杉浦 大貴のプロフィール - Wantedly
立教大学在学中、下町のカフェを中心としたコミュニティで過ごし、コーヒーの持つ多彩な魅力を知る。 卒業後は一部上場企業経理部を経て、マネーフォワードに入社。 2019年8月から京都に移住し、プロダクトマネージャーとしてクラウド会計Plusの立ち上げより関わる。 会計PlusはIPO市場を中心にPMFを達成。0→1、1→10のプロダクト成長フェーズを経験する。 ...
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京都から世界へ、スペシャルティコーヒーの文化を広げるKurasu。輸入販売事業の成長、新店舗ブランド「2050 coffee」のオープンなど事業の多角化が進み、国内5拠点に海外グループ会社を合わせると、約100名規模の会社へと拡大しています。
そんな急成長の中、Kurasuは一度導入した「ピラミッド型組織」を廃止し、あえて「インディペンデント」なチームづくりへと舵を切りました。それはなぜなのか?
今日は、COOでありCHROの役割を担うMasaと、人事・経理を担当するMaedaの二人に、現場のリアルとこれから挑戦したい組織づくりを語ってもらいました。
── 今日はKurasuの組織づくりについて、綺麗事抜きで伺いたいと思います。ここ数年で組織の景色がガラッと変わったそうですね。
Masa:そうですね。2年前くらいからコーヒー器具の輸入販売事業が伸び始め、さらに新しい店舗ブランド「2050 coffee」のオープンが重なり、事業が急拡大しました。それに伴って従業員数が急増し、今は国内メンバーだけでも55人前後、海外のグループ会社を含めると100人近い規模になっています。嬉しい反面、実は「このままだと組織が瓦解する」という大きな危機感を抱き続けていました。
Maeda:以前のKurasuはバリスタ出身者が8割で、カフェという世界の中の暗黙知で組織を運営できていた部分があったんです。でもここ2年ほどで、オフィスワーカーの人数も8人から16人に倍増し、コーヒー業界未経験のメンバーも増えました。人数が多くなり、拠点が増えて距離ができ、バックグラウンドが多様化する中で、今までのやり方が通用しなくなってきました。
── そこで最近、組織体制の見直しを行ったと。
Masa:はい。でも実はそれよりも昔、2年ほど前にも一度、組織体制を見直したことがありました。僕が入社して半年くらいのタイミングで、人数が増える中、周りの人達が何をやっているかわからない、誰に相談したらいいかわからないという声が大きくなり、そのときはいわゆる「ピラミッド型」の組織図を作って可視化したんです。でも結論から言うと、これが失敗でした。社内のみんながピラミッド構造に引っ張られてしまって。
── ピラミッド構造に引っ張られた、とは?
Masa:それまであったはずの横のつながりが生まれなくなり、各部署で個別最適化が進んでしまいました。そして何より、「言われてないからできません」「マネージャーが決めてないから進みません」という、指示待ちの姿勢がすごく増えてしまった。いわゆる「コマンド・アンド・コントロール」のような軍隊的なやり方が組織図に引っ張られて生まれてしまい、それが僕たちには合わなかったんですね。
僕たちKurasuはコーヒーの会社です。メンバーは本来みんなコーヒーが好きで、誰かに言われてやるのではなく「やりたくてコーヒーを淹れている」人たちです。それなのに、仕事の進め方が「命令」中心になるのは、コーヒー屋としてすごく矛盾しているし、働いている人を信用していないことにもなるなと。
── そこで組織体制をまた変えたんですね。
Masa:はい。そもそも、スペシャルティーコーヒーショップやサードウェーブというムーブメント自体が、効率や画一化を優先する大手資本のやり方に対する「カウンターカルチャー」として生まれた側面があります。
資本の論理にただ飲み込まれるのではなく、コーヒーの品質と自分たちの個性を大事にし、独立した存在であろうとする。その文化を組織にも反映させるべきだと考えて、「インディペンデントなチームを作ろう」という方針に転換しました。それで作ったのが、この組織図です。
── 新しい組織図はかなりユニークですね。ピラミッドとは全く異なる形をしていて。
Masa:今回作った組織図では、自分たちのチームが商流の中のどの部分にいて、どのようにお客さまへの価値を届けているのかを見える化しました。一番左の「サプライヤー」から一番右の「お客さま」に向かう流れの中で、自分の立ち位置が把握できる設計になっています。
Maeda:自分のチームがKurasuの事業の中でどういう価値を生んで、それがどういうふうにお客さまに届いているのか、そしてコーヒー業界のバリューチェーンの中でどんな価値を生んでいるかがわかることが、日々仕事に取り組む上での納得感につながるのではないかと思うんです。
Masa:それと、経営を「役割の一つ」にしたのもこの組織図の特徴です。経営陣が上に立っているわけじゃなくて、役割として経営を担っているんだよ、と伝えたくて。
── 組織のあり方を変えると、運営の仕組みも変えることになりますよね。
Masa:そうですね。インディペンデントで自由なチームというものを考えたとき、まずは「目標の自由」が大切だと思い、各チームで「自分たちはどこを目指すのか」を自由に決めてもらうようにしました。
ただ、目標を決めて走るためには「経済の自由」もセットで必要になります。そこで今回、各チームが採算を取れているか、明確に見えるような仕組みも同時に整備しました。
Maeda:自分たちのことを自分たちで決めようとすると、まずチームの数字を見える化しなければ、自分たちが今どんな状況にいるか把握することもできません。現状がわからなければ、次にどう動くかを自分たちで判断しようがないですよね。
誰かにお金の使い道を決められるのではなく、自分たちのお財布を自分たちで管理できる環境が「自由なチーム」には必要だと考えました。
── 「経済の自由」と「目標の自由」を提供することで、各チームのあり方は変化しましたか?
Masa:現場の意識は劇的に変わったと思います。「マネージャーが決めてくれないからできない」「言われてないからできない」ということがなくなって、僕のところに来る相談の内容が、こうしたいけどアドバイスが欲しい、こんなことしたいけど採算の計算はこれで良いか、という主体的な方向に変わってきました。
Maeda:部署ごとの採算が見えるようになったことで、各部署の中に「自分のチームを経営する」という意識も生まれてきましたよね。例えばカフェ部門でも、より価値を生み出すために自分たちが何をすればいいか、サービスだけでなく数字の面からも考えるサイクルが見られるようになりました。
Masa:豆の仕入れや焙煎を担当するプロダクションチームも「自分たちの売り上げをつけたい」と言ってくれるようになりました。普通のロースタリーではできない、Kurasuだからできることを探してくれている。あと、原価や在庫への意識もすごく高まりましたね。
Maeda:Kurasuのスタッフの中には、いつか独立してお店を持ちたいと思っている人がいます。もちろん僕たちはいつまでもみんなと一緒に働いていたいんですけどね。でも、そうやって独立を目指すスタッフにとって、会社にいながら「数字」を扱う経験ができるのは、将来必ず役に立つことだと思っています。
── お話を聞いていると非常に理想的な組織に思えますが、実際の運営は難しくないですか?
Maeda:いや、めちゃくちゃ難しいですよ(笑)。例えば、民主的であることがすなわちフラットなのか。発言は自由に認められるべきではあるけれど、決定権を持つのは誰なのか……フラットだから、インディペンデントだから、なんでも自由だと言ってしまうとKurasuである意味がなくなってしまうと思います。会社組織として集っている以上、向かうべき方向や達成したい目標はあります。でも「命令されて動く」のは違う。
Masa:「命令はしないけれど、強いリーダーシップで影響は与える」という、ある種パラドキシカルな対応が必要になることもあり、それが難しいところです。
実際、今のKurasuはパラドキシカルな要素をいくつも抱えています。例えば「事業のスケール」と「手触り感のあるホスピタリティ」、「カウンターカルチャー的な思想」と「予実管理という資本主義的な仕組み」。これらは本来相反する要素ですが、どちらも捨てたくない。
そんな中で、お客様を危険に晒す可能性がある場合や、経営的に許容できないリスクがある場合は、トップダウンで介入し「命令」せざるを得ないこともあります。そういうギリギリの判断を個別に繰り返しながら、メンバー一人ひとりがオーナーシップを持ちつつ、会社の一員として力を発揮できる状態を目指しています。
Maeda:こういう運営だとどうしても摩擦や衝突が生じることがあるので、それは一つひとつ丁寧に調整していく必要があります。それに実際、まだ仕組みの整備が追いついていないところもたくさんあって、そういう部分はメンバーと日々話す中でのフィードバックに助けられるところが多いんです。
会社が小さかった頃は、僕もカフェ店舗の2階で働いていて、みんなが何を思いながら働いているかを聞きやすい環境でした。でも今は拠点が離れて、どうしても見えづらくなっている。だから最近は意識的にコミュニケーションの時間を取って、「なんで働いてるんですか」みたいな話をカジュアルに聞くようにしています。
── 自由な組織だからこそ、泥臭いコミュニケーションが必要になるんですね。Kurasuのメンバーは多様だから、いろいろな意見が聞けそうです。
Masa:おっしゃるとおり、今は本当に多様ですね。大手上場企業出身の人もいれば、Yahoo!や楽天のような老舗IT企業、メガベンチャーやミドルベンチャー出身のメンバーもいます。一方でもちろん、バリスタ一筋でやってきたメンバーもいる。
Maeda:あと、外国籍のメンバーも増えています。今会社には7人ほどの外国籍スタッフがいますね。
── そこまでバックグラウンドが違うと、それぞれの「当たり前」が違ったりしますよね。
Maeda:例えば「休暇」一つとっても捉え方が違ったりします。カフェ業界では「土日祝も営業するのが当たり前」「年末年始もお客さんが来てくれるなら開けたい」という感覚がありますが、オフィスワーク出身の人からすると「年末年始は休みじゃないの?」「祝日は休みでしょ」となる。
そして海外のスタッフと話していると、長期バケーションが前提だったりしますし、費用の考え方が違ったりもします。例えばドイツの労働法は日本以上に従業員の権利の保護が厚く、日本との違いに驚くケースもあります。そんな中で、これまでの業界スタンダード・文脈を大切にしつつも、みんなで新しいKurasuの働き方を創っていく必要があります。
Masa:働き方の多様性という意味では、最近「子連れ出勤」にもトライしています。最初はスタッフのAyakaさんが始めましたが、最近は代表のYozoさんも実践しています。こういった新しい働き方を、突発的な対応ではなく「制度」として落とし込んでいくのがこれからの課題です。
制度づくりはスムーズに進むことばかりではなく、当然さまざまな摩擦が起きることもありますが、それぞれの立場からお互いの働き方を認め合えるような状態に持っていく必要があると考えています。
── Kurasuで人事をやる醍醐味はどこにあると思いますか?
Maeda:コーヒー業界が抱える長年の課題に、人事という切り口で挑めることだと思います。「コーヒー業界の新しいグローバルスタンダードを牽引する」というKurasuのミッションに、働き方の面から挑戦できるポジションです。
実際に、Kurasuで人事を担当して初めて気付いた課題はいくつもあります。例えば、バリスタのキャリアパスの問題もその一つです。若いうちは良くても、ライフステージが変わって生活費が増えていくと、業界を去らざるを得ない人が多い。キャリアの幅が狭いことが原因のひとつです。
大きな会社で昇進して店長になるか、独立して自分の店を持つか、競技会でスターになるか……それらは全て狭き門なのに、それ以外の選択肢がほとんどない。人生を成り立たせるためにコーヒー業界を出ていくしかないなんて、すごく悲しいことだと思います。
── Kurasuは、その「当たり前」を壊そうとしているように見えます。
Masa:そうですね。バリスタ出身のKuriさんがセールスとして活躍したり、同じく元バリスタのOshaさんがPM(プロダクトマネージャー)の役割を担ったりしています。
Maeda:最近ではデータエンジニアリングを専門とするメンバーもいます。「コーヒー屋だけど、コーヒーを淹れる以外のプロフェッショナルな道がある」という状態を作れたらいいですよね。
また、職種の幅を広げるだけでなく、バリスタとして現場に立ち続けるという選択肢の強化も重要だと考えています。一人当たりの利益率を高めて、賃金ベースアップを実現したいです。「好きだから低賃金でもいい」ではなく、経済的な自由とやりがいを両立させる仕組みをつくる。現場に立つバリスタと人事、会社全体で協力しながら作り上げていきたいです。
── 今まさに求めているのは、どんな人事担当者の方でしょうか?
Masa:Kurasuという会社やコーヒーそのものが持つ「コンテクスト(文脈)」を理解して、大切にしてくれる方ですね。
Kurasuは今、矛盾の中にいるんです。会社としてスケールさせるには効率化が必要ですが、僕たちが大切にしているハンドドリップや、一人ひとりとの対話といった「クラフトマンシップ」は、効率化の対極にあるものです。
効率だけを突き詰めるなら、全店舗でバッチブリューを導入してガンガン機械で淹れればいい。でもKurasuは、あえて非効率なことを大切にしている。かといってコーヒー業界の伝統がすべて正しいとも思っていない。守るべき「こだわり」と変えるべき「とらわれ」を見極める、バランス感覚のある方がKurasuに向いていると思います。
Maeda:バランス感覚は本当に大切だと僕も思っています。「人事」という単語を構成している、「人」と「事(事業)」のバランスも大事にしたいですね。働く人たち一人ひとりに寄り添いながらも、その力がきちんと集まって事業が進んでいくことも重要です。従業員目線と事業目線を両立させることに、想いを持っている方が来てくださるといいなと思っています。
Masa:ただ制度を作るだけでなく、それが現場にどう馴染むか、スタッフがどう感じるかまで想像して伴走できる方だと心強いです。例えばバリューを策定するとしても、空虚なスローガンで終わらせず、スタッフの日々の行動に根付くための具体的な仕組みづくりまで、一緒に考えられるような方と働きたい。
── 最後に、この記事を読んでいるHR担当者の方へメッセージをお願いします。
Maeda:偉そうに語ってきましたが、僕たちは決して「人事のプロ」ではありません。毎日一緒に悩み、一緒に勉強し、手探りで進んでいます。
Masa:正直「崖に向かって走っているんじゃないか」と怖くなることもあります(笑)。でも、だからこそたくさん本を読んで勉強して、チームで試行錯誤できる面白さがあります。最終的に大事なのは「もっとお客さんに喜んでもらうにはどうすればいいか」と考えることで、組織づくりもその方法の一つ。Kurasuの特殊な「文脈」の中で、その答えを一緒に探しにいける方をお待ちしています。