TBM 笹木

CMOが採用も背負う。社内外への一貫したコミュニケーションが組織成長につながる|#5 TBM CMO笹木隆之氏 |河合聡一郎氏と考える、スタートアップに必要な採用・組織づくり

スタートアップに必要な「採用・組織づくり」のポイントについて河合聡一郎氏と探求する連載。5 回目は株式会社TBMの執行役員CMO(コーポレート・コミュニケーション本部長)の笹木隆之氏にお話を伺いましたプラスチックや紙を代替する、石灰石から生まれた革新的新素材LIMEX(ライメックス)を中心に再生プラスチックを用いたCirculeX(サーキュレックス)など環境配慮型の素材や製品・サービスを展開する企業として注目されています。2020年には、日本経済新聞「NEXTユニコーン調査」推計企業価値1233億、第3位として紹介されています。今回は河合聡一郎氏がTBMのこれまでとこれからの組織や採用について、お聞きしました。

株式会社TBM
執行役員 CMO
笹木 隆之氏
株式会社電通に入社後、経営者と企業のあらゆる事業活動を“アイデア”で活性化させる未来創造グループに所属。電通のソリューション部門におけるベストプラクティスフォーラムにおいて、 MVP賞、準MVP賞などを受賞。
2016年4月、株式会社TBMに入社。ブランド戦略、PR、採用、組織開発、サステナビリティ、BtoC向けのEC事業、自治体とのアライアンスなど、コーポレート・コミュニケーション本部の本部長としてマネジメント業務を遂行。2018年8月、CMO (最高マーケティング責任者)に就任。Bioworks株式会社の取締役を兼任。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程(単位取得退学)を修了。
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エコロジーとエコノミーを両立させるTBM

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河合聡一郎氏(以下、河合):本日はお時間をいただきありがとうございます。実は私、御社の名刺を前から持っており、存じ上げていたんです。以前から「すごい発明だな」と思っていました。本日はこうしてお話を伺えるのを楽しみにしておりました。最初に、現在のTBM様の組織構造について教えてください。

笹木隆之氏(以下、笹木):TBMは2021年3月現在、200人規模になりました。全部署で採用を加速させており、2021年末には300人規模を目指しています。組織体制は、営業本部、海外事業部、開発・生産本部、管理本部、経営企画本部、そして、私が担当しているコーポレート・コミュニケーション本部になります。

2020年は第2工場が立ち上がり、宮城県の被災地の雇用創出も目的としていることから、工場で働いている正社員が大幅に増員しました。現在では県内2つの工場合わせて、合計で約100人が働いています。

笹木:私が代表の山﨑と初めて出会ったのは電通時代で、TBM設立の直前のタイミングでした。当初、素材自体ももちろんですが、何よりも彼のビジョンに惹かれました。出会った当初は、クライアントとしてTBMの企業理念、クレドの策定やブランディングなどの仕事をさせてもらっていました。山﨑と出会って数年後、世の中に対してインパクトを与える仕事するために自分の専門性を磨きたい、また、アカデミアの力を信じて、SFCの博士課程に通うために電通を休職させてもらったタイミングがありました。その1年が自分の中では転機となり、2016年にTBMにジョインしました。

入社のきっかけのひとつ博士課程の頃に観た、城山三郎さんの『官僚たちの夏』というドラマです。日本の高度経済成長期に通産官僚が「いかに外圧に屈せずに日本の技術を育て、経済をリードしてきたか」という話ですが、そのドラマのストーリーとTBMチャレンジがシンクロしたんですよね。パナソニックやトヨタも元はベンチャーだった時代があります。将来、グローバルカンパニーとして世界に羽ばたき、そのポテンシャルを感じる企業の創業期から、壮大かつ泥臭く、ドラマティックな挑戦がしたい。外から関わるのではなく中から、そして、「ドラマの初期の登場人物として関わりたい」と強く思ったのです。私から「TBMに転職したい」と告げたとき、山﨑は驚いていましたが「去年のTBMだったら笹木くんを採用できるようなフェーズではなかった。でも、今のTBMなら受け入れられる。このドラマを一緒に味わおうじゃないか」とそんな言葉をかけてくれました。それ以来、入社を決めた12月12日を記念日として毎年山﨑からお祝いをしてもらっています。

3つのフェーズに合わせて、組織を変えていく

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河合:まさに、御社の技術を通じて、世界のスタンダードとなる製品づくりに向けたチャレンジャー集団ですね。入社までのエピソードも、非常に胸が熱くなりました。そうした中で、笹木さんがTBM様にご入社されて、まずはどのように組織を見ていたのでしょうか? 継続していくべきだと思われた良い部分や、逆に時間を掛けて改善すべき点をお伺いできたらと思います。

笹木:まるでパズルのように自分にぴったり合う形のピースがあると信じて、転職活動している人もいるかと思います。ただ、電通に入社する前に、「総合職で勤めるということは、部署異動があって当然、その会社で自分がやりたい仕事をやるには、自分がやりたい仕事を人から任そうと思ってもらえる人材、選ばれる存在にならなければならない」と、尊敬する先輩に言われた言葉が脳裏に焼き付いていて、自分が選んだ会社で、働き方や組織のあり方にギャップを感じること自体に私はあまり意味がないと思っています。ベンチャーの組織はとくに変化が大きく、変化から学ぶ力、なにより、会社をより良く変化させる側に立てる力が必要ですね。

入社当時のTBMには人事評価制度や人材を育成するプログラムもありませんでした。そこに不平不満を感じたわけではなく、「無いものは作ろう」と採用、組織・人材開発採用コミュニケーションなど自分が担当する領域を広げていきました。

河合:「無いものは作ろう」というスタンス、素晴らしいですね。スタートアップではこういったマインドが大切だと感じます。そんな中で、笹木さんが担当されているコーポレート・コミュニケーション本部。このネーミングは非常に独特かつ御社ならではだと感じます。CMO笹木さんの下に採用・組織開発、マーケティングやコミュニケーション、サステナビリティの部門も一緒に置かれているのが特徴かと思いますが、どのような想いでこの部署をつくられたのでしょうか?

笹木:素材を事業として推進していく際に、エコロジーとエコノミーの両立が担保された形で広まっていくことをビジョンとして可視化すること。そして、期待値を高めて、ステークホルダーを広げていく、「ビジョナリー・カンパニー」的な思想が非常に大事です。

人によっては、コーポレートマーケティング・コミュニケーション組織を「コストセンター」と揶揄する方もいらっしゃいますよね。としてはコミュニケーション活動はコストセンターではなく、むしろ“フロント”として認識しています。この部分をしっかりと認識して、行えば行うほど、TBMの採用の質も高まり、TBMが求める人材は入りやすくなると思います。企業や事業のコミュニケーションと採用におけるコミュニケーションはリンクしている部分が大きい。これらの領域の社員がコラボレーションしながら、コミュニケーション活動全般及び採用活動を行うべきだと思います。その方が、アウターもインナーも一貫したブランドづくりに繋がり、双方にシナジーが生まれやすくなる。そういった想いがあり、現在のコーポレートコミュニケーション本部の体制があります。

河合:まさに、「事業の価値を創り出す、組織や採用に貢献する役割」ですものね。そして、近年、スタートアップでは「採用広報」や「採用ブランディング」という考え方が広まりました。当初からTBM様は先駆けて、一気通貫で活動されていたのですね。具体的にはどのような取り組みをされてきたのでしょうか?

笹木:スタートアップにはEarly、Middle、Laterの3つのフェーズがありますが、どのフェーズなのかによっても変わってくると思います。TBMの場合、Earlyフェーズでは、2017年10月に現役大学生正社員の採用専任者入社し、その社員が採用に尽力してくれたことが大きかったと思います。HRの最新の動向をキャッチし、TBMにとって新たな採用手法を行い、採用単価を下げながら人材採用に挑戦してくれました。「TBMに合う人材とは」という本質的な部分から考え、採用フローの構築などオペレーションの部分含め、彼がTBMにおける採用のOS構築してくれたと思います。

そして、組織開発文脈でいうと2017年末に初めて「感謝会」を開きました。年末に行う飲み会は通常忘年会と呼ばれますが、TBMは年を忘れて飲むことなんてできない。「この1年お世話になった方々に、今年の感謝と来年への抱負を伝える会にしよう」という意図で開始しました。また、2018年の年始には山﨑が「2018年はTBMの組織の創業年にしよう」と宣言しました。丸一日かけて、「どんな組織を目指し、どう行動するのか」を考え、ワークする「TBM CAMP」を実施するようになりました。以降、「感謝会」も「TBM CAMP」も、毎年実施しています。

それから、本社人数が50人以上を超えたMiddleフェーズでいうと、2019年に「People Communication」というチームを立ち上げ、中途採用と組織開発を当時23歳の社員3人が担当してくれるようになりました。若い力を信じました。そこから、採用手法だけでなく、採用ブランドの構築、入社研修のアップデートなどHR領域において取り組みを拡げ、深めてくれました。

まだまだ未熟なのでLaterと言っていいのかわかりませんが、2020年には、同じ船に乗って、ビジョンの実現に向けて遠くまでみんなで漕いでいこうという意味を込めた「Same Boat」のキーワードが生まれましたその船員として羅針盤となる企業理念体系「TBM Compass」制定、これまでTBMはプロダクトのブランドロゴしかなかったのですが、TBMとしてのコーポレートロゴも制作しました。ミッション・ビジョン・バリューという企業理念だけでなく、「TBM Sustainable Style」と呼ばれる環境やダイバーシティ&インクルージョンに配慮した行動を「ValuesX(バリューエックス)」として定めました。組織が拡大しても、多様な社員が活躍できる組織にしていくため、採用と組織開発は両輪で進めることが重要だと感じています。

河合:まさにフェーズごとに合わせて、どういう組織であるべきかとセットで、言葉一つひとつに丁寧に想いを込めていらっしゃいますね。オフィスでどんな言葉が使われているのかは企業文化の形成に大きく寄与していきます。この言葉、どのような観点から考えて使っていらっしゃるのでしょうか?

笹木:もちろん、社員の心を動かすようなコミュニケーションをしなければ組織が目指す方向には向いていかないと思います。自分自身だけなく、山﨑もこだわりがある方ですね。自分は基本的に右脳イン左脳アウトだと思っています。「伝える」じゃなくて「伝わる」ようにするために、右脳を刺激させ、左脳でその理由をわかりやすく変換し伝えることを心がけています。TBM Compass」という名称も、ソニーの人事から転職してきた同チームのマネージャーがネーミング案を何個出しましたがSame Boatで前に漕いでいく、TBMに一番しっくりくる言葉だと思っています。

最高のスキルは“人柄” 謙虚に学ぶことが大切

河合:TBM様には事業の特性上、多様なバックグラウンドを持つ社員がいらっしゃいます。さらに、これから100人規模で採用するとなると、どのように各部署や個人が抱えている課題を解決してらっしゃるのでしょうか?

笹木:組織の課題を解決するというよりも、所属する社員の視座を上げること、考え方を前に向かせることが重要ではないかと思います。TBMの最高顧問である野田一夫先生は、ベンチャーの父、日本にピーター・ドラッカーを紹介したり、ソフトバンクの孫正義さんも「師匠」と崇められたりしている方です。私が野田先生に「スタートアップの人材の資質には何が必要でしょうか」と尋ねた際、「根暗じゃなくて根明だよ」とお話されていました。「最高のスキルは人柄である」と。だからこそ、感謝や謙虚さが大事で、「物事を前向きに捉え、先輩やTBMを支援いただいている方々から学ばせていただいている」という姿勢を持って挑戦することが大事です人柄というスキルを身につけ、学びを成長につなげ、その成長を循環させる組織にしていきたいと考えています。

また、これから100人以上採用していくなかで、マネージャーの活躍も重要だと考えています。よく山﨑が「マネージャーは中間管理職ではない、“中心”管理職である」と言います。そこに込めた想いとしては、マネージャーは会社の中核となって、組織も事業も裁量を持ってリードできる存在であるべきだというものです。今年の採用においても、大きな裁量と責任を持ち、TBMを自分ゴト化しながら物事を進め、成長し、会社の中核となってくれる社員を積極的に採用していく予定です。

河合:中心管理職、素晴らしい言葉の発明ですね。マネージャーは常に事業と組織、経営と現場の中心にいるべき存在だと私も思います。この概念や言葉は、採用マーケットや各企業にもどんどん取り入れられて欲しいと思いました。本日は貴重なお時間をありがとうございました!

著者プロフィール

上野智

Writer

1986年長野県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、編集プロダクションに在籍し『週刊SPA!』や『ダイヤモンドZai』などでコンテンツを製作。 株式会社カカクコムを経て、株式会社ビズリーチ(現ビジョナル・インキュベーション社)のWEBメディアBizHintの企画や編集を担当中。

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