-AI前提社会、自分の軸を育てるOSは中学から-
「AIを完全にコントロールできる人になればいい」
高鍋西中学校の3年生が、さらっと言いました。
「未来の面白そうな仕事を100個出してみて」という問いに前のめりになった中学生が、AIへの不安ではなく、使いこなす側に立つことを当然のように口にした。まだ社会に出ていない中学生が、10年後に求められる力をすでに直感している?
この発言に、ぼくは衝撃を受けました。
同時に、思いました。
いまのキャリア教育は、この中学生の直感に応えられているのか。
1.キャリア教育、会社と学校のギャップ
-900人採用した経営者が感じる、学校が輩出したい人材とのギャップ-
ぼくはUDS株式会社の共同代表兼人事責任者として20年近く、900人規模のベンチャー企業を経営してきました。なりふりかまわず採用して、研修して、評価制度つくって、1on1に明け暮れてました。会社が10人から900人になる過程で、人が育つということと人が折れるということを、両方間近で見てきました。
そんな実務経験から言わせてもらうと、学校が育てようとしている人材と、これからの社会が必要とする人材の間には、深刻なギャップがあります。
たとえば、ベンチャーで欲しい人材は「企画力」「創造性」「挑戦心」ある人なんですが、東大行っても必ずしも企画力があるわけではなかったり。
2020年に宮崎県都農町へ移住し、中学生と一緒にまちづくりをはじめてから、そのギャップをリアルに目の当たりにしています。
ぼくは教育のプロではありません。
でも、キャリア教育と総合学習については、民間経営者として、先生にはない見識や実践知を補完できると自負しています。
都農中学校で6年間、各学年、年間15-24時間の総合学習を担当し、その実績を買われて今年度から川南町・高鍋町の計4中学校でも総合学習を担当することになりました。
ちなみに
公立中学校教員のうち、民間企業経験者は3.3%(2022年文部科学省調査)。
(2022年文部科学省調査)
現場の先生が「キャリア教育を行う際の懸念点」
第1位は、「自らに教職以外の社会経験がない」(60.0%)
(2021年グローバルプロデュース「中学校のキャリア教育に関する実態調査」)
これは先生たちだけでは、キャリア教育は賄いきれないことを説明する、構造的な問題だと思ってます。
そのような前提で、実際にぼくが現場で感じてきたことを、経営者として正直に書かせてください。もちろん現場で日々生徒と向き合い奮闘されている先生たちや学校に少しでも貢献したい趣旨で。
2.キャリア教育に感じる4つの違和感
①地域学習|歴史を調べて終わってないか
地元出身でもない先生たちはイメージわかず地域に知り合いも少なく、かつ働き方改革で時間もないのが現状では。結果的に前例踏襲で地域のベテランから「昔はこうだった」という過去から現在までの話に終始。(大事だけど)
地域の未来の可能性や選択肢について考えたり、AI時代にアップデートしたカリキュラムはつくられていくのか?
②職場体験|仕事の楽しさは伝えているか
職場体験は大賛成。でも先生たちは町の事業所を知らないし、そもそもその仕事が10年後も存在するかどうか考える余裕はない。受け入れ側も忙しいから、作業を振って終わらざるを得なかったり。そして一番大事なことが抜けている——仕事を楽しんでいる大人が、子どもの隣にいるかどうか。
子どもが「仕事って大変、つまんない」と思って帰ってしまうリスクを回避できているんだろうか?
③修学旅行|TDLかUSJで、何を学ぶのか
東京ディズニーランドか、ユニバーサルスタジオジャパン。それが「修学旅行」として成立している。観光して、食べて、楽しんで帰ってくる「修”遊”旅行」に、一定の意味はあるんだろうけど。。
一生の財産になる人や地域との出会いやつながりをもたらす越境体験はつくれないんだろうか?
④進路指導|AI時代の仕事イメージはあるか
民間企業の採用担当実感として言えば、大企業のホワイトカラーを目指すことが正解ではない時代がすでに来ている。AI時代には経営者・自営業者・フリーランスの価値が相対的に上がるかも。
AIで確実に選択肢が変わる将来の進路について、先生と生徒がどれだけイメージをもてているのか?
3.AI時代に必要な、4つのチカラ
-経営の現場から逆算したキャリア教育の再設計-
ほざいているだけでは何も変わらない。だからぼくは動いてきました。
都農中学校での6年間で確信したのは、地域学習も、職場体験も、修学旅行も、進路指導も、バラバラのイベントではなく、一本の横串で貫くことができそうということです。
その横串が、本来のキャリア教育ではないかと。
キャリア教育は、進路を決めるための教育ではないはず。AIに依存せず、自分の軸で考え、動き、生き方を選び取れる土台を育てることだと思います。
OECDは2019年、教育の目的を「生徒のエージェンシー(行為の主体性)の育成」と定義しました。変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任を持って行動する能力のことです。
キャリア教育の本質は、結局このエージェンシーを育てることに行き着く。ぼくはそのために必要な「自分の軸を育てるOS」を形づくるものとして4つのチカラを提案します。
▶ 4つのチカラ
① ワクワク仮説×地域学習
都農中学校「つの未来学」
「いいこと思いついた!」を仮説に育て、地域を動かす。自分のワクワクを信じていい。それがAI時代の最初の武器になる。
② 全体構想力×職場体験
都農中学校「まちづくり部」商品開発&実売!
まだ見えなくても全体像を描く。キッザニアで学んだこの力が、職業体験をおままごとから本気の仕事体験に変える。仕事はもっと面白くできる、全体を描ける人が強い。
③ 実行の初速×修学旅行
新渡戸文化高校スタディツアー@都農町
熱が冷めないうちに動く。修学旅行を「修遊」から越境体験に変える力。感じたら動く、それだけで人生が変わる。
④ 自分×地域の物語化×進路指導
高鍋高校まちづくりチームNABEGO「ナベゴーメディア」
進路より先に考えたい、地元の個性を自分の個性に。地元って恥ずかしくない、むしろ最強の自分になれる。
社会人になってからこの4つを矯正するのは重い。採用側として、そのことを痛感してきました。だからこそ、中学から育てたほうが圧倒的に強い。経営の現場にいるからこそ、そのことをリアルに感じています。
「AI時代に生き残れるか不安」という10代・20代に伝えたいのは、これは才能の話じゃないということです。そして、人を育てる立場にある大人に伝えたいのは、いまのキャリア教育のままでは間に合わないということです。