こんにちは。Hire事業部の両角です。
採用管理システム(ATS)の提案中、たまにこんな質問を受けます。
「今はAIの時代、採用管理システムはいずれ要らなくなるのでは」
こういうことを仰るお客様もいます。確かにAIの進化は目覚ましく、かくいう私自身も業務の多くでAIを活用するようになりました。しかし、この質問に対する私の答えは「NO」です。
むしろ、採用管理システムの需要はこれからさらに高まってくると考えています。
今回なぜそう考えるのか、自分の実体験にも触れながら整理したいと思います。
採用難に直面。 数と質の板挟み
前職はデジタルマーケティングエージェンシーで、事業部門でしたが採用にも直接関わっていました。自社にプロダクトがない事業だったので、競争力の源泉は結局のところ「人」しかありません。そのため採用にはかなり力を入れて取り組んでいました。
大きな変化があったのはコロナ禍から数年後。各社が一時控えていた採用分を取り戻す動きが同時発生し、採用競争が過熱しました。その結果、採用難易度は高まり計画が当初から大きくずれ込みました。そこで持ち上がったのが、「これまでなら通していなかったかもしれない人を、通すかどうか」という葛藤です。数と質のどちらを優先するか。
そのときの結論としては、最低限必要な採用数を担保するために評価基準を変更することにしました。しかし、どの基準を、どこまで、なぜ緩めるのか。緩めた結果として何が起こりうるのか。それが整理されないまま合格ラインを少しだけ広げていきました。
その結果、採用数自体はある程度回復しました。しかし、この判断の正否は今後の定着率に委ねられています。仮に数年後、早期離職率の増加という結果が出たとき、初めて当時の決断の重さに気づくのかもしれません。
企業側の意識は「質重視」へ動きはじめている
「このような「数を追う採用」が引き起こす歪みは、決して私個人の体験にとどまりません。今、採用市場全体がまさに『数』から『質』へと大きくシフトしています。
日本の採用市場では中途採用の比率が上がり続け、2026年度には中途採用が新卒採用を初めて上回りました(日本経済新聞の採用計画調査)。同じ調査では、AIの発展を理由に新卒採用を抑制すると答えた企業も出てきています。
こうした流れの背景にあるのは、大きく3つだと見ています。
- 専門性の高い即戦力ニーズの急増
- AI普及に伴う「若手を大量採用・育成する」前提の崩壊
- 経済的不透明感による採用計画の慎重化
結果として起きているのが、「厳選採用」へのシフトです。採る人数が減れば、一人あたりの重みは増します。これまでの採用は、母集団を集めて計画数を満たすことが目標で、進捗管理も数字を追えばある程度成立していました。ゴールが入社に置かれている以上、採用基準そのものを改善する動きは生まれにくい構造でした。しかしこれからは、入社後に活躍が期待できる人かを精度高く見極められなければなりません。
商談でお会いする人事の方の言葉も、確かに変わってきていると感じます。
「これまでは入社数と時期がKPIでした。でも最近は1年後の在籍数や、入社した方の成果や定着率も目標に組み込まれています」
「面接官の個人的な感覚での判断は、ほぼブレるものだと思っています。実務に関連するテストや構造化面接の実践など、属人性をいかに排除し優秀な方を見極めるかが現在のテーマです」
ゴールが「採れたか」から「活躍したか」へ。判断が「属人的な感覚」から「明確な基準」へ。
そして、ゴールが「活躍」に動いた瞬間に、採用は一気に難しくなります。「活躍」の定義は会社ごとに異なり、一般論のベストプラクティスを当てはめるだけでは不十分だからです。
AIは” 渡した材料の範囲 ”でしか答えない
見極めの精度を上げなければならない。そう考えたとき、多くの会社がまず期待するのがAIです。書類選考を任せる、面接を要約させる。そうした機能は各社から次々に出ていますし、私たちも開発しています。
ここで冒頭の疑問に戻ります。
AIが見極めまでできるようになり、採用管理システムは要らなくなるのでしょうか?
私は逆で、むしろ人間がしっかり判断することの重要性が増すと思っています。
AIは感情的な要素を排除し、履歴書や職務経歴書、面接時の文字起こしなどの情報を把握し、プロンプト通りの評価をすることが可能だと思います。
しかし、あくまでそれは要件を満たしているか、チェックリストの確認をしている作業に近いのではないでしょうか。
実際に、皆さんの会社でのこれまで採用において入社前評判が高く、経歴・実績もピカピカの方が皆入社後に活躍してきたかというとどうでしょうか。必ずしもそういうわけではなかったのでは。
問題はAIの性能ではありません。自分の会社、部署に入社後活躍する人材とはどういう方なのか。どんな基準をクリアした方が成果を発揮するのか。その答え(仮説でも)をそもそも持っていないことがネックです。
では、その答えはどう導き出すのか。いろいろな考えや意見があると思いますが、私は「入社後活躍した社員からの答え合わせ」が欠かせないものになると思います。
「管理」ではなく「学習」のシステムへ
これまでの採用管理は、採用オペレーションの工数削減が主目的でした。
日程調整が自動化され、応募情報が一元化され、対応漏れがなくなる。もちろん大事なことですが、それだけなら「便利なツール」で終わり、AIで組んだ自前のシステムで十分だと感じる企業が増えても全く驚きません。
一方で私たちが目指しているのは、使い続けるほど自社の採用が賢くなっていくシステムです。
採用時点の評価と、入社後の活躍を突き合わせる。どんな基準で評価をされて入った人が実際に活躍しているのかが見えてくれば、評価基準そのものを更新できます。面接官の勘は、根拠のある基準に置き換わっていく。そうやって、採用の答え合わせを個人の記憶ではなく仕組みとして持てるようにする。そうした仕組みを作り込む開発はもちろん、運用しながら柔軟に変更、発展させていくためのメンテナンスコストも含めて考えれば、それがAIで簡易に作れるものではない、とイメージしていただけるのではないでしょうか。
ATSは要らなくなるのではなく、役割が変わるのだと思っています。業務を回す場所から、判断の材料が貯まる場所へ。AI時代に価値が下がるのではなく、AIを効かせるための土台として、むしろ重要度が上がる。ここが、私たちがこの事業に賭けている理由です。
実際に、採用への本気度合いが高い企業からの注目度は日増しに高まっていると感じています。
共にGAME CHANGERになりませんか?
決められた施策をこなすのではなく、自らの手で市場の前提を変えていく。未完成で巨大な採用領域だからこそ、この変化を起こすプロセスは何より刺激的です。
少しでも心が動いたなら、ぜひ一度お話ししましょう。私たちの現在地を、リアルな成果も課題もすべてオープンにお伝えします。