看護師の人材不足を解消する際に抱える課題とは

医療業界が今、直面している看護師の人材不足問題。看護師の求人をかけても、なかなか十分に人が集まらずに困っている人事・採用担当者の方もいるのではないでしょうか。

看護師の人材不足問題は、労働環境や看護需要の拡大など看護師を取り巻くさまざまな状況に課題があるといわれています。国民の命を守る医療サービス維持のために、政府も対策に乗り出しているほどの状況です。

そこで今回は、看護師不足の現状と原因、対策について解説します。看護師の方々が長く働き続けやすい環境作りのポイントも紹介しますので、参考にしてみてください。

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看護師が不足している現状

人手不足が深刻化している職種のひとつである看護師は、厚生労働省が毎月算出・公表している有効求人倍率でも常に高い数値で推移していて、「人手不足」の状態を読み解けます。ここでは、具体的にどれくらい看護師が不足しているのか現状を把握していきましょう。

看護師が足りないという課題はさらに深刻になる

看護師不足は現在でも深刻であると危惧されていますが、今後さらに深刻さを増すともいわれています。厚生労働省の発表では、2025年までに必要な看護師数は188〜202万人と想定されている一方で、2025年の看護師数は175〜182万人と想定されており、最大で27万人もの看護師が不足する見込みです。

看護師の不足が予想されている要因のひとつに、日本の高齢者数の増加があります。日本は超高齢社会に突入してもなお高齢者人口の増加が進んでいます。それに伴い、看護師の需要は今後ますます高まると予想されています。

一方で、看護師の求職者数は少子化により減少が見込まれていることから、需要と供給のバランスが崩れることにより、医療現場の人手不足は今後も続くでしょう。

出典:「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(案)」(厚生労働省)

看護師数は増加傾向にある

近年、看護師養成学校の定員者数や入学者数は増加傾向にあり、2010年時点の看護師数は約132万人だったのに対し、2020年には約157万人と10年間で約24万人もの看護師が増加したことになります。

その一方で、日本の100病床数あたりの看護師数は諸外国と比べると約4分の1程度にとどまっているのが現状です。例年2倍を超えている看護師の有効求人倍率は、2023年1月時点では2.47倍で推移しています。

同時点での日本の全職業の平均有効求人倍率1.29倍と比較すると、全業種の中でも看護師の人手不足が深刻であることがわかります。

日本の看護師不足の現状は、看護師の総数は増加傾向にあるものの増加する需要には追いついていないため、実際には看護師が足りないという状態が続いているといえます。

出典:「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(厚生労働省)

看護師の人材不足が起こる主な原因

ここまで看護師不足の現状や背景を解説してきましたが、そもそも看護師の人材不足はなぜ起こるのでしょうか。ここでは、看護師の勤務形態や労働条件などの観点から、人材不足が起こる原因を解説していきます。

復職しないケースが多い

出産や子育てなどのライフイベントと仕事の両立負担が男性に比べて大きい女性は、出産などをきっかけに一旦退職して、その後、子育てなどが一段落したタイミングで復職する方が一定数います。

一方で、看護師の場合は、退職後に看護師として復職しない方の割合が多いことから、就業者数は年齢が上がるほど減っていくのが実態です。

看護師として働いていない看護師の有資格者である「潜在看護師」は、約79万人いるといわれています。もちろん復職しない、できない理由もありますが、前提として看護師資格を持つ方が働いていない現状自体が看護師不足の要因のひとつです。

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看護需要の拡大

日本は現在、高齢人口の急速な増加にともない、医療・介護・福祉分野における看護師の需要が拡大しており、それに対応するための人材確保が求められています。

日本の人口に占める65歳以上の高齢者の人口比率は、2025年に30%、2060年には40%に達すると予測され、今後医療や介護のあり方は大きく変化すると予想されます。介護施設や在宅治療、訪問介護など看護需要がますます拡大することが看護師不足をより加速させていくことが考えられます。

不規則な勤務形態

看護師は、勤務形態が不規則でプライベートと仕事の両立が難しい職業のひとつです。日勤・準夜勤・夜勤の3交代制シフトのように勤務時間も常に一定ではなく、オンコールによる呼び出しがあればすぐに対応しなければならないなど、不規則な生活を強いられます。

特に小さい子供がいる看護師にとっては、夜間勤務を続けることが難しいケースも多く、時短勤務や日勤を優先できる勤務体制でないと仕事が続けられなくなってしまいます。

また、人手不足の影響により、夜勤帯は少人数の看護師での病棟巡回やナースコール対応を行う必要があるため、休憩時間をあまり取れないこともあります。さらに人手不足が深刻な場合は休暇を取りづらくなってしまい、不規則かつ余裕のない勤務形態が常態化し、結果的に離職せざるを得ないという看護師もいるのが実態です。

業務量の多さと責任の重さ

業務量の多さという意味でも看護師は負荷の大きな職業です。看護師の業務範囲が非常に広く、医師が行う診療の補助と患者さんの看護、看護記録の作成などの事務処理まで多岐にわたります。

これに加えて夜間勤務においては、看護師資格を持たずともできる業務もやらざるを得ないケースがあります。そのため看護師は1日中常に仕事に追われているのが現状です。

厚生労働省のデータによれば、日本は人口1,000人あたりの病床数がおよそ13床と世界で最も多く、これはアメリカと比較しても2倍以上多い数値です。しかし一方で、医師数や看護師数はアメリカよりも少なく、看護師ひとり当たりの業務負担量はとても大きいことがうかがえます。

看護師の仕事はやりがいを感じられる反面、常に命と隣り合わせであり、責任の重い仕事です。患者への薬剤投与や看護ケアなどでのミスが命に関わるため、小さなミスも許されないというプレッシャーやストレスを感じる方も多いと考えられます。

多忙な業務に追われるかたわら、医療事故を起こさないように緊張の糸を張り続けなければならない労働環境に不安を感じて離職するケースも多くなっています。

出典「医療施設数及び病院病床数の推移」(厚生労働省)

看護師の人手不足への対策とは

看護師の人手不足への施策は、「政府による対策」と「事業主による対策」のふたつに大別されます。それぞれの具体的な内容を次に解説します。

事業主による対策

事業主による看護師不足への対策は、福利厚生など労働環境整備に関するものが中心です。看護師の働く環境や条件を改善することにより人材採用を有利に展開して、看護師不足を解消する狙いがあります。具体的な施策例は以下の6つです。

福利厚生を充実させる

福利厚生を充実させる際には、さまざまな施策が考えられます。例えば私生活を充実させるためのサービスの充実、定期的な健康診断、フィットネスクラブの割引などが提供されることで、看護師の身体的および精神的健康の維持と向上が図ることができます。

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夜勤手当や残業手当を充実させる

夜勤手当や残業手当を充実させることで、夜勤や残業の多い看護師の業務量に見合った給与形態を実現できます。手当の充実は看護師の収入改善につながり、働くモチベーションが向上して離職を思い止まらせてくれる可能性があります。

また、現職の看護師だけでなく、新たに募集する求人情報に掲載する手当額も高くなるため、求職者を多く獲得することにもつながるでしょう。

院内託児所を設置する

院内託児所があると、看護師は子どもを託児所に預けて働けます。育児中の看護師が仕事に集中できることはもちろん、妊娠・出産で離職した看護師が復職しやすい環境も整えられます。院内託児所が設置されている職場は、将来的に家庭を持つことを考えている求職者に強く訴求できます。

育児休業や介護休業が取得しやすい労働環境を整備する

妊娠や出産などのライフイベントによる看護師の離職を削減するために、育児休暇や介護休暇を取得しやすくしたり、時短勤務を導入したりして労働環境を整備することが非常に有効です。

手当など給与での還元も重要ですが、家庭のある方のなかには休暇の取りやすさに重きを置いている方も多いため、休暇取得を申請しやすい仕組み作りや雰囲気作りが必要不可欠となっています。労働環境が十分に整備されれば、定着率向上や復職を希望する看護師が増えると考えられます。

スキルアップ・キャリアアップの支援体制を整備する

スキルアップ・キャリアアップの支援体制を整えることは、施設全体における看護の質を高めるだけでなく、看護師の確保や定着につながる有効な対策です。

例えば、認定看護師・専門看護師の資格取得支援やキャリア養成支援制度の導入により、スキルを身に付けられる職場環境になれば、希望部署への異動やキャリアアップの実現可能性が高まり、看護師のモチベーション向上にもつながると予想されます。

デジタル機器を活用する

看護師の業務負担を軽減するために、カルテの記入や病棟管理など、看護以外の業務をデジタル化したり、医療ロボットなどの機器を活用したりする病院が増えています。業務の効率化が進めば、人手不足による業務負担も解消され、看護師が本来やるべき看護業務に専念できるメリットがあります。

求人サイトを活用する

看護師を採用するためには、求人サイトを適切に活用することも重要です。単に採用情報を羅列するだけでなく、良質な職場環境をイメージできる写真を掲載したり、待遇条件などを明確に記載したりすることが大切です。

これにより、労働環境をアピールすることにもつながり、より求職者に興味を持ってもらいやすくなります。

政府による対策

政府による看護師不足への対策は、医療保健や公衆衛生政策など国の医療提供体制を維持して、国民の命と健康を守るためのものです。国家予算を投じて、看護師が働き続けやすい環境を整備していく狙いがあります。具体的な例は以下の4つです。

復職支援

復職支援では、看護師の就業促進事業などを行う「中央ナースセンター」を各都道府県に設置する取り組みや、看護師資格保有者の届け出制度「とどけるん」が挙げられます。ナースセンターとハローワークの連携強化も図られており、医療機関の人材充足や求職者支援など、看護師確保の対策が進められています。

離職防止・定着促進

離職防止・定着促進の対策として、看護師を含む医療従事者の勤務環境改善が行われています。その一環として、医療機関が自主的に行う「勤務環境改善マネジメントシステム」について、国がガイドラインを策定しました。

また、勤務環境改善に取り組む医療機関を支援するための「医療勤務環境改善支援センター」を都道府県ごとに順次設置しています。そこでは、医療労務管理アドバイザー(社会保険労務士など)や医業経営アドバイザー(医業経営コンサルタントなど)が専門的かつ総合的な支援を行っています。

養成支援

養成支援は、看護師資格保有者の母数を増やすための取り組みです。看護学部以外の大卒者や短大卒者、社会人経験者の方が看護師学校や養成所への通学をとおして看護師を目指す道を開いています。

また、教育訓練給付金制度の拡充も進められており、受給の要件を満たせば受講費用の一部を支給する支援制度があります。

財政支援

財政支援では消費税増収分を活用して、医療機関・事業所に向けた「地域医療介護総合確保基金」を各都道府県に設置しています。加速する生産年齢人口の減少を見据え、病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進、医療・介護従事者の確保、勤務環境の改善などに対する課題解決が急務です。

医療機関・事業所が同基金を活用することで、看護師が働きやすい・キャリアアップしやすい環境を整備できると期待されています。

まとめ

今回は看護師不足の現状と原因、対策について解説しました。不規則な勤務形態や業務の多忙さ、重すぎる責任など看護師特有の労働条件を背景に看護師の離職率はなかなか抑えられないのが現状です。また、一度離職すると子育てなどとの両立が難しく、復職のハードルがほかの職種に比べて高いのも看護師特有といえます。看護師不足が懸念される一方で高齢化が進む日本では、医療のみならず介護や福祉の現場での需要も高まっています。

この課題に対して政府や事業主が看護師の定着や潜在看護師の復職支援などのために福利厚生改善を実施しています。労働環境を整備することで、従業員満足度を向上させられるため、採用活動や離職防止に役立ちます。

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