こんにちは。ウォンテッドリーでバックエンドエンジニアをしている小室 (@nekorush14) です。この記事は、2025年9月から週替わりで所属するエンジニアが記事を書き継いできた企画の最終回にあたります。私自身もこの企画を通して毎月ブログ記事の投稿をしてきました。今回は、この企画のまとめとして、「なぜエンジニアが発信を続けているのか」を話します。
はじめに
この企画は毎週月曜日と木曜日に Dev Branch に所属するメンバーが持ち回りでブログ記事を投稿するものでした。日々の業務で得た学びや知見、参加したイベントの報告など多数の切り口で投稿してきました。私自身も毎月何かしらの発信をしていました。
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この1年間を振り返るとAIに関するテーマも多く扱われるようになってきました。また、テーマ自体だけではなく記事の構成案や下書きなどもAIに任せられるようになり、調べたい技術の要点も手元で組み立てられるようになりました。要約や比較表を作る作業でもAIへの指示でまとまった形がすぐに返ってきます。
本稿では、発信が書き手と読者に何を残すのかという観点から、そのような状況下でもエンジニアが発信を続ける理由を共有します。
発信は書き手の理解とコミュニティの知見を同時に更新する
発信がもたらす価値は単に「情報を届けること」だけに留まりません。発信する過程において「自分の理解を再確認すること」や「発信した情報によって関連するコミュニティに新たな観点をもたらすこと」が挙げられます。この 2 つの副次的な価値は発信する前には見えにくく、内容を書き上げてレビューを受ける過程や発信後のフィードバックなどで初めて実感できるものです。AIが下書きを用意した場合でも、公開に足る内容かどうかを判断するのは書き手自身です。
書く過程とレビューが自身の理解の曖昧さを明らかにする
実装して実現できたことをそのまま書き出すだけであれば手は止まりません。一方で、例えば「なぜその設計を選んだか」を説明する場合は言葉に詰まる箇所が出てきます。AIに下書きを作らせた場合でも書かれた内容の事実確認と論理の接続、伝えたいメッセージが全体として伝わるようになっているかの確認は書き手である自分が行うため、同様の事象が発生します。
公開前のレビューでは自分では当然の前提だと思っていた箇所について質問が入ります。この質問に答えようとして初めて、自分の理解の中で曖昧なまま通り過ぎていた部分に気づきます。例えば、実装時に複数の案を比較して選んだ設計であっても、その判断がどの条件のもとで成り立つのかを尋ねられると、当時は文脈から自明としていた制約を明示的に書き出すことになります。この時、「理解していたはずが実は暗黙的に合意していた内容だった」、「細かい部分はどうなっているのかもう少し調べないとわからない」などいわゆる「ダニング・クルーガー曲線」と呼ばれているグラフの底である「何もわからない」状態に陥っていることがあります。
発信は成果の報告だと捉えられがちですが、実態は自分の理解の検算に近いものです。書き上げるまで解けなかった曖昧さは、そのまま次に取り組む業務の課題になります。
自分の視点を添えた発信がコミュニティに新しい観点をもたらす
同じ技術について既に記事があっても、書き手がどこで何に詰まったかは記事ごとに違います。例えば、環境構築の前提条件や設定値の意味は慣れるにつれて説明の必要を感じなくなる部分です。触れて間もない段階ではそこで詰まる場合があり、そこで何に詰まったのかが記事に残ります。
記事を公開すると「より適切な設定の方法」、「見落としていた条件」、「同じところで手が止まったという経験」などの読者からフィードバックがあります。公開前に自分では調べきれなかった部分や考え方、知見などをフィードバックから更に深めることもできます。
同じところで手が止まったという反応が集まれば、その箇所は個人の詰まりではなく、共有する価値のある情報になります。発信によって書き手とコミュニティのそれぞれに残るものは以下の通りです。
- 読者から返ってきた指摘や別の方法によって、公開前より自分の理解を進められる
- 公式ドキュメントに書かれていない、実際に試して分かった手順や設定を記録として残せる
- 詰まったことが明記されていることで、同じことを試そうとして詰まった読者の手がかりになる
どこで手が止まったかを具体的に書き残すほど、返ってくる反応も具体的になります。その具体性が「自分の理解が進む範囲」と「読者に届く手がかりの量」を左右します。
まとめ
今回は、2025年9月から続いてきたこの企画の最後として、AIで皆が手早く調べられる状況でもエンジニアが発信を続ける理由をお話ししました。既に誰かが書いた話題でも、自分の理解を深めたり、読者に対して新たな気づきや学びを提供することができます。自分の判断や考えを載せて発信することが大切だと考えています。