居場所が消えた日が、キャリアの転機になった—Renault研修で知った“自走力”
部署が突然なくなった。通知も来なかった。——それでも私は成長を止めなかった。
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フランス・Renault社での8カ月の研修。
多国籍な研究部署で物流最適化に挑んでいた私は、研修終盤のある日、「部署解体」の知らせを受けました。
大学院所属の同僚たちは全員別部署にアサインされる一方、私は“通知リストにすら存在しない”。
そんな状況でどう動くか——そこで試されたのは、肩書でも能力でもなく、私自身の「自走力」でした。
■ 多国籍チームの中で挑んだ、難しくも面白い物流最適化
Renaultでは、人間工学とロジスティクス研究が混在するユニークな部署に所属していました。
フランス生まれの日本人上司、陽気なフランス人課長、ロシア・ベラルーシなど各国から集まる研究者たち。
私はロジスティクス領域を担当し、理論とシミュレーションソフトを用いた物流最適化を研究していました。
そこへ入ってきたのが「日産生産方式の分析」。
完全受注生産で順番通りに作る——トヨタでも実現が難しい方式を、なぜ日産は成功させているのか。
この分析ができれば、Renaultにとって大きな価値になる。
そんな期待を背負い、日々データと向き合っていました。
■ ある日突然、「部署がなくなりました」
研修も残り2カ月というタイミングで、一本の連絡が届きます。
「部署統合により、ロジスティクス研究部門は解体」。
人間工学側は残る一方で、ロジスティクス側は完全に消滅。
大学院所属の同僚たちは新しい配属先が通知されていく中、
私は——通知が来ない。
日本からの留学生という立場は、準社員でも大学院派遣でもない。
“人事の把握リストにすら入っていない”という事実を、このとき知りました。
■ 誰も受け取らないレポート。それでも手を止めなかった
「レポート、提出します」と伝えると、
上司の返事は驚くほど淡々としていました。
「提出しても、受け取る部署がないんだよ」
8カ月積み上げてきた分析が、宙に浮きました。
正直、悔しかった。
あと2カ月、“ただ座っているだけ”という現実も飲み込み難かった。
■ 自分の成長は、誰にも奪えない
それでも——私は手を止めませんでした。
評価されなくても、成果が所属部署に紐づかなくても、
「学び続けること」だけは、自分の意志で選べる。
残り2カ月、私は独自に分析を続け、シミュレーションを回し続け、
自分の中に“研究者としての軸”を作り上げていきました。
居場所を失った経験は、私から居場所を奪ったのではなく、
“自分で作る力”を育ててくれました。
■ 今、あの出来事が教えてくれたこと
キャリアは、計画通りに進むとは限らない。
むしろ、予期せぬ出来事がターニングポイントをつくる。
あの日、部署が消えたことで、
私は“誰かに与えられた役割”ではなく、
“自分で選ぶ未来” を歩き始めたのだと思います。
明日からの一歩、私ならできる!