2025年 2月、株式会社藤本コーポレーション様のご協力のもと、弊社の全スタッフを対象に印刷工場見学を実施しました。藤本コーポレーション様は、1928年創業の印刷会社で、その高い品質と幅広い対応力、丁寧な対応で弊社も長年お世話になっているパートナー会社です。
今回は見学を通じて、印刷工場に初めて足を踏み入れたデザイナー、ディレクター双方の視点で感じたことをまとめました。
デザイナー K.Kの視点
想像以上に見るものを圧倒させるスケール
今回の印刷工場見学は、想像を超える規模と技術の発展を肌で感じる貴重な経験となりました。普段私たちが取り扱う印刷物の裏側に、これほどまでに大規模かつ精密な工程があることに驚かされます。
まず、インキの貯蔵エリアでは、1トンものインキが色ごとに並ぶ光景に圧倒されます。紙に刷られたインキしか見たことがない私にとって、これほどのスケールで貯蔵されていることは衝撃で、印刷物ができるまでのインキの役割を改めて考えさせられる空間でした。
高速で稼働する印刷機に作り手として覚える責任感
次はロール状の紙が保管されているエリアへ。紙の大きさと量に驚かされます。想像以上の巨大な紙の塊が積まれており、一目で圧倒されると同時に、資源の大切さも感じました。
ひとつの紙のロールがわずか20分で消費されると聞き、その圧倒的なスピードに驚きとともに、紙を扱う立場としての責任感が入り混じる感覚を覚えます。
刷版工程では、色ごとに分けられた版を見学し、インク濃度を網点の密度によって表現する技術をルーペで観察しました。デザイン業界において、これまで当たり前のように捉えていたオフセット印刷の表現を目の当たりにすることで印刷技術の奥深さを実感しました。
細部にまで考え抜かれた技術が巡り巡って、私たちが普段手にする印刷物の幅広い表現や美しさに繋がっていると感じました。
実際に印刷機の稼働を見ると、機械による高速印刷のスピードと正確さに圧倒されると同時に、1ミリ単位の汚れを感知する検査装置の精密さにも驚きを隠せません。目視では確認できないレベルでチェックする技術は、印刷のクオリティを保ちながら大量生産をする上で不可欠なのだと感じます。
機械と人の技が融合して生み出される工程の美しさ
断裁工程も印象的でした。繊細な人の手で最終的な仕上がりが整えられていくこの工程はまさに職人技であり、機械を中心とした工程のなかで、人の手が生み出す正確性が際立っていました。
また、工場内には音楽が流れており、それが現場の状況を知らせる役割を果たしている点も興味深かったです。「大きな古時計」が流れると機械にトラブルが生じていることを知らせるなど、緊迫した状況を誰もが知る音楽で知らせる仕組みは斬新でした。
今回の見学を通して、印刷物が完成するまでの工程を深く理解し、技術と人の技の融合が生み出す精密さの中に美しさを見ました。普段当たり前のように手に取る印刷物の背景には、入念な準備と緻密な作業があり、それを支える工場の全ての方々に敬意を抱かずにはいられませんでした。
ディレクター R.Iの視点
人の存在と人類が作り出す偉大な技術
私は今まで印刷現場に立ち会う機会がなく、印刷とはデータを入力してしまえば、あとは全て機械が行うものだと思っていました。今回の見学を通じ、機械を中心とした工程のなかで、細かいニュアンスを人の目で判断することがいかに大切かを学びました。
例えば、紙の質感によってインキを使い分けたり、機械と人の共同作業で版ズレを修正するなど、機械の能力に頼る部分と、人の技術や経験が掛け合わされて初めて印刷物が出来上がる工程を目にし、人の存在と人類が生み出す技術の偉大さを再認識しました。
また、怪我が一大事につながる環境だからこそ、随所に対策が見られました。例えば、今機械がどの作業をしているのかや異常時に発する音の存在など、あらゆる状況を即時に把握できる仕組みは、従業員の方の安全を第一に考えている環境ならではだと感じました。
一枚の印刷物にはたくさんの人の想いが込められている
ペーパーレスと言われる昨今でも、たくさんの印刷物が生み出されています。印刷された紙の一枚一枚には、作り手の想いが込められており、それは印刷の現場でさまざまな人の目と技術を介して生み出されます。デザインに携わる私たちは、このことを意識し、モノが完成するまでのすべての工程に情熱を持って取り組む必要があります。
デジタル化が加速する今、印刷物が良い面で再注目され、コミュニケーションの面でも、地球環境においても大切だと感じる時代が来る気がします。
工場見学を終えて(弊社代表から)
印刷工場見学の実施は、弊社設立16期目にして初めの試みです。私自身も新卒で入社したデザインプロダクションで一年目に印刷工場見学を開催していただきました。
その際、ものすごいスピードで印刷物が刷られる輪転機に圧倒されていると、横から先輩のアートディレクターに「これだけの勢いで刷られるということは、もし間違ったデータを入稿した場合、このスピードで廃棄しないといけない紙が大量に刷られていくということ。それを実感して欲しい。」と言われました。その後、自身が手掛けた制作物の校了後、入稿前の文字校正で見落としがあり、危うく数十万円の損失を会社にもたらすところでした。(幸いにも下版前に誤植が発覚し刷り直しは回避されました)
その時、工場見学でのアートディレクターのその言葉を思い出し、なぜ会社が印刷の現場を全社員に見せたのかを理解しました。
印刷の現場を知ることは、入稿データに対する責任感だけでなく、インキが刷られる順、抜きや箔押しがどの工程で行われるかなどを知ることで、より良いクリエイティブを作ることに繋がります。
最近では印刷の現場に色の確認で立ち会うことも少なくなってきています。だからこそ、クリエイターは一度は印刷の現場をその目で見るべきだと思います。
今回、印刷工場見学の実施を快諾していただいた藤本コーポレーション様、そして現場にて懇切丁寧にご案内いただいた全ての方々に心より感謝申し上げます。