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すべての合意をフェアにする - MNTSQの挑戦

こんにちは。契約を変革するAI SaaSを提供する、MNTSQ(モンテスキュー)のFounder / CEOの板谷です。

この投稿では、「MNTSQがなぜ存在するのか」、私たちの存在意義をいまいちど言葉にしてみようと思います。若手弁護士であった私の原体験から、話を始めさせてください。

忘れられない記憶①

「なんか細かいこと、いつまでもやってますね」

私が弁護士として受けた言葉のうち、最も衝撃的だったものです。

そのとき私は、国際的な買収交渉の真っただ中にいました。インド人であるターゲット企業のCEOらと、東京駅を一望できる高層ビルの会議室にこもっています。

買収価格や買収後のビジネスプランは決まっていましたが、契約を最終化するためにはそれ以外にも決めなければいけないことが大量にあり、5ヶ月にわたる契約交渉は山場を迎えていました。

弁護士としては、ひりひりとした緊張感を感じる「花形」の瞬間です。私の隣には、法務部長が緊張した面持ちで座っています。私たちは、契約文言について一つずつ指し示しながら、「重大な(material)」という文言がこの条項には必要だと力説していました。

そのとき、この買収を統括する事業部の担当者が立ち上がりました。彼はずっとこの交渉を見ていましたが、どうやら事業部長から電話があり、「どうだ?順調か?」とでも聞かれたのだと思います。

その担当者が会議室から退室しながら(おそらく私たちに聞こえないと思って)事業部長に小声で話したのが、この言葉でした。「なんか細かいこと、いつまでもやってますね。」

私は後ろから頭をぶん殴られたような衝撃を感じるとともに、この担当者の心の声が聞こえてくるようでした。

「こんな交渉は、もう退屈だ。はやく、この買収で私たちが新しく始めるビジネスについて語らろうじゃないか。」

忘れられない記憶②

「交渉相手から、これでよいと最終承認がありました」

依頼者からそう聞いたとき、そんなバカなと私は思いました。交渉相手は本当にこの契約を読んだのだろうか。

それは、小さな事業のために必要不可欠な資金を融資するためのものでした。金融機関側の弁護士だった私は、これまでの経験を総動員し、あらゆる契約文言を緻密に練り上げました。よくよく読むと、ほとんどいつでも返せといえば融資の全額を返さなければいけない仕組みになっており、自分の依頼者である金融機関にとって恐ろしく有利な契約です。

私はこう思っていました。「どうせ相手は交渉をしかけてくる。だからスタート地点はこちらに圧倒的に有利なドラフトから始めるべきだ。相手の出方をうかがいながら、じっくりと落としどころに着地しよう」。

しかし、交渉相手はその恐ろしいドラフトをそのまま最終承認してしまいました。理由はわかりません。しっかりと契約を読みこめるメンバーがいなかったのかもしれませんし、融資を受けるスピードのほうが重要だと考えたのかもしれません。

私は思いました。

「私はなんてことをしてしまったんだろう。この事業はいつか私のせいで潰れてしまうかもしれない。

そもそも、こんな一方的な条件を投げつける必要があったのだろうか。こんなに非道いことを書くべきではなかったのではないか。落としどころは最初から見えていたのに」

いつか、そのことを別の事務所の先輩弁護士の方に話すと、こう言われました。

「ハハハ、それはしょうがないよ。契約交渉なんて『プロレス』だからね。自分の仕事をやっているアピールだって重要だよ。」

「契約」というプロトコルは壊れている

このようなエピソードは、大なり小なりあれど、とても日常的なものです。

契約とは平たくいえば「約束」であり、約束をしないことには誰とも協力しあえません。なので、わざわざ契約書にしないような細かいものまで含めれば、私たちはまさに無数の契約をしながら生きていて、ビジネスをしています。

しかし、そのわりに契約交渉には、ちょっと時間がかかりすぎてはいないでしょうか。インド事業を進めたい担当者の飽き飽きした気持ちは、毎回ちょっとしたNDAでも交渉しなければならない事業部門のすべての担当者が実は感じているのではないでしょうか。

それに、契約というのはちょっと難解すぎませんでしょうか。私は専門家としての手腕を発揮して、あの融資契約の難解さの裏側に、自分側に圧倒的に偏った条項を忍ばせました。その行為は、本当に正しかったのでしょうか。

「契約」はこの世界のあらゆる協力関係のプロトコルです。しかし、我々はいったいどれだけ多大なコストを契約行為のために払っていて、それは本当に正当化可能なコストなのでしょうか。そもそも、専門性をもって毎回吟味しなければ、他者と協力関係を築くことが難しいという状況は正しいのでしょうか。

世の中にあるすべての合意を、フェアにしたい

MNTSQは、このような問題を解決するために存在します。

MNTSQでは、全メンバーがあらゆる意思決定に参加可能であり、その結果はドキュメントに残されなければならないという思想があります。そして、MNTSQの目指す世界(Vision)は、ドキュメントに以下のように記されています。

MNTSQは、誰でも一瞬でフェアな合意ができる世界を目指します

  • 契約の専門知識によらず、社会的な立場によらず、フェアな合意ができる世界を目指します
  • 長々とした交渉をしなくても、細かな文言を調整しなくても、一瞬で合意ができる世界を目指します

ここまで書いておいてなんですが、これはある意味では途方もない目標です。「すべての合意」には、企業だけでなく国家や個人による合意や、国際的な合意ももちろん含まれています。

これを実現しようとすれば、MNTSQが契約交渉のプラットフォームとして社会のインフラになり、あらゆる契約のフェアネスを分析できるアルゴリズムをそこで稼働させ、適切な落としどころを検証・提案できるような仕組みを構築する必要があります。

そんなことができるのでしょうか。

MNTSQの挑戦

私が確信を持っているのは、それができるとすればMNTSQしかないということです。MNTSQは、日本トップのローファームである長島・大野・常松法律事務所と提携し(8億円の出資を受けていますが、これは法律事務所がテクノロジー企業に投資する金額としては、2022年現在で世界最大額です)、さらにPKSHA Technologyと提携することで、常に最先端の機械学習テクノロジーを活用できる状況にあります(このあたりは、創業ストーリーをご覧ください)。

社会のあらゆる合意をフェアにするという問題の市場規模はいくらですかと聞かれれば、経営者としてどうかと思いますが「わかりません」というのが正直なところです。ただ、いまのMNTSQは、さまざまな契約のハブになっているトヨタさまや三菱商事さまを始め、ここ1年で導入社数が10倍弱になっており、SaaSの成長目標として引き合いに出されやすいT2D3(5年間で売上を72倍にする)を凌駕するスピードで成長しています。コーポレートサイトもだいぶさまになってきました。

MNTSQにここから求められる問題のスケールは、今のメンバー40名だけでは決して太刀打ちできるものではありません。もしあなたがこのチャレンジに少しでも共感してくださるのであれば、是非私たちとお話しする機会をください。お待ちしています。

採用HP:https://careers.mntsq.co.jp/

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