2026年3月22日、茨城県水戸市。会場に並べられた2,074個のパウンドケーキが、「最も長いケーキスライスの列」として世界記録に認定されました。使われたのは、生産量日本一を誇るものの、子どもが苦手な野菜として挙げられがちな「ピーマン」です。地域課題の象徴でもあった食材が、この日は「世界一の祝福の象徴」になりました。
イベント会場に姿を見せたのは、茨城県出身の一組のカップル。道の両側に並んだのは、親族や友人だけではありません。地域の子どもたちや近隣の人々が花道をつくり、「おめでとう」と声をかける。そこにあったのは、招待状を持つ人だけが集う結婚式ではなく、まちにひらかれた「みんなの祝福」でした。
「ウエディングパーク」と聞いて、みなさんはどんな会社をイメージしますか?多くの方は「結婚準備のクチコミ情報サイトを運営しているIT企業」を思い浮かべるかもしれません。
しかし現在のウエディングパークは、その枠を広げていき、ウエディングの力で社会課題を解決し、業界の未来そのものを多角的に切り開く存在へと進化を遂げることに挑戦しています。その象徴とも言える取り組みが、2021年に始動した「Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想」プロジェクトです。
1. なぜ「2100年」の結婚式なのか?
私たちが掲げる経営理念は、「結婚を、もっと幸せにしよう。」です。この理念を社会へ大きく実装していくために発足したのが、本プロジェクトでした。
発足の背景には、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行があります。公益社団法人日本ブライダル文化振興協会の調査では、2020年に約24万組もの結婚式が影響を受けた(延期・中止等)とされています。「これから結婚式はどうなってしまうのだろう」という不安が広がる中で、私たちはあえて視点を「約80年先の未来(2100年)」に置き、今の常識から一度離れてみることにしました。
「時代や環境がどれだけ変わっても、人が人を祝い、幸せを願い合う気持ちは変わらないはず。であれば、100年後の未来に向けて、今から私たちが新しい結婚式のカタチを模索し、発信していこう」
そんな強い想いからプロジェクトはスタートしました。2021年3月に開催した初回のイベントでは、お笑い芸人・作家の又吉直樹氏をはじめとする総勢14名のクリエイターとコラボレーション。インターネットメディアの枠を飛び出し、クリエイターや企業、そして社会全体を巻き込んで「結婚式のこれまでと、未来の祝福のあり方」を対話する場をつくりました。
これは単なる自社のPRではなく、「今こそ、ウエディング業界全体の広報を我々が担うべきではないか」という問い直しから生まれた、ウエディングパークにとっての「新しい挑戦」の幕開けでした。
2. 結婚式をプライベートから「パブリック」へ。そして地域共創へ
私たちがこのプロジェクトを通じて目指している真の目的は、単なるイベントの開催や話題づくりだけではありません。最大の目的は、「2100年の未来を見据え、ブライダルという産業の枠組みそのものをアップデートし、再定義すること」にあります。
社会が多様化する現代において、結婚や結婚式のあり方も急速に変化しています。だからこそ、これまでの固定観念にとらわれない「多様な選択肢」を社会に広く提示し続けることが、プラットフォーマーである私たちの使命だと考えています。
2022年の『100色の結婚式−2100年までにカタチにしたい100のこと−』展では、答えを一つに定義せず、結婚式における100通りの選択肢を提示し、208の企業・団体が賛同しました。
続く2023年の『Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−』展では、結婚式に触れる機会が減っている課題に対し、公園のように誰もが立ち寄れる「公共性」を結婚式に取り入れました。展示同士を壁で区切らず、偶然通りかかった人もコンテンツに触れられる設計にした結果、テレビ局(経済報道番組)から取材が入るなどの話題を生み、賛同は417の企業・団体へと広がりました。
>2022年3月、東京・表参道にある複合文化施設「スパイラル」にて開催した特別イベント「100色の結婚式−2100年までにカタチにしたい100のこと−」展
>2023年3月、「渋谷区立宮下公園 (MIYASHITA PARK 屋上)」にておこなわれた「Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−」展
3. 「まち」へ飛び出し、2つの「世界記録」達成までの軌跡
プロジェクトは年を追うごとに規模を拡大し、リアルな「まち」へと飛び出していきます。2024年からは「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」をテーマに、地域共創型イベントへと進化しました。
東京・原宿を皮切りに、翌年には六本木ヒルズに加え、奈良(菊水楼)、新潟(ベルナティオ)と複数都市で同時開催を成功させました。各会場が地域資源を活かした独自の体験をつくり、4日間で延べ4万人を超える体験者数を記録。賛同企業は約570社にのぼりました。
>2024年3月、東京・原宿「ウラハラ」エリアにて開催した特別イベント「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」展の様子
ここで育ったのが「祝福のシェア」という概念です。「おめでとう」や「ありがとう」が重なり、まちの景色を変えていく。誰かだけが恩恵を受けるのではなく、祝福のシェアをすることで地域資源の活用やまちへの誇り(シビックプライド)を同時につくる「四方良し」の実践へと進みました。
>2025年3月、六本木ヒルズでの開催した特別イベント「wedding march ―まちを、もっと幸せにしよう。」の様子
そして6年目。プロジェクトとして初めて自治体を含む共創体制を組み、両市の後援のもと、地域の結婚式場、事業者、学生、団体、市民とともにつくる地域共創型イベントへの挑戦です。開催地は、静岡県浜松市と茨城県水戸市となりました。
目指したのは、単に地方でイベントを開くことではありません。地域の「課題食材」をウエディングのもつ「祝福の力」で「世界一の祝福」に変えるという挑戦です。
- 浜松会場:浜松市の地域課題である「浜名湖の資源を脅かす未利用魚(クロダイ)」に着目。フードロス解決につなげるため、このクロダイを使用したオリジナルの「クロダイのマフィン!」を製作。 当日は、実際のカップルを街全体で祝う「まちの結婚式」を行ったほか、合計1,021個のマフィンを並べる世界記録「Longest line of muffins(最も長いマフィンの列)」に挑戦し、見事達成しました。
- 水戸会場:水戸市では、子どもたちが苦手な野菜として挙げられがちな「ピーマン(茨城県が生産第一位の野菜)」に着目。これを美味しく食べられるウエディングケーキ(ピーマンのパウンドケーキ!)へと昇華させ、世界一長く並べる「Longest line of cake slices(最も長いケーキスライスの列)」として、2つめとなる世界記録を樹立。街中が笑顔と祝福に包まれる1日を作り上げました。
両会場では、世界記録への挑戦だけでなく、地域の品が当たる「まちの引き出物」、子どもや学生による祝福ステージなどを実施しました。浜松では株式会社鳥善、水戸では株式会社アトラクティブと共創し、家族や友人だけでなく、その場に集まった人々がみんなで結婚するふたりを祝福する「まちの結婚式」を実施。2都市の参加者数は計1,382人にのぼりました。
イベントの真の目的は、世界記録樹立ではありません。地域で「困りもの」と見られていた食材を、多くの人が知り、味わい、誇りに思えるものへと再編し、さらにそこに「祝福」という幸せで体験価値を向上する。世界一というキャッチーさをきっかけに老若男女多くの人が集い、幸せのシェア(共有)を体験いただくことが狙いでした。
「結婚式を挙げないという選択もある中で、『祝福っていいな』と思える場をパブリックな形でつくりたい」という思いは、6年目にして、社会課題の解決までを見据えた具体的な風景となったのです。
>企業の垣根を越えて「結婚を、もっと幸せにしよう。」に共感いただいたプロジェクトチームの集合写真
4. 挑戦を止めない、業界の未来を切り拓くウエディングパーク
6年間で私たちが積み重ねてきたのは、イベントの記録だけではなく、経営理念の実現を目指して問いを立て、試し、社内外の人々とともに答えを更新していく姿勢です。
デジタル技術やメディアの力(IT)と、人の感情を動かす力(ウエディング)。そして、社会的視点を軸に課題解決と未来創造を繰り返す力(デザイン)。わたしたちは、その掛け合わせによって、業界や社会に新しい価値を生み出せる可能性を示してきました。
現在、ウエディングパークの挑戦は、メディア事業の枠を越えて広がっています。業界の課題解決を支えるSaaSや、AIをはじめとするテクノロジーの活用、新たな共創プロジェクト。その手段が広がっても、すべての起点にあるのは「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念です。
これからの挑戦に必要なのは、ウエディングの常識に詳しい人だけではありません。むしろ異なる業界で培った経験から当たり前を問い直す視点。目の前の目標だけでなく、その先に生まれる価値や影響まで見据える視座。そして、多様な人を巻き込みながら、まだ形のない可能性を実現していく力です。
Wedding Park 2100が社会に祝福をひらいてきたように、これからのウエディングパークもまた、異なる経験や視点が交わることで、新しい未来をひらいていきたいー。
その未来は、私たちがまだ出会っていない誰かの視点から、始まるのかもしれません。
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