※株式会社体験入社 顧問弁護士 松尾剛行先生(桃尾・松尾・難波法律事務所 パートナー弁護士・NY州弁護士)へのインタビューをもとに構成
この記事でわかること
- 求人広告で使いがちな表現が職安法違反になる具体的な条件
- 「アットホームな職場」「残業ほぼなし」「月収●●万円以上」がなぜ問題なのか
- 採用担当者が知っておくべき2つの法的リスク
- 法律を守りながら自社の魅力を伝え、応募を増やすための現実的な解決策
なぜいま、求人広告の法的リスクが問われているのか?
「アットホームな職場です」「残業ほぼなし」「月収30万円以上可」——求人広告で目にする定番フレーズです。しかし、これらの表現が職業安定法(職安法)違反になるケースがあることをご存知でしょうか。
転職経験者へのアンケートでは、実際の求人広告を信じて入社した結果、3人に1人が「想像と違った」と後悔していることが判明しています。また、厚生労働省のデータでも約6割の転職者が入社後にギャップを感じたと回答しています。
こうした実態を背景に、職安法は改正が重ねられ、虚偽の求人だけでなく「誤解を招く表現」も違法行為の対象とされるようになりました。
求人広告を作成する採用担当者、そして求人広告代理店に丸投げしている企業にとって、これはもはや他人事ではありません。
求人広告が違法になる「2つの法的リスク」
慶應技塾大学で教鞭を取り、AI・人事労務法務のスペシャリストとして活躍する松尾高幸弁護士は、求人広告の法的リスクを次の2つに整理しています。
リスク①:虚偽求人(事実と異なる情報の掲載)
実際には到達できない給与を記載したり、存在しないポジションで募集するなど、客観的事実と異なる情報を求人に掲載する行為です。
職業安定法第65条8号では、虚偽の求人広告を掲載した場合に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されると定められています。実際に、虚偽の給与情報を信じて入社した元従業員が民事訴訟を起こし、裁判所が損害賠償を命じた事例も存在します。
リスク②:誤解を招く表現(曖昧な表現による誤認)
虚偽ではないものの、求職者に誤った期待を抱かせる曖昧な表現も、改正職安法のもとでは違法行為となります。
職安法第5条の4では、「虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」と明確に規定されています。
【具体例】どんな表現が問題になるのか
転職者へのアンケートで「信じたが裏切られた」と感じた求人フレーズTOP4と、その法的問題を解説します。
1位:「アットホームな職場」
最も多くの転職者が裏切りを感じた言葉です。松尾弁護士は「平成の頃からこの表現はやめるべきだと言ってきた」と指摘します。
問題の本質: 実態(離職率、定着率)と乖離している場合、誤解を招く表現として職安法違反になり得ます。人を書き集めるために「アットホーム」とアピールしているのに、実態として離職が続いているなら、まさに求職者を誤解させていることになります。
法律を守った正しい表現例: 「3年定着率は業界平均より15ポイント高い○○%」のように、客観的な数値でアピールすることが求められます。
2位:「残業ほぼなし」
「ほぼ」という表現自体が曖昧で、誤解を招く可能性があります。実態として月20時間の残業があるなら、それは「ほぼなし」とは言えません。厚生労働省の手引きでも、曖昧な言葉には定義や注釈を付けるよう求めています。
正しい表現例: 「前年度実績:平均月残業時間○時間(部署により異なる)」
3位:「月収・年収●●万円以上」
これは状況次第では**虚偽求人(吊り広告)**に直結します。あるポジションでは絶対に到達できない金額を提示していれば、客観的事実と異なる情報の掲載となり、罰則対象になり得ます。
正しい表現例: 「月給○○万円〜○○万円(経験・スキルにより決定)※前年度実績の中央値○○万円」
4位:「未経験歓迎・研修充実」
研修制度がほぼ存在しないのに「研修充実」と書けば虚偽求人です。仮に研修はあっても貧弱な内容であれば、「充実」という言葉が誤解を招く表現として問題になる可能性があります。
「求人広告会社が作ってくれた文章だから大丈夫」は通用しない
採用担当者の中には、「求人広告の内容は広告会社が考えてくれたから、うちには責任がない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、これは法律上まったく通用しません。
松尾弁護士は明言します。「責任を取るのは求人をする企業、まさに担当者あなたです」
元々その表現を提案したのが広告会社だとしても、その求人情報の内容に問題があれば、採用主体である企業が義務違反に問われます。求人広告を他社に外注している場合でも、最終確認をする採用担当者がしっかりと内容を精査する責任があるのです。
文字だけの求人広告には、法的リスク以外にも「構造的な限界」がある
ここまで読んで、「じゃあ注釈をたくさん付ければいい」と思った方もいるかもしれません。しかし現実には、長い注釈を熱心に読む求職者はほとんどいません。
さらに根本的な問題があります。求職者が本当に知りたいのは「職場の雰囲気」「人間関係」「1日の実際の流れ」といった、文字では伝えにくい"目に見えない情報"です。一方、法律が求めるのは「客観的・具体的な事実の明示」です。
この矛盾——「求職者が知りたいこと」と「法律が求めること」の間のギャップ——が、従来の文字型求人広告が抱える構造的な限界です。
実際、厚生労働省が定める「雇用指針」でも、ミスマッチを防ぐための対策として職場体験・職場見学を推奨しています。しかし現実には、応募者全員に職場見学の機会を設けるのはコスト・工数の面で困難です。
解決策:「体験入社動画」が文字の限界と法的リスクを同時に解決する
この問題を解決するのが、体験入社動画という新しいアプローチです。
動画が有効な理由は明快です。「動画は嘘をつけない」からです。
- 「アットホームな職場」→ 実際の社員が談笑しているシーン、ミーティングの雰囲気をそのまま撮影すれば、曖昧な言葉は不要
- 「研修充実」→ 実際の研修シーンを見せれば、求職者が自分の目で確認できる
- 「1日のスケジュール」→ 動画で追えば、残業の実態も含めてリアルに伝わる
従来の採用PR動画との決定的な違い
注意が必要なのは、「採用動画を作れば解決する」わけではない、という点です。企業が自社で制作する採用PR動画の多くは、良いところだけを切り取ったアピール動画になりがちです。これは求職者が求めるリアルな情報とはかけ離れており、ミスマッチの根本的な解決にはなりません。
株式会社体験入社が提供する体験入社動画は、転職動画サービスの運営を通じて蓄積した「求職者がリアルに知りたい情報」のデータをもとに、第三者の視点で客観的に構成されます。良い面だけでなく、ありのままの職場の実態を伝えることが、信頼性と応募の質を同時に高める鍵です。
実際のデータが示す効果
体験入社動画を活用した企業のデータでは、以下の結果が出ています。
これらの数値が示すのは、リアルな情報を誠実に届けることこそが、求職者の意欲を高めるということです。
・体験入社動画が採用活動に有効と感じた求職者:90%
・動画視聴後に応募意欲が上がった求職者:74%
・動画視聴後に入社意欲が上がった求職者:89%
「自社には強みがない」は分析不足——全企業に響く強みがある
「リアルを見せたら誰も応募しなくなる」という不安を持つ採用担当者の方もいるでしょう。しかし、体験入社動画の撮影経験から言えば、求人対象となる人材に響く強みがない企業は存在しないのです。
何かしらの強みがあるから、その会社で実際に働いている人がいます。多くの場合、それは「企業が自社の強みを分析できていない」だけです。
体験入社動画のサービスは、動画制作だけでなく、採用マーケティングのプロとして「どの強みが求める人材に響くか」の分析から着手します。自社では気づいていない魅力を、求職者目線で発掘し、リアルな動画として届けることが可能です。
よくある質問(FAQ)
Q. 求人広告の表現を業者に任せていれば、企業側の責任はないのでは?
A. いいえ。職業安定法上、求人広告の内容に責任を負うのは「求人をする企業」です。業者が作成した文章であっても、最終的な表示に問題があれば採用企業が義務違反を問われます。
Q.「残業ほぼなし」と書いても大丈夫なケースはありますか?
A. 実態として残業がほぼ発生していなければ問題ありません。ただし「ほぼ」という曖昧な表現よりも、「前年度実績:月平均残業○時間」と具体的な数値で示すことが、職安法の趣旨に沿った表記です。
Q. 職安法違反はどこに通報されますか?
A. ハローワーク(公共職業安定所)または都道府県労働局が主な窓口です。闇バイト問題を受けて、近年は行政の監視が強化されています。
Q. 体験入社動画は採用PR動画と何が違うのですか?
A. 従来の採用PR動画は企業が自社のアピールを目的に制作するため、良い面のみが強調されがちです。体験入社動画は、第三者視点で職場のありのままを撮影し、求職者が正確な情報で判断できるよう構成されます。これにより入社後のミスマッチが大幅に軽減されます。
まとめ:採用広告の「常識」を変える時
求人広告の文字表現に悩み続けるのは、もう限界です。時代は動画です。
法律を守りながら自社の魅力を誠実に伝え、求職者に正確な情報で判断してもらう——それによってミスマッチが減り、定着率が上がり、採用コストが下がる好循環が生まれます。
体験入社動画は、その好循環を実現するための、法律の趣旨にも沿った新しい採用の常識です。
▼ 体験入社動画のサービス詳細・お問い合わせはこちら
https://media.taikennyusha.com/movie/
本記事は、株式会社体験入社 顧問弁護士・松尾剛行先生との対談動画をもとに構成されています。松尾先生は東京大学法学部、ハーバード・ロースクール(LL.M.)、北京大学法学院(修士)を経て、桃尾・松尾・難波法律事務所のパートナー弁護士・NY州弁護士として活躍。現在は慶應義塾大学でも教鞭を執るほか、一般社団法人AIリーガルテック協会の代表理事を務めるAI・人事労務法務のスペシャリストです。