「データは溜まっているけれど、結局何を見ればいいのかわからない」「現場の感覚値と数字がズレていて、議論が平行線になってしまう」……。
採用活動におけるデータ活用は、もはや避けて通れないテーマです。しかし、いざ実践しようとすると集計作業が目的化してしまい、次のアクションにつながらないという悩みも多く聞かれます。
ウォンテッドリー株式会社が主催したセミナー「採用を事実で語る、今日から使える採用分析の第一歩」では、株式会社人材研究所の安藤 健さま が、データを「管理の道具」ではなく「攻めの武器」に変えるための思考プロセスを徹底解説しました。
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【登場人物】
▼登壇者
安藤 健 さま(株式会社人材研究所 ディレクター)
https://www.instagram.com/ando_jinji/青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。LEGO SERIOUS PLAYトレーニング修了認定LSPファシリテーター。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。
主に国内大手企業・中小企業での採用・教育研修・評価報酬制度構築など様々な組織人事コンサルティングに従事。また人事関連書籍やコラム連載、メディア登壇実績多数。東京都、千葉県、経産省主催の採用・人材開発セミナー講師。
※株式会社人材研究所についてはこちら
▼ ファシリテーター
真木 碧惟(ウォンテッドリー株式会社 Wantedly Hire事業部)
真木:
本日のテーマは「採用管理におけるデータ活用の現状」です。私自身、日々多くの人事の皆様と接する中で、「データはあるのに活用しきれない」という声をよく耳にします。
数字は把握していても、そこから何を読み解くべきか分からず、結局は現場の勘や経験に頼った運用に戻ってしまう……。本日は採用のプロフェッショナルである安藤さんから、データを「武器」にするための視点を伺いたいと思います。安藤さん、よろしくお願いいたします。
安藤さま:
皆さんこんにちは。株式会社人材研究所 ディレクターの安藤です。
本日のセミナーテーマは、『「感覚」から「事実」で語る採用へ』。そこで、人事・採用におけるデータ利用や、そのデータを採用戦略や採用活動の改善にどう活かしていくのか。いわゆるピープルアナリティクスについてお話ししていきたいと思います。
人事のコアスキルは、見立てる力
人事・採用の仕事において、一番大切な力は何だと思いますか?私は見立てる力だと思っています。採用活動を仕事の流れで見ると、大きく以下の2つにわかれます。
・見立て:組織や人の状態がどうなっているかを正しく把握すること
・手立て:問題を解決するための手法
この2つのうち、「手立て」はそれほど難しくありません。世の中には書籍やネット記事の情報がのっていますし、媒体・スカウト・紹介などの形である程度選択肢も限られます。
本当に難しくて重要なのは「見立て」。なぜなら、人や組織は目に見えない曖昧なものだからです。たとえば、一人ひとりにインタビューすると、全員違う課題を口にすることでしょう。客観的な指標は外に見えないことで、見立ては変わっていきやすいのです。

データという「武器」を持ち、「持論」という壁を突破する
ここで人事が直面するのが、経営者や現場責任者の「持論」という壁。彼らはビジネスの第一線で、不完全な情報から直感的に答えを導き出す「理解力」の高さで成果を挙げてきました。ですから、採用面接で候補者のちょっとした話から、自分の想像で理解し無意識に判断してしまいます。
しかし、採用において想像で判断することは、本来とても危険なこと。「できると思ってたのにできない」という入社後のミスマッチを招く、最大の原因になるからです。一方で、人事が「その判断は危ない」と伝えたらどうなるでしょうか。おそらく、客観的な証拠がたりないと、受け入れてもらえないケースが多いと思います。
そこで、彼らを納得させる材料になるのがデータです。データは、単なる数字の羅列ではなく、客観的な動かぬ証拠です。データというエビデンスを武器に、正しいと思う組織づくりを遂行する。**それが本来あるべきピープルアナリティクスの姿だと私は考えています。
分析の「基本のキ」。現在地を切り取り、解像度を上げる3ステップ
難しそうとかんじる方もいらっしゃると思いますので、まずは基本のキについてお話しします。ステップは大きく3つ、まずは大前提としてデータを蓄積しましょう。
次に、スナップショットです。ある時点(今日・先週末・月末 など…)でデータを締めて、採用状況全体を切り取る。すると、どこに問題が起こりそうか当たりをつけることができます。
より解像度を上げるために、コホート(群)にわけて問題を見極めます。全体像を、応募経路別・職種別・面接官別という形で細かく分解してみましょう。
ステップ | 名称 | 目的 | 具体的なアクション |
1 | データ保持 | 分析の土台作り | ATS等で選考プロセスごとの数字を溜める |
2 | スナップショット | 現在地の把握 | 月末などの一時点で全体を切り取って見る |
3 | コホート分析 | 問題箇所の特定 | 属性別(経路・職種等)に分解して深掘る |
具体的な数字を用いて説明します。
▼ スナップショット
11月の進捗は、応募 120名、一次通過 40名、二次通過 15名、最終通過 5名、内定承諾 2名 です。
▼コホート
さらに見極めると、応募経路別では次のようなことがわかってきます
- 求人媒体 :50名応募があるが、内定承諾は0名
- リファラル:30名中1名が内定承諾、歩留まりが高い
職種別では次の通りです。
- 人事の内定承諾は0名

ここから課題を把握していくことが、「基本のキ」です。この3ステップを基本に、まずはデータを蓄積することからはじめていきましょう。
「採用あるある」を解決する、3つの分析アプローチ
それでは、採用あるあるの悩み3つに関する分析方法を紹介します。
- 選考途中での辞退が多く、なかなか採用目標数に届かない
- 今の歩留まりのままで採用目標数は達成できるのか不安
- 結局どの媒体、エージェントを使うのが効果的なの?
1. 選考途中での辞退が多く、目標に届かない
まず分析すべきは、途中辞退率(辞退者数 / 応募者数)です。一方で、途中辞退率のみでは原因まで特定できないため、定性(数字)と定量(理由)を掛け合わせましょう。
- 定量(数字):どのフェーズで辞退が多いか特定する(例:一次面接後が30%)
- 定性(理由):辞退の背景を掘り下げる(例:日程調整が遅い、他社内定など)
定性情報は、アンケートやエージェント経由のヒアリングなどで集めます。一次面接の辞退率が高いなら、「日程調整のタイミングで他社に決まった」のか、「提示条件が不一致だった」のか…。タイミングと要因の両方を突き止めることで、はじめて「日程提示を早める」「面接官を増やす」といった具体的な手立てを検討することができます。

2. 今の歩留まりで目標達成できるか不安
採用KPIシミュレーション分析が効果的です。採用活動をはじめる前に、過去の歩留まりから逆算したシミュレーションシートを作成。活動開始後は、モニタリングシートで進捗を確認します。
これが最初に出ていれば、今の進捗と比較して「書類通過が目標より少ない。このままでは4月に間に合わないから、今すぐエージェントを増やそう」と、感情ではなく事実に基づいて先手が打てるようになります。
過去の数値出しができていると、今の進捗と比較して「書類通過が目標より少ないから、エージェントをもう1社増やさないと間に合わない」といった判断ができます。
さらに細かく確認すると、「面接官Aさんは適正な合格率だが、Bさんは異常に低い。Bさんと目線が合ってない可能性があるから、合格基準を伝え直そう。」といった手立ても見えてくるはずです。

3. どの媒体・エージェントが効果的なのか?
応募経路分析を利用して、通過率と入社率(歩留まり)を確認します。入社率で見ると、次のように判断することができます。
- スカウト媒体Aは求める人材と合っていない可能性があるため、来年は利用をやめる。
- エージェントAは応募数こそ多いが書類通過率は低く、数を重視してる可能性。エージェントBは歩留まりが良いため優遇する。
エージェントとの関係構築で大切なのは、Win-Winであること。不合格の理由などを丁寧にフィードバックすれば、エージェント側もマッチする精度の高い人を紹介しやすくなります。関係構築のための情報提供も、大事な「手立て」です。

まとめ:明日から実践できるアクションプラン
安藤さまが解説した、明日からまず試すべきアクションを整理します。
- 「見立て」の時間を確保する
解決策(手立て)に飛びつく前に、15分だけでいいので数字を眺め、現状を「見立てる」時間を確保する。 - 今週末、スナップショットを実践する
現在の応募・選考状況を数値で締め、全体の歩留まりを可視化する。 - 「なぜ?」を言語化する
数字の異常値を見つけたら、現場の定性情報をヒアリングし、仮説を立てる。
データは、人事が自信を持って組織を動かすための「最強の武器」。今日蓄積した一行のデータが、数ヶ月後の採用成功を確実なものにします。


