3ヶ月でチームは変わる。Wantedly QAが示した『小さく始めて、確実に機能させる』組織変革の具体例
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こんにちは、QAエンジニアの青柳です。
この記事はウォンテッドリー・アドベントカレンダー2025夏の10日目の記事です。
本記事では、私が中途入社したQA Squad(品質保証チーム)において、約3ヶ月という短期間でどのように課題を特定し、チームの協力のもとで非効率なプロセスを改善し、自律的なチームへと変革を進めてきたかをお話します。
特に、「既存のチーム文化や意思決定プロセスを尊重しながら、いかに加速させるか」というテーマに対し、どのように考え、具体的にどんな実践を行ったのかに焦点を当てています。
この取り組みはQA Squadにとどまらず、組織全体への波及効果を意識して進めてきました。そのため、QAに限らずどのチームでも応用しやすいよう、技術論にとどまらず、チーム変革に役立つ汎用的なアプローチを中心にご紹介します。
目次
1.チーム変革のステップと汎用的なアプローチ
1-1.初期の課題解決への取り組み
1-2.小さく始めて、確実に機能させる
1-3.「QAご意見箱」の設置と継続的な課題の吸い上げ
1-4.チームの成果を最大化する建設的なフィードバックを交わせる組織文化の醸成と「仕事の成果」への接続への取り組み
2.Wantedlyの価値観との接続
まとめ
1.チーム変革のステップと汎用的なアプローチ
1-1.初期の課題解決への取り組み
中途入社後は、まず既存メンバー2名と共にドメインのキャッチアップと業務プロセスの整備に注力しました。その後、テスト設計や実施に携わる中で、チームリードとしてDaily Standup(朝会)を通じ、タスク状況の把握・調整や、メンバーの困りごとの吸い上げと改善にも取り組みました。
初期段階では、費用対効果の高い課題を優先的に選び、迅速な実行と運用定着を重視しました。以下では、特に効果の大きかった施策をご紹介します。
QA依頼ワークフローの導入による効率化
入社当初、QA依頼の情報収集はSlackでの個別連絡や口頭ベースに依存しており、多くの手作業とコミュニケーションコストが発生していました。
具体的には、次のような課題がありました。
- 依頼の抜け漏れや対応状況の不透明さ
- 情報の粒度にバラつきがあり、認識齟齬が起きやすい
- 工数の多くを人手による集約作業が占めていた
これらの課題を解決するため、SlackのQAチャンネルに専用ワークフローを導入。依頼情報が自動でスプレッドシートに反映される仕組みを構築しました。
ワークフロー導入によりQA依頼のハードルを下げ、品質と信頼性の高いプロダクトを作っていくためエンジニアとできる方法を一緒に考えていく意図もあります。
効果
- 対応漏れの防止と履歴の自動記録
- 入力フォーマットの統一による情報の標準化
- 手作業工数の大幅な削減と、対応スピードの向上
稼働状況シートとバグIssueテンプレートの改善
次に取り組んだのは、日々の稼働状況とバグ報告プロセスの改善でした。
稼働状況シートの自動化
もともと手入力で運用されていた稼働状況シートを、前述のQA依頼ワークフローと連携させることで自動化。これにより、日々の更新負荷を軽減しつつ、チーム全体の進捗や稼働状況をリアルタイムで可視化できるようになりました。
バグIssueテンプレートの整備
バグ報告時の情報の質や粒度にばらつきがあったため、Issueテンプレートを各リポジトリに導入。QA依頼の多い領域から段階的に展開し、報告の抜け漏れ防止やエンジニアとの認識齟齬の解消を実現しました。
テンプレートはIssue formsを活用しました。
粒度を揃えて将来的には、蓄積されたIssueをもとにバグ傾向を分析するための基盤としても活用していく計画です。
1-2.小さく始めて、確実に機能させる
こうした改善の積み重ねにより、QAチームの業務効率と透明性は大きく向上しました。ポイントは、「長期的な理想像を描きつつ、まずは“今できること”から着実に実用的な手段で取り組み、機能させることを優先した」点です。
この姿勢は、Wantedlyのバリューである、
「Get Things Done」(完璧よりは完成)を体現するアプローチであり、初期フェーズでの具体的な成果が、その後のチーム変革の土台となりました。
1-3.「QAご意見箱」の設置と継続的な課題の吸い上げ
初期の課題解決に取り組む中で、自分自身が見つけた改善点に加え、長くチームに在籍してきたメンバーが抱える根深い課題にも目を向けることが、生産性向上には不可欠だと感じるようになりました。
そこでこの目的を達成するために、「QAご意見箱」を設置。チーム全体で課題を吸い上げ、改善に取り組むスタイルを構築しました。
ご意見箱を設置する際には、以下のようなメッセージを添えました。
「課題と感じていること、改善したいこと、実現したいアイデアなど、形式にとらわれず自由に記入してください。一つずつ改善・実現しながら、QAでココロオドル世界を実現していきましょう。」
可視化された多様な課題
この「ご意見箱」を通じて、日常の業務ではなかなか表に出てこない課題が、次々と可視化されていきました。たとえば、以下のようなテーマが挙がっています。
- 新メンバー向けのオンボーディング資料の不足
- プロダクトの機能変更に伴うテスト観点の洗い出しを効率化するためのマッピング資料作成の必要性
- WBS(Work Breakdown Structure)を含むQA計画表の作成と標準化の取り組み
すでに解決されたものもあれば、現在進行中の改善活動として取り組んでいる課題も含まれています。
プラットフォームとしての進化
「QAご意見箱」は、単なる課題のリストアップで終わるものではなく、具体的なアクションにつながるプラットフォームへと育ってきました。ご意見箱の設置により、メンバーが日々の業務で感じるちょっとした「困りごと」から、より構造的な業務課題まで、「安心して発言・共有できる土台」が育まれ、課題が自然に共有されるようになりました。これは、メンバーが「わからないときに『わからない』と言える」、そして疑問やアイデアを忌憚なく口に出せる、といった行動を促進する環境を意味します。
こうした課題を全員で吸い上げ、優先度をつけて一つずつ丁寧に改善していくプロセスを通じて、QA Squadは継続的な業務効率化と品質向上を実現しています。課題の定期的な吸い上げと、それに対する迅速な改善サイクルを回すことで、チームへの信頼感を醸成し、メンバーの主体的な行動を促すことができる、という学びにつながりました。この学びの過程で、「建設的なフィードバックを交わせる組織文化」が、無駄な工数や誤読を減らす、深刻化する前に問題に対応する、そして学びをチーム全体に広げ、イノベーションが生まれやすくするといった具体的な仕事の成果に繋がり、チームの成長と課題解決に不可欠な要素であることが再認識されました。
1-4.チームの成果を最大化する建設的なフィードバックを交わせる組織文化の醸成と「仕事の成果」への接続への取り組み
建設的なフィードバックを交わせる組織文化の醸成と「仕事の成果」への接続
初期の課題解決を進める中で、チームの継続的な成長と課題解決に不可欠な要素として、メンバーが忌憚なく意見を出し、率直に議論できる環境、すなわち『建設的なフィードバックを交わせる組織文化』の重要性を改めて認識しました。
Wantedlyのバリューでもある「One Team」(個人のパフォーマンスより、チームのパフォーマンス)を実現するうえでも、この文化の醸成が不可欠であると判断し、以下のような施策に取り組みました。
- 月1回のランチ会による関係性の深化
入社当初、チームのコミュニケーションは主にDaily Standup(朝会)を通じた業務連絡が中心でした。業務以外のやり取りを通じてメンバー同士の相互理解を深めることを目的に、月1回のランチ会を導入しました。
このカジュアルな場を通じて、日常業務では見えづらい個々の価値観や人柄に触れ、メンバーは『わからないときに「わからない」と言える』ようになり、結果として無駄な工数や誤読を減らすことに繋がっています。チーム全体でオープンに意見交換できる土壌が少しずつ育つことで、仕事の成果に直結するスムーズな連携が生まれています。 - QA Chapter MTGによる知見の横展開と課題解決
Squadを横断してQAチーム全体で知見を共有するために、定例ミーティング「QA Chapter MTG」を立ち上げました。
QA Chapter MTGは、共通課題への対話やベストプラクティスの共有を通じて、『問題やリスクを早期に報告できる』土壌を育み、深刻化する前に対応できるようになりました。また、各Squadで得られた知見の横展開は、チーム全体の学びを促進し、イノベーション創出のきっかけにもなっています。この取り組みは、組織のサイロ化を防ぎ、「One Team」(個人のパフォーマンスより、チームのパフォーマンス)の価値観を体現し、具体的な仕事の成果を最大化する文化の醸成に貢献しています。 - マネジメント層との連携強化と、自律型チームの支援
チームの「自律(Autonomy)」を高めるため、私は上長との週次1on1を積極的に活用しました。ここでは、課題相談や意思決定、施策承認をタイムリーに行い、現場の声を迅速に反映する仕組みを構築しています。自身のスタンスとしては、「上長がマネジメントせずとも、チームが自律的に共感・挑戦できる状態」の実現を目指し、その橋渡し役を意識しました。
チームからのボトムアップな提案を丁寧に吸い上げ、マネジメント層は「支援と環境づくり」に徹するスタンスを取っています。この連携により、メンバーの挑戦意欲や主体性が自然と引き出され、結果として組織全体のパフォーマンス向上に貢献しています。
よりオープンで協力的なチーム文化へ
これらの施策を通じて、QA Squadは、「建設的なフィードバックを交わせる組織文化」を土台とした協力的なチーム文化へと着実に変化しています。今では、メンバー一人ひとりが安心して意見を発信し、自ら課題解決に向けて動き出せる環境が少しずつ整ってきています。
2.Wantedlyの価値観との接続
これまでのQA Squadの取り組み、初期の課題解決アプローチ、「QAご意見箱」の設置、そしてそれらの施策によって築かれた「安心して発言・共有できる土台」は、Wantedlyが大切にする価値観と深く結びついています。これらの活動は、単なる業務改善に留まらず、Wantedlyの組織文化を体現し、「仕事の成果」に直結するチーム変革を加速させる原動力となりました。
特に、「QAご意見箱」の設置や、前述の取り組みを通じたメンバーが「安心して発言できる土台づくり」は、Wantedlyが開発組織全体で目指す「仕事の成果に向けて率直なフィードバックを交わせる組織文化」の醸成を強く後押しするものです。これはWantedlyの重要なバリューである「One Team」(個人のパフォーマンスより、チームのパフォーマンス)を体現するものでもあります。
ご意見箱を通じて、メンバー全員が課題を共有し、解決策を共に考える場を設けることで、個々の「困りごと」がチーム全体の課題として認識され、「無駄な工数の削減」や「問題の早期発見」といった具体的な成果へと繋がる共同の取り組み意識が醸成されました。
さらに、これらの取り組みは、Wantedlyの組織設計の根幹にある「自律(Autonomy)」「共感(Purpose)」「挑戦(Mastery)」という考え方とも深く接続しています。マネジメント層が直接指示するのではなく、ボトムアップの意見を丁寧に吸い上げ、必要なサポートを提供しながらメンバーが主体的に課題解決に取り組める環境を整える姿勢は、メンバーの「自律」と「挑戦」を促しました。また、チーム全体で課題を共有し、解決に向けて協力するプロセスは、共通の目標に対する「共感」を生み出しています。
まとめ
QA Squadにおける変革の取り組みは、初期の課題特定から始まり、「QAご意見箱」やSlackワークフローの導入を通じて、チーム全体の生産性向上と仕事の成果に直結する基盤を築いてきました。具体的には、QA依頼ワークフローの導入により手作業工数の大幅な削減や依頼の抜け漏れ防止を実現し、ご意見箱は多様な課題の可視化と解決に貢献しました。
私たちは、単なる業務効率化に留まらず、Wantedlyが大切にする「自律(Autonomy)」「共感(Purpose)」「挑戦(Mastery)」といった価値観を体現するチームづくりを重視してきました。そのために、課題やアイデアを可視化する仕組みや、メンバーが「わからないときに『わからない』と言える」、問題やリスクを早期に報告できる、そして疑問やアイデアを忌憚なく口に出せるような「安心して発言・共有できる土台」、すなわち「建設的なフィードバックを交わせる組織文化」を育む対話の場を継続的に設計しています。これにより、無駄な工数や誤読を減らせたり、深刻化する前に問題に対応できる、学びがチーム全体に広がり、イノベーションが生まれやすくなるなど、具体的な仕事の成果に繋がり、Wantedlyの重要なバリューである「One Team」(個人のパフォーマンスより、チームのパフォーマンス)を後押しする文化が根づいてきています。
私自身も、今後もチームと共に学びを重ねながら、Wantedlyのミッションである
「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」
をQAの現場から体現していけるよう、挑戦を続けていきます。
この記事が、皆さんのチームづくりや組織変革におけるヒントとなれば幸いです。