生成AIの台頭により、採用活動は大きな転換期を迎えています。
求人票の作成、候補者の検索、スカウト文面の最適化、レジュメの読み解き。これまで時間をかけて担ってきた業務の多くが、AIによって効率化されつつあります。
一方で、効率化が進めば進むほど、条件やスキルだけでは測れないものの重要性も浮かび上がってきます。
誰と働くのか。どんな環境で力を発揮するのか。そして、その仕事を通じて何を成し遂げたいのか。
AIによってマッチングの精度が高まる時代だからこそ、人と仕事の出会いには、より本質的な問いが求められています。
今回は、Wantedlyの営業統括を担う恩田と、プロダクトマネージャーの吉野に、現在の採用市場の流れ、AI時代にWantedlyが描く人と仕事の出会い方、そしてそれを形にする組織のカルチャーについて聞きました。
登場人物
写真左:取締役COO / Visit Tribe Leader │ 恩田 将司(おんだ まさし)
慶應義塾大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングに入社し、営業や経営企画、新規事業開発を経験。その後リクルートテクノロジーズ(現リクルート)での開発マネジメントを経て、2019年4月にウォンテッドリーに入社。Visit事業での営業企画、Engagement事業の事業責任者を経て、2022年12月より現職。
写真右:Dev Branch / Product Management Chapter │ 吉野 雄大(よしの かつひろ)
2012年に大学卒業と同時にWeb制作会社を設立して、4年間ほど経営。学習塾向けの動画配信サービスをはじめ、サービスの企画から開発まで携わる。その後、Webディレクターとして経験を積み、ディップ株式会社で求人メディアの「バイトル」「はたらこねっと」などのプロダクトマネージャーを担う。現在はウォンテッドリーにてプロダクトマネジメント組織のマネジメント、および戦略立案に従事している。
大きく変わった採用市場。でも、Wantedlyのやることは変わらない
──Wantedlyが2012年にリリースされてから14年経ち、一人ひとりの働き方も大きく変わりました。現在の採用市場の流れを、どのように捉えていますか?
恩田:まず新卒採用では、学生が「働くこと」を具体的に考え始めるタイミングが、以前より早くなっていると感じています。
学生のうちからインターンを通じてさまざまな企業を知ることが当たり前になってきていますし、起業をする人も増えている印象があります。実際に新卒採用の現場でも、そうした経験を持つ学生と出会う機会は増えました。就活の早期化という言い方もできますが、働くことに向き合い始めるタイミングそのものが早くなっているのだと思います。
さらに、AIの性能が上がったことで、個人がアイデアを形にするハードルも下がっています。働き方やキャリアの選択肢が広がっているからこそ、どんな条件で働くかよりも「何をするのか」の重要度がよりいっそう高まっているように感じます。
──一方で、中途採用ではどのような変化を感じていますか?
吉野:中途採用の現場においては、企業が求める人材のレベルが格段に上がってきている印象があります。
大きな要因の一つは、やはり生成AIの登場です。AIを使うことが特別ではなくなったことで、働く人が身につけるべきスキルの幅は広がりました。これまでの専門性に加えて、AIをどう活用するか、どのように業務に組み込むかまで求められるようになっている。その変化についてきている人と、そうでない人の差も、市場の中で生まれつつあると感じています。
ただ、これは単に「AIを使える人が強い」という話ではありません。AIによって手段が増えたからこそ、そもそも何をしたいのか、どんな価値を生み出したいのかが、より問われるようになっているのだと思います。
──AIによって働き方や採用のあり方が変わるなかで、Wantedlyの役割も変わっていくのでしょうか?
恩田:そこは変わらないと思っています。むしろ、私たちが大切にしてきた価値が、より求められる時代になっている感覚があります。
AIによって、アイデアを形にしたり、情報を整理したりするハードルは下がっています。だからこそ、これからより重要になるのは「どう実現するか」よりも、その手前にある「何を目指すのか」だと思うんです。
Wantedlyは、条件だけで仕事を選ぶのではなく、その会社が何を目指しているのか、そこで働く人が何に向き合っているのかを伝えることで、人と仕事の出会いをつくってきました。そういう意味で、僕たちはもともと「働くことを通じて何を成し遂げたいのか」を起点にしたプロダクトをつくってきたのだと思います。
なので、市場が変わったから立ち位置を変えるというより、積み重ねてきたことをさらに突き詰めていく。AIの進化によって、Wantedlyが向き合ってきた問いの重要性はさらに高まっていると感じています。
──条件やスキルだけではなく、企業や個人が何を目指しているのかを大切にする。その考え方は、プロダクトの機能にどう表れているのでしょうか?
吉野:プロダクト上では、ユーザーが自分のやりたいことと、その会社が目指していることが重なるのかを確かめられる状態を大切にしています。そのために、会社やそこで働く人をより深く知る機会を増やしていきたい。その一つが、最近リリースした「指名カジュアル面談」です。
吉野:指名カジュアル面談とは、候補者が募集ページ上で「この人と話したい」という相手を選べる機能です。これまでのカジュアル面談が「会社の話を聞く場」だったとすると、そこから一歩踏み込んで「誰と話すか」を選べるようにしたものです。
職種、スキル、勤務地、待遇など、検索できる情報はこれからさらに整理され、マッチングの精度も上がっていくと思います。ただ、それだけで仕事選びの不安がすべて解消されるわけではありません。「この人と働くのか」「この人が上司になるのか」「このチームの雰囲気は自分に合うのか」といったことは、実際に話してみないとわからない部分も多い。
だからこそ、入社後のミスマッチを減らすためには、人と人が直接話す機会が重要になります。指名カジュアル面談では、条件だけでは見えにくい情報に触れられる場を、プロダクト上で後押ししていきたいと考えています。
恩田:会社に所属するということは、特定のコミュニティに入ることでもあります。もちろん、その会社がどんな事業に向き合っているのか、どんな未来を目指しているのかは大切です。ただ、それに加えて、どんな人たちと働くのか、どんな雰囲気の中で働くのかを知ることも必要だと思います。
働き方が多様化している時代だからこそ、会社を選ぶ理由はより本質的になっていく。だからこそ、「人」を知る機会はますます重要になるはずです。
AIで志向を言語化し、人との出会いにつなげる
──人と人が直接話す接点を大切にする一方で、AIはプロダクトの中でどのような役割を担っていくのでしょうか?
吉野:AIは、人との接点を代替するものではなく、そこに向かう前段階でユーザーの志向性を引き出すものとして活用できると考えています。
Wantedlyには、求職者がAIとの対話を通じて、自身の希望条件に合う募集を探せる「キャリアAIエージェント」という機能があります。
吉野:仕事探しでは、単純な検索条件だけでは表現しきれない悩みや希望も出てきますよね。「自分はどんな仕事がしたいのか」「どんな環境なら力を発揮できるのか」といったことは、最初から明確なキーワードにできるとは限りません。
たとえば、「もっとユーザーに近い仕事がしたい」という漠然とした相談から対話が始まり、話していくうちに、自分が求めていたのは職種名ではなく、ユーザーの課題に近い距離で向き合える環境だったと気づくこともあります。その結果、PdMやUXデザインの募集に興味を持つようになる。最初から職種名で絞り込んでいたら、出会えなかったかもしれない選択肢です。
だからこそ、こうした機能を通じて、ユーザー自身も気づいていない志向性を引き出していく。そのうえで、パーソナライズされた募集を提案する。AIは、条件に合う仕事を探すためだけではなく、自分の考えを言語化するためにも活用できると思っています。
その先で、実際に人と会い、自分が想像していた働き方とのミスマッチを減らしていく。AIで志向性を引き出し、人との接点につなげる。その流れを、プロダクトの中で一本の線として設計していきたいと考えています。
Wantedly=ソーシャルメディアとしての価値を高めていく
──現在、Wantedlyが抱えている課題は何ですか?
恩田:大きな課題としては、応募数や採用数だけでは測りきれないWantedlyの価値を、企業にどう実感してもらうかだと思っています。
日本の採用市場では、どうしても「どれくらい応募が集まるのか」「何人採用できるのか」が重視されやすい。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。多くの候補者と接点を持つことで、自社に合う人と出会える会社もあると思います。
ただ、Wantedlyが大切にしているのは、数を集めること自体ではなく、自社に合う人、共感してくれる人と出会うことです。応募数や採用数だけで価値を測られてしまうと、Wantedlyが本来つくりたい出会いとの間にズレが生まれてしまう。
最後は採用につながるとしても、企業にとってWantedlyは、ただ募集を出す場所ではなく、自社の考え方やカルチャーを伝え続けられる場所でありたいと思っています。採用したい瞬間だけではなく、普段から自社の魅力や価値観を発信し、共感してくれる人との接点をつくっていく。その意味で、ソーシャルメディアとしての価値をもっと高めていく必要があると思っています。
──企業にどう価値を感じてもらうかという課題がある一方で、ユーザーにとってWantedlyはどのような場所であるべきだと考えていますか?
吉野:ユーザーにとっても、就活や転職活動のためだけに訪れる場所ではなく、普段から仕事やキャリアについて考えるための場所にしていきたいです。
本来、キャリアは特定のタイミングだけで考えるものではなく、中長期で向き合っていくものだと思います。会社の評価制度でも、3ヶ月に1回など定期的に振り返る機会がありますよね。
でも実際には「転職したい」と思ってから、1〜2ヶ月の短期間で慌てて職務経歴書をつくり、求人を探して応募する、という流れになりがちです。本当は、普段から自分には何ができるのか、何が足りないのか、この先何をやってみたいのかを考えられていれば、必要なタイミングですぐに動けるはずです。
だからこそ、Wantedlyでプロフィールを書いたり更新したりすることが、自分の現在地を見つめ直すきっかけになればいいと思っています。人とのつながりを通じて、誰がどこで働き、どんな挑戦をしているのかも見えてくる。そうした積み重ねを通じて、仕事やキャリアに向き合うことを、もっと日常的で前向きなものにしていきたいです。
人間の歴史と企業の歴史をマッチングするプラットフォームを目指す
──プロフィールを書くことも、単なる経歴の整理ではないということですね。どのような情報があると、その人らしさや考え方が伝わりやすくなるのでしょうか?
吉野:経歴やスキルだけでなく、その人が何を考え、どんなことに関心を持っているのかなども、プロフィールから伝わるといいなと思っています。
もちろん、これまでの経験やできることは大切です。ただ、それだけではその人らしさは見えにくい。性格や、この先やってみたいこと、どんな価値観を持っているのかも、仕事やキャリアを考えるうえでは重要な情報だと思います。
恩田:僕は、プロフィールにはその人の歴史が書かれているといいなと思っています。
「何年にこの会社で働いていました」「この部署でデザイナーをしていました」だけでは、正直わからないことが多いんです。
なぜその会社に入ったのか。なぜ辞めたのか。なぜ次の会社を選んだのか。そうした選択の背景がわかると、その人が何を大事にしてきたのかも見えやすくなる。
そうした情報があると、企業側もその人をより立体的に理解できると思うんです。面接の場でも、結局は一つひとつの意思決定の理由を聞いていることが多い。事前にその人の考え方や歩んできた過程が見えていれば、限られた時間の中でも、もっと深い話ができるはずです。
企業にも、積み重ねてきた考え方や歩みがあります。個人にも、選んできた環境や大切にしてきたものがある。企業の歴史と、人間の歴史をマッチングする。Wantedlyを通じて、そういう世界をつくれるといいなと思っています。
自律と裁量、そして最適な挑戦
──プロダクトを通じて、企業や個人が「何を目指すのか」に向き合ってきたウォンテッドリーでは、どのような働き方を大切にしているのでしょうか?
吉野:一人ひとりが、自分の意思で動くことを大切にしている環境だと思います。ウォンテッドリーは、決して大きな組織ではありません。だからこそ、一人ひとりが自分で考え、必要だと思うことに向き合っていく。そうした自律的な働き方が求められます。
自律というのは、指示を待たずに動くことだけではないと思っています。自分で課題を見つけて、どうすれば前に進められるかを考え続けることでもある。
そのうえで、今の自分にとって少し難しいことにも挑戦していく。すでにやり方がわかっていることだけではなく、まだ正解が見えていないことにも向き合っていく。そういう働き方を面白いと思える人にとっては、すごく楽しい環境だと思います。
恩田:自分にとって適切な挑戦を設計するうえで、自律や裁量は切り離せないと思います。仕事が簡単に感じるか、難しく感じるかは、やり方がわかるかどうかによって変わりますよね。
たとえば「1億円使っていいから売上を2倍にして」と言われたら、裁量は大きい。でも、やり方がわからなければ不安で難しい。つまり、どんなミッションを渡すかだけではなく、どれだけの裁量を渡すかもセットで考える必要があります。
高い目標を達成するためには、空白地帯のような自由度が必要な場合もあります。何をやってもいい状態だからこそ、動けることがある。一方で、すべてのメンバーに同じ裁量を渡せばいいわけでもない。
その人の現在地に対して、どんなミッションと裁量を渡すのか。そこを見極めることが、最適な挑戦をつくるうえで大切だと考えています。
恩田:ウォンテッドリーで働くことの面白さは、自分で物事を動かしていける余地があることだと思います。気になったことがあれば、基本的には何でもやっていい。良いと思ったことは、すごいスピードで進められる。
もちろん、営業であればお客さまに何件会う、目標を追うといったことは当然あります。でも、それだけをやるなら、うちである必要はないと思っています。
大切なのは、自分で問いを見つけ、動いてみることです。失敗しても、多くの場合は「次どうする?」という会話になりますから。
自分で問いを立て、試して、うまくいかなければ次を考える。その積み重ねが、事業やプロダクトを少しずつ前に進めていく。自分の意思で変化をつくっている実感を持てることが、この環境の大きな魅力ですね。