術など公立校では扱わない教科を補う教育機関です。
心の支えになったTFJの仲間たち
ーフェローシップ・プログラムに応募した理由を教えてください。
大和さん:理由は3つあります。
1つ目は資格の壁です。小学校の教員免許が無くても参加できる点が魅力でした。私はファーストキャリアを協力隊と決めていたのですが、コロナ禍の影響で派遣が中止になってしまいました。待機期間中は小学校で支援員のアルバイトをしたのですが、自分も担任を持って授業をしたいと思うようになったのです。
2つ目はTFJコミュニティに魅力を感じたからです。お互いに学び、高め合える仲間との出会いを期待しました。
3つ目は赴任期間が決まっていたことです。協力隊の合格資格は生きていたので、ゆくゆくは海外へという思いがありました。
浅野さん:学校の中だけでは出会えない、様々な価値観にふれられる環境に魅力を感じたからです。『教員は社会を知らない』という言説に悩まされ、社会経験のないまま学校で働くことに迷いを感じていました。しかし、大学時代にTFJのインターンシップに参加し、多くのフェローと出会う中で、教員になってからも自ら学び続け、視野を広げていけるかどうかは自分次第なのだと感じました。
ーTFJコミュニティの魅力は何ですか。
大和さん:私の友人・知人がフェローシップ・プログラムに参加したことを知り、自分も入りたいと思いました。TFJコミュニティには、多様なキャリアや価値観を持つ方々が集まっており、学ぶチャンスが多いです。私は赴任中フェロー数名とシェアハウスに住んでいたのですが、精神的に助けられたことが多々ありセーフティーネットだったと感じています。
浅野さん:一言で表すとしたら「心の拠り所」です。赴任先では理想と現実のギャップにモヤモヤすることも多かったのですが、TFJコミュニティのSlackでその思いを吐き出すことができました。赴任前研修で自己開示する機会が多かったので、安心感が大きかったことも一因かもしれません。経歴が面白い人、考え方が面白い人 など一緒に過ごしたら刺激をもらえる方々がたくさんいる点も私には魅力的です。
ビジョンを持つことは大切だが、押し付けるのはダメ
ープログラムの赴任前研修の中で印象的だった出来事はありますか。
浅野さん:ビジョンのセッションです。実はこれ、すごく苦手な授業でした。教育ビジョンを言語化しみんなの前で発表するのが嫌だなと思っていたのですが、このことが赴任中非常に役立ちました。学校では授業など目の前のことに熱中してしまうのですが、自分の軸があることで立ち返る機会を得られたからです。
大和さん:対話重視の研修が印象的でした。他者との対話を重ねる中で自分の教育にかける想いが育まれていったと感じます。座学やレポートが多かった教職課程とは全然違うと思いました。
ー赴任先でのエピソードを教えてください。
大和さん:2つあります。
1つ目は、学びの前提として教育環境が重要であることです。生徒の家庭環境は十人十色で、学校に通うことや学習に取り組むことに困難が伴う子ども、私が想像する以上に厳しい状況に置かれた生徒がいることを知りました。
2つ目は、子どもの姿から学ぶということです。私の教育ビジョンを一方的に押し付けるのでは無く、生徒の気持ちや状態を聞いたり想像したり汲みとったりした上で、目指したいものを届けることが大切だと感じました。クラス運営をする立場として、自分自身が柔軟に対応することの重要性を学びました。
浅野さん:学校の中で何かを広げるためには、時間がかかるし周りの協力が必要であると学びました。赴任先で影響力のある先生がいたのですが、その先生の周りには人が集まってくるし、みなイキイキとしていました。対話を大切にする姿勢にみな共感していたのだと思います。自分のクラスを良くするためには、授業を工夫するなど個人の努力で克服できますが、学校全体に影響を与えるにはそれだけでは足りません。教員同士のビジョンや考えを共有し足並みを揃えることで、生徒に対する方向性が定まり子どもたちへのメッセージが統一されます。私もその先生のような働きかけをしたいと思いました。
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日本での教員経験が異文化を受け入れる土台になった
ー協力隊に参加を決めた理由を教えてください。
浅野さん:私は思春期の頃、自分の家庭環境に不満があり親に反抗していました。高校時代の先生がフィリピンでの語学留学を進めてくれて、英語を学ぶつもりで行ったのですが、現地の生活水準やストリートチルドレンなど厳しい環境で生きていく人達を見て衝撃を受けました。今まで自分は恵まれていないと思っていたことが恥ずかしくなり、国際協力に関心を持ったのです。
大和さん:大学在学中フィリピンでの教育実習プログラムに参加し、海外で教員として働くことに関心を持ちました。協力隊を選んだのは、JICAのバックアップ体制と研修制度が充実しており、安心して参加できると思ったからです。コロナ禍で派遣が中止になりましたが再び参加しようと思った理由は、TFJでの赴任経験を経て自分をアップデートしたいと思ったからです。新しい価値観や経験を積んで、子どもたちを受け止められる自分の器を大きくしたいと感じました。
ー協力隊として活動する中でどんなことを感じていますか。
大和さん:学校の役割が日本と違うことです。こちらは地域コミュニティが強く教会を通じて人格形成に必要な要素を多く学ぶので、学校は教科を教えるという限定的な役割でした。日本での教員経験が自分の中でものさしとなり、比較することができています。
浅野さん:タジキスタンの教育は教科を教えることが中心ですが、日本では人を育てることに重きをおいた教育を行っています。国それぞれに教育の考え方が違うので、自国の教育現場を経験できたことは決して遠回りではありませんでした。むしろ準備期間として最適だったと感じています。
ーフェローシップ・プログラムの経験が活きている場面はありますか。
大和さん:現地の先生と話す中で、生徒の計算力の低さが話題となったことがありました。私は日本での教員経験から、計算力の定義は正確性×スピードという最適解を持っていたので、この視点を元に改善策を提案しています。このようなぼんやりした課題が多くあるので、日本での経験は課題の定義や解像度を上げることに活きています。
浅野さん:2つあります。
1つ目は、自分の活動に対する軸を持てていることです。補完学校はカリキュラムがなく自由度の高い教育機関なので、授業をどう進めるか、生徒に何を伝えたいかという軸を考える時に経験を活かしています。
2つ目は、TFJコミュニティのつながりです。タジキスタンは協力隊の受け入れを始めて数年の国なので、派遣前訓練で公用語のタジク語を学ぶことはできませんでした。第二言語のロシア語を学んだのですが、現地ではロシア語が通じないこともあると聞いて焦りました。 そんな時、TFJコミュニティでタジキスタンへ留学経験のある方を紹介してもらい、タジク語の参考資料を得ることができたのです。TFJコミュニティには海外とのつながりがあるメンバーが多いと感じています。
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多様性は子どもだけではなく先生にも必要
ー今後の展望を教えてください。
浅野さん:私の教育ビジョンは「平和」です。平和教育は途上国にだけ必要なものではないので、協力隊終了後は日本で平和教育に関わることをしたいと思っています。協力隊では日本とタジキスタンの架け橋になるような取り組みを考えています。お互いに関係が薄い国ですので、まずは相手を知ることから始めて、その積み重ねが平和につながると信じています。
大和さん:海外生活を充分楽しんだので、帰国後は日本を拠点に教育に携わりたいと考えています。公立校に限らず様々な現場を検討しており、協力隊での経験が活かせる環境を探したいです。
Q&A
Q:協力隊の派遣国は希望していた国ですか?
A:大和さん:派遣国の希望は3つまで提出できますが、経験との兼ね合いがあるので希望通りにいかない場合もあります。私は、1回目の応募ではアフリカを希望していましたが大洋州を割り振られました。2回目の応募は大洋州を希望し、希望通りの派遣先が決まった形です。
浅野さん:私はタジキスタンを第2希望にしていましたが、正直派遣国はどこでもよくて、活動内容を重視していました。
Q:おすすめの英語勉強法を教えてください。
A:大和さん:派遣国は英語圏以外も多いですので英語が必要ない場合もあります。私は、事前研修が始まってから本気で始めました。
浅野さん:実は私、英語教員として派遣される予定だったので1年間しっかり勉強しました。現地で会話することを念頭にアウトプットを重視していました。(結果的に現地で英語は使っていませんが…)
Q:派遣先での1日のスケジュールを教えてください。
A:大和さん:8:00〜16:00学校勤務でそれ以降は自由時間です。日本の教員と比べたら余暇が多いですね。
浅野さん:補完学校は9:00〜16:00ですが私のクラスは2コマ(2時間)しかないので、同僚とお茶する時間の方が多いです。今後は自分から活動を広げていきたいと考えています。
Q:協力隊の選考に関してアドバイスはありますか?
A:大和さん:JICAは様々な要請がある中でマッチする人材がいるかどうかを重視していますので、自分の経験が活かせるかどうか確認する必要があります。例えば教育分野では、教員・教育省の役人・教員の育成担当など求められる分野は様々です。
Q:現地の方にウケた取り組みはありますか?
A:大和さん:現地語を覚えることです。ソロモン諸島の公用語は英語で共通語はピジン語ですが、村ごとに話されている現地語があります。村の現地語を覚える外国人はほとんどいないので、私が現地語を話した時はウケましたね。その瞬間ぐっと距離が縮まるので、そこから活動が広がることもありました。
浅野さん:日本のアニメキャラクターを例文に入れたら生徒達が沸きました。日本のことは知らなくてもアニメは知ってるという子どもが多いです。
Q:海外の教育を見たお二人が感じる日本の教育の素晴らしい点はなんですか?
A:大和さん:数えきれないほどありますが、1番すごいと感じるのは全国どこでも質の高い教育が受けられる点でしょうか。ソロモン諸島では地理的要因により教育に差があります。山間の学校は先生や教科書が不足しているために教育水準が保たれていないケースがありました。
浅野さん:良いかどうかはまだ判断できないのですが、大きく違うと感じるのは、日本では教育が大切にされており、学校に行くことが義務になっている点です。タジキスタンでは、教育に対する価値観が、家庭や先生によって大きく異なります。先生が家庭の事情を優先して授業を休むこともよくあります。また、家庭によっては教育よりも家事を優先する考え方があり、子どもが家事のために学校を休むことも珍しくありません。
ー最後にメッセージをどうぞ
大和さん:私の持論は「子どもが多様なのであれば、先生も多様であった方が良い」です。色々な先生がいることで学校は成り立っているし、必要としている生徒がいるはずです。迷ったらぜひ飛び込んでみてください。
浅野さん:私は勉強が得意なわけでもありませんが、何かひとつは教えられると思っています。親に反抗した経験を通して、人生の波がある先生の方が面白い教育ができるのではないかと思うようになりました。自分が失敗した分だけ教えられることがあります。
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