連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第15回のテーマは、「会社のお金節約術」です。このシリーズで、安武さんは人への投資や事業づくりには時間もお金も惜しまないと話していました。では、締めるところは無いのか。特にAIコストは、多くの会社にとってまだ手探りの領域だと思いますが45人規模の会社を運営していくなかでどのようにお金を節約しているのか、コストとどう付き合っているのか、その実務のリアルも含めて、数字も隠さずに聞いてみました。
ー単純にお伺いしたいのですが、会社のお金、節約していますか?
聞かれると、ちょっとだけ迷う質問です(笑)。派手に使ってる感覚はないですけど、「節約してます」と言い切ると、守りに入ってるみたいに聞こえるのも、なんか違う気がして。ケチっているわけじゃないんです。ただ、無駄なことには人一倍うるさいと思っています。
ーその「無駄にはうるさい」というのは、具体的にはどういうことですか?
目的がぼやけたままお金が流れ続けているのは、あまり良い状態ではないですよね。見栄のためのオフィスとか、狙いがはっきりしない広告とか、使われていないツールとか。人への投資や事業づくりにはブレーキをかけたくないんですけど、それとは別の話で、そういうものには結構冷静に判断してるつもりです。もともとコンサルなので、人のお金を扱うときの感覚に近いのかもしれません。
ー最近、実際に「これはまずいな」と気づいた出費はありましたか?
ありました。AIツールの費用です。うちは全社でClaudeを使っているんですが、7月に入って請求を見返したら、半月の時点でもう従量課金だけで1,000ドルを超えてたんですよ。このペースが加速していくと、月末までに従量課金だけで4,000ドル近くまで跳ね上がる可能性もあって。サブスクリプション分と合わせると、月100万円を超えるペースになっていました。
45人分のライセンスを発行しているので、規模としては小さくないんですが、そこまでの数字になっているとは正直思っていなかったです。数字を見た瞬間は、さすがに焦りましたね(笑)。
ー放っておいたら気づかなかった可能性もありますよね。どうやって気づいたんですか?
もともと、使えなくなって現場が止まるのが一番困るので、保険のつもりで使用量はモニタリングしていたんです。そこにFableが出てきて、状況が一気に変わりました。
請求を見返して、月次の容量を超えているメンバーが社内で結構いることが分かりました。ガイドを整理していく過程で、その理由も見えてきたんです。悪気があったわけじゃなく、単純に上位モデルがデフォルトになっていることを本人が意識してなかっただけみたいで。普段はそこまで細かく見ていなかった部分だったので、今回はいい意味で気づきになりました。
ーそこからどう手を打ったんですか?
まずモデルの使い分けを整理しました。ベースは標準モデルにして、期待した回答が得られなかったときだけ上位モデルを使うようにガイドを出したんです。
それと、一旦全員のライセンスを標準に戻しました。上位グレードのままだと、どこまで使ったら超えるのかが逆にわかりにくいので。まずは実態を正確に棚卸しするところからやり直しました。用途によっても使い分けていて、アイデアの壁打ちみたいな場面はGeminiを使って、実装や自動化みたいな場面はClaudeを使う、というすみ分けにしています。全部を一つのモデルに寄せるより、場面ごとに向き不向きを分けたほうが、結果的にコストも収まりやすいと思っていて。地味な作業ですけど、こういうところをきちんとやるかどうかで、後々の差が結構大きくなると思っています。同時に、ローカルで動かせるモデルの検証も始めています。Qwenみたいなモデルが上位モデルに近い精度まで出せるという話も聞いていたので、クラウドのAPIに全部を頼らない選択肢も並行して探っておきたくて。
これでどこまで効果が出るかは、正直まだ分からないです。ガイドを出したその日から劇的に変わるものでもないですし。ただ、放っておけば月100万円を超えていたかもしれない状況に、早い段階で気づけたのは大きかったと思っています。今後も、この数字がどう動くかは継続してチェックしていくつもりです。
ーメンバーからは何か反応はありましたか?
うちは会社の数字を全社に開示している方針なので、AIのコストについても同じように、実際の請求額をそのまま見せるようにしています。
上位モデルが急に使えなくなったら困るという声はありましたけど、なんでこうなったかまで含めて話すと、意外と納得してもらえた感触があります。数字を隠さずに見せるのは、こういうときにも効いてくるんだなと思いました。
ーAI以外でも、同じように絞る基準を意識することはありますか?
基準自体は変わらないですね。これは、未来の選択肢を増やすかどうか、それだけです。
増やすなら人にも事業にもお金を使う。増やさないなら、どんなに便利そうに見えても止める。AIツールも一緒で、便利だから使うんじゃなくて、それが何を生み出しているかを見るようにしていて。この基準だけは、ここ数年ずっと変えていません。特にAI関連は動きが速いので、都度見直すようにしています。結局、お金の使い方を見れば、その会社が何を信じているかが分かると思うんです。
ーこれから入ってくる人に、伝えたいことは何ですか?
さっきも言った通り、ケチるとか、そういう話じゃなくて「未来の選択肢を増やすかどうか」という基準はいつも同じです。
使わないものを削れば、その分を本当に増やしたいところに回せる。特に今の時代は、AIみたいな新しい変動費がどんどん増えている分、その感覚がないと簡単に見えなくなってしまうので。そこまで含めて考えられる人と、これから一緒にお金の使い方を考えていきたいですね。それが結局、会社を長く続けていくことにもつながると思っています。
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