こんにちは!
ウォンテッドリーでインフラエンジニアをしている加藤 健 (@kkato25)です。
2025年11月21日に開催されたPostgreSQL Conference Japan 2025に参加してきました。昨年も同じカンファレンスに参加してブログにまとめているので、よければそちらもあわせてご覧ください。
PostgreSQL Conference Japan 2024 参加・登壇してみて | Wantedly Engineer Blog
昨年は講演と当日スタッフの両方で関わっていましたが、今年は聴講に専念。業務時間として参加できるよう調整してくれた会社には感謝しています。
会場の雰囲気
会場は東京・日本橋にあるAP日本橋でした。
到着してまず感じたのは「去年より人が多い!」ということ。どうやら今年は直近 8 年間で最も多い参加者数だったそうです。
(開始前の写真なので、まだ人はまばらです。)
最近は PostgreSQL を採用する企業が増えていたり、クラウドベンダーから PostgreSQL 互換の製品が次々と登場していたりするので、その流れが確実にコミュニティの活気にもつながっているのだろうと感じました。
印象に残った講演
The Community and Its Impact
PostgreSQLの主要開発者でありAWSに所属するJoe Conway氏からPostgreSQLの歴史、開発プロセス、コミュニティへの貢献について講演がありました。普段あまり知る機会のないPostgreSQLに関する歴史や、コアの開発以外にもコミュニティに貢献する方法があると強調されていたのが印象的でした。
PostgreSQLの歴史
PostgreSQLは、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)で誕生した研究プロジェクトを源流としています。長い年月をかけて発展し、今のオープンソースDBとしての地位を築いてきました。
1974〜1985:INGRES
Prof. Michael Stonebraker を中心に開発された INGRES(INteractive Graphics REtrieval System) は、リレーショナルデータベースのプロトタイプとして誕生し、そこからさまざまなDBが派生していきました。
1986〜1994:POSTGRES
次の世代のDBMSとして “Post Ingres” POSTGRES が登場。オブジェクト指向の概念を取り入れた先進的なデータベースで、独自の POSTQUEL という問い合わせ言語を採用しています。
1994〜1995:Postgres95
Andrew Yu 氏と Jolly Chen 氏によって、POSTGRESはSQL対応へと大きく舵を切ることに。このとき名称も Postgres95 に変更され、ライセンスもよりオープンなものに改められました。(Windows95の登場にちなんだ命名とも言われています。)
1996〜現在:PostgreSQL
Postgres95はその後 PostgreSQL と改名され、オープンソースプロジェクトとして発展。
PostgreSQL Global Development Group(PGDG)を中心に、Core Team、Committers、開発者、翻訳者、ユーザーグループなど、多くのコミュニティが支えています。
開発サイクル
PostgreSQL は毎年 9 月ごろに 年 1 回のメジャーリリースを行うサイクルを採用しています。そのリリースに向けて、年に 4〜5 回「Commitfest」と呼ばれるパッチレビューの集中期間を設け、世界中の開発者がレビューやディスカッションを進めています。
ネット上には PostgreSQL へのコントリビューション方法を紹介したブログや資料も多いので、興味がある人はぜひ探してみてください。
コミュニティへの貢献
Conway 氏が強調していたのは、PostgreSQL への貢献はコードを書くことだけではないという点です。
- パッチのレビュー
- テスト
- ドキュメント整備
- 翻訳
- 性能検証
- バグ報告
- 拡張機能(PostGIS・pgjdbc・pgvector など)の開発
- ユーザーグループやイベント運営
など、多様な形でコミュニティに参加できます。
また、Core Team(7 名・6 社)は特定企業に偏らず、多様な組織のメンバーで構成されているのも特徴です。こうした「多様性」が、PostgreSQL プロジェクトの健全性と中立性を支えているのだと感じました。
What I learned interviewing the PostgreSQL Community
EDB に所属しながらドイツの PostgreSQL コミュニティでも精力的に活動している Andreas Scherbaum 氏から、彼が続けているプロジェクト “postgresql.life” (https://postgresql.life/)について紹介がありました。このプロジェクトは、世界中の PostgreSQL 関係者にインタビューするというもので、なんと 2020 年から継続的に公開されています。
プロジェクト概要
きっかけは、Scherbaum 氏がローマを旅行していた際、PostgreSQL を通じて知り合った友人と雑談していたことだったそうです。その時に「世界の PostgreSQL に関わる人にインタビューしてみたら面白いのでは?」と思いついたのが始まり。
インタビューの流れは、
- インタビュー対象者が Google Docs にあらかじめ決められた質問へ回答
- その内容をもとに本インタビューを実施
- 月曜日に記事を公開(ほぼ毎週欠かさず)
という形式で進めているとのこと。
2020 年から現在まで継続されており、これまでに 207 名のインタビューが公開されています。すごい継続力…!
PostgreSQL 関係者の統計情報
多くの PostgreSQL コミュニティメンバーにインタビューしてきたことで、いくつか興味深い統計データが紹介されました。
■ 基本統計
- 国籍:34 カ国(US、France、India、Russia、Germany の順で多く、日本は Italy、UK と同率 6 位)
- 使い始めたバージョン:8.2 または 9.6 が多い
- 性別内訳:女性 35 名、男性 172 名
- 趣味:ランニング、サイクリング、写真撮影、LEGO など
- 好きな飲み物:ビール、コーヒー
- よく使う SNS:LinkedIn、Twitter、ブログ、Mastodon
- 好きなカンファレンス:pgconf.eu、PGCon
- 好きな拡張機能:pg_stat_statements、PostGIS、pg_trgm など
■ その他の統計
- PostgreSQL で生計を立てている人:133 / 208
- 「PostgreSQL の未来は明るい」と答えた人:142 / 208
- 開発参加の入口:Commitfest、メーリングリスト、パッチレビューなど
→ 特に「まず誰かのパッチをレビューしてみると良い」という意見が多かったそうです。
最後に、
- PostgreSQL に 64 ビットのトランザクション ID は必要か?
- マルチマスター構成は必要か?
といった、コミュニティでもよく議論されるテーマについての統計と意見が紹介され、非常に興味深い内容でした。
まとめ
直近 8 年間で最多の参加者数だったこともあり、今年の PostgreSQL コミュニティの盛り上がりを実感しました。そしてあらためて感じたのは、PostgreSQL が単なるソフトウェアとしてだけでなく、コミュニティとして非常に成熟しているということです。
開発者だけでなく、ユーザーグループ、イベント運営者、ドキュメント整備に関わる人など、多様な立場のメンバーが支え合って成り立っている。このコミュニティこそが、PostgreSQL が長年にわたって信頼され続けている理由のひとつだと感じました。