※このストーリーは、noteで発信した記事を転載しています。
こんにちは。AI推進室の三井です。
先日のアドベントカレンダーとは打って変わり、本レポートでは
カンリーAI推進室主催の勉強会対談の模様を一部お届けします。
※本来はオフレコ前提の会でしたが、特別にご了承いただき会の一部レポートを公開しています。伏せる部分が多くなっている点、ご了承いただけますと幸いです。
目次
- イベントの概要
- カンリーAI推進室、なぜ「今」設立したのか?
- 泥臭い「業務改革」の現場リアル
- AI活用の戦略哲学:スイミー理論と「スクラム」の終わり
- 【オフレコ】最新AI動向と「ここだけの話」
- 編集後記
1.イベントの概要
日時: 2025年11月某日 開催
会場: 株式会社カンリー本社
参加者: AI推進室メンバー(萩野、村口、三井) 、AI活用に最前線で取り組む経営者・推進リーダーの皆様
今回の趣旨は、社外の有識者や経営者の皆様をお招きし、AI推進に関する取り組みを心理的安全性の高い場でざっくばらんに共有すること。
普段は聞けないような泥臭い本音や、表には出せない最新の技術論まで、熱量の高い議論が交わされました。
(ちなみに、白熱した議論を交わす皆さんのために、19時頃にはピザが到着。時計と胃袋の準備も意識しつつ、本題へ!)
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手違いで同じピザが2枚届いたのはご愛敬
2. カンリーAI推進室、なぜ「今」設立したのか?
萩野(室長): 本日はありがとうございます!各社がビジネスモデルの変革を迫られる中、弊社も本気で取り組んでいます。
今期、代表から『店舗×マーケティング×AIにオールインする』という戦略が出され、それに伴い発足したのが我々の「AI推進室」です。
AI推進室のテーマは「全社の生産性向上」「既存事業の競争力強化」「新規事業の創出」。トップダウンとボトムアップ、両方のバランスを見ながら試行錯誤しています。
会場からは、「経営直下で全社の最重要課題に優先順位をつけて動く、まさにCoE(センター・オブ・エクセレンス)的な動きですね」との声が上がりました。
── (AI推進室の)体制はどうなっているのでしょうか?
萩野: 現在はコアメンバー3名体制です。私が戦略やロードマップ、新規事業構想といった川上部分を設計しています。
村口(エバンジェリスト): 僕はデータサイエンティストの背景を活かし、最新ツールのキャッチアップと社内への導入促進、いわゆるエバンジェリストとしての役割です。GeminiやClaudeはもちろん、新しいツールも試験的に使い、「どう使えばアウトカムが出るか」を設計しています。
三井(Ops Manager): 私はAI Operations Managerとして、事業企画・業務改革・組織設計を推進しています。ある日突然代表から「Ops Managerの話聞いてる?」とDMが来て気づいたら目標設定されていたという(笑)。AI前提の業務再構築をリードしています。
3. 泥臭い「業務改革」の現場リアル
三井: 直近3ヶ月は、SMB領域(Small and Medium Buinessの略で「中小企業」を意味する。弊社では1〜9店舗を運営する店舗事業者を意味する。)のお客様を担当する部署に「選択と集中」をしていました。
成果としては、SLA違反チケットのゼロ化達成と、カスタマーサクセス(以下、CS)担当一人あたりの保有案件数を約1.5倍まで引き上げられるオペレーションの見通しが立ったことです。
── 素晴らしい成果ですが、魔法を使ったわけではありませんよね。具体的にどのようなプロセスで業務改善に取り組まれたのですか?
三井: 徹底的に現場に張り付いて、業務フローの棚卸しをしました。「何に時間がかかっているか」「情報の流れはどうなっているか」を可視化した上で、「ここはAI」「ここは自動化」「ここは人間がやるべきコア価値」と
To-beを再設計し、実装していきました。
村口: 顧客コミュニケーションのツールもバラバラだったんです。スプレッドシート、PDF、Excel、LINE……。「お客様の要望に応えた結果」ではあるのですが、拡大を見据えて整理が必要でした。Slackスタンプでのチケット管理や口コミ返信のツール化など、クイックウィン(小さな成功)を積み上げながら現場と二人三脚で進めました。
これには会場の皆様からも、「現場の業務フローに入り込み、ユーザーに意識させずにAIを組み込む。これぞAI推進の勝ちパターンだ」と強い共感が寄せられました。
──並行して進めている「アンバサダー制度※1」については、浸透の難しさを指摘する声もありますがここはどう捉えていますか?
※1 社内でAI活用を促進するため各部署にAI活用のキーパーソンを設置し、現場ニーズに基づいた自部門の業務改善を推進するための制度
萩野: おっしゃる通りです。「業務時間の20%をAI推進に」という方針に対し、現場マネージャーからは「公平性は?」「評価はどうする?」といった懸念も出ました。そこはかなり丁寧に時間をかけてコミュニケーションを取り、合意形成を行いました。その結果、今はボトムアップで活用が進む下地ができてきたと感じています。
4. AI活用の戦略哲学:スイミー理論と「スクラム」の終わり
── SaaSビジネスにおいて、AI導入の経済効果(ROI)を定量的に説明するのは至難の業です。「これで売上がいくら上がったのか?」という問いに、どう向き合っていますか?
萩野: ここは最大の悩みどころです。弊社は150人規模のスタートアップであり単なる「コスト削減」としてのAI活用に留まるわけにはいきません。
直接的に売上へ寄与するAI活用を追求していく必要があります。
村口: そこで僕らが提唱しているのが「スイミー理論」です。 1つのAIですべて解決する「銀の弾丸」はないと割り切る。代わりに、メール作成30分短縮といった「鉛の弾丸」を泥臭く積み重ねる。スイミーが集まってシャチに勝つように、小さな成功体験で全体を底上げし、組織の基礎体力を高める戦略です。
── 「短期的な成果を追うなら、AI(人工知能)ではなくAi(拡張知能)と捉えるべき」という議論も出ましたね。実際に現場のモメンタム(勢い)を変えた事例はありますか?
萩野: はい。厨房機器のアナログな業務領域でキャリアを積んだ、IT未経験のCSメンバーの事例があります。
彼女はお客様と日々接する上で「現場を良くしたい」という強い意志を持っていましたが、データ分析などのスキルが追いつかない場面もありました。
そこで、彼女に「データ分析AI」という武器を渡したところ、自らプロンプトを試行錯誤して整理し、チーム全体の品質向上につながるユースケースを次々と作り上げていったんです。
これは「現場に眠るインサイト(洞察)」と「AIによるスキルの補完」が掛け合わさることで生まれた成果と言えます。日々お客様と向き合う中で培われた「改善のアイデア」が、AIという強力な実行手段を得たことで、職種やスキルの壁を越えて形になった瞬間を間近で見ることができました。
このエピソードには、参加者からも「AIが人の能力を拡張した、まさにAI活用におけるUX(ユーザー体験)の勝利だ」と絶賛する声が寄せられました。
── まさに、AI活用による「発明」が起きた瞬間ですね。開発体制はどう変わりましたか?
萩野: エンジニアの間では「スクラムをどう効率化するか」という議論になりがちですが、我々のエンジニア組織では今期、AI-DLC(AI駆動開発ライフサイクル)の標準化を宣言しました。これはつまり、「スクラムをやめよう」ということです。
そもそもスクラムは、人間主体の効率化手法に過ぎません。AI時代においては、AIがコードを書き、デプロイし、エラーが出ればAIが修正する……という「自己修復ループ」こそが理想です。我々は既存の当たり前をリストラクチャリング(再構築)していく必要があると考えています。
5. 【オフレコ】最新AI動向と「ここだけの話」
ここからは参加者全員でカジュアルに議論を行いました。少し技術的でディープな話題にも花が咲き、大変盛り上がった時間になりましたが、このパートはあまりに赤裸々すぎるため、本レポートでは割愛させていただきます...!
ほんの一部だけご紹介すると、
・最新のAIモデルの能力比較
・AIの可能性を示唆する衝撃的なベンチマークデータ
・「今はまだ言えない」最先端のAIエージェント活用術
・SaaSの未来予測
など、参加者同士でクローズドな場だからこそできる、非常に具体的な議論や情報共有が行われました。
そして、この白熱した議論の最後に辿り着いた、共有できる唯一の「結論」が、三井のこの言葉に集約されています。
三井: 「AIが進化し、開発や業務の自動化が無限ループの域にまで達すると、私たちが本当に向き合うべきは、AIに何をさせ、『人間は何に価値を置くべきか』という、問いの再定義になりますね」
6. 編集後記
「スイミー理論」に象徴される泥臭い成功の積み重ねから、「スクラムをやめよう」という開発哲学の転換、最先端の事例まで、あっという間の3時間でした。
会場との対話を通じて、「AIネイティブな組織への変革」とは、単にツールを導入することではなく、人間の役割やビジネスモデルそのものを根本から見直す「アンラーニング」の連続であると再認識させられました。 (オフレコで書けない内容があまりに多かったのが心残りです…笑)
この全社変革の核心に迫る対談を通じて、私たちはAIをさらに活用し、組織全体の価値を高めていく決意を新たにしました。
一部のお届けとなってしまいましたが、勉強会対談レポートはいかがでしたでしょうか。
株式会社カンリーは、この変革期をリードし新たな価値を創出する仲間を絶賛募集中です。 次回はさらに深い議論(とオフレコ話)ができるようパワーアップした新年会を企画しておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください!