理想の組織を創るために「どんなときにワクワクしますか」と問う|#4 カケハシCEO中川貴史氏

スタートアップに必要な「採用・組織づくり」のポイントについて河合聡一郎氏と探求する連載5回目は株式会社カケハシの代表取締役CEO中川貴史氏。薬局・薬剤師と患者さん“双方”の薬局体験を向上させる、薬局体験アシスタント「Musubi」(ムスビ)を提供するカケハシ。どのような組織づくりを行ってきたのか河合聡一郎氏が迫ります。

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スタートアップの最適な採用方法

スタートアップ企業において、採用は非常に重要なミッションです。そして、会社のフェーズによって、適切な採用手法は変わるもの。成長フェーズに合わせた採用ができるかどうかで、採用成功の確率は大きく変わってきます。

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株式会社カケハシ / 代表取締役CEO
中川貴史氏
東京大学法学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて製造・ハイテク産業分野の調達・製造・開発の最適化、企業買収・買収後統合マネジメントを専門として全社変革プロジェクトに携わる。イギリス・インド・米国でのプロジェクトに携わった後、株式会社カケハシを創業。
https://www.wantedly.com/id/takashi_nakagawa_e

薬剤師と患者さんの薬局体験を向上

カケハシ_中川

河合聡一郎氏(以下、河合):本日はよろしくお願いいたします。事前にご経歴を拝見させていただいていたのですが、中川さんは学生時代からも起業され、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在のカケハシ様の創業に至ってらっしゃいます。学生起業をご経験され、社会人としてもご経験された中で、どんなことにこだわり創業されたのでしょうか?

中川貴史氏(以下、中川)学生時代は音楽ストリーミングのサービスで起業していました。マッキンゼーを経て考えたのは、その領域は自分ではなく、感性の若い方が取り組んだほうが良いだろうと。重く深い課題で、参入障壁が高く、かつ社会に役立つことをやりたい。自然と日本の超高齢社会における医療や介護の課題にたどり着きました。
共同創業者の中尾は元々武田薬品に勤めており、母親が薬剤師で祖父が医師というバックグラウンド。彼も私も「日本社会にどれだけ役に立てるか」という長い目線でのフォーカスを持っていました。同じ目標に向かいつつ、相互に補完し合える関係になれるのではないかと意気投合しました。

創業期は徹底的に薬局の現場の方々にヒアリングを行いました。「何を考えながら業務を行っているのか」から「将来の夢」や「現在の悩み」、果ては「業務を行う上で、その瞬間に考えていることを口に出しながら仕事していただけませんか」と、とにかく細かく聞きました。400人に話を聞き終わったときには、誰よりも薬剤業務に詳しく、薬剤師さんの気持ちが分かる状態まで深まっていました。これは、後々のプロダクトづくりや組織づくりにも大きかったと思っています。

河合:現場の方々に対して通常の実務の流れに加え、業務への取り組み方やスタンスを含めて顧客解像度を上げていかれたのですね。そのヒアリングから見えてきたポイントは、プロダクトにどのように反映されていったのでしょうか?

中川:医療業界の特徴は、きちんとしたセキュリティが常に求められますし、Musubiは業務基幹システムなのでパフォーマンス要件も高く、また最低限システムとして必須な機能の数が膨大です。Minimum Viable Product(実用最小限の製品)で早く出し、早く改善するスタートアップのセオリーが成立しません。カケハシでは薬局の課題の解像度を上げて、ピンポイントで当てに行く作り方をしました。10~20年単位で日本がどのような方向性を持っているのか、海外の事例も見て、網羅的に十数個の事業アイディアを挙げて絞り込んでいったのです。
「Musubi」(ムスビ)を作るためには少なくとも1億円は必要だと思っていました。資金調達も行ったのですが、当時のベンチャーキャピタルからすれば「1億円もかかるのはあり得ない。2000~3000万円でなんとかならないですか」という感覚でした。最近はマーケット環境が変わり、金融や製造業、医療のスタートアップも増えている。シード期にしっかりお金を入れて良いプロダクトを作り込む発想も増えた感覚がありますが、当時は少なかった印象です。


河合:なるほど。業界特性もありますし、時間軸で、「業界としてどういう方向性になって行くか」も深く考えならスタートされたのですね。そういった特性がある中で、最初の組織づくり、採用は、どのような観点で行われたのでしょうか?

中川:重視し続けているのは、「スキルがある人」ではなく、「ミッションやバリューに共感する人」を採用すること。しかも、決して妥協しないという点です。ミッションやバリューへの共感は何者にも代えがたい要素で、共感があれば次に成すべきことも一緒に考えられます。最初の20人程度までは全員が面接官になり、「1人でもNGを出せば採用しない」というハードなポリシーを持っていました。働くモチベーションの源泉には必ずしも医療のバックグラウンドが無くてもいいと思っています。
たとえば、ソーシャルゲームを作り続けていたゲーム会社出身の優秀なエンジニアが在籍しています。お子さんが生まれてから「お父さんは何の仕事をしているの」と聞かれたとき、「自分の仕事内容に誇りを持ちたい」と、ずっと考えていたそうです。カケハシに入社したのは、胸を張って「医療業界を良くするために働いているから」と答えれるようになりたいから。これは、カケハシの組織の根幹にあると思います。

スタートアップで事業経営をする上では、さまざまな波があります。良いときも悪い時もある。社会的に正しくないことや、儲かるけれど倫理的に疑問符がつくこともあります。カケハシの場合は、どんなに苦しい状況でも間違ったことをやるくらいならば、会社全体で死を選ぶ。そういった強さを持っています。この高潔さや、あるべき姿を示し続ける強さがあるからこそ、カケハシを支えてくださっている医療従事者の方がたくさんいらっしゃるんだと思います。

河合:事業として取り組む理由が非常に明確ですし、何のためにやっているかを突き詰めてらっしゃいますね。ミッションやバリュー浸透を保つために、どういう取り組みをされていますか?

中川:王道ですが、採用の入り口は最も大事です。その方の「どんなモチベーションで働くか」「何がワクワクするのか」と会社のカルチャーやバリューが合うのかが重要。型にはめて矯正するよりも、自然と合う方が加入するのが理想なのだと思います。

中川:私は、「いつ、どんなときにワクワクするのか」を具体的に思い出してもらい、一番ワクワクしたことを何段階も掘り下げていきます。具体的なエピソードを聞いていくと、その方の人となりも理解できますし、業務適性も知れます。その方がカケハシに入社したときに、うまくいくかを重要視していますね。

たとえば、カスタマーサクセスであれば、顧客一人ひとりを真剣に考えて、その方以上に「その人の成功を願う」方が向いていると思うんです。営業であれば、本質的に高潔なこと正しいことをやりたいと思いつつ、一定の目標達成思考が必要になります。
また、今のメンバーより優秀な人材を採用することを心がけています。採用基準を落とすのは後々組織への影響が大きくなります。伸びていくスタートアップは採用基準が半年ごとくらいで上がっていくイメージがあります。今より優秀な方が入り続けていくのが重要です。

河合:バリューにフィットした方に入社してもらうために、面接時に「会社自体」と、「職種に合わせて」丁寧にエピソードを掘り下げてらっしゃるのは素晴らしいです。面接を相互理解としての場にしてらっしゃるんですね。その中で入社後はどのような評価スタイルを取られているのでしょうか?

中川:カケハシでは360°のピアフィードバックを取っています。「価値貢献」や「変幻自在」というバリュー評価を特に大事にしています。たとえば、営業マンで横の人の案件まで取ってボーナスをもらう方がいたりすると、「むしろ敵は社内にいる」と殺伐としてしまいます。カケハシの場合は、自分の成果にならなくても一緒に商談に出て、無事に受注できたら一緒に喜び合うような組織でありたい。チームプレーをするとき、直属の評価者だけとの関係性ではなく、周りの方にどんな貢献ができているのかをより重視しています。評価はチーム内だけでなく、広い範囲で集めてみることが重要です。
カケハシは階層構造が明確なピラミッド型ではなく、自立性や自主性を重んじる文化があります。「情報対称性」というバリューもあるので、他チームが何をやっているのかもSlackでできる限りオープンにしています。私も、投資家とのミーティング内容を公開しています。怒られている状況も赤裸々にしています。よく「経営者のように考えろ」という経営者がいますが、私は「自分勝手だな」と思っています。あらゆる情報があり、裁量がないと人はそうは動けない。カケハシでは、あらゆる情報をオープンにして、大きな裁量と自主性の基に動いているからこそ、メンバー「自分はどうすればいいか」を考えられる環境があると思っています。

マネージャーや役員聖人君主でも、偉いわけでもない。「マネジメントする」という役割が必要になるから、その役割を担っているに過ぎない。それがカケハシの価値観です。

河合:誰がどんな価値貢献をしているか、また相互に助け合い喜び合える組織に繋がるような評価の仕組みはわかりやすいですね。自主性を促すための情報対称性へのお取り組みも、まさにバリューに沿ってらっしゃいます。


医薬品の物流予測や、最適化も視野に入れる

河合:これからカケハシ様は、数百人規模の組織に成長されていくと思います。その中で、見据えていらっしゃる事業戦略や方向性、それに対しての打ち手はどう考えていらっしゃるのでしょうか?

中川:今、薬局向け「Musubi」(ムスビ)という創業からのプロダクトがありますが、Musubi InsightやPocket Musubiに加えて、数理最適化アルゴリズムを駆使した在庫管理システムの開発にも着手しています。ひとつのコアプロダクトから、一気にサービスラインナップが4つに拡大する見込みです。在庫管理は、かなり高度な数理最適化やAIロジックも組み入れながら、蓄積されたデータをベースにして、どう薬局経営に活かしていくかを考えています。

実は、医薬品の流通は配送料がかからないし、最小発注ロット数も存在しないんです。配送料は薬代に含まれています。電話して「持ってきてください」と言えば、無料で薬が配送されてくるので、薬局側からすれば発注頻度を最適化する理由がありません。たとえば、医薬品卸さんの営業所長のような偉い方が、片手に乗る数百円くらいの薬を「ガソリン代も出ないんですよ」と一生懸命車で運んでいたりするんです。
薬局側にはしっかりとした在庫管理発注システムが存在していないので、欠品したり、発注忘れが存在していたりする。薬をもらっている患者さんの6~7割は慢性疾患の患者さんのため、基本的には同じ薬が必要です。ですから、需要予測もかなり高い精度が出せるはず。長期休暇があるときは休暇前にもらいに来たりといったことや、ある季節になると花粉症やインフルエンザの薬が増えるといったこともアルゴリズムで加味していくことができる。予測精度が上がれば、薬局の発注漏れや欠品を無くして、発注頻度や配送頻度を最適化できると考えています。

さらに先の話をすれば、薬が市場に認可されるタイミングで治験を行いますが、病気の種類によっては対象サンプルの母数が小さくなります。コントロールされた治験環境とリアルな臨床環境は異なっている。リアルワールドデータと呼びますが、リアルな臨床環境のデータを見ていくと、「この薬の飲み合わせ」や「こんな生活習慣」だと優位に副作用の確率が高いという示唆を得られるかもしれません。データを活用することで医療に貢献していける、何らかの面白い示唆を引き出していくことができると嬉しいなと思っています。

河合:物流の在り方を再定義して、薬局だけなく薬品の卸の方々との商取引も変えていけるんですね。さらに大学の薬学部や製薬メーカー様とも一緒に医薬品開発のプロセスにおける効率性を上げていけるのも素晴らしい。まさにこうしたお取り組みを実現していく上で、「高潔」と言うバリューは最高ですね。

中川:大事なのは、トップダウンで指示を落とすのではなく、自分たちのチームを創って、事業全体についてワクワクして考えること。強い組織になるためには、より良いメンバーに来てもらうのは重要ですから、そのために必要な先行投資はします。そのために必要なお金は事業が伸びていれば大丈夫。事業を伸ばすために、必要な組織づくりを重視しています。

採用も「何人採用しよう」という絶対目標があって数字だけを追い求めていく採用よりも、よりよい人に来てもらうためにどうすればいいかを考えるべきですよね。採用数を追いかけるよりも、「組織づくりの本質とは」を考えている人事の方カケハシは合うのではないかと考えています。
また、未来を創るためにはプロダクトが重要です。そのためにも、エンジニア経験のある人事の方に来ていただけると嬉しいですね。スクラム開発の運用を行ってはいるが、会社全体やエンジニアリング組織にインパクトを出してみたいと思える方などは合うかと思います。その点、Wantedlyは更新することで採用広報にも効くツールですし重視しています。

河合:ミッションを実現していくために強い組織づくりに先行投資をされていくのは、まさに成長していくスタートアップには大切な要素ですよね。また、目的志向をしっかり持った人事の方がいるのも強いです。御社のこれからの成長がますます楽しみです。本日は本当にありがとうございました!

 

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